時を奏でる境界線

シャオえる

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69. 花と風が揺らぐ時

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「おはようございます。カノン」
 まだメイナ達が眠る午前レフト8時。本部の玄関で待ち合わせをしていた二人。ちょっと寝不足のカノンがやって来た
「おはよう。朝早くから悪いね」

「いえ、私も午前レフトの時間の人だから……」
 そう話して、微笑むカリア。つられてカノンもふふっ。と笑う
「そうだったね。じゃあ今日はよろしく……」


 朝日も落ち着いてきた頃、途中タストスに寄り花束を買ってドーケムへ向かう二人。思い出話や仕事の話をしているうちに、あっという間に到着した。タストスから約一時間程で着いたドーケムの村。のんびりとした雰囲気が流れている
「こんな近くに住んでいたなんて……」
 本部からもそう遠くないドーケム。ずっと会えてなかったことに、不思議そうに話していると
「アゼルは、かくれんぼ得意だったから」
 話ながら、昔を思い出して微笑むカリア
「そうだね。まあ、今も変わらないけど」


 ドーケムにあるメイナとクリルが教えてくれた、マリヤがいる場所へと向かう二人。会話も少なくなってきた頃、目的地に辿り着いた
「ここにいるのか……」
 名前が書かれたその場所を見つけると、体が動けなくなる
「あら……」
 一足先にマリヤの所に来たカリア、足元の花束を見つけ、不思議がる。前に来たのは数日前。それにしては花が綺麗。今、持ってきた花束はまだカノンが持っている
「この花は?」
 ゆっくりと来たカノンも、花束を見つけた。それはマリヤが好きだった花が置かれている
「バルバかダングのじゃないのか?」
 そっと、花束を並べるように置き、その場に座る。
まだ、見慣れない風景に、なんだか不思議な気持ちになっていく
「それにしては、花がだいぶ新しいような……」

 カリアの疑問に、しばらく考えるカノン。そしてポツリ呟く
「……アゼルか、来ていたのか」
 その瞬間、風が強く吹いた
 花びらが1枚、ひらり飛んで、カノンの頬について、ゆっくり落ちていく

「そうか……」
 カノンの声が震えている 
「マリヤ……アゼル、ダメじゃないか。ノエル君とメイナちゃんを僕らと同じ思いをさせちゃ……帰ってこいよ……僕らだって、ずっと待っているんだ」

 カノンの後ろではカリアも涙を堪えている
「……カリア、ゴメンね」
 目を赤らめ、笑うカノン。小さく横に顔を振るカリアも、目が赤くなって一緒に笑う
「泣いたらお姉ちゃんに笑われるよ」

「……そうだね。でも、今だけは許してくれるかな?」
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