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4.混ぜてはいけないものだってあるんです

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 よぉーく見てみると、そこにいたのはイケメンさん、ジェイドさんとかなり似た人だったけど、その人はジェイドさんにないものが二つくっついているから、女性……か。彼女は倒れこんだジェイドさんを揺さぶりつつ叫ぶ。
 というか、いくら無防備な状態とはいえども、男性を突き飛ばす威力はすさまじく、前世で言うミサイルのようだった。
「お兄様!!」
「だれかと思ったら、おま――――」
 一瞬、気を失っていたらしいジェイドさんは目を白黒させながら目の前の人物を見て、呟く。
 てか、今、ジェイドさんのことを『お兄様』と呼んだよね。ということは……――

「なんですか、あの猫さん!?」

「あ゛??」
「いや、だから、受付のところにいる猫さん、めっちゃ可愛いんですけれど!?」
 私の思考は彼女の勢いに負けた。
 どうやら彼女はギルドにいる猫を発見し、それがジェイドさん関係であることを知ったから、この部屋にすっ飛んできたのだろう。

「あの猫って誘拐してきたんですか、それともどっかで迷っていたのを保護してたんですか、それとも高値で買い取ったんですか? というより、そもそも私に隠れてこっそり飼うつもりだったんですか? いけない兄ですねぇ」

 彼女の興奮は収まらずにジェイドさんをなおも揺さぶっている。
 大丈夫かな、ジェイドさん。
 私がそうぼんやりと人ごとのように目の前の光景を眺めていると、ペチリと乾いた音が部屋に響く。
「落ちついて話を聞け、あほジェーン」
 どうやら彼女の頬をジェイドさんが叩いたようだった。
 相当痛かったらしく、彼女、ジェーンさんはいったぁい!と涙目になっているが、お前が調子に乗るからだろうとそっけなく返されていた。
「俺は猫なんか飼うつもりはないぞ」
「えっ、じゃあ、なんですか、あれ? どこから入りこんだのですか?」
 おっと、ジェイドさん関連でもないとなると、まさか……――――
「あのぉ……――ちなみに毛並みは」
「銀色だ。輝く銀色。どれだけブラッシングしたらあんな毛並みになるんだ!?」
「あれ、私の仲間ですが」
 やっぱりか。
 その質問に食い気味に応えたジェーさんの言葉で納得したし、それでジェイドさんも納得したようだった。
「え?」
猫耳族ケット・シーだ」

 そう。ジェーンさんが見たのは猫化したミミィで間違いないだろう。
 普段は人の姿をとっているが、寝るときや長時間動かないときは猫化している。どうやらその方がエネルギー使わないから楽で、多くの猫耳族の習性らしい。
 今も彼女は私が目を覚ますのを待っている間、猫化して待っていたようだ。

 ジェイドさんの予想も私と同じで、それに私が頷くとジェーンさんは嘘ぉとしゅんとしてしまった。
「ちなみに攻撃力は王国一個師団レベル」
「マジっすか」
「本当だ」
 ジェイドさんに彼女の能力が正当評価されて嬉しいな。自分のことじゃないのに幸せな気分だ。
 しかも、ジェーンさんも彼女の攻撃力の高さを貶めていない。
 この兄妹、良い人たちだ。

 ジェーンさんの誤解(?)も解けたところで、ジェーンさんも話に加わることになった。
「あらためて馬鹿妹がすまない」
 兄としてジェイドさんが謝ったので、いえいえと苦笑いする。
 私もミミィの美しさを独り占めしたいので、ジェーンさんの気持ちがよくわかるのだ。
「こいつは昔から脳みそが筋肉で出来ているようで」
 しかし、ジェイドさんは昔から彼女の扱い方はわかっているようで、あまり甘やかさないで下さいというと、失礼なこと言わないでよぉと涙目になるジェーンさん。
 前世でも今生でも兄弟や姉妹がいなかった私には決して出会うことのなかった光景だ。
「本当のこと言っているだけだが」
 涙目になっているジェーンさんに追い打ちをかけるジェイドさん。
「一応、乙女なのにぃ」
「世の中の『乙女』に謝れ」
 兄の冷ややかな言葉に反論するが、それでも兄には敵わない。
 でも、すごく楽しそうだ。

 そこではたと気づく。
「ちなみに妹さんが加わるというのは」
「それいいな!」
 私の提案にジェーンさんは目を輝かせて体ごと前に乗りだしたが、ジェイドさんは滅茶苦茶渋い顔をした。なにか悪いことでも言っちゃったかな。
「それは勘弁してくれ。見ただろ? この暴走っぷり。戦闘力自体は期待できるが、ギルドに迷惑がかかるんじゃないか?」
 その説明になるほどと納得する。たしかにジェーンさんの暴走っぷりは、ミミィがいる限り収まることはないだろう。

 アイリーンと混ざったら、大変・・な気しかしない。
 多分、ミミィの場合は一個師団並みの戦力になるが、ジェーンとアイリーンの二人がコンビを組んだら一個師団並みの破壊力になるだろう。

『混ぜるな危険』

 私の頭の中にそんな言葉が思い浮かんだ。


 結局、ジェイドさんに言い含められた感はあるが、彼がパーティに入ってくれるのが純粋に嬉しかった自分もいた。
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