死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

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第二部

悪役令嬢と秘密

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「まあ、なるほど。こう言うことでしたのね」
「ああ、やっと分かりましたわ」
「凄いですわ」
 キラキラとした目で四人娘が先生を見つめています。
「応用にはなるが……」
 それに先生が答えるのを私はじっと見つめます。
「嫉妬?」
「していませんわ」「超してる」
 二人ぶんの声がはもってまたは? と声が重なりました。えっと声のした方を見ました。ルーシュリック様と目が合います。
「していますの……」
「そりゃあ、だって先生、俺にはあんな丁寧に教えてくれないし、部屋だってなんか片付けてるしさ。するだろう。嫉妬。てか、何でトレーフルブランが答えるわけ」
「別に何でもないですわ」
「好きだからだよ」
「ちょ、さやかさん何を言って」
「え……」
 にこにこ笑顔のさやかさんに咎める声をあげればルーシュリック様は情けない声をあげて固まりました。
「えーー、好きって。……でも前あんなに先生のこと酷評してたじゃん!」
「乙女心はいろいろ複雑なんだよ。ねえ、トレーフルブランさん」
 そこで同意を求められても答えにくいですわよ。その通りですけども
「えーー、なんだよそれ。まあ、確かに先生はすげえ先生だからしかたねえけど。でも先生の一番弟子は俺だからな。先生に一番魔法を教えてもらうのは俺!!」
「「は?」」
 今度はさやかさんと声が被ってしまいました。二人して何を言うのだろう。この人はという顔で見てしまいます。私の視線を受けてルーシュリック様は首をかしげます。
「だって先生が好きなんだろう。魔法を教えてもらいたいんじゃないの」
「いや、恋人になりたいとかの好きなんだけど……。むしろなんでルーシュリックはそっちの方だと思ったの」
「え、そうなの! まじか!」
 驚いた声をあげるルーシュリック様に私の方が驚きですわと内心いっています。さやかさんの言う通り何でそんな風に思ったのか。男女の違いとかかしら?
「へぇ、先生ね。まあ確かに魔法の腕は本気で凄いし、先生の魔法さえあれば何でもできる」
「「……」」
「魔法しか言うことないの」
「え??」
 あーー、言ってしまいましたわね、さやかさん。ルーシュリック様は不思議な顔をします。
「え、だって先生の良い所って魔法だけじゃねえ」
「そ「おい、こらルーシュリック。聞こえているぞ、このバカ!!」
「ゲッ、先生ごめ、いたーーー!!」
 ルーシュリック様の頭上から五つほどのタライが降ってきました。咄嗟にルーシュリック様は魔法を使い三つは避けましたが、四つ目が頭に落ちて五つ目も落ちました。頭を抑えてルーシュリック様が唸ります。
 良い気味ですわ。
「五個はずるい!」
「素早く魔法を使えるようになれ。それができたら五個ぐらい余裕で避けられるようになる。もっといけばいくつ降ってきても大丈夫になる。なんならためしにお前も俺に落としてみるか」
「え! いいの!! 先生に落としていいの!! まじか、やいー」
「どうした、ルーシュリック」
「何でもないですわ。グリシーヌ先生。それよりミルシェリー様たちに教えてあげてくださいな」
「……ああ」
 ルーシュリック様がじと目で睨み付けてきますが私は知らないふりで紅茶を飲みます。
「トレーフルブランさんの前で変なことしちゃだめだよ。女の子だもん。好きな人には変なことされたくないんだよ」
「変なの」
 それは女子も男子も関係ないと思いますが。ルーシュリック様が変なだけではとさやかさんとルーシュリック様の会話に思いましたが……、まあ言うのはよしましょう。
「てか、好きならあれ良いの。超鼻の下伸ばしてるけど」
「何処がですか」
「だってみろよ。先生俺に教えるより数倍優しく教えてるぜ。トレーフルブランならわかるだろう。先生いつも俺にはどれだけ厳しいか! さやかだって先のあれ見て分かるだろう」
 ルーシュリック様が指差す先生と四人娘を見ます。いくつかの本を開いて丁寧に教えていく先生。確かにルーシュリック様に教えるのとは随分違います。前回やさっきのようにルーシュリック様には体で教え込む手法のことが多いですからですが、それは……。
「ルーシュリック様が言葉で理解することの出来ないバカだからでしょう。ルーシュリック様は本などで読んで学ぶんじゃなく誰かがやっているのを見たり、実際やってみて体で学ぶタイプですから。先生はそれに合わせているだけでわ」
「私にも先生はあんな感じですよ」
 まじかーーとルーシュリック様が声をあげます。えーー、まじかよ、嘘だろーーと何度も連呼するルーシュリック様。私から言わせたら貴方が一番嫉妬の対処なのですがねとは言わないでおきます。
「にしても先生ね……」
 ルーシュリック様がしみじみと呟きます。
「付き合ってるの」
 四人娘でよくみるキラキラとした目をルーシュリック様がしました。
「いえ、付き合ってはいませんよ。私の片想いです」
「なら付き合うつもりはあるの!」
「……それは今のところはないですが」
「ないのかよ!」「ないの!」
 二人が大声で怒鳴りました。立ち上がってもいるので二人から私は慌てて目をそらしました。四人娘と先生がぎょっとした顔で二人を見ているのです。
「どうしたんですの。ルーシュリック様」
「ついに頭がいかれたかルーシュリック」
「さやかさんもどうしました」
