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第百五十九話
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「ナナミ、貴女、わたしと一緒に住む気はない?」
リディアーヌ王女の御前から退出し、王宮の長い廊下を歩いている途中でいきなりモニークに言われて、奈々実は戸惑った。
「モニーク様のお屋敷に住め、ということですか?」
「リディアーヌ殿下に賜ったお仕事もあるし、何度も主都まで通ってくるのは大変でしょう?」
確かに、主都までは馬車で三時間かかるわけだから、あまり何度も通うのは、移動にかかる時間がもったいない。
「イネス様とセヴラン様にうかがってみないと、どうすればいいのかわからないのですが・・・」
まだ未成年である奈々実は、自分で勝手に住居を変えることはできない。便宜上、イネスが身元引受人になっているし、セヴランに繋留されている以上、奈々実はセヴランのものだ。
王宮からモニークの屋敷までは、大した距離ではない。結婚はしたけれど夫婦生活が破綻しているモニークは、リディアーヌが長である魔力研究所の実質的な責任者であり、研究所に隣接する瀟洒な屋敷に一人で暮らしている。住み込みのソフィの他に何人かの通いの侍女がいるが、執事とか下男がいないので、なんだか修道院のような清冽な雰囲気が、建物の中には満ちている。
イネスが戻ってくるまでまだ時間がかかるらしいので、応接室に二人で向かい合ってお茶を挟んで座ると、モニークは人払いをした。
「セヴラン様がナナミを大切にしていることはわかっています。セヴラン様は、高潔なお人柄ですから信頼しております。でも、ひょんなことで箍が外れて、殿方の本能が暴走しないとも限りません」
それはつまり、セヴランが奈々実に対して理性が吹き飛んでケダモノになってしまう可能性がゼロではないということを言っているわけで、他者からそれを言われるのは、とても恥ずかしい。気を遣って人払いをしてくれたのだろうが、真正面から言われるのは、やっぱり恥ずかしい。モニークのような品の良い老婦人に言われると、自分が男性に警戒心の無いフシダラな女であるようで、いたたまれない。
「ひとつ、うかがいたいことがあります」
「・・・はい・・・」
「セヴラン様と、・・・肉体的に結合はされていなくても、イチャイチャというか、破廉恥なスキンシップをしていますね?」
モニークの口からイチャイチャなどという言葉が出てくるのも驚きだが、言われている内容が死ぬほど恥ずかしい。羞恥プレイなんてもんじゃない、拷問レベルに恥ずかしい。真っ赤になった奈々実の身体中から大量の汗が噴き出して、まるでゆでブタのようになった。せっかく、以前にクロエが準備してくれた一張羅のキトンなのに、汗染みができちゃう、脱水症状で干物になる、ブタの干物ってあったっけ? と、頭が違うところへ逃げようとするのを、全力で引き止める。
リディアーヌ王女の御前から退出し、王宮の長い廊下を歩いている途中でいきなりモニークに言われて、奈々実は戸惑った。
「モニーク様のお屋敷に住め、ということですか?」
「リディアーヌ殿下に賜ったお仕事もあるし、何度も主都まで通ってくるのは大変でしょう?」
確かに、主都までは馬車で三時間かかるわけだから、あまり何度も通うのは、移動にかかる時間がもったいない。
「イネス様とセヴラン様にうかがってみないと、どうすればいいのかわからないのですが・・・」
まだ未成年である奈々実は、自分で勝手に住居を変えることはできない。便宜上、イネスが身元引受人になっているし、セヴランに繋留されている以上、奈々実はセヴランのものだ。
王宮からモニークの屋敷までは、大した距離ではない。結婚はしたけれど夫婦生活が破綻しているモニークは、リディアーヌが長である魔力研究所の実質的な責任者であり、研究所に隣接する瀟洒な屋敷に一人で暮らしている。住み込みのソフィの他に何人かの通いの侍女がいるが、執事とか下男がいないので、なんだか修道院のような清冽な雰囲気が、建物の中には満ちている。
イネスが戻ってくるまでまだ時間がかかるらしいので、応接室に二人で向かい合ってお茶を挟んで座ると、モニークは人払いをした。
「セヴラン様がナナミを大切にしていることはわかっています。セヴラン様は、高潔なお人柄ですから信頼しております。でも、ひょんなことで箍が外れて、殿方の本能が暴走しないとも限りません」
それはつまり、セヴランが奈々実に対して理性が吹き飛んでケダモノになってしまう可能性がゼロではないということを言っているわけで、他者からそれを言われるのは、とても恥ずかしい。気を遣って人払いをしてくれたのだろうが、真正面から言われるのは、やっぱり恥ずかしい。モニークのような品の良い老婦人に言われると、自分が男性に警戒心の無いフシダラな女であるようで、いたたまれない。
「ひとつ、うかがいたいことがあります」
「・・・はい・・・」
「セヴラン様と、・・・肉体的に結合はされていなくても、イチャイチャというか、破廉恥なスキンシップをしていますね?」
モニークの口からイチャイチャなどという言葉が出てくるのも驚きだが、言われている内容が死ぬほど恥ずかしい。羞恥プレイなんてもんじゃない、拷問レベルに恥ずかしい。真っ赤になった奈々実の身体中から大量の汗が噴き出して、まるでゆでブタのようになった。せっかく、以前にクロエが準備してくれた一張羅のキトンなのに、汗染みができちゃう、脱水症状で干物になる、ブタの干物ってあったっけ? と、頭が違うところへ逃げようとするのを、全力で引き止める。
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