6 / 52
第一章 春
第五話 部活動見学①
しおりを挟む
「今日から一週間は部活動見学期間です。様々な部活を見て所属する部を決めてくださいね」
今朝のホームルームで担任の先生がそう言った。
部活動、それは三年間の高校生活を左右する重大なコンテンツ。所属する部活によってクラス内での序列から友人、休日の予定まで決まりかねない。
まぁ、俺は中学からやってる卓球を続ける予定だが。
昔は卓球部といえば「陰キャの行く場所」とか「運動が苦手な人の集まり」みたいなイメージがあったようだが、最近はトッププレイヤーが活躍して世界大会でもメダル獲得なんかをしているので、そんなイメージは払拭されてクラスの人気者が卓球部所属、なんてこともある。
でも卓球部に入る予定とはいえせっかくの機会なんだから色んな部活をみておきたいところ。碧でも誘って部活を回りますか。
「碧~、部活動見学行くよね?」
「勿論」
「じゃあ一緒に回らない?」
「特に誰かと回るとか考えてなかったからいいけど…佑って卓球部に決めてるんじゃなかった?」
「あくまでも「予定」だから。中学よりも種類あるしさ、心惹かれる部活あるかもでしょ」
「確かにね」
ちなみにこうして俺と話している碧は中学までは野球をやっていたが高校では心機一転、別の部活を始めてみるらしい。なので必然的に色んな部活を回ることになるので色々な部活を見てみたい俺としては丁度よい。
そんなわけで放課後、まずは体育館にやってきた。今日はバドミントン部とバスケ部が体育館を半々に分けて活動をしている。体育館の規模の割に使用する部活が多いらしく、日ごとに色んな部活が交代で回しているらしい。
シューズが床を踏み締める音とボールが弾む音、ラケットが風を切る音が響く。そしてバスケ部の人達はみんな背が高い。
(バドミントンいいな、ラケットスポーツ好きなんだよな。あとはバスケか……俺は背がないから苦手だな、そもそも手でボールを扱うスポーツあんまりだし)
そう考えながら練習風景を眺めていると、隣の碧も同じようなことも思っていたようで、
「俺たち背がそこまで高くないからバスケは厳しそうだよな」
と声をかけてきた。
ちなみに身長の内訳は俺が165センチくらい、碧が170センチくらいなので実際高いとは言えない。
そんな自分達の体格をしっかり把握しつつ、
「だね」
と返し、体育館をあとにした。
続いて向かったのはグラウンド。グラウンドの手前ではサッカー部、陸上部が、奥側では野球部が練習をしていた。
体育館の部活を見学していた生徒はそこまで多くはなかったが、ここにはかなりの人がいる。流石は運動部の花形とも言える部活が集まっているだけある。
昔サッカーをやっていた父親の影響もあってサッカー観戦が趣味の一つとなっている俺にとっては熱心に練習しているサッカー部員の姿は一際輝いて見えた。
そうしてサッカー部の方に目を向けていると、碧がこう聞いてきた。
「佑ってサッカー観るの好きなんだよな?サッカー部に入って自分でプレーしようとは思わないの?」
「プロの上手いプレーを観てるからこそ、実際に自分でやってみた時に理想と現実の差を叩きつけられるんだよね~」
実際、小学生の頃に父親の勧めでサッカースクールの体験なんかに参加した時、体やボールが全く自分のイメージ通りにいかず、苦い思いをしたのが心に残っているので、憧れはしても自分でプレーしようと思うのに抵抗があるのだ。
「そういうものか」と呟く碧に「そういうものだ」と返し、グラウンドの奥、野球部の方に向かった。
野球部の練習を眺めながら、今度は俺が碧に尋ねた。
「碧こそ、野球続けないのか?」
「この高校、野球結構強くて、練習とかにも力入れてるんだよね、外部からコーチ呼んだり、ちょっとした食事制限があったり。そんな感じの厳しい部活は苦手なんだよね、特に俺なんかは中学までのほほんと野球やってたしさ」
それに、と続ける碧がグラウンドの一角を指差して言う。
「あそこにうちのクラスの大喜いるの分かる?大喜が野球の推薦でここに入ったってのは多分聞いた事あるでしょ?そんな風に地域の中で上手い子を結構集めたりしてるから、さっきも言ったように中学までゆるくやってきた俺みたいなのは野球部に入っても万年ベンチの可能性が高いんだ」
本当だ、あそこでキャッチャーミットを被ってるのは大喜だ。確かに野球の推薦で入った、というのは聞いた覚えがある。と思っていると、さらに碧が言葉を紡ぐ。
「だから、俺は今までやってきた野球を続けて試合とかに出れないよりも、新しい事を始めてみようと思ったんだ。野球部以外の運動部は結構素人の集まりみたいな所もあるから試合に出るチャンスもあるし」
碧の言葉を聞き終えた俺はかなり衝撃を受けていた。こいつはここまで考えているのか。言葉を聞いていただけなのに碧の「何かしらの部活でしっかり爪痕を残したい、そのためには今までやってきたことから離れさえする」という覚悟が伝わってくる。
そんな碧の覚悟を聞いた俺は「そっか」と一言呟き、そのままボーっと野球部の練習を眺め続けた。
今朝のホームルームで担任の先生がそう言った。
部活動、それは三年間の高校生活を左右する重大なコンテンツ。所属する部活によってクラス内での序列から友人、休日の予定まで決まりかねない。
まぁ、俺は中学からやってる卓球を続ける予定だが。
