30 / 35
30.魔力測定をしましょう☆
しおりを挟む
えっと、せっかく話してくれたのは嬉しんだけれど、なんか知らない世界すぎて、ちょっとなに言ってるかわからないんですが。
私のきょとんとした表情にすまないと謝罪を入れつつ、ちゃんと細かい部分を言ってくれた。
「王家の闇、王宮の汚染を跡形もなく消し去ってきたというところだな。たとえば魔物に憑りつかれた奴の封印、忌み子のお祓い、汚れた場所を丸ごと焼き払うとかな。だからこそ、強力な魔力に気づかなかきゃいけなくて、それに特化した魔力だけは膨大なんだ」
うーん、要は異世界版陰陽師的な感じですかね。
なんとなくそんなイメージしかつかない。
とはいえ、いくら前世の職業・巫女であっても陰陽師がなにかという部分をきちんと説明できないので、ここは口をつぐんでおくのが吉だ。
「でも、エリックはそれ以外にも氷漬けにするのと燃やすのは得意だよね」
「……まあな」
私が余計なことを考えている間にレオンさんが茶々を入れるが、あまりその表現は好きじゃないみたいだ。ちょっとだけ眉が寄った。
「だから俺は、いや、ベルゼック家は代々人に会うのを忌み嫌って、この塔に立て籠もるのが慣例なんだ」
ふーん。なるほどねぇって、立て籠もるって表現はどうよと思ったけれど、まあ本人が言ってるんだからいいのか(適当)。
でも、それで納得した。なんでユリウスさんの呼びだしにも応じなかったのか。
いたよねー。前世で霊感強いから神社にはいれませーんっていう人も。
「お前の指導を打診されたとき、嬉しかったけれど、お前の魔力を見てしまうのが怖かったんだ」
エリックさんは不快な思いをさせてしまったなと頭を下げた。
「いえ、私はもうなにも気にしてませんよ」
本音だ。
これがほかの人だったら嘘だろって思ったかもしれないけれど、エリックさんは事実があるんだから。
私の赦しに胸をなでおろしたエリックさんに、それならばと聞きたいことがあったんだっけ。
「そういえば、一つお聞きしたいことがあったんですけれど」
私の問いかけになんだと不思議そうな顔をされた。魔王城脱出の際にきちんと回収されていたらしいそれをスカートの外ポケットから取りだして、エリックさんに渡す。
「このアンクレットってなんですかね」
ずっと疑問に思っていたこと。
いつの間にかついていたアンクレット。魔王ガープは“もう必要ない”って言っていたけれど、なんのためにはめられたのかさえ分かっていないから、“必要”という言葉がどこにかかってくるのかがわからないんだよねぇ。
エリックさんはどれどれと機械でアンクレットを確認していたんだけれど、なんでこんな貴重なものがとぼそりと呟く。
貴重?
普通の金属に見えるんですけれど、なにがどう貴重なんですかねぇと思って、エリックさんの顔を見ると、興味深そうにこちらを見ていた。
怖い怖い。
「ああ、アイアンボートとグレースカッパー、レントシルバーの合金だ」
「ええっ……!! それ、すっげぇやばいやつじゃん」
そうだなとレオンさん、ジェイドさんと頷きあうエリックさん。
え、そんなに貴重なんですか。
わかってないのは私だけなようで、この雰囲気から早く脱出したかった。
「創造主か魔王しか鍛錬できないと言われてきた幻の合金だ」
むむむぅ。
小さいころに読み聞かせてもらった童話にも登場していた気がするし、金属を多く取り扱う両親も言っていたような。
確証はないけれど。
「効果は魔力の抑制・増幅、果てはレアスキルの生成までなんでもござれ。なんでこんなもんを……そういえば、ユリウスが言ってたな。『勝手にはめられていた』って」
「そう、ですねぇ」
エリックさんの迫力に負けた。私がゆっくり頷くと、ちょっと確認させてくれと言って、壁際の棚から機械取りだしてきた。もう私はなされるがままになっていた。
私の不思議な視線にエリックさんは目を細める。
「魔力とスキル測定器だ」
ほほう。
エリックさんはこの測定器がいかに素晴らしいか、こと細やかに説明してくれた。
うん、説明してくれた九割がたは理解できん。
とはいえ、ある程度理解できた部分には、ギルドにあったものよりも精密に測れるらしく、王宮にいる人たちの魔力やスキルはこれで測定し、記録が収められていると。
へぇと頷いた私は、指示された場所に手をかざす。なんだかあったかい気がするなんて思っていると、エリックさんが眉を寄せる。
…………
………………
………………………………
………………………………――――
えーっとぉ、なんですかねぇ。この沈黙。
記憶にあるようなないような長い沈黙の後、エリックさんはレオンさんの方を見て静かに命令する。
「レオン、至急ギルドに連絡。ミコ・ダルミアンの身辺書を取り寄せろ」
「お、おう……!!」
彼がこんな口調になるのが珍しかったんだろう。慌てた様子のレオンさんがどたばたと出ていく。
いったいなにがあったのだろうと恐る恐る聞くと、エリックさんは怖い顔をしてこちらを見ている。
