死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

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第二部

先生の素顔と悪役令嬢

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「ですから、こういう場所ではですね……」
「ええーー、そんなことするの。それってする意味あるの? 面倒なだけじゃん」
「確かにそうなのですけど、ですが決まったマナーなのですよ。貴族であるなら当然できなければなりません。そこに意味など求めてはいけないのです」
「ええ、何それ」
 理解できないとさやかが悲痛な声を出すのにそうですわよねと心の中だけで同意いたしました。今さやかは貴族の令嬢として必要なさまざまなマナーについてミルシェリー様から教わっている所です。授業で受ける教科等の方はほぼ完璧。上位を狙えるまでになったのですが、マナーについては彼女はまだまだと言うしかないでしょう。
 どうも苦手意識が強いようですわ
 その気持ち分からなくもありません。貴族の世界にあるマナーや風習と言うものはこんなこと意味があるのかと思うことも多くあり、異世界で育った彼女には理解できないのでしょう。彼女だけでなく産まれたときからこの世界で暮らしている私たちですら何でこんなことするか分からないこととかも多くあるわけですし。ただそれをするのが当然だからとやっているだけで……。
 一応歴史を紐解いていけばどうしてそうするのか意味がわかったりするのですが、……今の時代には必要のないものが多すぎるのですよね。
 本当にそれが必要なのか、今一度整理してみたらいいと思うのですが、長いこと続けられていたことなので誰もそういうことを言い出せないのです。大人になり今よりもっと自分の立場を確固とした暁には提案してみようと思うことのひとつですわね。私も面倒事はできるだけ減らしたいですもの。
 ブランリッシュと仲直りができていこう私は今まで考えることをやめていた学園を卒業した後の未来についても考えることができるようになり、前よりもっとやりたいことが増えてしまいました。今までにまして忙しくなりましたが、それでも充実した毎日を過ごすことができています。今もさやかさんが勉強しているのを眺めながら今まで手を出して来なかった分野の勉強をしているところでした。
「トレーフルブラン様。そろそろ休憩などいかがですか。もう一時間以上続けていますし」
「そうですわね。丁度良いところですし一旦休憩いたしましょうか」
「では、お茶をお入れしますね」
 丁度よく集中が切れていたときに掛けられた言葉にありがたく頷きました。提案してくれたルイジェリア様が嬉しそうに笑いお茶を入れる用意をします。その周りではベロニカ様とティーラ様がバタバタと世話しなく動き回っているのですが、その姿を見つめているとついため息ではありませんが、息を吐き出してしまいました。感嘆の行きでしょうか。
 随分と彼女たちもこの部屋に馴染んだものだと思います。
 私たちが今いるのはお茶会室などではなく実はグリシーヌ先生の部屋なのでした。先生がいないのですが、本当は四人娘が勉強を教わりに来ていたところなのです。ただ先生が突然、用事ができた好きにしていてくれと言って出ていてしまったのです。でていてすぐは教わったことを復習していた四人娘も大体やり終わるとそれぞれ別のことをしだしましたわ。ミルシェリー様は何でか毎回ついてくるさやかさまに勉強を教え始め、他の三人は窓ふきやら本棚の整理など部屋の片付けを始めました。
 勉強を教わるようになってからは週に一回ほどのペースでお邪魔しているのに、何かお礼がしたいと彼女たちが言い出し、押しに負けた先生がならと提案したのです。忙しく片付ける暇がない上、散らかる感覚が早くどんどん部屋が汚れていくので来たときにでもちょっとだけでも片付けてくれと。
 それを聞いたときは魔法で一瞬なのに何故わざわざと思ったものだけどすぐにその理由が分かりましたわ。それは
「先生!! ちょい教えてもらいたいことがあるんだけど、……あれ? 先生いねえの」
「お帰りください!」
 ルーシュリック様のせいなのですよね。ルーシュリック様が部屋に来たら高確率で汚れていくと言う……。そのルーシュリック様が来てしまいましたからベロニカ様など警戒して猫のように毛逆立てています
「え、なんだよいきなり。酷くね」
「酷くありませんわ!  毎日毎日来た瞬間に部屋を汚す貴方が悪いのです」
「しかたねえじゃん。魔法失敗しちまうんだもん」
「仕方なくありませんわ! 失敗するとわかっているものを何で何度も何度もやるんですの! 先生の部屋をゴミ屋敷にでもするつもりですか!」
「いや、元々ゴミや、「はい?」
「できねえから繰り返すんだろ。繰り返すうちに出来るようになるんだよ。てか、先生は」
「出掛けてますわ。ご用事があるそうで」
「またあ。最近先生でかけるの多くねぇ。全然教えてもらえねえ。つまんねえ」
 口を尖らせながらルーシュリック様が隣の席に座られてきました。ぎろりとベロニカ様だけでなく他三人も睨み付けますが気づく様子はありません。もういいのですよと仕方なく私が首を振っておきました。ルーシュリック様の方にもそうですわねと会話を続けます。このままではベロニカ様の血管が切れてしまいそうでしたから。
「何か近々行事とかあっけ」
「特には何もありませんわよ。先生も個人的な用事だといっていましたわ」
「ふーーん。まあ、帰ってくるまで一人で練習しとくか」
「止めてください。帰ってください。部屋を散らかさないでください」
