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悪役令嬢と賑やかなその周囲
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「なあなあ」
「ねぇねぇ」
「うるさいですよ。貴方方」
「トレーフルブラン様の邪魔になるでしょう」
「そうです。早くここから出ていきなさいな。毎日のように来て」
「トレーフルブラン様の忠告を全然聞かなかった方が今さら仲良くできるなんて思わないで。優しさに漬け込むなんて私たちが許さないんですから」
騒がしい声に頭痛が酷くなるのを感じます。吐き出しそうになった息を抑えれば私は落ち着こうとお茶を飲みます。
目の前にはおいしそうなお菓子。それを一口かじりながら私はああと思います。こんな所でのんびりお茶を楽しんでいる場合でもないというのに私は……ここしばらくずっとこんな生活を送っています
年度末のパーティー。あの日から学園は変わってしまいました。今まで何とか生徒たちのトップに立ち導く立場を守っていたセラフィード様が急落。他四人と共に信用を失い立場のない身。学園の多くの者が彼らを避けていきます。教師すら彼らを今は腫れもののように扱う始末です。
代わりにトップに立ってしまいました私の方は特に変わりなく……
罪悪感めいたものを抱いてしまいます。
本来なら彼らは皆から持ち上げられるようになるはずでしたのに……。私が失敗してしまったからこんな事に。
如何にか彼らの信頼度を回復したいのですが、今の所難しく私は後一か月後の魔王復活まで待ってもらう事にしました。魔王を倒すことにさえ成功したら彼らの信用度も回復するでしょう。レベル的には少し不安な所もあったのですが、彼ら自身があの日から少し変わって毎日勉強や訓練をしているようなのです。
きっと一か月後の彼らならうまくいくでしょう。
変わっていないのは私と……、後ブランリッシュです。
彼はあの日からも前と一つ変わりありません。私の事を憎しみの籠った目で見つめてきます。ただ話すことだけはなくなりました。彼は遠くから私を見つめてきますが近づいてくることはしないのです。
何が彼をそうさせるのか考えようとして私はいつも止めてしまいます。考えても意味のないことだからです。そう云う事にしなくてはいけないから。
幸い彼がこのままだとしても魔王を倒すことはできるはずです。ルーシュッリクとの件もなんなく解決できそうです。と云うのも魔王倒すのに一番重要となるさやかさんが今や毎日のようにルーシュリックと共に私のもとにくるのです。
始まりは年末度パーティーから暫く経った日です。
年末度のパーティーが終わるとそのまま春休みですので二週間程度の休みがあるのですが、その休みの後ひょっこりとさやかさんは一人私の元にやってきました。彼女から私の元にやってきたのは初めての事で何をしに来たのかと目を瞬く私の前でごめんなさいとさやかさんは頭を下げました。
「ごめんなさい。私のせいで。あんなことになっちゃって……。謝っても許されるようなことじゃないかもだけど、それでも私これから償っていくから」
涙声になりながら告げる彼女は今まで見てきたどんな顔よりも強い決意を秘めた顔をしていました。
あっ、と思いました。その姿を何処かで見たことがあると思ったからです。
それが画面の中でだと気付いてそんなと思います。
だってそれはまた早いはずと……そう思いました私に彼女はもう一度頭を下げます。
「お願いです。トレーフルブラさん。私にこの世界での生き方。この世界の事や令嬢としての立ち居振る舞い方を教えてください」
何を言われたのか咄嗟に理解できませんでした。それでも私はどう云う事なのと聞きます。勿論令嬢としての姿を崩したりしません。そんな私をさやかさんの強い目が見つめます。
「私は今までずっとこの世界の事をちゃんと見てませんでした。
色んな人にこの世界の常識やこの世界での生き方を教わってきたけど聞こうともしなかった。
怖かったんです。
そうする事でこの世界に私が染まってしまうことが。この世界の人はみんな突然やってきた私にも優しくしてくれて受け入れてくれたけど、私は受け入れられなかった。私。ずっと帰りたかった。お母さんやお父さん、友達がいる私の世界に。
でもどうやって帰ればいいのか分からないし、帰る方法なんてどこにもないかもしれない。
