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番外編~とりまく人々達
閑話2 騎士団副団長フラウ様の憂鬱(お気に入り数100越えお礼)
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フラウベルラージ・アウスグルドゥ・ヴェルツァーリ。それが私の…俺の名前。
ミドルネームは、魔族の末端の爵位を、勲功爵を貰っている証。
家族は、祖母のみ。両親は、先の戦争で亡くなった為にとうにいない。その為に家の管理などは祖母が頑張ってくれている。一応、爵位を受け取っているのは俺という事になっているらしいが、普段、騎士団の副団長として殆ど騎士たちが寝泊まりしている城の部屋の一角で彼らの管理を任されている為、なかなか家に帰れない身として、実家の事は祖母に任せるしかなかったのが原因していた。
そうは言っても、祖母もすでに高齢である為に心配は尽きない。
だから、俺は副団長という役目を命じられた時、条件を提示させてもらった。
爵位名となるアウグルドゥを名乗らないで、フラウ・ヴェルツァーリとして名乗っていくと。家族を守る為ならば、名前を隠す事だってしてやる。
王は当初渋ったが、王への敬意は、これからの活躍と忠誠で示して見せますと言って、それを体で表していったから、上々と言っていいと思う。
今日も、唯一の家族である祖母を思いながら俺は、執務をこなしていく。
ここしばらくは、ユカリ様やオスカルはもちろんの事、王までも不在だから、こちらでできる書簡の確認や事務仕事を任される事となって、目の前の書類の山と戦っている。
今頃は、王達は何をしているだろう。
先日は、王と聖老師達の判断で、『勇者』神子・ユカリ様が召喚される事となった。
召喚の儀の時は、彼はすっかり忘れているようだが、俺達騎士団の長であるオスカル・バグラディア・デミアラントも俺も、傍にいた。
あの時はとても異様な光景だらけで、しかも見知らぬ場所にいたのだから仕方ないとはいえ、夢だのと言われてデコピンという突っ込みをしたのは、ミスラ・アッパティーニだ。カルロスの双子の弟。能力は、火属性のカルロスとは違って土属性のようだけど性格はカルロスとそう変わらず猪突猛進なところがある。だからこそ、ユカリ様も見覚えがあって文句の一つも言うのではないかとも思われたが、カルロスからは何も聞く事がなかったし、どうやら覚えていないように思う。
そのせいで、多少俺達は困惑していた。ユカリ様は所詮、ニンゲンという脆弱な生き物であるし、魔力自体はあると言え、能力を発動させる切っ掛けや条件がまだ解っていない。
とてもデリケートな問題だから、彼にこの世界の常識を勉強してもらうにしても、実地での事はできたら避けたい。それが、我ら騎士団長と俺の意見だ。
でも。聖老廟側はそうではないらしい。我らの命も世界ですらをも優先的に考えている。神子の心配はしていなかった。
それが非常に腹立たしく、俺は王に直接嘆願しに行こうと何度もした。
しかし、それはオスカルによって阻まれた。
オスカルは言う。
「聖老廟を敵に回すのは惜しい。それに、お前に危険な事をさせたくない」
と…。
そのたびに俺は、彼の好意と熱に浮かされてしまうのだ。
俺は、自覚していた。
…彼に恋をしていると。
オスカルも、俺を好いてくれているのは自覚している。
お互い、幼い時から共にいた。
幼馴染、というものだと祖母に聞いたことがあるから多分そういうものなのだろう。
祖母はヒト族だが、魔族も真っ青の立派な人だ。学ぶ事が多い。
だからこそ俺は今もこうしていられる。
オスカルは、俺の祖母の事もよく理解している。だからこそ、最初は気にしてくれていると思っていたことがある。
でも、そうではなかったらしい。
俺が、フラウに何かがあるのが嫌だ、と言ってくれた青年時代を思い出す。
元々年も離れているから、幼かった頃は、良い兄貴分だと思ってオスカル兄様、とか言っていたものだ。
でも、いつからだろう。俺が、亡くなった父の代わりに勲功爵位を譲り受けた頃から、立場をわきまえねばと、オスカル様、とはじめて言った時の、彼の表情が忘れられない。
辛そうな、なんだか切なそうな顔。
本来ならばお互い、家を守る為に嫁を貰って己の血を受け継ぐ子供を作らねばならない時期もとうに過ぎている。
でもそういうしきたりも、仕事の事を優先的に考えているうちに、祖母は家系を繋ぐことをとやかく言う事はなくなってしまって、無意味な事となっている。
