異世界ダイエット

Shiori

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第百二十九話

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 昼食は、やわらかいラム肉のジンギスカンだった。食べ過ぎないように気をつけなければと思っても、美味しくて美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまう。奈々実が食べる様子は幸せそうで、セヴランはかわいいとは思いながらもちょっと意地悪をしたくなる。
「乗馬をすれば内臓脂肪は消費されるがな。もう少し考えて喰わないと、クロエに怒られるぞ?」
頭ではわかっている。しかし、身体を動かせばお腹が空くのは道理だし、美味しいは正義だ。
「太る心配ならしなくていいぞ! ラム肉は不飽和脂肪酸の働きで血中コレステロール値を下げたり、脂肪を分解してくれるからな。いくらでも喰え!」
なんでそんな栄養の専門用語みたいのが爆速で出て来るのかと驚いてしまう。瞠目している奈々実にプロストはワイルドな笑顔を見せた。
「主都のオバサマたちのお墨付きだ。うちのラム肉はいくら喰っても太らないってな。疲労回復、アンチエイジングにはラム肉!」
べつにまだアンチエイジングはしなくてもいいし、疲労も特にしていないけれど、太らないのはすばらしい。いくらでも喰えという夢のような言葉に、奈々実の顔はぱあああっと輝き、セヴランは苦笑しっぱなしだ。
「まあ、お前は骨格が普通だからな。今のクロエの方針に従っていれば、健康的にきちんと痩せると思う」
骨格が普通って、それはどういう意味だろう? 褒められている気がしないんだけど、褒めてるの? と、奈々実はもきゅもきゅと美味しいラム肉を咀嚼しながら、首を傾げる。
「つまりだな・・・」
セヴランは苦笑して、詳しく説明する。
「女性でも、男のように骨が太くて骨格ががっちりしていて、関節が大きいタイプは、筋トレをやりすぎるとごつくて逞しい印象になってしまうんだよ。それが悪いとは言わないし、そういうのが好きな男もいるかもしれないが、間違ってもエレガントではないから、女性らしさには欠けるだろう? もちろん、老齢になっても骨折しにくいとかのメリットはあるかもしれないが」
骨が太くてもスカスカだったら骨粗鬆症になるのではないだろうかと思ったが、この世界には骨粗鬆症は無いのだろうか。
「逆に骨が細いと、減量やトレーニングにはもっと細心の注意を払わなければ危険な場合がある。ダイエットする前に骨をしっかりさせなければならないし、痩せても骨がもろくならないように栄養バランスに気をつけなければならない。骨が細いのに太っている人が痩せるのは、とても大変なんだよ。お前の骨は太すぎず細すぎず、とても『ちょうどいい』骨格なんだよ」
そんなことを言われても、自分で自分の骨格が太いのか細いのかなんて、今まで考えたこともなかったから、わからない。
 するとセヴランは耳元に口を寄せて囁いた。
「抱き寄せたり、さわればわかるぞ?」
まさか『繋留』すると骨密度までわかるんだ、とか言い出すのではなくてよかった。フェザンディエではなくてレントゲンを名乗ってください、と言ってやろうかと思う。
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