上 下
32 / 35

32.すべてお気に召すまま?

しおりを挟む
「これがお前のスキルの内訳だ」
 そう言ったエリックさんは羊皮紙を私に見せてくれた。
 小さいころから文字の読み書きをきちんと覚えさせてくれたから、こういったことが苦にならなくてありがたいと思う。

 で、えっと、私が持っているスキルというのは……――

*   *   *   *   *   *   *

『洗浄』
タイプ:詠唱
ランク: B+ (職業:C、希少度:C+、能力:A 、熟練度:SSS)
長所:物理的塵、どんな汚れも一瞬でとれる
短所:なし

『方向探知』
タイプ:パッシブ
ランク:SSS(職業:C、希少度:SSS、能力:SSS、熟練度:SSS)
長所:自分たちが向かうべき方向を見つける
短所:なし

『良縁成就』
タイプ:パッシブ
ランク:SSS(職業:S、希少度:SSS、能力:SSS、熟練度:SSS)
長所:術者とかかわる人
短所:なし

『厄除け』
タイプ:思念
ランク:SSS(職業:SSS、希少度:SSS、能力:SSS、熟練度:SSS)
長所:術者の周囲程度に《祝福》を授け、悪人による攻撃、魔物の襲撃、戦争の回避を施す。魔物・魔王などの悪いものを封じこめる
短所:なし

国守くにもり
タイプ:思念
ランク:SSS(職業:SSS、希少度:SSS、能力:SSS、熟練度:SSS)
長所: 病気・ケガ・毒素などを取り除き、癒しの効果を与える
短所:なし

※特記事項:○○○〇○○、および魔王ガープ両名の祝福による強化あり

*   *   *   *   *   *   *

 …………はい?
 自分のことだけれど、どういうことですかね。
 周りにいる人たちも目が点になっているような気が……――――

「おいおいおいおい。『国守』『良縁成就』『方向探知』『厄除け』って、どれも“創造主の祝福”でしか得られないっていう代物だぞ」
 宰相さんが目を点にしながらそうおっしゃる。
 うん、わかるわぁ。
 ギルドのスキル・ランク早見表(詳細版)で流し見しただけれど、『厄除け』は魔王さえも封じるもの、『方向探知』はいわゆるダウジングのスキル版、『良縁成就』も人と人の縁、人とモノの縁を結ぶもの、『国守』は国家全体から悪いものを排除するというものだから、どれか一つでも持っていれば、国家に重宝されるどころか、監禁コースですよね。
 というか、“創造主の祝福”ってなんですかね、私、そんな人と会ったことありませんが。
SSSちょうきしょうスキルを四つも持っているとはな……五つ持っているのもとんでもないことだけれど、その時点で伝説級だぞ」
 ニコラスさんの言葉に魔王の言葉を思いだした。

五つ・・のスキル所持者ホルダーなんて何十年、いや何百年ぶりだろうね。一応、スキルの保持に貴賤関係ないっていうけれど、正直、平民上がりでそれって、よっぽど前の生で善行をなしてきたのだろうかねぇ』

 いや、ちょっと待てよ。
 私はそもそもの部分に気づいてしまった。
「あのぉ、ギルドでは一つしかわからなかったはずなんですが。しかも、『洗浄』のランクが微妙に上がってません?」
 スキルが発現していなかったわけではなく、スキルがわからなかったというのはいったいどういうことだろうか。
 魔力測定機器の不調だったとかかな。
「だから言っただろう。アンクレットによって魔力を封じられていたと」
 エリックさんの言葉に唸ってしまう。
 うーんと、“魔力が封じられる”イコール“スキルが発動しない”っていうことでいいのかな。
 自分のことながら思考を放棄したい。
「もしかしてさ、ミコちゃん」
 思いっきり白目むきたい私にレオンさんが声をかけてきた。
 なんですかねぇ。
「たしかアンクレットの存在に気づいたのってさ、君が最初にギルドへ行ったときだったよね」
「そうですが……って……――?」
 尋ねられた意味がわからなかったから、首を傾げたけれど、それでエリックさんは理解できたらしい。

「そのあとに使おうとしても、発動してなかっただろうな」

 え、マジですか。
 きょとんとした私にエリックさんは原理を話してくれた……のだけれど、さっぱりわからない。とりあえず話をまとめると、『厄除け』使ったと思っていたのは思いこみプラセボだったようだ。
 うっそぉ
 ミミィを拾ったときや、その他もろもろで使ったのは意味がなかったっていうこと!?

 しかも、ジェイドさんや魔王が『厄除け』を使ったと感じていたものは、スキルの行使しようとした魔力とアンクレットで相殺するときの魔法痕まほうこんだったようだ。
 魔法痕とは煙や火花みたいなものだそうで、感知できるものにとってみればだれが・どこで・どれぐらいの魔力を行使したのかというのがわかるらしい。
 ちなみにそれがはっきりとわかるのは魔王クラスの魔力の持ち主、『探索』に魔力が多く配分されている(すなわちランクが高い)人で、通常の『探索』程度だったらぼんやりとしかわからないらしい。
 ふむ、そうなんだ。

「そういえば、七年前にビリウの村周辺で洪水が起こったとき、ビリウの村だけ一切の被害を免れた記憶があるが――――」
 おやぁ、勘のいいひとは嫌われますよと思ったけれど、宰相相手にそれは通じるはずもない。
 うん、記憶にございます。大雨が降ったときに“この村を襲わないで”って祈ったことがあるんだよ。
「そんなこともありましたっすね。八年前に西部の山岳地帯で魔物が大量発生したときに一部の冒険者たちは無傷で帰ってきた記憶があるけれど――――」
 レオンさんの言葉にかなり遠い目をしてしまった私。
 はーい、先生、それも私のせいです。
 大型の魔物が出たっていう情報をもとにハンターさんたちが狩りにいったんだけれど、そのときに使う武器を鍛錬する横で“ハンターさん、無事に帰ってきてください”って祈った記憶があるんですよねぇ。

 というか、その後も調べられたら怖いねぇ。

“村の人が全員、少しでも長生きできますように”
“前の年よりも多くの農産物が収穫できますように”
“もっと多くの人にビリウの製品を知ってもらえますように”

 アハハハハ。
 とくに後半ふたつは実際に効果があった。
 だからギルドに行く前から、私がなにか特殊なスキルを持っていて、それを自分にかけることができないことを知っていたのだ。

「ミコ・ダルミアン」
 それまで私たちの会話に首を突っこまなかった国王の目がすっと細められる。私は覚悟をした。

SSSちょうきしょうスキル所有者ホルダーとして、そなたを王国で管理することにする」

 デスヨネー☆(棒)
 想像はしていたけれど、ツライヨ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

処理中です...