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4.魔女の化粧水
石鹸づくり
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今日は街の祭りのひとつ、謝肉祭のために『ステルラ』は臨時閉店していた。普段は店の作業のために多くの時間が取れないため、こうした休みにまとめて仕込むのだ。
その謝肉祭は通常、社交界シーズン終わり直後、まだ夏の名残があるときに行われるが、今年はベルッディナで五大公会議が開かれていたため、謝肉祭が冬直前にずれてしまい、石鹸づくりとしては最適な気温にまで下がっていた。
この世界で流通している石鹸は石鹸の素地から作るものとその素地を使って粘土細工のように作られるものの二種類あるが、ドーラが作るのは前者、苛性ソーダと呼ばれるものとオイルを合わせて作るものだった。
精製された苛性ソーダを適量の水に溶かしていくが、そのときに発生する蒸気を吸い込まないように、布巾で口元を覆っている。これも夏場に石鹸づくりを行いたくない理由の一つでもある。
そうしてきちんと固形分を溶かし切ったドーラは、温めたオリーブオイルをゆっくりと注ぐようお願いする。ミールが注いでいる間、ゆっくりと端から端まで丁寧に泡だて器で混ぜていくが、小さいときよりもしっかりとした手つきで、安定した姿はかつての幼さからは見つけることはできない。
「本当にミールがいるからすごく助かる」
「そりゃ、どうも。で、今日はなんの石鹸を作ってるんだっけ」
「このアンソプ風石鹸とオリーブオイルにホホバ、月見草、カレンデュラの混合石鹸をそれぞれ二種類ずつ、販売品として作る。あとはそうだね、カメリアオイル、パームオイルでそれぞれ三種類ずつ作ろうかなって」
「そりゃまた、高級なもん使うな」
混ぜながらドーラは今日、どういった石鹸を作るのかということを話すと、ミールは驚いた口調をしたが、表情はかけ離れたものだった。
精油と同じく、石鹸に用いられるオイル――キャリアオイルも高価なもの。安価なものだと不純物が取り除かれていなかったりするので、肌荒れの原因になる。市販の――薬効成分がないものは牛脂や廃油などで作られることが多く、体を洗うのには適さない。
しかし、『ステルラ』は人の生活を豊かにするための店。
石鹸づくりに使うのは絞って間もないオイルで、その中でも栽培が限られた地域でしかできないホホバの実からとれるホホバオイルや月見草の月見草オイル、カレンデュラオイルはこの国に限らず手に入れにくいので、価格が自然と吊り上がる。
その一方で、時間がたっても臭みが出たりしないオリーブオイルは多くの地域で作られ、安価だが、臭いも少し独特なため、貴族の婦人方に好まれないこともあり、少し酸化されやすくても、少し手に入れにくくても、見た目をきれいにしている。
『ステルラ』で売られている石鹸は、叔母が切り盛りしていたときにもあるにはあったが、ドーラがこの店を引き継いだ後に作られたものが多く、初期のころは失敗続きだったのを今でも覚えている。
「ま、そんだけ肌にも優しいから、こぞって買いに来るんだろうけどな」
「あはは。この店だけが作っているわけじゃないんだけれどね」
「そうはいっても、質が良くなきゃ買いには来ないさ」
「まあね」
ミールはドーラが作る石鹸を手放しに称賛するが、ドーラはそれだけが原因だとは考えていなかった。これに似た石鹸ならばいくらでも作ることができるから。
そうやり取りしつつも、目をそらさず手も止めない。
それこそ成長した証だった。
「そろそろ型に流し込むか」
「うん、そうだね」
トレースが出るまで混ぜた後、ミールが専用の木型に流し込んだ。
同じ工程を、今度は混ぜる段階で少量のワイルドキャロットから得られた天然の着色剤で石鹸素地に色を付ける。もちろん色を付けるだけではなく、肌荒れの予防などの効能もある。そうして手早く石鹸を作り上げたドーラは、今度は別のオイルを用いて石鹸を作り出す。
「今年は椿が豊作だったんだ」
「そうみたい。帝国南部からの輸入量がいつもの倍以上を見込めるって」