オスカルはどうなのか解らないけれど。
でも、彼は俺に言った。
『フラウ…俺は、お前を絶対に離さないからな。愛しているんだ。昔から、好きだった。お前のその銀髪も、薄く柔らかい唇も、欲しいと思っていた。家の事とかは絶対に考えなくていいから。俺の事だけを、少しでもいいから…考えてほしい』
『オスカル様…』
『様、なんて言わないでくれ。昔のように、兄と言えとは言わない。せめて、ただのオスカルと…ダメ、か?』
『オスカ、ル、…ぁ……』
ユカリ様が二度目の王との謁見の場を設ける事になった時に、話を共に聞く直前、彼から聞いた言葉。
ゆっくりと顎を撫でられ、ぞわぞわしているうちに、彼は近づいてきた。
その隙に、キスをするかしないかの距離ぎりぎりで、俺に彼の吐息を忠実に伝えてこようとするものだから、麻薬のように、目頭と体の奥が熱くなりそうになって、大変な事になるかと思ったものだ。
俺は今、オスカル達がコトー村に行っている間の猶予を持たされている。
応えねば、と思う反面、これからの、俺と、オスカルとの関係が変わっていく不安がある。
オスカル。愛しているよ。でも、もう少し、もう少しだけ、我儘を…時間をくれ。
俺は今、時間の合間にと戻った実家で、倒れ寝込んでいた祖母の前にいる。
家族の灯が、消え入りそうで不安で仕方がない。
誰かがいなくなるのは、もう嫌なんだ。
オスカルに何かが起きるのも見たくないし、忠実を唱えている相手、王にも,、ユカリ様にも何事もなければいいと思っている。
オスカルには、怒られるかもしれないけれど。
ユカリ様は、ヒトの子としてはごく普通の青年のようにも見えるが、少しの時間だけ一緒にいただけでも、何か、俺達とは違う魅力が見えてくるから不思議である。
この城に住む者達は皆、ユカリ様を敬愛していると容易に推測できる。王も、きっとそうだろう。
だからこそ、俺はこの平穏を守りたい。その為ならば、今はまだ、自分の恋など、考えたくない。
俺は、もう辛い世界は見たくない。
____________
気づいたらお気に入り数を100を超えていて驚愕!ポチってくださっている方々ありがとうございます!!
こちらのWEBサイトでのやり方が正しいかどうかも解らない中で、見守ってくださりありがとうございます。
今回はそのお礼も兼ねて、もう少し後にUPする予定だったフラウ様の話をUPしてみました。
一応、今までに出てきたキャラクターの中ですでにCPが決まっているのはありますし、また、主人公に矢印を出しているキャラクターはある程度出しています。どこでどう転ぶかは、今後をお楽しみにしていただければと思います(笑)
補足として、そのうちフラウ様もちゃんと幸せになってもらいますので、心配は無用ですよ!!!!!(大声
ミドルネームは、魔族の末端の爵位を、勲功爵を貰っている証。
家族は、祖母のみ。両親は、先の戦争で亡くなった為にとうにいない。その為に家の管理などは祖母が頑張ってくれている。一応、爵位を受け取っているのは俺という事になっているらしいが、普段、騎士団の副団長として殆ど騎士たちが寝泊まりしている城の部屋の一角で彼らの管理を任されている為、なかなか家に帰れない身として、実家の事は祖母に任せるしかなかったのが原因していた。
そうは言っても、祖母もすでに高齢である為に心配は尽きない。
だから、俺は副団長という役目を命じられた時、条件を提示させてもらった。
爵位名となるアウグルドゥを名乗らないで、フラウ・ヴェルツァーリとして名乗っていくと。家族を守る為ならば、名前を隠す事だってしてやる。
王は当初渋ったが、王への敬意は、これからの活躍と忠誠で示して見せますと言って、それを体で表していったから、上々と言っていいと思う。
今日も、唯一の家族である祖母を思いながら俺は、執務をこなしていく。
ここしばらくは、ユカリ様やオスカルはもちろんの事、王までも不在だから、こちらでできる書簡の確認や事務仕事を任される事となって、目の前の書類の山と戦っている。
今頃は、王達は何をしているだろう。
先日は、王と聖老師達の判断で、『勇者』神子・ユカリ様が召喚される事となった。
召喚の儀の時は、彼はすっかり忘れているようだが、俺達騎士団の長であるオスカル・バグラディア・デミアラントも俺も、傍にいた。
あの時はとても異様な光景だらけで、しかも見知らぬ場所にいたのだから仕方ないとはいえ、夢だのと言われてデコピンという突っ込みをしたのは、ミスラ・アッパティーニだ。カルロスの双子の弟。能力は、火属性のカルロスとは違って土属性のようだけど性格はカルロスとそう変わらず猪突猛進なところがある。だからこそ、ユカリ様も見覚えがあって文句の一つも言うのではないかとも思われたが、カルロスからは何も聞く事がなかったし、どうやら覚えていないように思う。
