時を奏でる境界線

シャオえる

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110. 二人が願っていた瞬間を

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 何とか本部に戻ってきたノエル達。本部の中は、学園への対処とあちらこちらで起こっている事件等も相まって、いつもより忙しそうに、みんな動き回っていた
「学園大丈夫かな?」
 タストスと学園の情報が、本部中から聞こえてくる状況に不安そうにメイナがカリアに聞いている
「調査や立て直しを考えても、しばらくは行けないかも……」
 いつも集まっていたソファーに座って休んでいると、カリアを見つけた隊員が近寄ってきた
「すみません、カリアさん。ちょっとよろしいですか?」
 人手不足で手伝ってほしいと頼まれ、仕方なく席をたつ
「ゴメンね。先に部屋に戻っていて」
「……お兄ちゃんのお部屋行っても良い?」
 カリアが居なくなることにリエルが心細いのか、ノエルにお願いする。だが、そのお願いにノエルとカリアが困ってしまう
「でも、寮には行けないよ……。」
 ノエルがどうしようか悩んでいると、カリアが隊員と何やら話している。バタバタと隊員がどこかへ行くと、カリアがみんなに話をする
「少し大きめの部屋があるから、みんなで使って大丈夫か聞いてくるから、少し待ってて」


 少し時間が過ぎて、午前レクトを少し過ぎた頃。だうにか死なず傷を治してもらって完治のため寝ている側で、二人でのんびり月夜を見ている人影が見えている
「ラックよ。知っているか。いつもアイツが歌う歌」
 今日は珍しくお酒を二人で嗜んでいる。ほろ酔い気分なせいか、いつもよりちょっとだけ機嫌がよく話が進む
「ああ、マリヤが好きな歌だろう?」
「……カナメもよく唄っていたんだ」
 ふと、クリルとメイナを思い出して少し優しい顔になる
「あの子達も子守唄に聞いていたと思うんだが……忘れているかな」
 一口お酒を飲むと継ぎ足して、また一口と、少しペース早く飲み干していく
「マリヤがカナメに教えたのか?」
「まぁ……そうだろうな」
 つられてラックも早いペースで飲んでいると、雲が月を隠して少し暗くなった部屋。明かりを灯しながらラックがキッチンへと向かっていく
「時間や出会いを越える歌か……。アイツの気持ちも分からなくはないな……。だが、二人がいない今、どうするんだろうな」
 ため息つきながら戻ってきたラックに、微笑んで一口飲み進めていくと、月がまた見えてきて、小屋がまた少し明るくなっていった
「まあ、見て守ってみようか。カナメも信じていた境界線の瞬間というやつを」
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