「へぇ、そりゃまた面倒な事態になってないといいな」
カメリアオイルを用いた石鹸は真っ白になり、これからの季節、雪の降る季節にふさわしいと重宝される。石鹸そのものが少し柔らかいのが難点だが、後付けの香りがよくつくことから、様々なにおいのものが売られている。
そんな椿はエルスオング大公国では栽培されておらず、輸入に頼りきりだが、いつも以上に瓶の量が多く、いつも卸でお世話になっている商店いわく、『ここ数年で最も多くの量が出回っている』らしい。
ポローシェ侯爵の秘書をしているミールにしてみれば、この一年で特定の商品だけの値段が変動することはないという。だから、戦争やなにかがあったのだろうかと勘繰りたくもなるのだ。
椿オイルの石鹸には香りだけではなく、クレイを配合することもある。
こうすることによって、洗顔時に顔の古い角質を落とすことができ、特に四十以上の婦人方に人気を誇るのだ。
そして最後に作ったのは、未精製のパームオイルの石鹸だ。この大陸の南方に位置する常夏の島でとれるヤシの実からとれるこのオイルは、色素が多く含まれており、それを精製しないと鮮やかなオレンジ色になる。この色素は不純物といえば不純物であるが、人体へは影響がない――それどころか美肌効果があるため、そのままで使うことが多い。
その色からは貴族にはあまり好まれていないが、比較的安価で手に入るため、商人や職人たちからは大幅な絶賛を受けている。
それには精油で香りをつける。
「よし、これで全部だな」
最後のパームオイルの石鹸素地を木型に流し込んだ後、温度を保つために暗室へ運び込む。暗室は温度を保つために藁が敷き詰められていて、先ほどミールがここに運んできた木箱にも木を削ったものをかぶせられている。
積み重なった箱を眺め、よしよしと二人で頷く。多分、今日の感じだと失敗していない。二人とも大丈夫だという自信があった。
「ありがとう、ミール」
「こちらこそな。最近は侯爵ん家の仕事が多くて、ロクにお前の手伝いができてなかったからさ」
「ううん、気にしてないよ。こちらでの仕事は減っていたから、あまり気にしてない」
最近のミールは泊りがけの仕事が多かっただけに、無理してないかという心配はしていたが、店のことは気にしてなかった。
「そうか。じゃ、とりあえず街に出ますか」
その謝肉祭は通常、社交界シーズン終わり直後、まだ夏の名残があるときに行われるが、今年はベルッディナで五大公会議が開かれていたため、謝肉祭が冬直前にずれてしまい、石鹸づくりとしては最適な気温にまで下がっていた。
この世界で流通している石鹸は石鹸の素地から作るものとその素地を使って粘土細工のように作られるものの二種類あるが、ドーラが作るのは前者、苛性ソーダと呼ばれるものとオイルを合わせて作るものだった。
精製された苛性ソーダを適量の水に溶かしていくが、そのときに発生する蒸気を吸い込まないように、布巾で口元を覆っている。これも夏場に石鹸づくりを行いたくない理由の一つでもある。
そうしてきちんと固形分を溶かし切ったドーラは、温めたオリーブオイルをゆっくりと注ぐようお願いする。ミールが注いでいる間、ゆっくりと端から端まで丁寧に泡だて器で混ぜていくが、小さいときよりもしっかりとした手つきで、安定した姿はかつての幼さからは見つけることはできない。
「本当にミールがいるからすごく助かる」
「そりゃ、どうも。で、今日はなんの石鹸を作ってるんだっけ」
「このアンソプ風石鹸とオリーブオイルにホホバ、月見草、カレンデュラの混合石鹸をそれぞれ二種類ずつ、販売品として作る。あとはそうだね、カメリアオイル、パームオイルでそれぞれ三種類ずつ作ろうかなって」
「そりゃまた、高級なもん使うな」
混ぜながらドーラは今日、どういった石鹸を作るのかということを話すと、ミールは驚いた口調をしたが、表情はかけ離れたものだった。
精油と同じく、石鹸に用いられるオイル――キャリアオイルも高価なもの。安価なものだと不純物が取り除かれていなかったりするので、肌荒れの原因になる。市販の――薬効成分がないものは牛脂や廃油などで作られることが多く、体を洗うのには適さない。
しかし、『ステルラ』は人の生活を豊かにするための店。