私が帰る世界のことを知っているのは私一人で。もし私がこの世界に染まって少しでも向うの事を忘れたら向こうの世界の事全部なかったことになるんじゃないかって思ったんです。みんなの事とかなくなっちゃうんじゃないかってそう思うと怖くて。
だからみんながよく思わないのを承知で私意地を張り続けました。私の世界での振る舞いをし続けた。でもそれであんなことが起きて私間違っていたんだって分かったの」
さやかが涙目になりながら話す内容を私はぼんやりと聞いていました。
その話は知っています。
ゲームの最後で明かされるさやかの本心
家に帰りたい。十六年生きてきた場所に戻りたいという当たり前の思いです。彼女はセラフィード様たちの傍で明るく笑いながらもその心をずっと抱え続けていたのです。
でもそれをまさかここで話すとは。
しかもこの様子ではそれを一人自力で乗り越えてきたようにも思います。ゲームと展開が違います。まあ、随分変わってしまっているからそう云う事もあるのでしょう。でも困りましたわ。こうなってしまうと魔王を倒す時に何が起こるか……。
私は考えながらそうと呟きました。
そしてそれでと言います。それであなたはどうするというのと。
さやかがギュッと掌を握りしめました。苦しそうな顔をしながらそれでも決然と言葉にします。
「あの人たちセラフィードを立派なレディとなって支えようと決めました。
もちろんあなたと云う凄い人がセラフィードに居ることは分かってる。だけど貴方とあの人たちの間には色々ありすぎて支えきれない部分があると思うの。だから私はその部分を支えたい。そして支えるためにあの人の傍にいていい存在になりたい」
真っ直ぐな目でした。嘘の一つもない真っ直ぐな。
だからこそ私は不思議になります。彼女ならきっと気付いているはずなのにと。
「あの人と貴方恋人同士なんでしょう。私がいるから違うけど……でも好きだって言い合った仲なんでしょう」
「そうです」
「だけど、あの人」
「知ってます。本当の意味で好きなわけじゃない。あの人の中心には貴方がいる。でもそれで良かったんです。
一番が私じゃないから私も安心して好きだと云えました。もし帰れる日が来たとしても置いていくことを辛く思わないでもすむし、私もただ寂しさを埋める何かが欲しかっただけだったから。それがあの人だった。セラフィード達は私が元の世界での振る舞いをし続けることを許してくれて私を私の世界ごと受け入れてくれたようでうれしかったの。
たとえあなたへの劣等感を埋めるための道具とされていたんだとしても。
あの人たちが何をやっていたのか全部知ってる。
でも私にはあの人たちを責める権利はない。私もおなじことをしていただけだから」
「ならなんで……」
思わず問いかけてしまったことに彼女は笑いました。
「それでも彼らの事が好きなんです。例え利用し利用していたに過ぎなくてもその気持ちに変わりはないの
だからパーティーの日恥ずかしくなっちゃった。陥れられてもあの人たちを貴方が守ろうとしているのを見て何て自分の事しか考えてなかったんだろうって。自分のしている行動がどういう結果になるか何て私は考えてなくて、それでこんな結果を招いちゃった。
だから私決めたの。
自分の世界の事を忘れるわけじゃない。私が生まれたのはここじゃない別の世界。それは変わらない。でもこの世界で生きていこうって。
この世界であの人たちを支えて生きていこうって。だからお願いです。今さらだって分かっています。ぶしつけなことも承知してます。
それでも私にこの世界での生き方を教えてください。貴方みたいにあの人たちを支えられるようになりたいの」
その目が兎に角真っ直ぐでだからいいわよなんて言ってしまいました。
以来さやかさんは普段はセラフィードの傍に居ながらも、放課後のお茶会の時間になりますと私の元に来ます。レイザード様も一緒に。セラフィード様たちが傍にいないときぐらいは近くにいたいらしいです。セラフィード様とレイザード様の中はまだ直ってはいませんがさやかさんを間に通して徐々に直りつつあります。彼女を伝書鳩のようにして会話をしているのだとか。
もう直接会えばいいのにと思いますが、まだセラフィード様の高いプライドがそれを許さないらしいです。それでも時間の問題だろうとは思います。魔王が復活することにはきっと絶縁状態も回復しているでしょう。
そしてさやかですが私の厳しい授業にも何とかですがついてきていて大幅なレベルアップをしています。それに私だけでなく少女達も手伝ってくれます。
「ああ、だからそこは違いますわよ」
