異世界ダイエット

第百三十二話

　その日の夜、家に戻ってから、奈々実は江里香がショックを受けた内容について、セヴランに質問してみた。聞いてセヴランはちょっと考え込み、酒を準備して、話す状況を整えた。
「女性には、理解できない・・・かな？」
「うーん・・・、理解っていうか、見て見ぬフリをできる人と、完全拒否の人がいると思います」
ＢＬ大好きでも現実の同性愛は無理、という人もいるし、リアルの同性愛に偏見は無いけれどＢＬは大嫌い、という人もいる。同性愛には偏見は無いけれど、両刀は嫌だ、という人もいる。なんとも思わない人もいるだろうが、それだって内情はいろいろで、興味がないからなんとも思わないのと、真に人間平等の博愛主義者でなんとも思わないのでは、違うだろうと思う。
　ただ、一部の男性が同性愛に抱くような強い拒絶反応は、女性は無いのではないかと、奈々実は思う。一部の男性は自分が襲われるかもしれないという恐怖心で徹底的に同性愛を排斥し、拒絶だけではなく攻撃すらする場合があるのだそうだ。女の尻を追いまわしてばかりいる男ほど、自分の尻を狙われることに強い恐怖を感じるらしい。
　女性は、自分の好きな男がゲイやバイだったら嫌だとは思っても、攻撃するほどの拒絶は示さないのではないだろうか。恋人や夫婦になることは諦めても、友達でいるくらいはできるのではないかと思う。江里香が同性愛をどう思っているのかはわからないけれど、奈々実の推測では、レイプや性的虐待ではないとわかれば、江里香は大丈夫なのではないだろうか。ありとあらゆる性的なことすべてを完全に絶対に拒否っているわけではないと思う。奈々実がセヴランにエロい治療をされたことに、近所のオバサンのように好奇心剥き出しにしていたのだ。幸せなエッチなら、納得するはずだと、奈々実は思う。
「その、・・・係の少年が嫌がっているわけじゃない、無理矢理されて、つらいわけじゃないって納得すれば、大丈夫なんじゃないかと思います。江里香ちゃんが拒絶するのは暴力とかレイプや性的虐待だと思います」
　奈々実自身は男女の恋愛にすら疎くて、異性愛も同性愛も、『本や映画の世界の話』である。セヴランが大切にしてくれることは夢のような幸福で、フロランという少年がむくつけき護衛兵士と性的な関係にあるのも、戦国武将の衆道と同じような感覚で認識している。つまりは軍隊における上下関係、あとあとの出世に関わってくるような裏事情もあるのではないか、と思っている。