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三章R:汝、剣を振るえ
十二話:鉄拳を食らえ
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「ふふふふ~! 引っかかった~!!」
「ぐ……あぁっ!」
私はなるべく傷が開かないように遠い右足でどうにか飛び退いた。一体……何が?ツメクの手が光ったと思ったら、私の左胸と肩が貫かれていた。長さは控えめ……と言っても私の体を貫通して地面に付かない程度。下手に抜かない方が身のためだろう。
そのまま私はツメクの方を見据えた。
「はぁ……はぁ……」
胸に刺さった槍のせいで息が深く吸えない。吸う時に痛みはあるが、刺さった時と比べたら大したことではない。問題は左肩。筋かどこかが切れてしまったようで、左手に力が入らない。不幸中の幸いだが、槍が刺さったままなので大量出血は回避出来た。
おそらくヒールをカノコさんにかけてもらえば、無傷同然になるはず。
私は後方をチラリと見た。
あとは……何とかするだけだ!
そんな私の様子を、ツメクは食い入るように見ていた。その場に立ち止まって、目を輝かせている。
「すっご~い! みんなこれくらいで死んじゃうのに! やっぱりこの勇者さんタフネスね!」
「急所から外れてたからね。 この位の怪我で倒れてなんか居られないよ」
「ふふふ……ふふふふ~!!」
ツメクは小刻みに飛び跳ねて、子供のようにはしゃいだ。両手で口をおおっているが、それですら隠しきれないほど口角は鋭くつり上がっている。
「……何がそんなにおかしい?」
「アナタなら……『本気』出していいかなって~!! 興奮してきちゃったの~!!!!」
そう言って左腕をもう一度掲げた。また鈍く赤黒く輝く。
「私のこの力は魔術の力の応用なの~! 私の血を触媒に色んなものを呼び出せるの~! さっきは槍だったけど、次はね~……これ!」
そう言って、パチンと指を弾く。すると、ツメクの左腕だけが単体の生き物であるかのように蠢いた。右に、左に、まるでウジ虫のように。そして、ツメクの腕から無数の針が飛び出した。まるきり同じ向きに、キノコのように生える。一本一本がエストック並に鋭く、太い。
体内に流れる血でも、内出血などをして出血している血なら使えるようだ。
針の山が束ねられ、ツメクの腕は一本の杭のようになった。
「これだけじゃないけど……まず様子見ね!」
そう言って、真っ直ぐ突っ込んできた!
「ぐうっ!!」
──重い!純粋に片腕の筋力だけでしか受けられないとはいえ、先程とは比にならない手応えだ!その上殺傷能力があまりに高い。まともに刺さったらさすがに即死するだろう。
「まだまだ~!」
次の瞬間、地面から次々に剣が生えてきた。 それも至る所からだ。おそらく、蹴飛ばした時に飛び散った血のせいだろう。辺りを見回したが、血が付着した草を探そうにもこの闇の中では分からない。
ツメクは傍観しながら微笑んでいる。それが一層私を怒らせた。そして一歩、右足を下げた時だ。
「あ~……そこ……ビンゴ!」
ツメクが指を鳴らした。
「──っっ!? ぐぁぁっ!!」
そのうち一本が、私の右足を貫いた。剣は地面にすっかり固定されているし、深々と刺さっている以上ツメクの攻撃を避けながら、引き抜くことも難しい。このままでは動けない……!ツメクは私が焦る様を満面の笑みで見ていた。
「あらあら~? 骨がある勇者だと思ってたのに~意外とあっさりしてたわね。まあいいわ~ご馳走に早くありつけたんですもの!」
そう言って、俺の首を掴んで持ち上げた。かろうじて動く右腕でツメクの腕を掴むが、ビクともしない。俺に出来ることは、もう何も残されていなかった。
「ぐうっ……!」
「いただきますね~! 勇者さんの肉、強かったですしきっと美味しいですよね!! あ~!……」
ツメクは口を大きく開けて、持ち上げた私の横の方から食べるつもりのようで、首を傾げて右の腕に狙いを定めてきた。さらに、ツメクが口を開くと白く鋭い三角形の牙がびっしりと生えていた。その口の中らヨダレが糸を引いている。
私はまたしても、後ろを見た。
「そうだ、ツメク。たまには上も見た方がいいよ」
「え? 上? 上に何か……ってえぇ!?」
私たちの頭上、本来なら星が輝くそこに光の手があった。手は固く強く握られ、落ちるその時を待っている。
「一体……どうして!?」
混乱して目を回すツメクが、そう口走るとほぼ同時。
「──『鉄拳』!!!」
ステラの一言ともに、拳は振り下ろされた。
私がツメクと戦う直前、ステラに耳打ちしていたのは、後方で魔術の詠唱をしてもらうためだ。あの時、ゴブリンたちに与えた一撃は不完全なもの。時間さえあればステラはやってくれると信じてこの作戦にかけたのだ。
そして戦ってみると、いくら切っても再生する特性。一発でかつ物理以外の攻撃を当てて見るとどうなるか試してみたかったのだが……。
「ぐえっ!」
私は背中から倒れた。というより落っこちた。首にツメクの手首だけが残り、拳に触れた全ての部位は消滅してしまったようだ。効果は抜群だったようだ。
「り、リンさぁん! ご無事ですかぁ!?」
私の方に走ってきたステラは、元気そうにそう言った。安堵感で勝手にまぶたが下がってくる。もう……疲れたな……。
意識を手放す直前、
『これで終わったと思わないでくださいね~?』
そんなことを言うツメクの声が聞こえた。
「ぐ……あぁっ!」
私はなるべく傷が開かないように遠い右足でどうにか飛び退いた。一体……何が?ツメクの手が光ったと思ったら、私の左胸と肩が貫かれていた。長さは控えめ……と言っても私の体を貫通して地面に付かない程度。下手に抜かない方が身のためだろう。
そのまま私はツメクの方を見据えた。
「はぁ……はぁ……」
胸に刺さった槍のせいで息が深く吸えない。吸う時に痛みはあるが、刺さった時と比べたら大したことではない。問題は左肩。筋かどこかが切れてしまったようで、左手に力が入らない。不幸中の幸いだが、槍が刺さったままなので大量出血は回避出来た。
おそらくヒールをカノコさんにかけてもらえば、無傷同然になるはず。
私は後方をチラリと見た。
あとは……何とかするだけだ!