「ミコ・ダルミアン。お前、いったい何者なんだ」
私のきょとんとした表情にすまないと謝罪を入れつつ、ちゃんと細かい部分を言ってくれた。
「王家の闇、王宮の汚染を跡形もなく消し去ってきたというところだな。たとえば魔物に憑りつかれた奴の封印、忌み子のお祓い、汚れた場所を丸ごと焼き払うとかな。だからこそ、強力な魔力に気づかなかきゃいけなくて、それに特化した魔力だけは膨大なんだ」
うーん、要は異世界版陰陽師的な感じですかね。
なんとなくそんなイメージしかつかない。
とはいえ、いくら前世の職業・巫女であっても陰陽師がなにかという部分をきちんと説明できないので、ここは口をつぐんでおくのが吉だ。
「でも、エリックはそれ以外にも氷漬けにするのと燃やすのは得意だよね」
「……まあな」
私が余計なことを考えている間にレオンさんが茶々を入れるが、あまりその表現は好きじゃないみたいだ。ちょっとだけ眉が寄った。
「だから俺は、いや、ベルゼック家は代々人に会うのを忌み嫌って、この塔に立て籠もるのが慣例なんだ」
ふーん。なるほどねぇって、立て籠もるって表現はどうよと思ったけれど、まあ本人が言ってるんだからいいのか(適当)。
でも、それで納得した。なんでユリウスさんの呼びだしにも応じなかったのか。
いたよねー。前世で霊感強いから神社にはいれませーんっていう人も。
「お前の指導を打診されたとき、嬉しかったけれど、お前の魔力を見てしまうのが怖かったんだ」
エリックさんは不快な思いをさせてしまったなと頭を下げた。
「いえ、私はもうなにも気にしてませんよ」
本音だ。
これがほかの人だったら嘘だろって思ったかもしれないけれど、エリックさんは事実があるんだから。
私の赦しに胸をなでおろしたエリックさんに、それならばと聞きたいことがあったんだっけ。
「そういえば、一つお聞きしたいことがあったんですけれど」
私の問いかけになんだと不思議そうな顔をされた。魔王城脱出の際にきちんと回収されていたらしいそれをスカートの外ポケットから取りだして、エリックさんに渡す。
「このアンクレットってなんですかね」
ずっと疑問に思っていたこと。
いつの間にかついていたアンクレット。魔王ガープは“もう必要ない”って言っていたけれど、なんのためにはめられたのかさえ分かっていないから、“必要”という言葉がどこにかかってくるのかがわからないんだよねぇ。
エリックさんはどれどれと機械でアンクレットを確認していたんだけれど、なんでこんな貴重なものがとぼそりと呟く。
貴重?
普通の金属に見えるんですけれど、なにがどう貴重なんですかねぇと思って、エリックさんの顔を見ると、興味深そうにこちらを見ていた。
怖い怖い。
「ああ、アイアンボートとグレースカッパー、レントシルバーの合金だ」
「ええっ……!! それ、すっげぇやばいやつじゃん」
そうだなとレオンさん、ジェイドさんと頷きあうエリックさん。
え、そんなに貴重なんですか。
わかってないのは私だけなようで、この雰囲気から早く脱出したかった。
「創造主か魔王しか鍛錬できないと言われてきた幻の合金だ」
むむむぅ。
小さいころに読み聞かせてもらった童話にも登場していた気がするし、金属を多く取り扱う両親も言っていたような。
確証はないけれど。
「効果は魔力の抑制・増幅、果てはレアスキルの生成までなんでもござれ。なんでこんなもんを……そういえば、ユリウスが言ってたな。『勝手にはめられていた』って」
「そう、ですねぇ」
エリックさんの迫力に負けた。私がゆっくり頷くと、ちょっと確認させてくれと言って、壁際の棚から機械取りだしてきた。もう私はなされるがままになっていた。
私の不思議な視線にエリックさんは目を細める。
「魔力とスキル測定器だ」
ほほう。
エリックさんはこの測定器がいかに素晴らしいか、こと細やかに説明してくれた。
うん、説明してくれた九割がたは理解できん。
とはいえ、ある程度理解できた部分には、ギルドにあったものよりも精密に測れるらしく、王宮にいる人たちの魔力やスキルはこれで測定し、記録が収められていると。
へぇと頷いた私は、指示された場所に手をかざす。なんだかあったかい気がするなんて思っていると、エリックさんが眉を寄せる。
…………
………………
………………………………
………………………………――――
えーっとぉ、なんですかねぇ。この沈黙。
記憶にあるようなないような長い沈黙の後、エリックさんはレオンさんの方を見て静かに命令する。
「レオン、至急ギルドに連絡。ミコ・ダルミアンの身辺書を取り寄せろ」
「お、おう……!!」
彼がこんな口調になるのが珍しかったんだろう。慌てた様子のレオンさんがどたばたと出ていく。
いったいなにがあったのだろうと恐る恐る聞くと、エリックさんは怖い顔をしてこちらを見ている。
「ミコ・ダルミアン。お前、いったい何者なんだ」
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる