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最終章
第30話 白銀の腕輪
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「おう待てやゴルァ!! てめえが金田鉄生だな?」
約二時間ほどの遠乗りを経て、目の前に全30階の高層ビル――エメラルドタワーがそびえ立つ場所で車を降りる。
降りるや否や、いきなり横からミット帽にタンクトップ姿のガラの悪い男が荒々しく突っかかってくる。後ろには手下なのか仲間なのか、四人似たような野郎を連れている。
「なんだ? こっちは会いたい奴がいるんだ。そこをどけ」
まるで行く手を阻むように進路を妨害する、突如現れたガラの悪い男たち。冬場なのにコートも着ないでその筋骨隆々な姿。そしてこちらを見て冷笑する。
さしづめ、ギャングといった所か。
「そうはいかねえなあ。てめえをぶっ殺せば円川組から懸賞金一千万出るんだ。大人しく倒され――」
もう喋るな――そう言わんとばかりの突如、言葉をかき消した頬に直撃する一発の鉄拳。その内の信念と強さを原動力とし、白い気を纏った豪腕。
銀歯が飛び出し、白目を向いて大の字でレンガの床に倒れる様はその威力と痛感さをまざまざと見せつける――。
それを食らわせた当人も目を丸くし、一瞬何が起こったのか分からなかった。
「うわああああ!? コイツ、バケモンかよ!!」
「怯むな、銃だ!! 早くコイツぶっ殺せ!!」
慌てふためいた一人がそう叫ぶと四人一斉に銃口を向けた――直後、銃を握った手から次々と火花が散り、銃は弾かれて床に落ちる。
一人目がそうなると、もう何が起こったのか分からないギャングどもは鉄生から視線を逸らして目を丸くするばかりで一人、すぐまた一人と持っている銃を落とされる。
「向こうから呼びつけておいて、随分手荒い出迎えだな」
来る前から覚悟してはいたが、もう既にここは敵の根城。
「鉄生、悪いけど先に行って!! こいつらカネに目が眩んだ奴らよ。あたしが一旦足止めしとくわ」
「いい? 森野に攻撃された時は腕輪使うのよ!」
卓越した射撃を披露した少女は、二丁拳銃をクルクルと手で回しながらその言葉で鉄生の背中を押した。向こうから救援で同じような格好をした連中が群がって集まってくるのが見える。
イリアの言葉を受けると途端に我に返り、後ろを振り向かず、囲まれる前に全力で走って、目の前にあるタワーへと足を踏み入れる。
エントランスは高い天井に二階から見下ろせる構図となっていた。二階へと続くエスカレーターが正面、左右と三本伸びていて、奥にはエレベーターの扉が見える。
風の通る音しか聞こえない不気味な静寂。誰も人がいる気配がしない。
止まっているエスカレーターを上がり、奥にあるエレベーターのボタンを恐る恐る押す――。
――森野はこの最上階の屋上にいる。車の中でイリアから聞いた。それだけじゃない――。
『それ、両腕に絶対に着けたままでいて。森野の篭手に対抗出来るから。あと――ごく普通の人間相手ならば、そのチカラで簡単に倒すことが出来るわ』
『簡単にって、もしかして森野と同じように――』
『そう。その腕輪は精神を異能に変換し、その手に宿らせる。異能に対抗出来るのは異能のチカラだけよ』
イリアからもらった腕輪――精神が高揚して、正式な名前を訊くのをつい忘れたがこの白銀の腕輪、照明の光を受けて金色のフチの部分がよく光って見えた。
白い光を浴びたそれは金色が怪しく、つけているこちらをギラギラと誘っている。
『森野の持つ篭手は最新作よ。だからあたしも潜入していてどんなチカラか見たことはない』
森野の持つ異能が具体的にどういうものか。その異能を目の当たりにする時、この腕輪の真価が発揮される時なのだろう。
『最新? ということはそれまでの旧作があるのか?』
『勿論。これまでの研究の積み重ねで生まれた産物よ。原料となる特殊な原石を生成する研究でね』
異能が宿りし武器を製造するには、それを構成するための原石が必要で、開発者はその研究から人工的に作り出した原石をもとに一つの手型の武器を構築した。
最新の研究を取り入れて生まれた魔の産物。対するこの腕輪は人工原石より前から存在するいわば旧作だ。
しかし、旧作とはいえ今更投げ捨てて挑むのは愚策だ。ナイフや銃を持った相手に、一般人が素手で立ち向かうのに等しい。
たとえ戦闘力が無くても、同等かそれに近い武器を持つのが一番の有効策となる。実際に戦いに身を置くイリアはそれが分かっていた。
もしも、腕輪を使ってもダメだったとしたら――――覚悟を決めなければならない。
逃げればこの先、生き残ったとしてもずっと後悔し続けることになる。元の平和な日常にだって帰れはしない。だが、逃げない。
――十四年前の決着をつけるために。やっちまったあの時の失敗を取り返すために――この手で森野と決着をつける。