昔は卓球部といえば「陰キャの行く場所」とか「運動が苦手な人の集まり」みたいなイメージがあったようだが、最近はトッププレイヤーが活躍して世界大会でもメダル獲得なんかをしているので、そんなイメージは払拭されてクラスの人気者が卓球部所属、なんてこともある。
でも卓球部に入る予定とはいえせっかくの機会なんだから色んな部活をみておきたいところ。碧でも誘って部活を回りますか。
「碧~、部活動見学行くよね?」
「勿論」
「じゃあ一緒に回らない?」
「特に誰かと回るとか考えてなかったからいいけど…佑って卓球部に決めてるんじゃなかった?」
「あくまでも「予定」だから。中学よりも種類あるしさ、心惹かれる部活あるかもでしょ」
「確かにね」
ちなみにこうして俺と話している碧は中学までは野球をやっていたが高校では心機一転、別の部活を始めてみるらしい。なので必然的に色んな部活を回ることになるので色々な部活を見てみたい俺としては丁度よい。
そんなわけで放課後、まずは体育館にやってきた。今日はバドミントン部とバスケ部が体育館を半々に分けて活動をしている。体育館の規模の割に使用する部活が多いらしく、日ごとに色んな部活が交代で回しているらしい。
シューズが床を踏み締める音とボールが弾む音、ラケットが風を切る音が響く。そしてバスケ部の人達はみんな背が高い。
(バドミントンいいな、ラケットスポーツ好きなんだよな。あとはバスケか……俺は背がないから苦手だな、そもそも手でボールを扱うスポーツあんまりだし)
そう考えながら練習風景を眺めていると、隣の碧も同じようなことも思っていたようで、
「俺たち背がそこまで高くないからバスケは厳しそうだよな」
と声をかけてきた。
ちなみに身長の内訳は俺が165センチくらい、碧が170センチくらいなので実際高いとは言えない。
そんな自分達の体格をしっかり把握しつつ、
「だね」
と返し、体育館をあとにした。
続いて向かったのはグラウンド。グラウンドの手前ではサッカー部、陸上部が、奥側では野球部が練習をしていた。
体育館の部活を見学していた生徒はそこまで多くはなかったが、ここにはかなりの人がいる。流石は運動部の花形とも言える部活が集まっているだけある。
昔サッカーをやっていた父親の影響もあってサッカー観戦が趣味の一つとなっている俺にとっては熱心に練習しているサッカー部員の姿は一際輝いて見えた。
そうしてサッカー部の方に目を向けていると、碧がこう聞いてきた。
「佑ってサッカー観るの好きなんだよな?サッカー部に入って自分でプレーしようとは思わないの?」
「プロの上手いプレーを観てるからこそ、実際に自分でやってみた時に理想と現実の差を叩きつけられるんだよね~」
実際、小学生の頃に父親の勧めでサッカースクールの体験なんかに参加した時、体やボールが全く自分のイメージ通りにいかず、苦い思いをしたのが心に残っているので、憧れはしても自分でプレーしようと思うのに抵抗があるのだ。
「そういうものか」と呟く碧に「そういうものだ」と返し、グラウンドの奥、野球部の方に向かった。
野球部の練習を眺めながら、今度は俺が碧に尋ねた。
「碧こそ、野球続けないのか?」
「この高校、野球結構強くて、練習とかにも力入れてるんだよね、外部からコーチ呼んだり、ちょっとした食事制限があったり。そんな感じの厳しい部活は苦手なんだよね、特に俺なんかは中学までのほほんと野球やってたしさ」
それに、と続ける碧がグラウンドの一角を指差して言う。
「あそこにうちのクラスの大喜いるの分かる?大喜が野球の推薦でここに入ったってのは多分聞いた事あるでしょ?そんな風に地域の中で上手い子を結構集めたりしてるから、さっきも言ったように中学までゆるくやってきた俺みたいなのは野球部に入っても万年ベンチの可能性が高いんだ」
本当だ、あそこでキャッチャーミットを被ってるのは大喜だ。確かに野球の推薦で入った、というのは聞いた覚えがある。と思っていると、さらに碧が言葉を紡ぐ。
「だから、俺は今までやってきた野球を続けて試合とかに出れないよりも、新しい事を始めてみようと思ったんだ。野球部以外の運動部は結構素人の集まりみたいな所もあるから試合に出るチャンスもあるし」
碧の言葉を聞き終えた俺はかなり衝撃を受けていた。こいつはここまで考えているのか。言葉を聞いていただけなのに碧の「何かしらの部活でしっかり爪痕を残したい、そのためには今までやってきたことから離れさえする」という覚悟が伝わってくる。
そんな碧の覚悟を聞いた俺は「そっか」と一言呟き、そのままボーっと野球部の練習を眺め続けた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
【新編】オン・ユア・マーク
笑里
青春
東京から祖母の住む瀬戸内を望む尾道の高校へ進学した風花と、地元出身の美織、孝太の青春物語です。
風花には何やら誰にも言えない秘密があるようで。
頑なな風花の心。親友となった美織と孝太のおかげで、風花は再びスタートラインに立つ勇気を持ち始めます。
※文中の本来の広島弁は、できるだけわかりやすい言葉に変換してます♪
男子高校生の休み時間
こへへい
青春
休み時間は10分。僅かな時間であっても、授業という試練の間隙に繰り広げられる会話は、他愛もなければ生産性もない。ただの無価値な会話である。小耳に挟む程度がちょうどいい、どうでもいいお話です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる