転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

聞く耳を持つもの、持たないもの

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 クロード王子の推察にため息をつくアリア。

「え、それって」
 ベアトリーチェが息をのんだ。

「ええ、そうよ。まあ、ちょっとここじゃアレだから、外に行きましょう。殿下・・も付き合ってくださいね」

 周りを見回しながらそういうと、コクコクと頷くベアトリーチェともちろんさと二つ返事をしてくれたクロード王子。

 一国の王子を『使う』なんて、ちょっと面白い展開になってきたわね。アリアは心の中でほくそ笑みながら、二人を連れて会場の外へ出た。


「ベアトリーチェは気づかなかったみたいだけど、クリスティアン王子があなたのことを狙っていたわ」

 バルコニーで夜風に当たりながらそう言うと、まさか、とベアトリーチェは驚いていた。ええ、そうでしょうね、アリアも信じられないことのように頷いた。

「本当よ。そこにいるクロード殿下がそれを証明してくれるわ」

 あなたも見ましたよね、と尋ねるとうん、と即答するクロード王子。

「彼はあの大広間に入ってきてからずっと君のことを見ていたね。それに君が挨拶をし始める前から声をかけたがっているように見えたよ」

 そんな、と悲壮な顔になるベアトリーチェ。彼女も王太子クリスティアンのことを知りたがってはいたけども、まさか自分が彼に見初められるとは考えられなかっただろうし、そんなことはない、と心の中では分かってはいたのだろう。それに、もし本当に彼と婚約するということになれば、他の令嬢たちを蹴散らすような気概や度胸を持たねばならないだろう。今の彼女にそんな気概や度胸はないだろう。

「大丈夫よ。さっきのでそれに気づいたのは多分、数人。でも、殿下や私があなたの後ろに付いていることがわかってしまった以上、下手に噂を広めるにはいかなくなったわねぇ」

 アリアは理路整然と説明すると、クロード王子も同意した。

「そうだね。噂が広められたところで、王家は何も言ってないからすぐにどうこう、というわけではないだろうけど、少なくとも僕やスフォルツァ公爵令嬢が君の後ろについているということで、直接的な手出しはできないだろうね」

 二人から似たようなことを言われ、少しだけほっとするベアトリーチェ。

「だったら、いいのですが――――」

 今まで緊張していたのか、ベンチに腰を下ろす。アリアとしては是非ともくっついて欲しい二人だが、今のままでは二人とも共倒れしてしまうだろう。だったら悪役でもなんでもいい。御膳立てしてやろう。アリアはそう決意して、先に戻ってて、とクロード王子とベアトリーチェに言う。

「ちょっと、ある人に会ってくるから」

 そう言い残して、アリアは大広間とは反対の方向に向かっていった。



 アリアが向かったのは、この夜会で王族が使う控室。居室エリアと大広間は少し離れているので、王宮で開催される催し物があるときには必ず控室が用意されている。目的の部屋にたどり着いたアリアは警備の騎士たちにこの部屋の主が在室か尋ねると、いきなり訪ねてきた少女が何者か知っているようで、在室だと答えてくれ、なにも言わないのに、部屋に通してくれた。
 中では黒髪の少年が本を読んでいた。どうやら彼は夜会をほっぽりだして、サボりに来たようだった。

「お初にお目にかかります、クリスティアン王太子殿下」

 アリアがきちんと挨拶をしたら、彼は驚きに目を見開き、すぐにお前、なんていうことをしてくれたんだ、とつかみかかってきた。王子の乱心に慌てて騎士たちが止めに入る。

「あら、気づきませんでしたの、令嬢たちの視線に?」

 彼女はつかみかかられたのにもかかわらず、冷静に問いただした。その静かな質問にどういうことだと一応、聞く体勢になったクリスティアン王子。どうやら、頭は回るようだ。

「あの大広間にはどれだけの令嬢たちを含む貴族たちがいて、どれくらいがあなたに注目していたか知っていますか」

 アリアは一方的に責めるでもなく、あくまで静かに尋ねた。すると確かにな、と彼は考え込む。冷静になるだけ、かなりまともな人なのだろう。だけども、彼のことを好きになるかどうかは別だ。

「あなたが扉から出てきてから、ずっとベアトリーチェを目で追っていたのは私もクロード殿下も気づきました。少し離れたところにいた私たちが気づいた、ということはほかの人も気づいたかもしれませんね。そしたら、あなたが彼女のことを好きだということがねずみ算的に広がる。そうすれば、彼女はあなたのことをどう思っていなくても悪意にさらされる。私のような公爵令嬢と違って、彼女は王太子妃になるという自覚はないから、その対処に苦しむことになる、しかも、あなたのせいで」

 その説明にぐうの音も出ないクリスティアン王子。母親が伯爵家出身、ということであまり深く考えていなかったのだろう。

「たまたま私が彼女の知り合いだったから良かったものの、もし、彼女を利用するような知り合いしかいなかったら、どうするつもりだったのですか?」

 静かな批判にすまなかったと謝るクリスティアン王子。

「私には謝る必要はありません。ですが、今後の動きには十分、お気をつけてください」

 アリアはそう言って、では、私は戻りますと言って帰ろうとした。すると、クリスティアン王子が引きとめた。

「待て、ちょうどよかった。お前に話がある」
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