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本編
第六節 神子の能力とコトー村のこと。
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覚悟を決めて、俺は己のステータスをすべて話した。
最初のHP、MP、所有スキルはどうやって調べたのかは解らないけれど、誤差もなかったらしくロー先生はごく普通に聞いてくれていた。
しかし、魔力属性が全属性持っている事でまず驚いた顔をする。
次に、従魔保持適正あり、で渋い顔をする。
そして、称号をすべて言い終わる頃には、真っ青な顔をされてしまった。
「ううむ…称号、《渡界人》は、召喚されし者であればたまにある話であるが…他のモノは、お前さん特有のものらしいみたいだのう……」
最後には何やらブツブツ言っていて、授業にまったくならない。どうしたものかと悩んでいると、ロー先生はふと、持っていた杖をひょい、と振って、マジックステータスの物とは違うウインドウを呼び出した。
文字は解らないが、おそらく先に調べてあった俺のステータス表が書かれたものなのだろう。見ながら、度々ちょいちょいと何かを書き加えているので、俺が言ったものを書いているような気がした。
「先生?」
「ああ、先にこちらで調べた結果では従魔保持適正はない、とあったのだ。しかし、今見ると、ありとある。恐らくこれは隠匿ステータスだろう。魔王様には伝えておくが、決して誰にも言うでないぞ。魔力属性についても出来るだけ言わない方がいいだろう。緊急時には、儂か魔王様、あるいは知らせている人物同行の上で能力を発動させるように。」
それってつまり、その誰もがいない時って使っちゃダメって事?本当の緊急時って、誰もいない時に起こるものかもしれないのに、ちょっと不便だな。
俺が渋い顔をしていると、ロー先生は「心配するな。お前さんを一人にする事などまずないだろうて」と言ってくる。
うう、ロー先生ありがとうございます。俺、できるだけ一人っきりにならないように気をつけないとな。
さて、俺のマジックステータスを理解したところで、今度こそ今日の本題でもある魔力発動の勉強にとりかかる。
俺の場合は特に、回復、治療系に準じていると解った事、ユニークスキルに《ブック》がある事を理由に、この世界の種族の人体について、魔力属性の扱い方を主に勉強することになった。
はい、根本的に理解していかなくてはならない部分だからデスクワークだね!
方向性としては間違っていないから仕方がない。
人体構造は結局、地球人と大して変わらなかった事が発覚した。
せいぜい、魔族には心臓が2つある事と、回復、治療にはヒト族…つまりニンゲンには光属性の回復、治療が一般的であるが、魔族の回復、治療には闇属性が一般的である事、術式を発動させる際、俺のスキルにある踊り関係に関わる事として、おそらくこの世界の神様への祈りと舞が必要とするのであろうという事が、ロー先生が持ってきてくれた古い文献にて理解する事ができた。
そのおかげで人体構造については、端折ってもらっている。
つまり、代わりに、まずはこの世界の神様というものも理解しなくてはならないらしいのでその辺りを中心に講義してもらう事になった。
「今度救援に向かう村なんだが、その村は特別な場所でな。通常ならば、領主が村の救援などを行うものじゃろ?だが何故、儂らが向かうか解るか?」
「いえ…そもそも俺、この世界の事まったく知らないし…」
俺はこの世界の地図はまだ見ていない。それは、まだ何も解っていないも同義だ。
先生もそれを解っているのか、しまった、と思ったようで、苦笑いする。
「あっ…うむ、まあそうさの。つまり、コトー村は、王族が直接関わるに相応しい理由があるという事じゃな。」
「はい。…あとで、色々地図見せてくださいね?」
「ああ。もちろんだとも。」
「よかった」
俺が機嫌を悪くしている訳ではないのを悟ったのか、先生は説明を続ける。
「コトー村は、けして大きくはないが、代わりに広大な森と密接しているのだ。しかも、その森の奥には、神族を祀る湖があるとされておる。…解るか?本来、この世界で神族がふらふらするなんて事はまずないのだ。」
「それって、俺まだ見た事ないのですが、エルフがいないのも何か理由が?」
「エルフか。エルフの定義はよく解っておらなんだが、お前さんが言っているのはおそらく、神族に準ずる者達なのだろう。疎奴らは、いない、とは言わないが、魔族ともヒトとも決して交わって来ぬ。そのせいで神族側の研究は些か、遅れているのだ。」
はあ、と俺は受け答えていく。コトー先生が言うには、渡界人が言うエルフという概念はここにはないらしく、ただ美形の様相で耳が尖っているだけ、という事であれば魔族にもいる。その為、俺が考えているエルフというのはおそらく神族の守り人と同義であろうと説明された。しかも守り人もまた、隠れ住んでいると言う。
この分で行くとエルフはもちろんおそらくだが、妖精といわれる生物も隠れ住んでいる可能性がありそうだ。あとは精霊もそうか。
この世界では、魔族がヒトと共に生活している。俺の偏った知識で懸念しているのは、おそらく魔族と神族の立ち位置がここでは違う恐れがあるという事。
つまり、神族と相まみえた時、トラブルがないとは限らないように思う。
「神族とやり合うとかはあるのですか?」
俺がそう聞くと、ロー先生は固まってしまった。
「やり合う…?いや、歴代の魔王様方の中で戦好きの猛者はおったが、そのような事があった記録はない。文献にない、という意味ではな。ただ、書くことがなかっただけで、なかったとも断言できぬな」
「そうなんですね…」
「そもそもアレらは不可侵そのもの。未知の存在故、誰もが知る事ができるという訳ではない。」
ここまできっぱり言われては、俺もちょっと見たかったなーと思っていたエルフと会うなんてことは無理そうだ。
仕方ないけど寂しいな。
「…脱線したな。それよりもコトー村じゃ。その神族らだがおそらくコトー村脇の森奥に隠れ住んでいる可能性がある。
その為に、領主では心許なく王族が管理している。魔王様が直々に出向かれる理由もそこにある。
……ここまでくれば解るだろうが、コトー村脇の森の奥にあるその湖には、お前さんは絶対行かなければならないのだと儂は考えている。おそらく、お前さんに必要な従魔に関してもコトーに行けば、はっきりするじゃろう。」
俺は思いっきり眉を顰めてしまう。とっても行きたくない。
気持ちは解るらしく、ロー先生も苦笑いする。
勇気づけるように、ぽんぽん、と肩を叩いてくれるけど、あまりそのゲン担ぎは効果がなさそうだ。
「まあ、同行する者達も強者ばかりだ。なんとかなるだろう。しかし!だ。危険には変わりない。それを十分理解して向かうのじゃぞ」
ビシっと指を差して、ロー先生は言う。
今回の旅、俺、頑張るしかなさそう?とっても嫌なんだけど。
最初のHP、MP、所有スキルはどうやって調べたのかは解らないけれど、誤差もなかったらしくロー先生はごく普通に聞いてくれていた。
しかし、魔力属性が全属性持っている事でまず驚いた顔をする。
次に、従魔保持適正あり、で渋い顔をする。
そして、称号をすべて言い終わる頃には、真っ青な顔をされてしまった。
「ううむ…称号、《渡界人》は、召喚されし者であればたまにある話であるが…他のモノは、お前さん特有のものらしいみたいだのう……」
最後には何やらブツブツ言っていて、授業にまったくならない。どうしたものかと悩んでいると、ロー先生はふと、持っていた杖をひょい、と振って、マジックステータスの物とは違うウインドウを呼び出した。
文字は解らないが、おそらく先に調べてあった俺のステータス表が書かれたものなのだろう。見ながら、度々ちょいちょいと何かを書き加えているので、俺が言ったものを書いているような気がした。
「先生?」
「ああ、先にこちらで調べた結果では従魔保持適正はない、とあったのだ。しかし、今見ると、ありとある。恐らくこれは隠匿ステータスだろう。魔王様には伝えておくが、決して誰にも言うでないぞ。魔力属性についても出来るだけ言わない方がいいだろう。緊急時には、儂か魔王様、あるいは知らせている人物同行の上で能力を発動させるように。」
それってつまり、その誰もがいない時って使っちゃダメって事?本当の緊急時って、誰もいない時に起こるものかもしれないのに、ちょっと不便だな。
俺が渋い顔をしていると、ロー先生は「心配するな。お前さんを一人にする事などまずないだろうて」と言ってくる。
うう、ロー先生ありがとうございます。俺、できるだけ一人っきりにならないように気をつけないとな。
さて、俺のマジックステータスを理解したところで、今度こそ今日の本題でもある魔力発動の勉強にとりかかる。
俺の場合は特に、回復、治療系に準じていると解った事、ユニークスキルに《ブック》がある事を理由に、この世界の種族の人体について、魔力属性の扱い方を主に勉強することになった。
はい、根本的に理解していかなくてはならない部分だからデスクワークだね!
方向性としては間違っていないから仕方がない。
人体構造は結局、地球人と大して変わらなかった事が発覚した。
せいぜい、魔族には心臓が2つある事と、回復、治療にはヒト族…つまりニンゲンには光属性の回復、治療が一般的であるが、魔族の回復、治療には闇属性が一般的である事、術式を発動させる際、俺のスキルにある踊り関係に関わる事として、おそらくこの世界の神様への祈りと舞が必要とするのであろうという事が、ロー先生が持ってきてくれた古い文献にて理解する事ができた。
そのおかげで人体構造については、端折ってもらっている。
つまり、代わりに、まずはこの世界の神様というものも理解しなくてはならないらしいのでその辺りを中心に講義してもらう事になった。
「今度救援に向かう村なんだが、その村は特別な場所でな。通常ならば、領主が村の救援などを行うものじゃろ?だが何故、儂らが向かうか解るか?」
「いえ…そもそも俺、この世界の事まったく知らないし…」
俺はこの世界の地図はまだ見ていない。それは、まだ何も解っていないも同義だ。
先生もそれを解っているのか、しまった、と思ったようで、苦笑いする。
「あっ…うむ、まあそうさの。つまり、コトー村は、王族が直接関わるに相応しい理由があるという事じゃな。」
「はい。…あとで、色々地図見せてくださいね?」
「ああ。もちろんだとも。」
「よかった」
俺が機嫌を悪くしている訳ではないのを悟ったのか、先生は説明を続ける。
「コトー村は、けして大きくはないが、代わりに広大な森と密接しているのだ。しかも、その森の奥には、神族を祀る湖があるとされておる。…解るか?本来、この世界で神族がふらふらするなんて事はまずないのだ。」
「それって、俺まだ見た事ないのですが、エルフがいないのも何か理由が?」
「エルフか。エルフの定義はよく解っておらなんだが、お前さんが言っているのはおそらく、神族に準ずる者達なのだろう。疎奴らは、いない、とは言わないが、魔族ともヒトとも決して交わって来ぬ。そのせいで神族側の研究は些か、遅れているのだ。」
はあ、と俺は受け答えていく。コトー先生が言うには、渡界人が言うエルフという概念はここにはないらしく、ただ美形の様相で耳が尖っているだけ、という事であれば魔族にもいる。その為、俺が考えているエルフというのはおそらく神族の守り人と同義であろうと説明された。しかも守り人もまた、隠れ住んでいると言う。
この分で行くとエルフはもちろんおそらくだが、妖精といわれる生物も隠れ住んでいる可能性がありそうだ。あとは精霊もそうか。
この世界では、魔族がヒトと共に生活している。俺の偏った知識で懸念しているのは、おそらく魔族と神族の立ち位置がここでは違う恐れがあるという事。
つまり、神族と相まみえた時、トラブルがないとは限らないように思う。
「神族とやり合うとかはあるのですか?」
俺がそう聞くと、ロー先生は固まってしまった。
「やり合う…?いや、歴代の魔王様方の中で戦好きの猛者はおったが、そのような事があった記録はない。文献にない、という意味ではな。ただ、書くことがなかっただけで、なかったとも断言できぬな」
「そうなんですね…」
「そもそもアレらは不可侵そのもの。未知の存在故、誰もが知る事ができるという訳ではない。」
ここまできっぱり言われては、俺もちょっと見たかったなーと思っていたエルフと会うなんてことは無理そうだ。
仕方ないけど寂しいな。
「…脱線したな。それよりもコトー村じゃ。その神族らだがおそらくコトー村脇の森奥に隠れ住んでいる可能性がある。
その為に、領主では心許なく王族が管理している。魔王様が直々に出向かれる理由もそこにある。
……ここまでくれば解るだろうが、コトー村脇の森の奥にあるその湖には、お前さんは絶対行かなければならないのだと儂は考えている。おそらく、お前さんに必要な従魔に関してもコトーに行けば、はっきりするじゃろう。」
俺は思いっきり眉を顰めてしまう。とっても行きたくない。
気持ちは解るらしく、ロー先生も苦笑いする。
勇気づけるように、ぽんぽん、と肩を叩いてくれるけど、あまりそのゲン担ぎは効果がなさそうだ。
「まあ、同行する者達も強者ばかりだ。なんとかなるだろう。しかし!だ。危険には変わりない。それを十分理解して向かうのじゃぞ」
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