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第四章 愛と絆の日々
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甘い香りと柔らかい感触を感じながら、ティアは意識を取り戻した。白い豊かな胸に顔を埋めていた。
「目が覚めた?」
ティアを胸に抱きながら、アルフィが淡紫色の長い髪を梳くように撫でていた。
「おはよう、アルフィ。何か、こういうのいいね」
柔らかい感触を頬で楽しみながら、ティアが幸せそうに微笑んだ。
「体、大丈夫?」
「うん……うまく動けない」
体中が鉛のように重く、甘い痺れが全身に残っていた。
「あたしもよ。ティアが気を失った後、あたしもダグラスに同じ目にあわされたわ」
「ダグラスは……?」
「隣の寝台で鼾かいてる。ホント、むかつく」
眉間に皺を寄せ、口を尖らせながらアルフィが文句を言った。ティアは、そんな表情のアルフィも美しいと思った。
「私、ダグラスとしちゃったのに、アルフィは怒ってないの?」
ダグラスはアルフィの最愛の恋人だった。その恋人をティアは寝取ったようなものだった。
「何言ってるの? あたしがけしかけたのよ。それに、これでティアも本当の仲間になった気がするわ。怒るよりもむしろ嬉しいくらいよ」
そう言うと、アルフィはティアの額に口づけをしてきた。
「ありがと、アルフィ。でも、ちょっと悔しい……」
「何が……?」
「アルフィのおっぱい、大っきくて柔らかいのに、全然型崩れしてない」
いたずらっぽい眼でアルフィを見上げると、ティアは目の前の薄紅色の乳首を摘まんだ。
「あっ……こら、変なとこ触らないで」
「感度もすごくいい。もう硬くなってきた」
コリコリと乳首を扱きながら、ティアが微笑んだ。
「だめよ、こら……んぁ……。お返ししちゃうからね」
「きゃっ! あんっ……やだ……」
お互いの胸を揉みしだき、乳首を転がし合っているうちに、どちらからともなく唇を重ねた。ネットリと舌を絡ませ合う濃厚な口づけを交わし始めた。
「おいおい、朝から元気だな、二人とも……」
「あら、起きてたの、ダグラス。おはよう」
「ああ、おはよう、アルフィ、ティア」
「おはよう、ダグラス……」
ダグラスの顔を見た途端、昨夜のことを思い出してティアは真っ赤になってアルフィの胸に顔を埋めた。
「あら、ティアったら照れちゃって可愛いわね」
「昨夜のティアも可愛かったけどな」
そう言うと、アルフィとダグラスは顔を見合わせて笑った。
(恥ずかしい……私、ダグラスに抱かれて乱れまくってたわ)
ダグラスのたくましい逸物に貫かれ、何度も絶頂の極みを感じさせられたことを思い出し、ティアはアルフィの胸から顔を上げられなかった。
「ところで、昇格試験は明日だろ? 今日は早めに皇都に帰ってゆっくりとした方がいいな」
「そうね。皇都までは馬で半日かかるから、遅くても朝の五つ鐘には出たいわね。さっき四つ鐘がなったから、あと一ザン半くらいかしら?」
「それくらいだな。今のうち、風呂に入ってきたらどうだ?」
「そうね、ティア、動ける?」
アルフィの言葉に、ティアはフルフルと頭を横に振った。その様子を笑って見つめると、アルフィがダグラスに言った。
「ダグラス、中級二本ちょうだい。あんたが容赦ないから、あたしもちょっと辛いわ」
「分かった。ちょっと待ってろ」
そう告げると、ダグラスは荷物から中級回復ポーションを二本抜き取り、アルフィに渡した。
「ありがと。ティア、照れてないでこれ飲みなさい」
「はい……ありがとう」
名残惜しそうにアルフィの胸から顔を上げると、ティアは差し出された青い小瓶を受け取り、栓を開けると一気に飲み干した。体の芯がポカポカとし、急速に疲れが抜けていった。
アルフィもティアの横でポーションを飲み干すと、ふぅっと小さなため息をついた。本音を言えば、昨夜ティアよりも激しく責められたため、アルフィの方が動けないほど辛かったのだ。
アルフィは寝台の横で着替えているダグラスを見上げて思った。
(あたしたちをあれだけ責めておいてケロッとしているなんて、ダグラスの体力は本当に底なしね)
もう一度ため息をつくと、アルフィはティアの方を振り向いて言った。
「ティア、一緒にお風呂に入ろうか」
「うん。出かける前だから、変なことしないでね」
笑いながらそう言うと、ティアはアルフィに腕を絡めながら浴室に向かった。
二人は濃厚な口づけを交わしながら、お互いの躰を大人流の洗い方で清めて風呂から上がってきた。ティアのヘテロクロミアの瞳がトロンと蕩けていたことに気づいたが、ダグラスは何も言わなかった。
ダグラスが風呂から上がるのを待って、三人は荷物を手に部屋を後にした。一階に降りるとそのまま食堂に入って、朝食をとった。
どこの宿にもある「朝のお勧めセット」は、味も量も十分に満足できるものだった。食後のお茶を楽しんで宿を出る頃には、ちょうど朝の五つ鐘が鳴った。