石鹸づくりに使うのは絞って間もないオイルで、その中でも栽培が限られた地域でしかできないホホバの実からとれるホホバオイルや月見草の月見草オイル、カレンデュラオイルはこの国に限らず手に入れにくいので、価格が自然と吊り上がる。
その一方で、時間がたっても臭みが出たりしないオリーブオイルは多くの地域で作られ、安価だが、臭いも少し独特なため、貴族の婦人方に好まれないこともあり、少し酸化されやすくても、少し手に入れにくくても、見た目をきれいにしている。
『ステルラ』で売られている石鹸は、叔母が切り盛りしていたときにもあるにはあったが、ドーラがこの店を引き継いだ後に作られたものが多く、初期のころは失敗続きだったのを今でも覚えている。
「ま、そんだけ肌にも優しいから、こぞって買いに来るんだろうけどな」
「あはは。この店だけが作っているわけじゃないんだけれどね」
「そうはいっても、質が良くなきゃ買いには来ないさ」
「まあね」
ミールはドーラが作る石鹸を手放しに称賛するが、ドーラはそれだけが原因だとは考えていなかった。これに似た石鹸ならばいくらでも作ることができるから。
そうやり取りしつつも、目をそらさず手も止めない。
それこそ成長した証だった。
「そろそろ型に流し込むか」
「うん、そうだね」
トレースが出るまで混ぜた後、ミールが専用の木型に流し込んだ。
同じ工程を、今度は混ぜる段階で少量のワイルドキャロットから得られた天然の着色剤で石鹸素地に色を付ける。もちろん色を付けるだけではなく、肌荒れの予防などの効能もある。そうして手早く石鹸を作り上げたドーラは、今度は別のオイルを用いて石鹸を作り出す。
「今年は椿が豊作だったんだ」
「そうみたい。帝国南部からの輸入量がいつもの倍以上を見込めるって」
「へぇ、そりゃまた面倒な事態になってないといいな」
カメリアオイルを用いた石鹸は真っ白になり、これからの季節、雪の降る季節にふさわしいと重宝される。石鹸そのものが少し柔らかいのが難点だが、後付けの香りがよくつくことから、様々なにおいのものが売られている。
そんな椿はエルスオング大公国では栽培されておらず、輸入に頼りきりだが、いつも以上に瓶の量が多く、いつも卸でお世話になっている商店いわく、『ここ数年で最も多くの量が出回っている』らしい。
ポローシェ侯爵の秘書をしているミールにしてみれば、この一年で特定の商品だけの値段が変動することはないという。だから、戦争やなにかがあったのだろうかと勘繰りたくもなるのだ。
椿オイルの石鹸には香りだけではなく、クレイを配合することもある。
こうすることによって、洗顔時に顔の古い角質を落とすことができ、特に四十以上の婦人方に人気を誇るのだ。
そして最後に作ったのは、未精製のパームオイルの石鹸だ。この大陸の南方に位置する常夏の島でとれるヤシの実からとれるこのオイルは、色素が多く含まれており、それを精製しないと鮮やかなオレンジ色になる。この色素は不純物といえば不純物であるが、人体へは影響がない――それどころか美肌効果があるため、そのままで使うことが多い。
その色からは貴族にはあまり好まれていないが、比較的安価で手に入るため、商人や職人たちからは大幅な絶賛を受けている。
それには精油で香りをつける。
「よし、これで全部だな」
最後のパームオイルの石鹸素地を木型に流し込んだ後、温度を保つために暗室へ運び込む。暗室は温度を保つために藁が敷き詰められていて、先ほどミールがここに運んできた木箱にも木を削ったものをかぶせられている。
積み重なった箱を眺め、よしよしと二人で頷く。多分、今日の感じだと失敗していない。二人とも大丈夫だという自信があった。
「ありがとう、ミール」
「こちらこそな。最近は侯爵ん家の仕事が多くて、ロクにお前の手伝いができてなかったからさ」
「ううん、気にしてないよ。こちらでの仕事は減っていたから、あまり気にしてない」
最近のミールは泊りがけの仕事が多かっただけに、無理してないかという心配はしていたが、店のことは気にしてなかった。
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