「え」
「何度言えばわかるんですか」
「あ、そこも違います」
「ええ」
最初にお茶会で顔を合わせた時は嫌悪感たっぷりでしたが顔を合わせ続けるうちに仲良しに。口では何だかんだ嫌味を言っていますがさやかの勉強も見てあげてくれています。むしろ私の分まで奪っていく始末です。少女たち曰く私が勉強を教えてやるようなレベルではないと。もっとできるようになってからではないと私の時間の浪費になってしまう。だから私たちに任せてくださいとのことだ。
今日もさやかに授業をするはずだった時間に何をやっているのでしょうと思いながらお茶を飲みます。
頭がずきりと痛みました。
ここしばらく続いている頭痛です。原因は分かっています。今のこの状況です
このぶらんぶらんな状況です
この状態を如何にかするべきなのに私は考えることを放棄しています。考えようとしても別の事が浮かぶのです。
あの男の言葉が浮かびます。
あんな奴の言う事なんてと思いますのに……それを否定しきれないでいるのです。分からないのに違うとも言い切れない。
さやかの強い目を思い出します。
あの強い目でさやかさんは私を見て自分を恥ずかしいと思っただなんて言いました。だけどそんなことはないのです。私も彼女と同じ、いいえ、彼女よりもっと酷い。
彼女は私を凄いと言いました。だけどそんなこともありません。
私は凄くもなく強くもない。……とても弱いです。だって。
ふっと彼女たちを見つめていたら彼女たちと目があいました。
六人が笑います。気付いたら私の傍も随分賑やかになっていました。前も取り巻きはいましたがいつでも私の顔色を伺い私を怒らせないように気に入られるようにと気にしながらお話をする方ばかりだったのでこんなに賑やかなのは初めてです。
それが悪いわけではないのです。むしろいいなと思います。ああ、でもやはり悪いのですか……。
「トレーフルブラン様。新しいお茶入りませんか」
「いろんな種類をご用意していますよ」
「あ、じゃあ私がいれる」
「さやかさんにはまだ早いです。私の目が黒いうちはいれさせません」
「じゃあ、俺‼ 最近魔法でお茶を入れるのにはまってよ。先生にはまだまだだって言われてるんだけど今ならうまくいける気がする」
「何ですかその妙な自身は。そんな実験感覚で入れたお茶をトレーフルブラン様に渡せるわけないでしょう」
ぎゃあぎゃあと六人が騒ぎます。仲のよさげなその姿はとても楽しそうで。私も思わず笑ってしまいます。
ああ、どうしましょう今私……死にたくないなと思っています。
死ななくちゃいけないのに
「ねぇねぇ」
「うるさいですよ。貴方方」
「トレーフルブラン様の邪魔になるでしょう」
「そうです。早くここから出ていきなさいな。毎日のように来て」
「トレーフルブラン様の忠告を全然聞かなかった方が今さら仲良くできるなんて思わないで。優しさに漬け込むなんて私たちが許さないんですから」
騒がしい声に頭痛が酷くなるのを感じます。吐き出しそうになった息を抑えれば私は落ち着こうとお茶を飲みます。
目の前にはおいしそうなお菓子。それを一口かじりながら私はああと思います。こんな所でのんびりお茶を楽しんでいる場合でもないというのに私は……ここしばらくずっとこんな生活を送っています
年度末のパーティー。あの日から学園は変わってしまいました。今まで何とか生徒たちのトップに立ち導く立場を守っていたセラフィード様が急落。他四人と共に信用を失い立場のない身。学園の多くの者が彼らを避けていきます。教師すら彼らを今は腫れもののように扱う始末です。
代わりにトップに立ってしまいました私の方は特に変わりなく……
罪悪感めいたものを抱いてしまいます。
本来なら彼らは皆から持ち上げられるようになるはずでしたのに……。私が失敗してしまったからこんな事に。
如何にか彼らの信頼度を回復したいのですが、今の所難しく私は後一か月後の魔王復活まで待ってもらう事にしました。魔王を倒すことにさえ成功したら彼らの信用度も回復するでしょう。レベル的には少し不安な所もあったのですが、彼ら自身があの日から少し変わって毎日勉強や訓練をしているようなのです。
きっと一か月後の彼らならうまくいくでしょう。
変わっていないのは私と……、後ブランリッシュです。
彼はあの日からも前と一つ変わりありません。私の事を憎しみの籠った目で見つめてきます。ただ話すことだけはなくなりました。彼は遠くから私を見つめてきますが近づいてくることはしないのです。
