異世界ダイエット

Shiori

文字の大きさ
上 下
155 / 200

第百五十四話

しおりを挟む
「胴ーッ!! 」

「面ーッ!籠手!! 」

ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。

「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」

うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。


「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」

急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。

「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」

ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。

「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」

見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。

「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」

「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」


「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」

わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。

「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」

三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。

「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」

そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。

「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」

近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。

「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」

「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」

汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。

「永倉様。ご勘弁を。 」

三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。

「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」

「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」

土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。

「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」

「承知。 」

その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。







三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい

穂高稲穂
ファンタジー
旧題:異世界転移して持っていたスマホがチートアイテムだった スマホでラノベを読みながら呟いた何気ない一言が西園寺玲真の人生を一変させた。 そこは夢にまで見た世界。 持っているのはスマホだけ。 そして俺は……デミゴッド!? スマホを中心に俺は異世界を生きていく。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...