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悪役令嬢アデール・アイゼットは美しすぎる

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俺は、私は  悪役令嬢様がお好き

 悪役令嬢アデール・アイゼットは美しすぎる!



 たとえそれがどれだけ美しい人であろうと大嫌いな父や母から押し付けられた一度もあったこともなければ話したことのない相手と婚約などと言われば誰だってその相手のことを嫌いになるだろう。それこそまだ幼い子どもであったのなら、尚更だ。
 尚更なんだけど聞きたい!

 どうしてこんな美しくて完璧な人嫌いになれるの元俺!!

 傍にいるだけでドキドキし過ぎて辛いんですけど、なんで嫌いになっちゃったの。そんでなんで他の女(ヒロイン)なんかを好きになっちゃったの。もう彼女がいるだけで何もいらないじゃん。地位も名誉も金も要らない。彼女がいてくれたらそれだけで幸せじゃん。まあ、元から俺何も持ってなかったから持ってるやつの気持ちなんて知らないけど!!
 元俺の気持ちが全く分からないです!!

 だって俺の傍にいる彼女、アデール・アイゼットは本当に美しくて完璧なんだ。
 まるで絹でできたような長く艶めかしい黒髪。天から地へと降り注いだまだ汚れを知らぬ雪のような白い肌。ふっくらとし香しい色香を放つ唇。
 こんな人間見たことがない。語学力なんて欠片もないと言われている俺ですら彼女をたたえる言葉はいくらでも出てくる。本当に素晴らしいぐらい美しい。凛とした花のようだなんてその言葉は彼女のためにある。
 しかもその美しさだけでも彼女は国の宝レベルだけど、めちゃくちゃ賢い。国一番の才女で大人ですら彼女には向かうことができないほどの天才。社交界での振る舞いから始まって日常での些細な動作ですら優美で誰であろうと彼女に文句を言う事なんてできない。
 まさにパーフェクト。
 パーフェクトレディ。
 なのにもかかわらず、元俺と言うか、ゲームの中の攻略者だったリュカ・イーベルはアデールのことを毛嫌いしていたのだった。ゲームをしていた時からこの男いかれてやがる。俺だったら絶対彼女のことが好きになるのに。何処に嫌いになるのかって思っていたけど、こうして本人になり替わってみるとますます分からなかった。
 なぜか今日の朝気付いたら平凡な高校生だったはずの俺が姉ちゃんと一緒にやっている乙女ゲーム、その中の攻略対象が一人、イーベル王国の王子リュカになっていたけど、そんなこと忘れてしまうレベルに学校であった彼女が麗しすぎて辛いし、リュカの気持ちが全く分からない。
「……あの、どうされましたの。何か悪いものでもお食べになりましたか」
 戸惑う視線を向けてくる姿ですら美しい。どうやったらそんな美しくなれるか教えて欲しい。好きです。タイプです。貴方さえいれば他はもうどうだっていい。
 このゲームをやり始めたのだって姉がやっていたのを後ろから見て出てきた貴方に一目ぼれしたからでした。
 え、何そのキャラ激可愛いじゃんって言ったらじゃあやってみるって姉に言われてやり始めました。ただし姉は性格悪いので貴方が退治される悪役令嬢だなんてこと全く教えてくれませんでした。
 やり進んでみるとヒロインを手下を使って川に落としたり、王子にそれとなく悪口を吹きこんだりとしていてドン引きしたりしていましたがそれでも貴方は美しかった。強気に微笑むあなたを見てしまえばああ、好きって思ってしまいました。姉にあんたドMだったのねと引かれながらも貴方を愛しました。
 本当好みでした。今も好みど真ん中。寧ろこうして同じ世界で見ているとさらに美しさで好きになります。
 なんかリュカになり替わっていると気付いた時はアニメ画で見ていたキャラがリアルな現実になっていて、え、なんか気持ち悪い。気持ち悪いけどそんでもまあ、格好いいんじゃないのみたいな感じでしたが、貴方様は違う。
 一目見た瞬間からふつくしいから言葉が出てこなかった。
 アニメから飛び出てきたのかと思うぐらいに何も変わらない美しさ。思わず触れてみたくなるような黒髪。白い肌。ああ、でも触れたら汚してしまいそうで触れたくない。
 本当に美しい。
「ええと、何処かでお休みになられますか。私先生に行って空き教室の使用許可を取ってきますわ」
 ああ、待って去っていかないで。あまりの美しさに涙が出てしまっただけだから。感動し過ぎて言葉が出ていかないだけだから。行かないで欲しいけど行ってしまう。
 にしても歩き去る後姿さえ美しいなおい!
なんでそんなにすべて美しいのか教えて欲しいです。



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