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第百四十四話
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風呂で身体を洗いながらも、セヴランの手は休みなく動いて、奈々実の敏感なところを探っていく。
「あ・・・、ん、ああん・・・」
奈々実は自分ではなかなか痩せないと思って悩んでいるが、セヴランの手の感触としては、少しずつ、脂肪よりも筋肉を感じることができるようになってきている。しなやかでまだやわらかい、セヴランに比べれば子供のようなものだけれど、単に満遍なく全体的にふわっと脂肪がついていた頃よりも、つくべきところにはついていて、落とすべき脂肪は落ちてきているのだと、セヴランにはわかる。姿勢がよくなって、背中の脂肪や内臓脂肪など、本人には見えない脂肪がだんだんと落とせているのだ。それに、子供の筋肉と思春期から大人へと変貌していく女性の筋肉は、似ているようでも違う。
「あん・・・、あ・・・」
セヴランの手の中で、なめらかにしなる。少しずつ少女から大人へと変化していく様子は、よく蝶が羽化する様子に例えられるけれど、そんな劇的な変化ではなくて、けれど何日か間をあけてみると、確かに変わっているのだ。
もしも、あの状態の時に、奈々実がすぐそばにいたら。
とてもではないが、自分を制御できなかっただろうと思った。あの状態になって、奈々実が側にいたら、絶対に抱いてしまう。理性なんか絶対に保てない。一度目のあの時は職務中で、なおかつ奈々実が主都に行っているという物理的に距離がある状態だったからのりきることができた。二度目以降は、あらかじめ日時を決めてあって、セヴランは自分で自分を奈々実から隔離していた。奈々実と繋留という形で繋がったセヴランは、奈々実以外の女性にそういう気持ちにはならないはずだけれど、あの時のあの状態は、奈々実じゃない他の女性であっても側にいたなら襲いかかってしまわない自信が無かった。ましてや奈々実が側にいたら、言うに及ばずである。大人であり、国王や重臣の信頼厚い軍人として、そんなことは断じてあってはならないことで、奈々実がもといた世界ではどうだか知らないが、万が一にも自分を抑えきれずに未成年である奈々実に不埒なことをすれば、それは命をもって贖わねばならない。男性器を切除されて生き恥を晒すくらいなら、セヴランは寸刻もためらうことなく死を選ぶ。しかし、国費で留学した身は、その恩を国に帰すまで、死ぬことは許されない。
シエストレムの鎖は、魔力を持つ女性を愛し守る代わりに魔力を使わせてもらう魔法用具で、女性の側からの愛を男に確約することはない。男の側がいかに女性を慈しみ大切にするかによって、使わせてもらえる魔力量が変わる、原型を作ったシエストレムの魔力研究者たちは、そのように設定したはずだった。しかし、奈々実とセヴランを結ぶシエストレムの鎖は、オリジナルを参考にしてイネスが作成した《改良版》だ。その際に、失恋したばかりで感情的に不安定だったイネスの様々な雑念が入ってしまっている。政治的事情とはいえイネスの想いは一方的に踏みにじられた状況で、そういう精神状態だったイネスが作成したシエストレムの鎖《改良版》は、オリジナルとは違う魔効を有している。オリジナルのシエストレムの鎖よりもはるかに膨大な魔力を、セヴランは奈々実から借りることができるけれど、外へと出して使うためには自分の生命力を削ることになる。それを防ぐためには奈々実と心から相思相愛の状態になって奈々実を愛し、奈々実から愛されなければならず、けれど奈々実はまだ未成年で、肉体的な愛の行為に及ぶわけにはいかない。奈々実が生まれ育った世界では、未成年でも性行為をしてしまう輩がいて、法的に一応はそれをいけないこととしているけれど、この世界のように強力に断罪されるわけではない程度の状況であったらしい。だから奈々実は、自分はセヴランに感謝しているから、こんなデブのブスでよろしければどうぞ、的なことを言う。その心にウソは無いのだろうけれど、だからといってハイそうですかと抱くわけにはいかないのだ、この世界では。そもそも、感謝は愛ではないと、奈々実はわかっていない。奈々実自身がセヴランを心から愛して強烈に欲して、セヴランのことを誰よりも大切だと、セヴランを他の女に取られるなんて絶対に嫌だと、セヴランを自分のものにしたいと思ってくれなければ、セヴランは生命力を代償にせずに魔力を借りることはできない。ただ肉体関係があればそれでいい、というわけではないのだ。
