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第一章 春
第十一話 球技大会の特訓!
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球技大会が一週間後にやってくる。しかし、授業内での練習時間はあまりない。なので、多くの生徒は昼休みを利用して練習に励む。
俺たちも例に漏れず、先日から昼休みにグラウンドに出てボールを投げ合っている。
俺をドッヂボールに誘ってくれた大喜を中心に練習しているのだが、野球部でキャッチャーをしている大喜のおかげで参加者全員がある程度強いボールもキャッチできるようになっていた。
なので、今日はうちのクラスのドッヂボールに参加する男子十人を半分に分けて実践練習ということで実際のドッヂボールの試合と同じような形でやってみることになった。
チーム分けの結果、俺は大喜と同じチームとなった。
相手ボールで練習試合が開始したが、サクッと相手の投げたボールを大喜がキャッチして投げ返している。
そんな中、俺の視線は近くで同じようにクラス内で練習しているうちのクラスの女子たち───とりわけ杏実さんに注がれていた。
相手チームが投げたボールを上手く避けている中、杏実さんの目の前にたまたまボールが転がる。
それを拾った杏実さんが相手に向かってボールを投げる。すると、ボールは見事な弧を描き───後ろにいる味方の方に飛んで行った。
その様子を呆然と見つめていると、相手からボールが飛んできた。危ない危ない、俺も今練習試合中だった。
それにしても杏実さん……あれで本当に大丈夫なのか?
昼休みの練習を終え、五限と六限の間の休み時間に昼休みに食べ損ねた弁当を食べていると、少し落ち込んだ様子の杏実さんが目に入った。
少し気になったので弁当を食べるのを中断して杏実さんに話しかけに行く。
「杏実さん」
「あ、佑君。どうかした?」
「いや、何となく杏実さんが落ち込んでる気がしたからちょっと声かけただけ。なんかあった?」
「あ……最近一応練習してるのに中々ドッヂボールが上手く行かなくて。あ、別に気にしなくていいよ?」
「ああ、そういえば今日杏実さんが投げたボール、後ろに飛んでってたね」
「えっ!?見てたの?!」
「あはは、ごめんごめん」
む~っと頬を膨らませる杏実さんに苦笑しつつ少し考える。さっき見た感じで球技大会を迎えてしまうと、クラスの成績に関わってしまうかもしれないし、そもそもの杏実さんのモチベーションが無くなってしまうかもしれない。それは少しまずいな。何か手を打たねば。
「ねぇ、杏実さん、今日の放課後空いてる?」
「え…別に特に用事はないけど…………」
「それなら、杏実さんが良ければ特訓しない?」
その日の放課後、部活が使っていないグラウンドの端に杏実さんと2人で集まっていた。本当は碧も誘いたかったのだが、それをしてしまうと杏実さんが固まってしまい練習にならない可能性が高かったので諦めた。
「よっし、じゃあボール投げる練習しよっか!」
俺がそう声をかけると、神妙な面持ちで杏実さんが頷く。
とりあえず近距離から緩くボールを投げてもらったのだが、これはどうやら普通にできるらしい。俺の緩い返球も難なくキャッチできている。となると、基本的なことからできてないわけではなさそうだ。
今度はさっきより少し離れた位置から強めにボールを投げるように指示を出した。すると、杏実さんの「えいっ」という掛け声と共に投げられたボールは昼休みのように後ろには飛ばなかったものの、高く上がって杏実さんの少し前に落下する。
今のを見た感じだと、恐らく杏実さんが強く投げようと思うあまり、ボールが手からすっぽ抜けてしまった結果、ボールがあらぬ方向へと飛んでいっているようだ。
これならば修正は簡単だ。
「杏実さん、もう一回同じように投げてみて。でも今度はボールをもうちょっとしっかり掴むイメージで」
「うん、わかった」
そうしてもう一度杏実さんがボールを投げると、今度はしっかりボールを掴んだまま腕を振れたようで、山なりのボールが俺の手元にしっかり飛んできた。
「やった!ちゃんとボールが飛んだ!!」
と喜んで跳ねている杏実さんに感心する。まさかアドバイスしてから一発で成功するとは。「すごいよ!」と声をかけようと近づくと、俺が口を開く前に杏実さんが
「今の感覚を定着させたいからまだ投げていい?」
と聞いてくる。向上心がいいね!