そんな私の様子を、ツメクは食い入るように見ていた。その場に立ち止まって、目を輝かせている。
「すっご~い! みんなこれくらいで死んじゃうのに! やっぱりこの勇者さんタフネスね!」
「急所から外れてたからね。 この位の怪我で倒れてなんか居られないよ」
「ふふふ……ふふふふ~!!」
ツメクは小刻みに飛び跳ねて、子供のようにはしゃいだ。両手で口をおおっているが、それですら隠しきれないほど口角は鋭くつり上がっている。
「……何がそんなにおかしい?」
「アナタなら……『本気』出していいかなって~!! 興奮してきちゃったの~!!!!」
そう言って左腕をもう一度掲げた。また鈍く赤黒く輝く。
「私のこの力は魔術の力の応用なの~! 私の血を触媒に色んなものを呼び出せるの~! さっきは槍だったけど、次はね~……これ!」
そう言って、パチンと指を弾く。すると、ツメクの左腕だけが単体の生き物であるかのように蠢いた。右に、左に、まるでウジ虫のように。そして、ツメクの腕から無数の針が飛び出した。まるきり同じ向きに、キノコのように生える。一本一本がエストック並に鋭く、太い。
体内に流れる血でも、内出血などをして出血している血なら使えるようだ。
針の山が束ねられ、ツメクの腕は一本の杭のようになった。
「これだけじゃないけど……まず様子見ね!」
そう言って、真っ直ぐ突っ込んできた!
「ぐうっ!!」
──重い!純粋に片腕の筋力だけでしか受けられないとはいえ、先程とは比にならない手応えだ!その上殺傷能力があまりに高い。まともに刺さったらさすがに即死するだろう。
「まだまだ~!」
次の瞬間、地面から次々に剣が生えてきた。 それも至る所からだ。おそらく、蹴飛ばした時に飛び散った血のせいだろう。辺りを見回したが、血が付着した草を探そうにもこの闇の中では分からない。
ツメクは傍観しながら微笑んでいる。それが一層私を怒らせた。そして一歩、右足を下げた時だ。
「あ~……そこ……ビンゴ!」
ツメクが指を鳴らした。
「──っっ!? ぐぁぁっ!!」
そのうち一本が、私の右足を貫いた。剣は地面にすっかり固定されているし、深々と刺さっている以上ツメクの攻撃を避けながら、引き抜くことも難しい。このままでは動けない……!ツメクは私が焦る様を満面の笑みで見ていた。
「あらあら~? 骨がある勇者だと思ってたのに~意外とあっさりしてたわね。まあいいわ~ご馳走に早くありつけたんですもの!」
そう言って、俺の首を掴んで持ち上げた。かろうじて動く右腕でツメクの腕を掴むが、ビクともしない。俺に出来ることは、もう何も残されていなかった。
「ぐうっ……!」
「いただきますね~! 勇者さんの肉、強かったですしきっと美味しいですよね!! あ~!……」
ツメクは口を大きく開けて、持ち上げた私の横の方から食べるつもりのようで、首を傾げて右の腕に狙いを定めてきた。さらに、ツメクが口を開くと白く鋭い三角形の牙がびっしりと生えていた。その口の中らヨダレが糸を引いている。
私はまたしても、後ろを見た。
「そうだ、ツメク。たまには上も見た方がいいよ」
「え? 上? 上に何か……ってえぇ!?」
私たちの頭上、本来なら星が輝くそこに光の手があった。手は固く強く握られ、落ちるその時を待っている。
「一体……どうして!?」
混乱して目を回すツメクが、そう口走るとほぼ同時。
「──『鉄拳』!!!」
ステラの一言ともに、拳は振り下ろされた。
私がツメクと戦う直前、ステラに耳打ちしていたのは、後方で魔術の詠唱をしてもらうためだ。あの時、ゴブリンたちに与えた一撃は不完全なもの。時間さえあればステラはやってくれると信じてこの作戦にかけたのだ。
そして戦ってみると、いくら切っても再生する特性。一発でかつ物理以外の攻撃を当てて見るとどうなるか試してみたかったのだが……。
「ぐえっ!」
私は背中から倒れた。というより落っこちた。首にツメクの手首だけが残り、拳に触れた全ての部位は消滅してしまったようだ。効果は抜群だったようだ。
「り、リンさぁん! ご無事ですかぁ!?」
私の方に走ってきたステラは、元気そうにそう言った。安堵感で勝手にまぶたが下がってくる。もう……疲れたな……。
意識を手放す直前、
『これで終わったと思わないでくださいね~?』
そんなことを言うツメクの声が聞こえた。
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