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2 告白

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夏休みが終わって新学期が始まった。
 結局あのコンビニにあれ以来彼女は来なかった。
 「はぁー。」と俺はため息をついた。
「お、どうした?らしくもないため息なんかついて。」
 俺にしゃべりかけてきたのは同じクラスであり、小学生からの親友の浅間友宏だ。勉強も運動能力も自分とほぼ変わらず、しかも気が合うから出会ってからすぐに仲良くなれた。
 今は毎日通っている通学路を歩いて登校している。友宏と話しながら。
「別に。なんでもねぇよ。」
「ゲームのデータが全部消えたとか?」
「そんな事があってたまるか!」
「じゃあ恋でもしたとか?」
「恋…」
 否定は出来ない。俺は見知らぬ女の子に恋をしてしまったのだ。もう自覚済みだ。でもこいつだけにはバレたくないから、
「俺がすると思う?てか、好きな子がいたらとっくにお前に感ずかれてバレてるさ。」
「まぁそうだよな。直也って分かりやすいからなー。」
 なんとか気づかれずにすんだ。
「それ以前にホモだからなー。」
「なぜそうなる!」
 いつもどうりの、何気ない会話をして俺たちは歩いていった。

 4限目まで終わって昼休みになった。
 いつもなら普通に弁当を食べるだけなんだが、今日に限ってそうはいかないらしい。
 朝いつものように自分の机に弁当が置いてあると思って見たら、英世がそこにいた。
 つまりはこれで昼飯を買えって言っているようなものだ。そして購買戦争に参加しなければならない。
 一気に廊下を駆け抜け、ダッシュで購買来た。一応授業が終わってすぐにきたつもりでいたがすでに行列が出来ていた。
 これだと昼飯が買えるかどうか分からない。最悪の場合無しになってしまう。
 それだけは嫌だ。
 不安そうにしながらも大人しく行列に並んでいると女子達の声が耳に入ってきた。
「今日はメロンパン買っちゃった♪」
「甘いものを食べ過ぎると太っちゃうよー。」
「大丈夫だって。そのときになったらダイエットするから。」
 別に珍しくもないのだが、あまりにも聞き覚えがあったので気になった。
 左に目線をやると普通に女子が会話しているようだ。
 しかし俺はそこで驚愕してしまう。
「え…」
 コンビニのバイトをしていたときに話しかけてきた女の子がいたのだ。そう、初恋をした相手だ。
 俺はとっさに目線を反らし、気づかれないようにした。もちろん相手は自分のことを覚えてないかもしれないが、もしものことを考えての行動だ。
 彼女は一瞬チラッと見たが、そのままどっかに行った。
「ふぅ…」
 安心した。それもいろんな意味でだ。ひとつは気づかれなかったこと。そしてもうひとつは彼女がここに通っているという事実を知ったうえでまだ可能性があると確信できたからだ。
 俺は彼女のクラスを調べることにした。

 あれから約6か月たった。未だに進展はない。 いくつか告白する方法を考えてみたけど、全部実行することができなかった。
 今は春休みに入って、もうすぐで二年生になってしまう。その前に関係を作りたかったが、諦めるしかなさそうだ。
 彼女の名前は小峠春菜でとなりのC組(自分はB)だということは分かった。そしてそれっきりだ。本当に何も進展してないのだ。
 俺は今は自分の部屋でゴロゴロしながらゲームして暇潰しをしている。
「あ、くそっ…」
 ちょうど負けてしまったのでゲームをやめることにした。
「はぁー…」
 進級したらラブレターで誘って校舎裏で告ってみるかー。
 だらだらと春休みを過ごし、俺は進級した。

「俺と付き合ってください!」
 まさか適当に思い付いたシチュエーションを実行するとは思ってなかった。
 彼女の下駄箱にラブレターを入れて、放課後になったら校舎裏でずっと待機する。そして彼女が来たら思いきって告白。
 やったぞ。本当にやったぞ。勇者だ、俺。
 でも、なぜか俺には自信というものが全くなかった。そう最初から諦めていたのだ。
 俺みたいなオタク(自称)が普通の女の子と付き合える自信がない。でも思いだけは伝えたかったので告ったのだ。
 もう悔いはない。全てやりきったのだ。さっさと振られてこの場を立ち去りたい。
 しかし、俺の予想を遥かに上回った返事が返ってきた。
「別にいいですよ。あなたみたいな優しい人なら。」
「え…」
 今いいって言ったのか?それとも聞き間違いか?
 よく聞き取れなかったから俺は確認した。
「本当にいいの?」
「はい。」
 彼女は嬉しかったのか頬を赤らめている。しかも微笑んでいる。
 嬉しい。嬉しすぎて体の震えが止まらない。まさか俺みたいなやつと付き合ってくれるなんて思わなかったから。
「確か球磨直也さん、でしたよね?コンビニのバイトをしていた。」
「そ、そうです。」
 このときはまだ彼女の本性を知らなかった。
 俺はこの女に恋をしたことに本気で後悔したのだ。
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