何が彼をそうさせるのか考えようとして私はいつも止めてしまいます。考えても意味のないことだからです。そう云う事にしなくてはいけないから。
幸い彼がこのままだとしても魔王を倒すことはできるはずです。ルーシュッリクとの件もなんなく解決できそうです。と云うのも魔王倒すのに一番重要となるさやかさんが今や毎日のようにルーシュリックと共に私のもとにくるのです。
始まりは年末度パーティーから暫く経った日です。
年末度のパーティーが終わるとそのまま春休みですので二週間程度の休みがあるのですが、その休みの後ひょっこりとさやかさんは一人私の元にやってきました。彼女から私の元にやってきたのは初めての事で何をしに来たのかと目を瞬く私の前でごめんなさいとさやかさんは頭を下げました。
「ごめんなさい。私のせいで。あんなことになっちゃって……。謝っても許されるようなことじゃないかもだけど、それでも私これから償っていくから」
涙声になりながら告げる彼女は今まで見てきたどんな顔よりも強い決意を秘めた顔をしていました。
あっ、と思いました。その姿を何処かで見たことがあると思ったからです。
それが画面の中でだと気付いてそんなと思います。
だってそれはまた早いはずと……そう思いました私に彼女はもう一度頭を下げます。
「お願いです。トレーフルブラさん。私にこの世界での生き方。この世界の事や令嬢としての立ち居振る舞い方を教えてください」
何を言われたのか咄嗟に理解できませんでした。それでも私はどう云う事なのと聞きます。勿論令嬢としての姿を崩したりしません。そんな私をさやかさんの強い目が見つめます。
「私は今までずっとこの世界の事をちゃんと見てませんでした。
色んな人にこの世界の常識やこの世界での生き方を教わってきたけど聞こうともしなかった。
怖かったんです。
そうする事でこの世界に私が染まってしまうことが。この世界の人はみんな突然やってきた私にも優しくしてくれて受け入れてくれたけど、私は受け入れられなかった。私。ずっと帰りたかった。お母さんやお父さん、友達がいる私の世界に。
でもどうやって帰ればいいのか分からないし、帰る方法なんてどこにもないかもしれない。
私が帰る世界のことを知っているのは私一人で。もし私がこの世界に染まって少しでも向うの事を忘れたら向こうの世界の事全部なかったことになるんじゃないかって思ったんです。みんなの事とかなくなっちゃうんじゃないかってそう思うと怖くて。
だからみんながよく思わないのを承知で私意地を張り続けました。私の世界での振る舞いをし続けた。でもそれであんなことが起きて私間違っていたんだって分かったの」
さやかが涙目になりながら話す内容を私はぼんやりと聞いていました。
その話は知っています。
ゲームの最後で明かされるさやかの本心
家に帰りたい。十六年生きてきた場所に戻りたいという当たり前の思いです。彼女はセラフィード様たちの傍で明るく笑いながらもその心をずっと抱え続けていたのです。
でもそれをまさかここで話すとは。
しかもこの様子ではそれを一人自力で乗り越えてきたようにも思います。ゲームと展開が違います。まあ、随分変わってしまっているからそう云う事もあるのでしょう。でも困りましたわ。こうなってしまうと魔王を倒す時に何が起こるか……。
私は考えながらそうと呟きました。
そしてそれでと言います。それであなたはどうするというのと。
さやかがギュッと掌を握りしめました。苦しそうな顔をしながらそれでも決然と言葉にします。
「あの人たちセラフィードを立派なレディとなって支えようと決めました。
もちろんあなたと云う凄い人がセラフィードに居ることは分かってる。だけど貴方とあの人たちの間には色々ありすぎて支えきれない部分があると思うの。だから私はその部分を支えたい。そして支えるためにあの人の傍にいていい存在になりたい」
真っ直ぐな目でした。嘘の一つもない真っ直ぐな。
だからこそ私は不思議になります。彼女ならきっと気付いているはずなのにと。
「あの人と貴方恋人同士なんでしょう。私がいるから違うけど……でも好きだって言い合った仲なんでしょう」
「そうです」
「だけど、あの人」
「知ってます。本当の意味で好きなわけじゃない。あの人の中心には貴方がいる。でもそれで良かったんです。
一番が私じゃないから私も安心して好きだと云えました。もし帰れる日が来たとしても置いていくことを辛く思わないでもすむし、私もただ寂しさを埋める何かが欲しかっただけだったから。それがあの人だった。セラフィード達は私が元の世界での振る舞いをし続けることを許してくれて私を私の世界ごと受け入れてくれたようでうれしかったの。
