転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

人騒がせな人1

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「今日はありがとう」
 夜会が終わったあと、迎えの馬車に乗り込む直前、クロード王子にそう言うと、大丈夫だよ、と返してくれた。

「君はいったい、なにをしようとしているんだい? もしよかったら、僕に手伝わせてもらえないか」

 彼は真剣な声でアリアに問いかける。しかし、アリアはきっぱりと断った。

「いいえ、その必要はありません」

 その答えにそう言われると思ったよ、そうあっさりとした声で返すクロード王子。じゃあ、またね、そう言って彼は手を離して馬車の扉が閉まった。
 動きだした馬車の中で、夜会での出来事を思い返していた。クリスティアン王子はベアトリーチェに恋をした。そして、クロード王子は自分に求婚した。

 前者は『ラブデ』通りのルートだろう。そして、後者は『ラブデ』にはないオリジナルの物語になるのだろう。クリスティアン王子とベアトリーチェがくっつくのはどうぞご自由にというところだ。むしろ、大歓迎な話だ。それに比べてクロード王子が自分に求婚してきたのは、今後セリチアに厄介ごとをもたらすものにしかならないだろう。でも、それを踏まえてまでなんで彼は自分に求婚したのか気になった。

「いけない」

 これ以上、彼に接触するのは危険だ。どんな意味であっても。
 そこまで考えたとき、ちょうど馬車が止まった。どうやら家に着いたようだ。気持ちを切り替えて降りた。

 すでにベアトリーチェはこちらに戻っていたようで、家の中の明かりがついていた。侍女生活に戻るのは数日後だ。それまで、彼女と今後のことについて話し合ってみるのもいいかもしれないわね、そうアリアは考え、家に入っていった。

 疲れた体をしっかりと休めた翌朝、なにやら玄関前が騒がしく、メイドの手を借りずに着替えてそちらへ向かうと、多くの騎士たちが家の周りを取り囲んでいた。

 ふう。これがアランが言っていたことねぇ。

 先日、彼がアリアに向かって言い放った言葉を思い出した。すでに母親とマチルダが対峙しているが、この分だと彼らがここに入ってくるのも時間の問題だろう。

『ついては、徴税した五年分の金品、およそ絹百五十反分の横領の罪により、縁者ならびに家財の差し押さえを履行する』

 外から聞こえてきたのはあの父親がやりそうにない・・ことだ。もし、あの人がそれをするのならば、もっと前に見つかっているはずだろう。この時期にそれが発覚するというのは、どうにも解せなかった。
 それには母親やマチルダ、そして、何事かと驚いてこちらに来ていたセレネ伯爵夫妻も唖然としている。

 アリアはすぐに動くことをやめた。

 本当は今すぐにでも動きたかったが、もし、動くならば、多くの人の命を危険に晒すことになる。『ラブデ』の開始以前にゲームが終わってしまう。

 玄関から入ってきたのは若い騎士たちが多く、中にはアリアよりも年下ではないかと思うくらいの年齢の人までいる。彼らのリーダーとおぼしき男はアリアやベアトリーチェ、ユリウス、そしてセレネ伯爵夫妻の姿を確認し、リリス嬢はと母親に尋ねたが、むしろ、こちらが聞きたいところです、と言われていた。アリアが王宮に出仕しはじめてから、家に帰らなくなっていたようで、探すために人をやっているが、見つかっていないという。

「では、皆さん、そこから一歩も動かないでくださいね。もし、許可なくわれわれの目の前から離れられた場合、より厳罰になる可能性もありますからね」

 リーダーは高圧的に言い放った。母親やセレネ伯爵夫妻、マチルダは落ち着いていたが、ベアトリーチェやユリウスは互いにどうしたものかと不安な目で見ていた。

 全員がまとめて一室に監禁された状態の中、アリアはこれがどうして父親の罪だと断定されたのだろうかと考えていた。なによりシーズンはじまりの夜会の翌日、ということも気になった。もしかして、あの父親は仕事と称して、遊んでいるのかとも思ったが、すぐに否定できた。なぜなら、家での発言権がなくなって以来、ほとんどずっと仕事場に引きこもっている。下級侍女の仕事として、文官たちの部屋の掃除も行わなければならなく、ごくたまにだけど、父親の仕事場へも掃除をしに行ったことがあったから、彼が怠けてないことは自分の目でも見ていたし、噂でも聞いていたのだ。
 だからこそ、誰かにはめられたとしか考えにくい。現在の公爵家はスフォルツァ家を含めて十一家。バルティア公爵、フェティダ公爵、ツェリス家かメリッツェン公爵か。もっともスフォルツァ家を陥れたいと願うだろうバルティア公爵とは結局、あの昼餐会見かけた程度でしかないが、まあ、そのときのマーガレットの様子からすると彼にとってもアリアという『駒』は必要だろうから、無理に追い落とす必要性を感じられなかった。
 そして、その次にスフォルツァ家と関わりがあるのだろうフェティダ公爵は現在、宙ぶらりんな状態だったはずだ。マクシミリアンが継いだという情報も入ってきてない。だから、ここも可能性としては薄いだろう。それ以外の二つの公爵家はそもそもスフォルツァ家、バルティア家、フェティダ家に比べればかなり小規模だ。騎士団に影響を持っているとは考えにくいから二家の可能性も否定していいだろう。

 となると、誰がこんな仕業を?

 体感時間では数十分から一時間くらい経ったころ、再び、家の外が騒がしくなった。どうしたんだろうかと思って聞き耳を立てていると、なにやら王宮から誰かが派遣されたようだった。

『いや、それぱ俺でも分からないんですってば』
 それは誰なのか見なくても、聞き覚えのある声だ。

『とりあえず、コクーン副団長が解放しろ、とおっしゃっているんです』
 どうやらセルドアがアリアたちの解放の許可を出したけど、アランや現場の騎士たちはそれに納得していないようだった。
 だけども上の命令は絶対的で、まもなくアリアたちは解放された。
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