7 / 90
一章L:賢者ローレルは追う
三話:切れる女
しおりを挟む
王城、謁見の間。そこに王の腹心が集められた。
まずは王の側近。実は俺に次いで王に賄賂を贈っている廃課金者だったりする。何やら難しい顔で眉間をつまみ上げている。また金のことでも考えているのだろう。
その隣、背丈に見合わない大層な帽子を被って居る女は、ここらの教会の修道司祭。さっきからぷりぷり怒って膨れているし、こちらを睨んでいる。キレまくるナイフである。
こいつは司教に殴り込みして、修道女も修道司祭になれるように戒律を改めさせた。信念はまともだが、アプローチ方法は乱世。俺とは正反対で水と油みたいな立ち位置だ。
とりあえず先程からの熱視線に笑顔で手を振ると、奴はぷいっとそっぽを向いて腕を組んだ。
あぁ……めんどくさい……。
そいつの隣に俺こと外交官兼、騎士団の副長。副長と言っても形だけだが。
その他財政大臣だの重役たちは、一応集まってはいるが難しい顔で居眠りしている。せめて考えてるふりでもしてくれていた方がありがたいのだが。
そしてそれを束ねる王。まだ若く、俺より少し上くらいだ。だいぶ太っているので年齢不詳ではあるが。
欠員だらけの会議は、とりあえず始まった。王が手を叩いて注目を集める。
「今日集まってもらったのは他でもない。 勇者リンが失踪した」
「つまりは、リンが裏切ったと?」
「えぇ……そうですねローレル。そしてあなたの人選ミスです」
俺の質問に、叱責で修道司祭は答えた。そして俺を睨む。切れ長の目は鋭さを増し、その辺のテーブルくらいなら容易く刻めそうだった。
冗談はさておき、修道司祭は続ける。
「アナタには聞きたいことが山ほどあるんです!いいですか!?
まず、なぜリンさんっていう立場のある人をわざわざ勇者にさせたんです!?これはアナタが後釜を狙うための企てじゃ無いんですか!?
それと、アナタには王への贈賄容疑がかかっていてですね!」
うわあ凄い剣幕……そしてそれのほとんどに、心当たりしか無い。なんならリンを何度か殺そうとしているし、なんなら余罪はさらにあるだろう。そんなことを万一にでも言えば本当に拳が飛んできそうだが。
「アナタがたはこのまま政治をやっていていいと思っているので「静粛に」
そんな彼女も王に制された。
「ですが!……ぐうっ!」
修道司祭は言葉を噛み殺した。相当イライラしているようでテーブルの端に乱暴に拳を振り下ろす。ズシンと重いものが落ちたような音がした。隣を覗くと、大理石の分厚いテーブルが拳の形に凹んでいる。怖い。
「確かにそれはそうだが、今話すべきはリンの処遇だ。 奴は本当に、実はやむを得ない事情があったのか。それを解き明かすことは大前提である。
また勇者として、騎士団長として、その任から逃れた罪はどう問うべきかを決めねばならん 」
「左様ですか」
「ですが王!」
修道司祭は王の話に割って入る。怖いもの無しかこいつ。
「……リンがなぜ裏切ったか、その動機が私には分かりません! やはり状況証拠から見てもローレルが何かしら一枚噛んでいると考えた方が……!「失礼いたします!」
「……チッ」
司祭がそこまで言ったところで、謁見の間の扉が開いた。出てきたのは兵士。またも走ってきたらしく、息は絶え絶えだ。
「お話の途中申し訳ございません! れ、連絡を……!」
兵士は会議の輪から少し遠くのところで力の限り叫んだ。
「なんだ?申してみよ」
側近がそう言うと、兵士は懐から紙片を取り出す。赤い封蝋がされた封筒だ。
そして紙片を側近に手渡すと、ガチャガチャと音を立てて俺の方に走ってきた。
「ローレルさん、一度私とご同行願いたいのですが!」
「なんですか……今少し忙しいのですが」
「……リンさんの実家で……不審な死体が発見されましたので……捜査にご協力ください」
「なんですって?」
まずは王の側近。実は俺に次いで王に賄賂を贈っている廃課金者だったりする。何やら難しい顔で眉間をつまみ上げている。また金のことでも考えているのだろう。
その隣、背丈に見合わない大層な帽子を被って居る女は、ここらの教会の修道司祭。さっきからぷりぷり怒って膨れているし、こちらを睨んでいる。キレまくるナイフである。
こいつは司教に殴り込みして、修道女も修道司祭になれるように戒律を改めさせた。信念はまともだが、アプローチ方法は乱世。俺とは正反対で水と油みたいな立ち位置だ。
とりあえず先程からの熱視線に笑顔で手を振ると、奴はぷいっとそっぽを向いて腕を組んだ。
あぁ……めんどくさい……。
そいつの隣に俺こと外交官兼、騎士団の副長。副長と言っても形だけだが。
その他財政大臣だの重役たちは、一応集まってはいるが難しい顔で居眠りしている。せめて考えてるふりでもしてくれていた方がありがたいのだが。
そしてそれを束ねる王。まだ若く、俺より少し上くらいだ。だいぶ太っているので年齢不詳ではあるが。
欠員だらけの会議は、とりあえず始まった。王が手を叩いて注目を集める。
「今日集まってもらったのは他でもない。 勇者リンが失踪した」
「つまりは、リンが裏切ったと?」
「えぇ……そうですねローレル。そしてあなたの人選ミスです」
俺の質問に、叱責で修道司祭は答えた。そして俺を睨む。切れ長の目は鋭さを増し、その辺のテーブルくらいなら容易く刻めそうだった。
冗談はさておき、修道司祭は続ける。
「アナタには聞きたいことが山ほどあるんです!いいですか!?