たとえあなたへの劣等感を埋めるための道具とされていたんだとしても。
あの人たちが何をやっていたのか全部知ってる。
でも私にはあの人たちを責める権利はない。私もおなじことをしていただけだから」
「ならなんで……」
思わず問いかけてしまったことに彼女は笑いました。
「それでも彼らの事が好きなんです。例え利用し利用していたに過ぎなくてもその気持ちに変わりはないの
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それでも私にこの世界での生き方を教えてください。貴方みたいにあの人たちを支えられるようになりたいの」
その目が兎に角真っ直ぐでだからいいわよなんて言ってしまいました。
以来さやかさんは普段はセラフィードの傍に居ながらも、放課後のお茶会の時間になりますと私の元に来ます。レイザード様も一緒に。セラフィード様たちが傍にいないときぐらいは近くにいたいらしいです。セラフィード様とレイザード様の中はまだ直ってはいませんがさやかさんを間に通して徐々に直りつつあります。彼女を伝書鳩のようにして会話をしているのだとか。
もう直接会えばいいのにと思いますが、まだセラフィード様の高いプライドがそれを許さないらしいです。それでも時間の問題だろうとは思います。魔王が復活することにはきっと絶縁状態も回復しているでしょう。
そしてさやかですが私の厳しい授業にも何とかですがついてきていて大幅なレベルアップをしています。それに私だけでなく少女達も手伝ってくれます。
「ああ、だからそこは違いますわよ」
「え」
「何度言えばわかるんですか」
「あ、そこも違います」
「ええ」
最初にお茶会で顔を合わせた時は嫌悪感たっぷりでしたが顔を合わせ続けるうちに仲良しに。口では何だかんだ嫌味を言っていますがさやかの勉強も見てあげてくれています。むしろ私の分まで奪っていく始末です。少女たち曰く私が勉強を教えてやるようなレベルではないと。もっとできるようになってからではないと私の時間の浪費になってしまう。だから私たちに任せてくださいとのことだ。
今日もさやかに授業をするはずだった時間に何をやっているのでしょうと思いながらお茶を飲みます。
頭がずきりと痛みました。
ここしばらく続いている頭痛です。原因は分かっています。今のこの状況です
このぶらんぶらんな状況です
この状態を如何にかするべきなのに私は考えることを放棄しています。考えようとしても別の事が浮かぶのです。
あの男の言葉が浮かびます。
あんな奴の言う事なんてと思いますのに……それを否定しきれないでいるのです。分からないのに違うとも言い切れない。
さやかの強い目を思い出します。
あの強い目でさやかさんは私を見て自分を恥ずかしいと思っただなんて言いました。だけどそんなことはないのです。私も彼女と同じ、いいえ、彼女よりもっと酷い。
彼女は私を凄いと言いました。だけどそんなこともありません。
私は凄くもなく強くもない。……とても弱いです。だって。
ふっと彼女たちを見つめていたら彼女たちと目があいました。
六人が笑います。気付いたら私の傍も随分賑やかになっていました。前も取り巻きはいましたがいつでも私の顔色を伺い私を怒らせないように気に入られるようにと気にしながらお話をする方ばかりだったのでこんなに賑やかなのは初めてです。
それが悪いわけではないのです。むしろいいなと思います。ああ、でもやはり悪いのですか……。
「トレーフルブラン様。新しいお茶入りませんか」
「いろんな種類をご用意していますよ」
「あ、じゃあ私がいれる」
「さやかさんにはまだ早いです。私の目が黒いうちはいれさせません」
「じゃあ、俺‼ 最近魔法でお茶を入れるのにはまってよ。先生にはまだまだだって言われてるんだけど今ならうまくいける気がする」
「何ですかその妙な自身は。そんな実験感覚で入れたお茶をトレーフルブラン様に渡せるわけないでしょう」
ぎゃあぎゃあと六人が騒ぎます。仲のよさげなその姿はとても楽しそうで。私も思わず笑ってしまいます。
ああ、どうしましょう今私……死にたくないなと思っています。
死ななくちゃいけないのに
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