そのせいで、多少俺達は困惑していた。ユカリ様は所詮、ニンゲンという脆弱な生き物であるし、魔力自体はあると言え、能力を発動させる切っ掛けや条件がまだ解っていない。
とてもデリケートな問題だから、彼にこの世界の常識を勉強してもらうにしても、実地での事はできたら避けたい。それが、我ら騎士団長と俺の意見だ。
でも。聖老廟側はそうではないらしい。我らの命も世界ですらをも優先的に考えている。神子の心配はしていなかった。
それが非常に腹立たしく、俺は王に直接嘆願しに行こうと何度もした。
しかし、それはオスカルによって阻まれた。
オスカルは言う。
「聖老廟を敵に回すのは惜しい。それに、お前に危険な事をさせたくない」
と…。
そのたびに俺は、彼の好意と熱に浮かされてしまうのだ。
俺は、自覚していた。
…彼に恋をしていると。
オスカルも、俺を好いてくれているのは自覚している。
お互い、幼い時から共にいた。
幼馴染、というものだと祖母に聞いたことがあるから多分そういうものなのだろう。
祖母はヒト族だが、魔族も真っ青の立派な人だ。学ぶ事が多い。
だからこそ俺は今もこうしていられる。
オスカルは、俺の祖母の事もよく理解している。だからこそ、最初は気にしてくれていると思っていたことがある。
でも、そうではなかったらしい。
俺が、フラウに何かがあるのが嫌だ、と言ってくれた青年時代を思い出す。
元々年も離れているから、幼かった頃は、良い兄貴分だと思ってオスカル兄様、とか言っていたものだ。
でも、いつからだろう。俺が、亡くなった父の代わりに勲功爵位を譲り受けた頃から、立場をわきまえねばと、オスカル様、とはじめて言った時の、彼の表情が忘れられない。
辛そうな、なんだか切なそうな顔。
本来ならばお互い、家を守る為に嫁を貰って己の血を受け継ぐ子供を作らねばならない時期もとうに過ぎている。
でもそういうしきたりも、仕事の事を優先的に考えているうちに、祖母は家系を繋ぐことをとやかく言う事はなくなってしまって、無意味な事となっている。
オスカルはどうなのか解らないけれど。
でも、彼は俺に言った。
『フラウ…俺は、お前を絶対に離さないからな。愛しているんだ。昔から、好きだった。お前のその銀髪も、薄く柔らかい唇も、欲しいと思っていた。家の事とかは絶対に考えなくていいから。俺の事だけを、少しでもいいから…考えてほしい』
『オスカル様…』
『様、なんて言わないでくれ。昔のように、兄と言えとは言わない。せめて、ただのオスカルと…ダメ、か?』
『オスカ、ル、…ぁ……』
ユカリ様が二度目の王との謁見の場を設ける事になった時に、話を共に聞く直前、彼から聞いた言葉。
ゆっくりと顎を撫でられ、ぞわぞわしているうちに、彼は近づいてきた。
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俺は今、オスカル達がコトー村に行っている間の猶予を持たされている。
応えねば、と思う反面、これからの、俺と、オスカルとの関係が変わっていく不安がある。
オスカル。愛しているよ。でも、もう少し、もう少しだけ、我儘を…時間をくれ。
俺は今、時間の合間にと戻った実家で、倒れ寝込んでいた祖母の前にいる。
家族の灯が、消え入りそうで不安で仕方がない。
誰かがいなくなるのは、もう嫌なんだ。
オスカルに何かが起きるのも見たくないし、忠実を唱えている相手、王にも,、ユカリ様にも何事もなければいいと思っている。
オスカルには、怒られるかもしれないけれど。
ユカリ様は、ヒトの子としてはごく普通の青年のようにも見えるが、少しの時間だけ一緒にいただけでも、何か、俺達とは違う魅力が見えてくるから不思議である。
この城に住む者達は皆、ユカリ様を敬愛していると容易に推測できる。王も、きっとそうだろう。
だからこそ、俺はこの平穏を守りたい。その為ならば、今はまだ、自分の恋など、考えたくない。
俺は、もう辛い世界は見たくない。
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今回はそのお礼も兼ねて、もう少し後にUPする予定だったフラウ様の話をUPしてみました。
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