 ベロニカ様、グリシーヌ先生、ミルシェリー様が声をかけるのにさやかさんは、あ、なんでもないのごめんねと言ってあっさり椅子に座りますが、ルーシュリック様はそれがなんて言い出してしまいます。あっと思い魔法を使おうとする前にさやかさんが動きました。ルーシュリック様を無理矢理椅子に座らせて何でもないのなんて笑います。
 ナイス、よくやりましたわと久しぶりに心からさやかさんを誉めました。それでも五人は不振な目で見つめてきますので気にしないでくださいませと私の方から笑って言いました。
「トレーフルブラン様がそう言うなら」
 四人娘はあっさりと興味をなくして先生に続きを乞います。先生はまだ気にしているようでしたが、四人娘が教えを乞うのにそちらに意識を向けました。
「え、トレーフルブランさん。どういうこと」
 五人が夢中になり出してからさやかさんが問いかけてきます。
「何がですか」
「先生と付き合う気がないって。グリシーヌ先生とトレーフルブランさんお似合いなのにどうして」
「そうだぞ。どうして付き合わないんだよ。さっさと告白して付き合えよ」
「当然でしょう。先生と付き合うだなんて普通考えられませんよ。私はともかく先生が何か言われたらどうするんですか。それに私一度振られてますもの」
「あーー、そっか。え、てっか振られてるの」
「ええーー」
「はい。そう言った風には考えられないって」
「そうなんだ」
 なら仕方ないねと聞かれた時用に用意していた当たり障りない理由であっさりとさやかさんは納得しました。でも考えられないって事は今はって事だし。頑張ればいけるよ。学園卒業したら先生ゲットを頑張ろうなんて明るく言ってきます。まあ、そのとき考えますわなんて言葉を濁して答えておきました。
 面倒なのはルーシュリック様の方。
 ええーー、そんなこと気にしなくて良いじゃんと物凄い勢いで落ち込んでいます。まるで当人のような落ち込みように少し引いてしまいますわ。
「え、なんでそんな反応なの」
 さやかさんも軽くひいてルーシュリック様に問いかけていました。
「だって付き合ったりしたら先生のいろんな反応聞けそうじゃん」
「「はい?」」
 首をかしげる二人にルーシュリック様が声を潜めています。
「だって先生、秘密主義なんだもん」
「秘密主義」
「そう。もう四年もの付き合いなのに俺先生のことほとんど知らないのに、知ってるのなんてバカがバカが嫌いで甘いものが好きぐらいだぜ」
「え、先生甘いものが好きなんですか!」
「え、ああ。好きだけど。毎日のように甘いもの食べてるし」
「へぇ、そうなんですの」
「やったね! トレーフルブランさん」
 にやにやとした声でさやかさんが言うのでええと返すのは止めてしまいました。ルーシュリック様はキョトンとした表情をしてからまあ、いいやと切り替えます。
「まあ、そんな感じで先生秘密主義でさ。この学園来る前は平民だったて言うんだけど何処でなにをしていたのかとかは絶対言わないし。昔話とかそれとなく聞いてみても絶対はぐらかしてくるの。他人にはあんまり興味ないけどでもあそこまで隠されると気になってくるだろ。
 恋人になったら色々教えてくれるかもだし」
 だから頑張ってさ。なあなあとルーシュリック様が言ってきます。お願いお願いと見つめてくる姿は犬のようで、その後ろに尻尾を降る幻覚が見えるような気がしました。
「嫌ですわよ。先生とそうなるつもりは今のところ欠片もないのです。それにです、仮にもし先生と付き合うことになったとしても、先生が嫌がるのなら過去の詮索とかはしたりしませんわ」
「えーー」
 ルーシュリック様が不満げな声を出しました。さやかさんも少し残念そうな顔をしました。まあ、私も気になるのは本当ですからね。
「つまんねぇーーの。
 あーーーー!! 先生!俺にもそろそろ魔法教えてくれよ!!」
 八つ当たりをするようにルーシュリック様は叫びました。先生のところに飛び付いていきます。
「黙れ。お前は少しはおとなしくできんのか」
「ぎゃん!! 
 だって……、魔法してないと暇なんだもん!! 教えてよ!教えて!」
 飛び付きましたが、何か壁のようなものにぶつかって床に落ちました。情けない声を出した後に騒ぎ出します。五人、ルーシュリック様が加わって六人になった場所が一気に騒がしくなりました。
 それを見つめているとさやかさんが私の名を呼びました。
「私はさ二人のことずっと応援してるから。頑張ってね、トレーフルブランさん」
「お姉ちゃん。お菓子、もうないの」
「もっとほしい」
「お姉ちゃん」
 幼い声が私を呼びます。
「またまだありますわ。ほらみんなで仲良く食べてね」「わーい」
「ありがとう」


 放課後、私は町の方に来ていました。中心地から離れた場所のひとつで子供たちに作ったお菓子を配って行きます。ここしばらくの調査で大体の子供の数はわかり必要な資金も分かってきました。おおよそ予想通り今は資金をどうやりくりするのかを考えるのに頭を悩ませています。
 考えながらもまずはやれるところからやっていこうと思いまずは子供たちと仲良くなって信頼を築こうとしています。一日二ヶ所それぞれの場所を回って子供たちと触れあっています。今日はお土産に手作りのお菓子を作ってきました。
 だいぶ仲良くなったので、喜んでたべてくれます。可愛い笑顔でありがとうって。子供は癒されますね。
「ねえ、お姉ちゃん。こっちで遊ぼう」
「面白い遊び思い付いたんだよ」
「まあ、そうなんですのね。是非教えてくださいな」
 子供たちに腕を引かれて歩いていきます。ふっとその途中私はあれと思い立ち止まりました。
「どうしたの?」
「お姉ちゃん?」
 子供たちが見上げつけるのに何でもないのよと返しましたが……、気のせいでしょうか。先の姿知っている人のような……

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