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15.前世から狙われてません……よね?

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 あれっ? なんか思っていたのと違ってたような。アイリーンもミミィもジェイドさんもなんだかホッとしてるような――
「殿下!」
 ……――――この人だけは違った。銀髪男、ユリウスさんだけはモノホンで驚いている。
「なにも驚くことないだろ、ユリウス」
「いえ……むしろ、殿下にしてはいい提案だと思いまして」
 考えられることだろう?と首を傾げたニコラス殿下に対して、慣れた口調で返すユリウスさん。まあなんとなくそうだけれどさぁ? でも失礼じゃ……
「そうですね、殿下にしてはいい提案だと思います」
「お前らな――――」
 ジェイドさんまでのっかってキタァ――――!!
 二人に呆れるニコラス殿下だけれど、この混沌状態カオスを招いた一人のユリウスさんがさっさと話題を変える。
「それはそうと私たちが勝手に言う意見はどうでもいいですが、張本人であるあなたがたはどうでしょうか?」
 彼は私たちに向かってわりと破格の提案だと思いますよとにっこりと笑う。
 アイリーンとユリウスさん、この二人をガチで勝負させたらどっちが勝つんだろうと余計なことを考えてしまった。
「私は問題ございません。監禁でなければなんでも」
「はい、私も問題ありません。むしろここまでよくしていただいてなんだか怖いです」
 アイリーンとミミィは恥ずかしそうに喜んでいる。どうやら二人ともだれかと結婚させられると思っていたのだろう。
「そうですか。で、ミコ・ダルミアンはどうです?」
 私はすぐに答えてられなかった。なぜなら――――

「答えを言わせてもらう前に、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 ひとつ聞きたいことがあったから。
 私が即答せずに質問したいと言いだしたことに少し驚いたようだったけれど、なんでしょうと促してくれた。
 ありがたや。
「ジェイドさんはどうなるんですか?」
 私が聞きたいことはただ一つ。私たちがしばらくの間、王宮預かりになる間、ジェイドさんはどうしているんだろう。
 一人の貴族と違ってジェイドさんはSランクスキル保持者。次のギルドへ行けという命令が下されるのだろうか。

「ジェイドさんはもともとギルド所属だったのを抜けだしてまで私たちについてきてくれました。ですが、私たちがしばらくの間、王宮の預かりになるということはジェイドさんはどうなるのでしょうか」

「……おい、ミコ」
 私が吐きだした言葉にジェイドさんは慌てたけれど、私は止められなかった。
 もし彼が決めたことに対してそれを否定するようなことを言うのならば、するのならば……――!!

「だって、そうじゃないですか!? たかだか『魔法壁』を持っているだけで国に自分を管理され、決まった職業にしかつけないし……―――」

 私は自分のことなんかどうでもよかった。
 たとえ目の前にいるのが宰相補佐だろうが、王太子だろうがどうでもよかった。
「それ以上、言うな」
 慌てた様子でジェイドさんが止めてくれようとするが、それは逆効果なんだから――――!!
「でもっ……!!」
「大丈夫だ。俺のことは気にするな」
「気にするなって言われても、気になるものは気になります!!」
 アイリーンもミミィも、宰相補佐も王太子も私を止めに入らなかった。ただジェイドさんにあやされるのを待っているだけだったが、私の言葉がやんだ瞬間にアイリーンがすっと口をはさみ、ユリウスさんに声をかけた。
「なんでしょう」
 澄ました顔のユリウスさんにアイリーンはいじわるそうな笑みを浮かべて、煽った・・・

「あなたなら、この事態を解決できるのではなくて?」

「――――できなくはありませんが、殿下は“それ”でいいですね」
「もちろんだ」
 煽られた方のユリウスさんはなにか殿下と示し合わせていたようで、ニコラス殿下と頷きあう。
「では、ジェイド」
「なんですか」
 雇い主の了承を得られたユリウスさんはすっと大きく息を吸い、ジェイドさんに、そして私たちに声をかける。

「あなたを特別王宮浄化師付きの護衛に任じます。それでいいですね、森の賢者殿。それにミコ・ダルミアン」

「はい……」
「ええ、十分ですわ」
「……ああ、わかった」
 そんな方法もあるんだ。
 だったら最初からそう言ってよ、腹黒宰相補佐さん。
 私はホッとして頷き、アイリーンは満足そうに、そしてジェイドさんも少しだけ戸惑ったような口調でそう承知した。

「では、あなた方の到着を今か今かと待ちわびてる人たちがいますので、行きましょう」
 パンと手を打ってうっそうとした雰囲気を打ち破り、どこかへ私たちを連れていこうとするユリウスさん。
 今度はどこに行くんですかね?
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