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プロローグ
プロローグ・裏
しおりを挟むゼレスチア星空、ダルバン星に位置する魔大陸・ウグヴィスタ国。
言っておくが、ここは地球が存在する宇宙とは別の空間に位置している。その空間のひとつ、ゼレスチア星空の中、ダルバン星のウグヴィスタ国こそがここ魔王の根城となっている。
ここには過去、ヒトが多く住んでいた。それは地球規模でいうならば地球人の1.5倍はいたとされている。(ちなみに星自体の大きさも地球以上ある)
しかし、彼らは貧困と欲に忠実に生きすぎた。それは簡単に戦や食に繋がるものでもあった。ダルバン星の魔族は、ヒトには本来、無関心なものだ。静観し、彼らの欲望を見ては嘲笑い、冷酷に簡単に見捨てていく。魔力を補充する為にヒトを襲っても得などない。そもそもが、ヒトを襲わなくても、ある一定距離までならば魔力の糧となるものは勝手にヒトの欲望がエネルギーに変えて、自身の中に蓄積されていくものだ。さながら、ヒトが近くにいるだけでエネルギーの製造マシーンはあるのだと言ってもいい。
それでも、まだヒトが多かった時は魔族の見た目に驚き、畏怖されていく存在になった歴史もある。
しかし、長い長い歴史を続けていくうちに、ヒトは学習していく。魔族は、怖いモノではないのだと。
敵国にいるモノであれば恐れる事もあれど、同郷同士であれば親しくしようとする者も現れていった。その事実は歪みを生み、ゆっくりとしかし確実に、この大陸の、いやこの星の生体バランスにも大きく影響されていくこととなる。
「ヒトとは難儀な生き物よの…」
「魔王様?」
「独り言だ、気にするな」
傍仕えの従者はそうですか、と言って魔王の背後で再び背筋をまっすぐにしていつものように命令を待つ。
漆黒の瞳に、後ろの髪の付け根あたりで一纏めにされた長い髪。前髪は小奇麗に切られているが、尖った耳の横を、頬までの距離を撫でている横髪はざんばらんに生えていて、綺麗好きなのかワイルドなのか少々解りづらい髪型。少々肌黒、という程度の健康肌から見える、魔王と謳われる彼は、角さえなければ、ただの肌黒のイケメンと言える容姿をしていた。均整のとれた筋肉に、内から溢れるほどの、濃い魔力、魔素を持っている。いかにして、魔王と言われるまでになったかが伺えるものでもあった。
彼は、ため息を零しながら赤いワインに口づけつつ今後、どうやって異世界から召喚で呼び出した人間を懐柔していこうかと考えあぐねていた。
魔族はこれまでに、ヒトとの関わりを絶とうとした事もある。しかし、いくらそうしようとしても、ヒトが魔族に慣れてしまうと、何故避けるのだとか、何故いなくなるだとか喚いて、泣いて、媚び諂う。また魔族も、糧となるエネルギーを補給する為にはある程度の距離は必要となるため、強く出れない。
その事実が悔しく、いじらしく、むずがゆさを感じてしまう。この感情を愛だと言ったヒトもいたが、その者もとうにいない。
魔族の生はとても長い。それ故に、ヒトの命の儚さに、寂しく、虚しくすらしてしまうようだ。
「そういえば、先程呼び出した異世界人は今どうしている?」
「はあ。確か、ユカリ・フジサトでしたか。今はあてがった部屋で眠っているようですよ。」
「そうか。…ああ、彼のステータス結果はどうなっている?」
「ここに、右近近衛隊長が記してくださいました」
従者が魔王の手元に差し出してきた羊皮紙には、右近近衛隊長の鑑定能力で解った事が事細やかに書かれていた。
=======
判定結果
名前 ユカリ・フジサト
年 21
適応職業 神子 Lv50
ゼレスチア耐性力 10000000%
HP 5000000/5000000
MP 100000/100000
魔力属性 光属性・闇属性・風属性・水属性 あり
スキル 踊り子(回復系)Lv5 神下し(復活系)Lv1
ユニークスキル ブック(医療補佐)Lv1
従魔保持適正 なし
=======
「…ほう。アレは、神子だというのか!これは面白い。」
思わず、笑いが込み上げているのか魔王は、愉快そうにしている。
しかも、スキルが魔族ではまず出来ることがない神下しが備えられている。踊りに関しては、彼が実際に踊るところを見てみない事にはどうとも言えないが、おそらく、魔王自身すらも心を鷲掴みされるのだろうと思うと、気が高ぶらない訳にはいかなかった。
「へっくしっ!…誰か噂してるのかな?」
縁は今後、知る事になる。彼が地球で鍛え上げられた踊りと、召喚された事によって付与された魔力のせいで起こる、思いがけもない未来を。
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