「もちろん!好きなだけ投げて!」
とボールと共に言葉を返すと、それを受け取った杏実さんがボールを持ち、腕を振りかぶった。
その後しばらくボールを投げて、軌道が安定したことに満足したのか、杏実さんが投球をやめてこちらにやってくる。
「ありがとね、佑君!こんな時間まで練習手伝ってくれて」
気づくと練習を始めてから小一時間が経っており、空が橙色に染まり始めていた。
「いいよいいよ、気にしなくて。そもそも練習を提案したの俺だし。しっかり投げれるようになってすごいよ!」
「いやいや、佑君のおかげだよ。本当にありがと」
「じゃあ感謝はしっかり受け取っとこうかな。でもできるようになったのは杏実さんがちゃんと練習した証だからね!」
「うん!」
そう話しながら歩いていると気づくと駐輪場に辿り着いていた。
「じゃあ佑君、また明日~」
と声をかけて自転車に乗って走っていく杏実さんを手を振って見送ると、俺も自転車にまたがり、帰路に着いた。
これで心置き無く球技大会を迎えられそうだ。
俺たちも例に漏れず、先日から昼休みにグラウンドに出てボールを投げ合っている。
俺をドッヂボールに誘ってくれた大喜を中心に練習しているのだが、野球部でキャッチャーをしている大喜のおかげで参加者全員がある程度強いボールもキャッチできるようになっていた。
なので、今日はうちのクラスのドッヂボールに参加する男子十人を半分に分けて実践練習ということで実際のドッヂボールの試合と同じような形でやってみることになった。
チーム分けの結果、俺は大喜と同じチームとなった。
相手ボールで練習試合が開始したが、サクッと相手の投げたボールを大喜がキャッチして投げ返している。
そんな中、俺の視線は近くで同じようにクラス内で練習しているうちのクラスの女子たち───とりわけ杏実さんに注がれていた。
相手チームが投げたボールを上手く避けている中、杏実さんの目の前にたまたまボールが転がる。
それを拾った杏実さんが相手に向かってボールを投げる。すると、ボールは見事な弧を描き───後ろにいる味方の方に飛んで行った。
その様子を呆然と見つめていると、相手からボールが飛んできた。危ない危ない、俺も今練習試合中だった。
それにしても杏実さん……あれで本当に大丈夫なのか?
昼休みの練習を終え、五限と六限の間の休み時間に昼休みに食べ損ねた弁当を食べていると、少し落ち込んだ様子の杏実さんが目に入った。
少し気になったので弁当を食べるのを中断して杏実さんに話しかけに行く。
「杏実さん」
「あ、佑君。どうかした?」
「いや、何となく杏実さんが落ち込んでる気がしたからちょっと声かけただけ。なんかあった?」
「あ……最近一応練習してるのに中々ドッヂボールが上手く行かなくて。あ、別に気にしなくていいよ?」
「ああ、そういえば今日杏実さんが投げたボール、後ろに飛んでってたね」
「えっ!?見てたの?!」
「あはは、ごめんごめん」
む~っと頬を膨らませる杏実さんに苦笑しつつ少し考える。さっき見た感じで球技大会を迎えてしまうと、クラスの成績に関わってしまうかもしれないし、そもそもの杏実さんのモチベーションが無くなってしまうかもしれない。それは少しまずいな。何か手を打たねば。
「ねぇ、杏実さん、今日の放課後空いてる?」
「え…別に特に用事はないけど…………」
「それなら、杏実さんが良ければ特訓しない?」
その日の放課後、部活が使っていないグラウンドの端に杏実さんと2人で集まっていた。本当は碧も誘いたかったのだが、それをしてしまうと杏実さんが固まってしまい練習にならない可能性が高かったので諦めた。
「よっし、じゃあボール投げる練習しよっか!」
俺がそう声をかけると、神妙な面持ちで杏実さんが頷く。
とりあえず近距離から緩くボールを投げてもらったのだが、これはどうやら普通にできるらしい。俺の緩い返球も難なくキャッチできている。となると、基本的なことからできてないわけではなさそうだ。
今度はさっきより少し離れた位置から強めにボールを投げるように指示を出した。すると、杏実さんの「えいっ」という掛け声と共に投げられたボールは昼休みのように後ろには飛ばなかったものの、高く上がって杏実さんの少し前に落下する。
今のを見た感じだと、恐らく杏実さんが強く投げようと思うあまり、ボールが手からすっぽ抜けてしまった結果、ボールがあらぬ方向へと飛んでいっているようだ。
これならば修正は簡単だ。
「杏実さん、もう一回同じように投げてみて。でも今度はボールをもうちょっとしっかり掴むイメージで」
「うん、わかった」
そうしてもう一度杏実さんがボールを投げると、今度はしっかりボールを掴んだまま腕を振れたようで、山なりのボールが俺の手元にしっかり飛んできた。
「やった!ちゃんとボールが飛んだ!!」
と喜んで跳ねている杏実さんに感心する。まさかアドバイスしてから一発で成功するとは。「すごいよ!」と声をかけようと近づくと、俺が口を開く前に杏実さんが
「今の感覚を定着させたいからまだ投げていい?」
と聞いてくる。向上心がいいね!
「もちろん!好きなだけ投げて!」
とボールと共に言葉を返すと、それを受け取った杏実さんがボールを持ち、腕を振りかぶった。
その後しばらくボールを投げて、軌道が安定したことに満足したのか、杏実さんが投球をやめてこちらにやってくる。
「ありがとね、佑君!こんな時間まで練習手伝ってくれて」
気づくと練習を始めてから小一時間が経っており、空が橙色に染まり始めていた。
「いいよいいよ、気にしなくて。そもそも練習を提案したの俺だし。しっかり投げれるようになってすごいよ!」
「いやいや、佑君のおかげだよ。本当にありがと」
「じゃあ感謝はしっかり受け取っとこうかな。でもできるようになったのは杏実さんがちゃんと練習した証だからね!」
「うん!」
そう話しながら歩いていると気づくと駐輪場に辿り着いていた。
「じゃあ佑君、また明日~」
と声をかけて自転車に乗って走っていく杏実さんを手を振って見送ると、俺も自転車にまたがり、帰路に着いた。
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