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第百七十五話
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突然、なにか棒のようなもので乱暴につっつかれた。
「おい、仔ブタが目を覚ましてるぜ」
そう言って奈々実を覗き込んだのは、もう、見るからに悪人です、と顔に書いてあるような、髭づらの男。まるで毒虫とか毒蛇にそうするように、棒の先端で奈々実の頬をぐりぐりと突いて、いやらしい笑みを浮かべる。
「ゴールド・スターがあるくせに、魔力をちょびっとしか使えねえんだってなあ。お前の飼い主は腕が悪いんだな。俺がしっかり調教してやるよ。こんな仔ブタみたいなガキは好みじゃねえんだけどな」
全身に痛いほどの鳥肌がたつ。この男は奈々実に、あっちの二人がグレースにしていることをするつもりなのだ。でも、棒きれでつっついてはくるけれど、素手で触ろうとはしない。
―――どうしよう・・・、怖い、セヴラン様、助けて・・・―――
セヴランは確か言っていた。レイプなどの暴力をうけると魔力回路が損傷して、魔力が使えなくなってしまう場合があると。だからオレが護る、と言ってくれたのに、今ここにセヴランはいなくて、護衛のはずのグレースは汚い男達に凌辱されている。奈々実の首にしてあったのは第三段階のチョーカーだったはずなのに、今はイネスに与えられたのではない、汚い古い首輪をされている。チョーカーだったら青か、必死になれば緑色くらいの魔力は使えたかもしれない。けれど、攻撃のやり方は全然わからないし、やってはいけないことだと、セヴランやイネスに強く言われている。百歩譲ってこの男達を全員撃退することができて、酷いやり方でレイプされているグレースを助けることができたとしても、ここがどこなのか、どうすればいいのか、全然わからない。そして現実には、古くて汚くて自分のものではない首輪でも、魔力封じの首輪をされているということは、今の奈々実は魔力は使えない、なにもできない、ということだ。
「おい、その仔ブタの縄を解くなよ。・・・うっ、縛り上げるのにどれだけ苦労したか、あっ、わかるか? ちょっと手が触れるだけで、はっ、・・・魚みたいに跳ねやがって、雷でも落ちたかみたいにこっちの手がビリビリしやがるんだ。・・・うっ、なんなんだ?」
グレースを凌辱している年配のほうの男が息を切らしながら髭づらの男に言う。奈々実は思い当たる節があった。
エルネストが空飛ぶお盆を作って、セヴランが王宮に行ってる間、その空飛ぶお盆の試乗会みたいなことの手伝いをやらされたあと、確か泣いているユベールをおちつかせようと肩に触れたら感電したみたいな痛みがして、エルネストに、セヴランに繋留されているんだからセヴラン以外の男性に触れたら駄目、とか言われた記憶がぼんやりとよみがえった。でもあの時、電流みたいな痛みがあったのは奈々実だけで、ユベールはなんともなかったように覚えている。この世界には、電気とか電流についての知識が無く、ビリビリしたことを感電したような、とする概念は無いらしい。雷、落雷はあるようだが、本当に雷が落ちたら『ビリビリした』程度じゃ済まないじゃん、と奈々実は思った。
「そりゃあ仕方がないだろう。この仔ブタには飼い主がいるんだ。飼い主を殺さなきゃあ、この仔ブタに触るのは危険だし、魔力を借りることはできねえんだよ」
髭づらの男はじゃらりと重そうな鎖を取り出す。それを見て奈々実は悲鳴を上げそうになった。身体中の血が一瞬で凍り付く。
「おい、仔ブタが目を覚ましてるぜ」
そう言って奈々実を覗き込んだのは、もう、見るからに悪人です、と顔に書いてあるような、髭づらの男。まるで毒虫とか毒蛇にそうするように、棒の先端で奈々実の頬をぐりぐりと突いて、いやらしい笑みを浮かべる。
「ゴールド・スターがあるくせに、魔力をちょびっとしか使えねえんだってなあ。お前の飼い主は腕が悪いんだな。俺がしっかり調教してやるよ。こんな仔ブタみたいなガキは好みじゃねえんだけどな」
全身に痛いほどの鳥肌がたつ。この男は奈々実に、あっちの二人がグレースにしていることをするつもりなのだ。でも、棒きれでつっついてはくるけれど、素手で触ろうとはしない。
―――どうしよう・・・、怖い、セヴラン様、助けて・・・―――
セヴランは確か言っていた。レイプなどの暴力をうけると魔力回路が損傷して、魔力が使えなくなってしまう場合があると。だからオレが護る、と言ってくれたのに、今ここにセヴランはいなくて、護衛のはずのグレースは汚い男達に凌辱されている。奈々実の首にしてあったのは第三段階のチョーカーだったはずなのに、今はイネスに与えられたのではない、汚い古い首輪をされている。チョーカーだったら青か、必死になれば緑色くらいの魔力は使えたかもしれない。けれど、攻撃のやり方は全然わからないし、やってはいけないことだと、セヴランやイネスに強く言われている。百歩譲ってこの男達を全員撃退することができて、酷いやり方でレイプされているグレースを助けることができたとしても、ここがどこなのか、どうすればいいのか、全然わからない。そして現実には、古くて汚くて自分のものではない首輪でも、魔力封じの首輪をされているということは、今の奈々実は魔力は使えない、なにもできない、ということだ。
「おい、その仔ブタの縄を解くなよ。・・・うっ、縛り上げるのにどれだけ苦労したか、あっ、わかるか? ちょっと手が触れるだけで、はっ、・・・魚みたいに跳ねやがって、雷でも落ちたかみたいにこっちの手がビリビリしやがるんだ。・・・うっ、なんなんだ?」
グレースを凌辱している年配のほうの男が息を切らしながら髭づらの男に言う。奈々実は思い当たる節があった。
エルネストが空飛ぶお盆を作って、セヴランが王宮に行ってる間、その空飛ぶお盆の試乗会みたいなことの手伝いをやらされたあと、確か泣いているユベールをおちつかせようと肩に触れたら感電したみたいな痛みがして、エルネストに、セヴランに繋留されているんだからセヴラン以外の男性に触れたら駄目、とか言われた記憶がぼんやりとよみがえった。でもあの時、電流みたいな痛みがあったのは奈々実だけで、ユベールはなんともなかったように覚えている。この世界には、電気とか電流についての知識が無く、ビリビリしたことを感電したような、とする概念は無いらしい。雷、落雷はあるようだが、本当に雷が落ちたら『ビリビリした』程度じゃ済まないじゃん、と奈々実は思った。
「そりゃあ仕方がないだろう。この仔ブタには飼い主がいるんだ。飼い主を殺さなきゃあ、この仔ブタに触るのは危険だし、魔力を借りることはできねえんだよ」
髭づらの男はじゃらりと重そうな鎖を取り出す。それを見て奈々実は悲鳴を上げそうになった。身体中の血が一瞬で凍り付く。
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