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プロローグ
プロローグ5
しおりを挟む「おはよー…ってなんだこりゃ」
「店長!零はがして!お願いします!」
「ははーん、お前、あれか。朝のお約そ「やめて!それちがうから!それ以上はやめて!」
くそう。完全に揶揄われている。店長は起きた時に零がいないことに気づいたけれど、それほど大変なことにはなっていないと確信していたようで呑気なものだ。
そうだとしても!店長が言うようなものではないけれど、零がぎゅーぎゅーと足の内股あたりを足で締めるようにして寝こけているものだから僕は、トイレに行きたくて仕方なかった。
決して朝立ちとかそんなんじゃないよ!ただトイレに行きたいだけです!
なんとか零を起こして僕はトイレに駆け込んで、出したいものはだしてやった。ソファでもよおさなくてよかったよ…。
トイレから出ると、店長は朝食を作っていた。キッチンから漂う香ばしい香り。フライパンで踊る黄色いモノは、卵焼きであることを教えてくれている。テーブルの上にはすでに何品か置かれていて、紅鮭の焼き魚半身になめこと豆腐の味噌汁、ごはんに蓮根のきんぴらが置かれていた。完璧な純和食のラインナップだ。昨日零がサンドイッチを最初に食べてて、夕飯らしい夕飯をあまり食べていない。一応野菜スープは作ってくれていたけど、サンドイッチでお腹いっぱいになったのだろう。それからほどなくして眠ってしまったのだから。
零は久しぶりの和食なのか、それとも別の理由かは解らないが、とても嬉しそうな顔でかっこんでいる。あ、なんでか米粒が鼻の上についている。思わずわらってしまって、取ってやったのを見せてやると、ほんのり顔を赤く染めてた。
朝食を取り終えると、一度警察まで行く事となった。零を心配している親族がいるかもしれないからだ。少し店長は渋い顔をしていたけれど、親族が健在なら報告の義務はある。また零に確認することも考えたけれど、日本での彼女の保護先を彼女が正しく把握しているとも限らない。それならば、素人がやみくもに探すよりも警察に任せるのが一番だろうという結論に達したのだ。
三軒茶屋から近い警察署までは歩くには少し時間がかかる。子供の足だとなおさら感じるかもしれない。とはいえ、バスに乗っても時間の差はさほど変わらないので歩くしかない。
道中は、最初僕と零が手を繋いでいた。なんでも、僕のとこに移って寝てたのは、間違って寝てた訳でもなく、一緒に寝ていたかったようだ。引き剥がしたのは可哀そうだったかもしれないが、女の子だし、女の子の事は店長に任せたほうが良いと思ってたんだけど、それが逆に嫌だったらしく、ぎゅっと僕の手を握って離そうとしない。
ねえこれって、警察署に行っても、離れてくれないとかない・・・よね?不安だ。
一方で、店長は店長で心配なのか子供好きなのか解らないが、手を繋いでくれない残念さに、複雑を噛みしめてるように見えた。
「零、てんちょ・・・このお姉さんとは手、繋がないのか?」
「え~」
「え~、ってなんだよ。」
とても不満そうだけど、決して店長と手を繋ぎたくないわけではなさそうだ。
「お姉さん、寂しそうにしてるよ?」
「・・・」
解ったのか、解らないのか、少し苦虫を噛みしめたような顔で悩む零。少し戸惑いながらも、そうっと、店長の手に手を伸ばすのが解ってホッとした。
瞬間、まだ朝だというのに、空が薄暗くなりだしした。
ゴロゴロと雷のような音が聞こえる。雷なんて、発生してる気配などないのに。
―――見つけた、ゼロ。
―――今度こそ逃がさない・・・!
どこからともなく聞こえてくる声。
その声と共に、零はガタガタと震えている。
「零、大丈夫か・・・?!」
ぎゅっ、と抱きしめてやるがそれでも震える体は止まることがない。
「い、いや…嫌だ・・・いや・・・っ!!なん、で!」
―――逃げられたと思うなよ
虚空から聞こえてくる声は、何故か零と僕にしか聞こえていないようだ。というか、いつの間にか店長は倒れこんでいる。
「て、店長⁈ど、どうすれば・・・っ」
思わず、零に抱き着いていた手がその瞬間にゆるんでしまう。その瞬間に、零の体が空を浮きはじめる。
「え、えっ⁈」
ぎょっとする。
しかも、零の首周りにまとわりついていた鎖は、零をあざ笑うかのように、引っ張り上げている。まるで、誰かが零をどこかに引っ張り上げているかのように吊っている状態だ。
「な、なんだ、こ、れ」
慌てて、鎖がどうにか外れないかガチャガチャ鳴らして知恵の輪外しのように解体できないか試みるが、外す事はかなわない。それができるなら、昨夜のうちにできていたはずだ。
「零、れい!」
「あうっ、が、あ、」
苦しそうにしている零。ひっぱり上げられているのを確かに感じる。
―――愚かな小童よ。この繋がそれで外れる訳がなかろう
「だまれ!こんな風にして、零を苦しめて、何になる!」
「!!!!」
「零!!頑張ってくれ・・・!」
嘲笑う声は、ククク、笑っている。耐えろ、耐えるんだ…
いつの間にか、零と僕は、大人の伸長分ほどの高さのところまで引き上げられていた。
このままでは、零が危ないと、警鐘が鳴る。
その瞬間、零の体が光を放つ。
僕はそのまま、意識をどこかに飛ばしてしまった…ようだ。
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なろう様にて移籍連載する事になりました。 https://ncode.syosetu.com/n8464fe/編集でURLジャンプができなかった為申し訳ありませんがイチから、なろう様にて閲覧される場合は上記リンクからか、執筆者ページにあるWEBコンテンツリンクから見ていただければと思います。お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願いします。
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