まず、なぜリンさんっていう立場のある人をわざわざ勇者にさせたんです!?これはアナタが後釜を狙うための企てじゃ無いんですか!?
それと、アナタには王への贈賄容疑がかかっていてですね!」
うわあ凄い剣幕……そしてそれのほとんどに、心当たりしか無い。なんならリンを何度か殺そうとしているし、なんなら余罪はさらにあるだろう。そんなことを万一にでも言えば本当に拳が飛んできそうだが。
「アナタがたはこのまま政治をやっていていいと思っているので「静粛に」
そんな彼女も王に制された。
「ですが!……ぐうっ!」
修道司祭は言葉を噛み殺した。相当イライラしているようでテーブルの端に乱暴に拳を振り下ろす。ズシンと重いものが落ちたような音がした。隣を覗くと、大理石の分厚いテーブルが拳の形に凹んでいる。怖い。
「確かにそれはそうだが、今話すべきはリンの処遇だ。 奴は本当に、実はやむを得ない事情があったのか。それを解き明かすことは大前提である。
また勇者として、騎士団長として、その任から逃れた罪はどう問うべきかを決めねばならん 」
「左様ですか」
「ですが王!」
修道司祭は王の話に割って入る。怖いもの無しかこいつ。
「……リンがなぜ裏切ったか、その動機が私には分かりません! やはり状況証拠から見てもローレルが何かしら一枚噛んでいると考えた方が……!「失礼いたします!」
「……チッ」
司祭がそこまで言ったところで、謁見の間の扉が開いた。出てきたのは兵士。またも走ってきたらしく、息は絶え絶えだ。
「お話の途中申し訳ございません! れ、連絡を……!」
兵士は会議の輪から少し遠くのところで力の限り叫んだ。
「なんだ?申してみよ」
側近がそう言うと、兵士は懐から紙片を取り出す。赤い封蝋がされた封筒だ。
そして紙片を側近に手渡すと、ガチャガチャと音を立てて俺の方に走ってきた。
「ローレルさん、一度私とご同行願いたいのですが!」
「なんですか……今少し忙しいのですが」
「……リンさんの実家で……不審な死体が発見されましたので……捜査にご協力ください」
「なんですって?」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

転生勇者の三軒隣んちの俺
@aozora
ファンタジー
ある日幼馴染のエミリーと遊んでいる時に木の枝から落ちて気を失ったジェイク。目を覚ました時、彼は自分が転生したと言う事を自覚する。ここはRPGファンタジーゲーム”ソードオブファンタジー”の世界、そして俺はオーランド王国の勇者、”赤髪のジェイク”。あのゲームで主人公は国王からの依頼で冒険の旅に旅立ったはず。ならばそれまでにゲーム開始時以上の力を手に入れれば。滾る想い、燃え上がる野心。少年は俺Tueeeをすべく行動を開始するのだった。
で、そんな様子を見て”うわ、まさにリアル中二病、マジかよ。”とか考える男が一人。
これはそんな二人が関わったり関わらなかったりする物語である。
この作品はカクヨム様、ノベルピア様、小説になろう様でも掲載させて頂いております。
よろしくお願いします。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる