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魔王の娘と平和の式典
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魔王の娘と平和の式典
「お疲れ様です。勇者様にお父様」
「うん。お疲れ様。退屈じゃなかったかな大丈夫」
「はい。勇者様が凄く格好良かったので見ているだけで楽しかったです。お父様もとても格好良かったです」
式典が終わった後、勇者と魔王の二人はすぐにマーナが待つ部屋へと来ていた。二人を出迎えたマーナがにこにこと幸せそうに笑っていて、勇者は優しく微笑みかけるが、魔王の仏頂面は変わらなかった。眉間一つ動かない中で、魔王はマーナの言葉に頷き、そしてでは帰ろうと手を伸ばしていた。
差し出された手をマーナがじっと見つめる。
えっと言ったのはマーナではなく勇者や斧使いであった。
「まさかもう帰るのかよ。折角来たんだから屋台ぐらい楽しんでいけよ。マーナちゃんだって魔王と一緒に回れるの楽しみにしていたのに」
「なに」
「そうですよ。一緒に出掛けるなんてめったにないんでしょう。それなら楽しんでいってあげないと」
勇者の言葉に眉を寄せた魔王。すかさず斧使いが援護する。じっと見上げていたマーナが駄目とその目元を潤ませていた。お父様と悲し気な声が出ていく。
ぐっと魔王の喉がなる。
娘を溺愛し、娘の一言で進撃を取りやめてしまうような魔王にとってその攻撃は何よりも大きい防護などしようもないものであった。
分かったと魔王の口から絞り出すような声が聞こえてマーナの目が輝く。華が開くように満面の笑顔になるマーナに良かったねと勇者と斧使いがそれぞれ声を掛けてじゃあ行こうかと魔王とマーナの二人に言っていた。
はいとマーナが二人の傍まできて魔王に手を伸ばす。行きましょうと娘が笑うのに魔王が嫌だと言えるはずもない。
ああと差し出されるマーナの小さな手を取っていた。
町の中を勇者とマーナ、斧使いに魔王というはたから見ると大変奇妙な組み合わせの一行が歩いていた。魔王の視線は先ほどからあちこちに動いて回り待ちの中の色々なものを見ていた。その中でもやはり飾り付けられた屋台には目がいき、ずっと見ている。
楽しんでいるようにも思えなくはないが、魔王の顔は変わらない。
町の中を探索できて喜んでいるのか、もしくは呆れているのかどちらとも取れそうな顔で、勇者も斧使いも判断に困っていた。マーナがお父様とてもはしゃいでいますと言っても信じられないぐらいだった。
「よくマーナちゃんって魔王の機嫌分かるよな。俺一生かかっても分からない気がするのに」
「あれでいてお父様って案外単純なんですよ。自分が知らない事にはそれがどんなことでも知ろうとしますし、興味が出た対象はじっと見つめているからすぐに分かりますし」
「そうなんだ」
二人の眼差しが魔王を見つめる。魔王は歩きながら屋台を一瞬真顔で見ていたかと思うとすぐに違う場所を見ている。分かるかとアイコンタクトを取りながらどちらも首を振っている。
「家屋ってやっぱりすごいものなんだね。あ、そう言えば今日はスイレイ君こなかったんだね。てっきり三人で来るかと思ってたんだけど」
「あ、スイレイは今日ちょっと用事がありまして。でもたいしたことじゃないので大丈夫ですわ。
それより勇者様、、ほらあれお父様が気になっているようなので助けてあげてください。お店の人、委縮しているみたいで」
ひとしきり感心した勇者はその後引っ掛かりそれで後から聞こうと思っていたことを思い出した。
残り時刻を聞いたマーナの声が若干震えたもののすぐに笑って答え、そして魔王を指さしていた。魔王はじっと屋台の中を見ている。ああ、と勇者が動く前にマーナが動いていて、これはねと魔王に教える。
魔王は静かに腰の丈ほどまでしかないマーナを見下ろしそしてその頭をなでていた。
ありがとうと低くいかつい声が言うが、いつもよりかは若干可愛いものだろうか。ではあれはと魔王の指は別の屋台を指さしてマーナが答えていた。
去年の収穫祭や夏祭りの時に話した内容とほぼ同じである。魔王とマーナの近くまで着ながらも二人は微笑ましいなと会話に割って入ることはしなかった。にこにことマーナが魔王に教えている。
「お疲れ様です。勇者様にお父様」
「うん。お疲れ様。退屈じゃなかったかな大丈夫」
「はい。勇者様が凄く格好良かったので見ているだけで楽しかったです。お父様もとても格好良かったです」
式典が終わった後、勇者と魔王の二人はすぐにマーナが待つ部屋へと来ていた。二人を出迎えたマーナがにこにこと幸せそうに笑っていて、勇者は優しく微笑みかけるが、魔王の仏頂面は変わらなかった。眉間一つ動かない中で、魔王はマーナの言葉に頷き、そしてでは帰ろうと手を伸ばしていた。
差し出された手をマーナがじっと見つめる。
えっと言ったのはマーナではなく勇者や斧使いであった。
「まさかもう帰るのかよ。折角来たんだから屋台ぐらい楽しんでいけよ。マーナちゃんだって魔王と一緒に回れるの楽しみにしていたのに」
「なに」
「そうですよ。一緒に出掛けるなんてめったにないんでしょう。それなら楽しんでいってあげないと」
勇者の言葉に眉を寄せた魔王。すかさず斧使いが援護する。じっと見上げていたマーナが駄目とその目元を潤ませていた。お父様と悲し気な声が出ていく。
ぐっと魔王の喉がなる。
娘を溺愛し、娘の一言で進撃を取りやめてしまうような魔王にとってその攻撃は何よりも大きい防護などしようもないものであった。
分かったと魔王の口から絞り出すような声が聞こえてマーナの目が輝く。華が開くように満面の笑顔になるマーナに良かったねと勇者と斧使いがそれぞれ声を掛けてじゃあ行こうかと魔王とマーナの二人に言っていた。
はいとマーナが二人の傍まできて魔王に手を伸ばす。行きましょうと娘が笑うのに魔王が嫌だと言えるはずもない。
ああと差し出されるマーナの小さな手を取っていた。
町の中を勇者とマーナ、斧使いに魔王というはたから見ると大変奇妙な組み合わせの一行が歩いていた。魔王の視線は先ほどからあちこちに動いて回り待ちの中の色々なものを見ていた。その中でもやはり飾り付けられた屋台には目がいき、ずっと見ている。
楽しんでいるようにも思えなくはないが、魔王の顔は変わらない。
町の中を探索できて喜んでいるのか、もしくは呆れているのかどちらとも取れそうな顔で、勇者も斧使いも判断に困っていた。マーナがお父様とてもはしゃいでいますと言っても信じられないぐらいだった。
「よくマーナちゃんって魔王の機嫌分かるよな。俺一生かかっても分からない気がするのに」
「あれでいてお父様って案外単純なんですよ。自分が知らない事にはそれがどんなことでも知ろうとしますし、興味が出た対象はじっと見つめているからすぐに分かりますし」
「そうなんだ」
二人の眼差しが魔王を見つめる。魔王は歩きながら屋台を一瞬真顔で見ていたかと思うとすぐに違う場所を見ている。分かるかとアイコンタクトを取りながらどちらも首を振っている。
「家屋ってやっぱりすごいものなんだね。あ、そう言えば今日はスイレイ君こなかったんだね。てっきり三人で来るかと思ってたんだけど」
「あ、スイレイは今日ちょっと用事がありまして。でもたいしたことじゃないので大丈夫ですわ。
それより勇者様、、ほらあれお父様が気になっているようなので助けてあげてください。お店の人、委縮しているみたいで」
ひとしきり感心した勇者はその後引っ掛かりそれで後から聞こうと思っていたことを思い出した。
残り時刻を聞いたマーナの声が若干震えたもののすぐに笑って答え、そして魔王を指さしていた。魔王はじっと屋台の中を見ている。ああ、と勇者が動く前にマーナが動いていて、これはねと魔王に教える。
魔王は静かに腰の丈ほどまでしかないマーナを見下ろしそしてその頭をなでていた。
ありがとうと低くいかつい声が言うが、いつもよりかは若干可愛いものだろうか。ではあれはと魔王の指は別の屋台を指さしてマーナが答えていた。
去年の収穫祭や夏祭りの時に話した内容とほぼ同じである。魔王とマーナの近くまで着ながらも二人は微笑ましいなと会話に割って入ることはしなかった。にこにことマーナが魔王に教えている。
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