 落ち着いて待つと言えばいいものを言いませんからまたベロニカ様が低い声をだします。まあ、ルーシュリック様の魔法の失敗のせいで折角片付けた部屋が泥だらけになったり、動物に押し潰されたり、本棚全てが倒れたりと色々ありましたからね。前々からキツかった当たりがさらにきつくなっても文句は言えませんわよ。
「良いじゃん。失敗は成功のもと!」
「失敗しかしないじゃないですか。どうあがいても出来ないんですから諦めてください」
「やだ! 俺は諦めねえ!」
 二人の怒鳴り声が続きます。大声で怒鳴りあうのに勉強をしていたさやかさんやミルシェリー様もちらちらと気にしていました。それでも続ける辺りはなれてるなあと思います。ルイジェリア様も慣れているからはいときにせずお茶を差し出してきます。ありがたくいただきますわ
「あーー! 俺はいつか絶対空間魔法を会得するんだから邪魔すんな!」
「邪魔などしていませんわ。ただ無駄だといっているんです。やるなら自分の部屋でやってくださいな」
「自分一人でやっても無理だから先生に聞きにきてるんだよ」「それならおとなしく先生が帰ってくるのを待っていてください。先生が帰ってきてからなら文句も言いませんわよ!」
「それまで暇なんだもん!」
「知りません」
 にらみ合いがしばらく続きましたが勝ったのはベロニカ様でした。いつの間にか立ち上がっていたルーシュリック様は嫌々そうな顔をしながらも椅子に座り直します。ベロニカ様は満足そうな笑みを浮かべ警戒を残しながらも先生の部屋の片付けに戻りました。うーーと隣でルーシュリック様は唸ります。なんでだよと小さな声で呟いているのにはぁと呆れの息がもれました。
「部屋を汚くするからいけないんですよ。そうでなければあそこまで言いませんわ」
「だってよごれんだもん。そういやトレーフルブランも空間魔法使ってるよな。あれどうやってんの」
「どうやってと聞かれましても理論通りにしているだけとしか説明できませんが……。私が思うにルーシュリック様が空間魔法を使えないのは相性の問題なのではないのでしょうか。知っているとは思いますが、一応言っておきますと魔法は五つの元素をそれぞれ組み合わせることで発動いたします。空間魔法に使われるのは光と闇の二つの元素。ルーシュリック様は光とは相性がよいですが、闇とは最悪と言ってもいいレベルでしょう。闇の元素を使う魔法はどんなに簡単なものでもできていないでしょう。私も火の元素とは相性が悪くて殆ど使えませんしね。
 特に空間魔法は魔法の中でも上位に位置する難易度の高い上級魔法。相性が悪いのにできるようになるなど無理ですわよ」
「それでも俺は空間魔法が使えるようになりてえの!だって空間魔法って格好いいし超便利じゃん。他の魔法は闇系以外除いて全部できるし、何より先生だって闇の元素と一番悪いのに出来てるから俺もできるようになるはずなんだ」
「ええ!! 嘘でしょう」
「ホント! 前に先生から聞いた。相性が一番いいのは水で悪いのは闇だって」
「それて……」
 声が震えました。思い出すのはこれまで見てきた先生の数々の魔法。家具全てをルーシュリック様の部屋に移動したり、美しく部屋を装飾したり、果ては一番難しいとされる人を移動させることまで先生はしてしまいます。それも難しい呪文もなく指先を一つならすだけと言う簡単な動作で……
「やはり先生は只者ではありませんわね」
「だろ! 俺もいつか先生を越えるために空間魔法を覚えてやるんだ。あと少しでできそうな感じなんだから
 ホラ!」
「「「ああああ!!」」」
 一瞬のまでした。
 止める間もなく私が飲んでいた紅茶を指差したルーシュリック様は魔法を使ってしまったのでした。カップが消えます。みんなが身構え咄嗟に近くにあるものをつかんで頭を守りますわ。
 ばしゃーん!バリーン!
 目を思わず閉ざしていたところに響いた音。濡れなかったのに安堵したところゲッという蛙を押し潰したような鳴き声が聞こえてきました。何事かとルーシュリック様を見ますと、そこには顔を限界まで青ざめて振るえる姿が。見開かれた目が見つめるものを見ようとそちらに目を向けます。扉の方を見ていたので嫌な予感はしていましたわ。
 あ、という声が五人から落ちる。私からも落ちました。
 ルーシュリック様が見つめる先には丁度よく帰ってきた先生がいたのです。ポタポタと先生の髪から雫が垂れていきます。
 はっはと、乾いた笑い声がルーシュリック様から落ちました。先生からはとても冷たい何かが漂ってきます
「あ、あ、はっは。失敗しちゃった。ごめ、「凍れ」
 パチンと先生が指をならしました。先生が魔法を使うためにする動作です。それと同時にルーシュリック様は氷に覆われてしまいました。
「一応安心しろ。死なないようには調整してある。風邪は引くかもしれないが、世の中にはバカは風邪はひかんという言葉もあるるそうだしな。自分がバカかそうじゃないかしるいい機会になるだろう」
 無言になる室内。ですがそこでいい気味ですわと笑うベロニカ様の声が聞こえてきました。聞き流すことにしましたわ
「あ、それより先生、大丈夫ですか、今拭くものを」
「あ、私丁度タオルを持っていますの。どうぞ。使っていないものですので綺麗ですわ」
 いつルーシュリック様の被害にあってもいいようにと用意しておいて正解でした。鞄からすぐに取り出し先生に渡せます。
「悪いな。礼は今度する」
「礼なんて必要ありませんわ。いつも私たちの方がお邪魔させていただいていますし、なによりルーシュリック様を止められなかった私の責任もあります、もの」
 最後の声が小さなものになってしまいました。それでも言えただけ凄いでしょう。自分の目が極限まで見開いているのが分かるのですから。見えませんが妙にしーんとしてしまった気配からして周りも同じようになっていると思えますわ。
眼鏡を外し、濡れた前髪を後ろにかき揚げた先生は信じられないほど美形だったのでした。
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