エレベーターのランプが30より一つ上の『R』に到達すると光が差し込み、決戦の舞台への扉は開かれた――。
約二時間ほどの遠乗りを経て、目の前に全30階の高層ビル――エメラルドタワーがそびえ立つ場所で車を降りる。
降りるや否や、いきなり横からミット帽にタンクトップ姿のガラの悪い男が荒々しく突っかかってくる。後ろには手下なのか仲間なのか、四人似たような野郎を連れている。
「なんだ? こっちは会いたい奴がいるんだ。そこをどけ」
まるで行く手を阻むように進路を妨害する、突如現れたガラの悪い男たち。冬場なのにコートも着ないでその筋骨隆々な姿。そしてこちらを見て冷笑する。
さしづめ、ギャングといった所か。
「そうはいかねえなあ。てめえをぶっ殺せば円川組から懸賞金一千万出るんだ。大人しく倒され――」
もう喋るな――そう言わんとばかりの突如、言葉をかき消した頬に直撃する一発の鉄拳。その内の信念と強さを原動力とし、白い気を纏った豪腕。
銀歯が飛び出し、白目を向いて大の字でレンガの床に倒れる様はその威力と痛感さをまざまざと見せつける――。
それを食らわせた当人も目を丸くし、一瞬何が起こったのか分からなかった。
「うわああああ!? コイツ、バケモンかよ!!」
「怯むな、銃だ!! 早くコイツぶっ殺せ!!」
慌てふためいた一人がそう叫ぶと四人一斉に銃口を向けた――直後、銃を握った手から次々と火花が散り、銃は弾かれて床に落ちる。
一人目がそうなると、もう何が起こったのか分からないギャングどもは鉄生から視線を逸らして目を丸くするばかりで一人、すぐまた一人と持っている銃を落とされる。
「向こうから呼びつけておいて、随分手荒い出迎えだな」
来る前から覚悟してはいたが、もう既にここは敵の根城。
「鉄生、悪いけど先に行って!! こいつらカネに目が眩んだ奴らよ。あたしが一旦足止めしとくわ」
「いい? 森野に攻撃された時は腕輪使うのよ!」
卓越した射撃を披露した少女は、二丁拳銃をクルクルと手で回しながらその言葉で鉄生の背中を押した。向こうから救援で同じような格好をした連中が群がって集まってくるのが見える。
イリアの言葉を受けると途端に我に返り、後ろを振り向かず、囲まれる前に全力で走って、目の前にあるタワーへと足を踏み入れる。
エントランスは高い天井に二階から見下ろせる構図となっていた。二階へと続くエスカレーターが正面、左右と三本伸びていて、奥にはエレベーターの扉が見える。
風の通る音しか聞こえない不気味な静寂。誰も人がいる気配がしない。
止まっているエスカレーターを上がり、奥にあるエレベーターのボタンを恐る恐る押す――。
――森野はこの最上階の屋上にいる。車の中でイリアから聞いた。それだけじゃない――。
『それ、両腕に絶対に着けたままでいて。森野の篭手に対抗出来るから。あと――ごく普通の人間相手ならば、そのチカラで簡単に倒すことが出来るわ』
『簡単にって、もしかして森野と同じように――』
『そう。その腕輪は精神を異能に変換し、その手に宿らせる。異能に対抗出来るのは異能のチカラだけよ』
イリアからもらった腕輪――精神が高揚して、正式な名前を訊くのをつい忘れたがこの白銀の腕輪、照明の光を受けて金色のフチの部分がよく光って見えた。
白い光を浴びたそれは金色が怪しく、つけているこちらをギラギラと誘っている。
『森野の持つ篭手は最新作よ。だからあたしも潜入していてどんなチカラか見たことはない』
森野の持つ異能が具体的にどういうものか。その異能を目の当たりにする時、この腕輪の真価が発揮される時なのだろう。
『最新? ということはそれまでの旧作があるのか?』
『勿論。これまでの研究の積み重ねで生まれた産物よ。原料となる特殊な原石を生成する研究でね』
異能が宿りし武器を製造するには、それを構成するための原石が必要で、開発者はその研究から人工的に作り出した原石をもとに一つの手型の武器を構築した。
最新の研究を取り入れて生まれた魔の産物。対するこの腕輪は人工原石より前から存在するいわば旧作だ。
しかし、旧作とはいえ今更投げ捨てて挑むのは愚策だ。ナイフや銃を持った相手に、一般人が素手で立ち向かうのに等しい。
たとえ戦闘力が無くても、同等かそれに近い武器を持つのが一番の有効策となる。実際に戦いに身を置くイリアはそれが分かっていた。
もしも、腕輪を使ってもダメだったとしたら――――覚悟を決めなければならない。
逃げればこの先、生き残ったとしてもずっと後悔し続けることになる。元の平和な日常にだって帰れはしない。だが、逃げない。
――十四年前の決着をつけるために。やっちまったあの時の失敗を取り返すために――この手で森野と決着をつける。
エレベーターのランプが30より一つ上の『R』に到達すると光が差し込み、決戦の舞台への扉は開かれた――。
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