「あ・・・、ん、ああん・・・」
奈々実は自分ではなかなか痩せないと思って悩んでいるが、セヴランの手の感触としては、少しずつ、脂肪よりも筋肉を感じることができるようになってきている。しなやかでまだやわらかい、セヴランに比べれば子供のようなものだけれど、単に満遍なく全体的にふわっと脂肪がついていた頃よりも、つくべきところにはついていて、落とすべき脂肪は落ちてきているのだと、セヴランにはわかる。姿勢がよくなって、背中の脂肪や内臓脂肪など、本人には見えない脂肪がだんだんと落とせているのだ。それに、子供の筋肉と思春期から大人へと変貌していく女性の筋肉は、似ているようでも違う。
「あん・・・、あ・・・」
セヴランの手の中で、なめらかにしなる。少しずつ少女から大人へと変化していく様子は、よく蝶が羽化する様子に例えられるけれど、そんな劇的な変化ではなくて、けれど何日か間をあけてみると、確かに変わっているのだ。
もしも、あの状態の時に、奈々実がすぐそばにいたら。
とてもではないが、自分を制御できなかっただろうと思った。あの状態になって、奈々実が側にいたら、絶対に抱いてしまう。理性なんか絶対に保てない。一度目のあの時は職務中で、なおかつ奈々実が主都に行っているという物理的に距離がある状態だったからのりきることができた。二度目以降は、あらかじめ日時を決めてあって、セヴランは自分で自分を奈々実から隔離していた。奈々実と繋留という形で繋がったセヴランは、奈々実以外の女性にそういう気持ちにはならないはずだけれど、あの時のあの状態は、奈々実じゃない他の女性であっても側にいたなら襲いかかってしまわない自信が無かった。ましてや奈々実が側にいたら、言うに及ばずである。大人であり、国王や重臣の信頼厚い軍人として、そんなことは断じてあってはならないことで、奈々実がもといた世界ではどうだか知らないが、万が一にも自分を抑えきれずに未成年である奈々実に不埒なことをすれば、それは命をもって贖わねばならない。男性器を切除されて生き恥を晒すくらいなら、セヴランは寸刻もためらうことなく死を選ぶ。しかし、国費で留学した身は、その恩を国に帰すまで、死ぬことは許されない。
シエストレムの鎖は、魔力を持つ女性を愛し守る代わりに魔力を使わせてもらう魔法用具で、女性の側からの愛を男に確約することはない。男の側がいかに女性を慈しみ大切にするかによって、使わせてもらえる魔力量が変わる、原型を作ったシエストレムの魔力研究者たちは、そのように設定したはずだった。しかし、奈々実とセヴランを結ぶシエストレムの鎖は、オリジナルを参考にしてイネスが作成した《改良版》だ。その際に、失恋したばかりで感情的に不安定だったイネスの様々な雑念が入ってしまっている。政治的事情とはいえイネスの想いは一方的に踏みにじられた状況で、そういう精神状態だったイネスが作成したシエストレムの鎖《改良版》は、オリジナルとは違う魔効を有している。オリジナルのシエストレムの鎖よりもはるかに膨大な魔力を、セヴランは奈々実から借りることができるけれど、外へと出して使うためには自分の生命力を削ることになる。それを防ぐためには奈々実と心から相思相愛の状態になって奈々実を愛し、奈々実から愛されなければならず、けれど奈々実はまだ未成年で、肉体的な愛の行為に及ぶわけにはいかない。奈々実が生まれ育った世界では、未成年でも性行為をしてしまう輩がいて、法的に一応はそれをいけないこととしているけれど、この世界のように強力に断罪されるわけではない程度の状況であったらしい。だから奈々実は、自分はセヴランに感謝しているから、こんなデブのブスでよろしければどうぞ、的なことを言う。その心にウソは無いのだろうけれど、だからといってハイそうですかと抱くわけにはいかないのだ、この世界では。そもそも、感謝は愛ではないと、奈々実はわかっていない。奈々実自身がセヴランを心から愛して強烈に欲して、セヴランのことを誰よりも大切だと、セヴランを他の女に取られるなんて絶対に嫌だと、セヴランを自分のものにしたいと思ってくれなければ、セヴランは生命力を代償にせずに魔力を借りることはできない。ただ肉体関係があればそれでいい、というわけではないのだ。
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