アカシア迷宮街の入口にある馬舎亭で預けていた馬を引き取ると、三人は皇都に向けて街道を東に進んだ。
馬を休ませる必要があるため、一ザン半ごとに休憩を入れたが、三人は予定よりも早く夜の五つ鐘前には皇都に到着した。馬を西門にある馬舎亭に返すと、アルフィが言った。
「『幻楼の月』に予約を入れて荷物を置いたら、ギルドに顔を出しましょう。魔石も換金しておいた方が安心だしね」
「そうだな。部屋はどうする? 別にしておくか?」
「そうね。あんたと一緒だとティアの体力が持たないから、別の方がいいわね」
「あ、アルフィ……」
笑いながら告げたアルフィの言葉に、ティアが真っ赤になった。
「そういうことだから、悪いけどダグラスは一人でお願いね」
「分かった。アルフィもほどほどにな」
ニヤリと笑いを浮かべながら、ダグラスがティアの顔を見つめた。その意味を悟ると、ティアは更に顔を赤く染めてダグラスから視線を逸らした。
『幻楼の月』は希望通り、一人部屋と二人部屋を取ることが出来た。ティアたちはそれぞれの部屋に荷物を置くと、一階で待ち合わせをして冒険者ギルドに向かった。
『幻楼の月』からギルドまでは、西イシュタル通りをイシュタルパレスに向かって徒歩五タルほどの距離だ。
夜遅いこともあり、ギルドの中は比較的すいていた。アルフィは一階の受付で依頼の達成報告をし、ダグラスは二階のアイテム換金所に向かった。一人残されたティアは手持ち無沙汰に、掲示板の依頼を見ていた。
「お嬢さん、今日はS級依頼はなさそうじゃぞ」
不意に左手から声をかけられて、ティアは驚きながら振り向いた。ついさっきまで、近くに人の気配はなかったのだ。
ティアのすぐ左隣に、老人が笑顔を浮かべて立っていた。
身長はティアの肩くらいまでしかなかった。たぶん、百五十セグメッツェくらいだろう。肩まで伸ばした頭髪と長い顎髭は真っ白で、額や目尻、口元にも深い皺が刻まれていた。年齢は七十歳を超えていると思われた。
(この人、何か変だわ……)
ティアはその老人から違和感を感じた。その違和感の正体が老人の眼にあることに気づくと、ティアは全身に緊張が走った。
目尻の下がった小さめの眼の中で、漆黒の黒瞳が強烈な意志を宿しながら探るようにティアを見つめていたのだ。
「いえ、私はクラスFなので、S級依頼なんて見てませんでしたが……」
内心の動揺を悟られないように、ティアは平静を装って老人に答えた。
「ほう。クラスFとな。儂の眼もずいぶんと衰えたものじゃ。それとも坊主の眼が衰えたのかのう? フォオ、フォオ、フォオ……」
「坊主?」
「そろそろ坊主は卒業させていただけませんか?」
ティアが老人に聞き返した時、後ろから低い声が聞こえた。またしてもティアは気配を感じることもできずに背後を取られた。驚いて振り向くと、今度は見知った顔があった。
「イーサンさん!」
イーサンはティアに頷くと、老人の方を向いて丁寧な口調で言った。
「これでも一応、ギルドを束ねる身になりました。若い者の手前、坊主と呼ばれると示しがつきません。どうかご容赦ください」
「フォオ、フォオ……。それは悪かったのう、グランド・ギルドマスター殿」
「いえ、とんでもありません。ところで、お時間があるのであれば、私の部屋へご案内しますが……」
「そうじゃの。お嬢さんも一緒にいかがかな?」
「いえ、私は……」
慌てて断ろうとすると、イーサンが有無を言わさぬ口調で告げた。
「ティア、君も来なさい。アルフィとダグラスは一緒か?」
「あたしならここにいますよ、イーサン」
受付での手続きを終えたアルフィがティアに近づきながら言った。そして、老人に気づくと、驚いて足を止めた。
「いらしてたんですか、ご無沙汰しております」
未だかつて見たことがないほど、アルフィは丁寧に老人に向かって頭を下げた。
「おお、久しぶりじゃの、『氷麗姫』。このお嬢さんと知り合いかの?」
「はい。最近<漆黒の翼>に入った剣士です。ティア、自己紹介しなさい」
「は、はい。申し遅れました。<漆黒の翼>のティアと申します。剣士クラスFです」
「ほう。<漆黒の翼>が剣士クラスFを入れたのか。それはそれは……。坊主……じゃなかったグランド・ギルドマスター殿、お茶をご馳走してくれんか? 歳を取ると喉が渇いてのう」
「はい。恐れ入りますが、三階までご足労願います。アルフィとティアも一緒に来てくれ。ダグラスはいるのか?」
「二階で換金してるはずです。ギルマス室に行く途中で拾っていきます」
アルフィが笑顔を浮かべながら告げた。
「分かった。ではついてきてくれ。どうぞ、こちらへ」
イーサンが老人を恭しく案内し始めた。それを見送って、ティアがアルフィに小声で訊ねた。
「誰なの? ただ者じゃなさそうだけど……」
「あれが老師よ。冒険者ギルド唯一の剣士クラスSS。剣聖ラインハルトよ」
アルフィの説明を聞き、ティアは驚愕のあまりヘテロクロミアの瞳を大きく見開きながら老人の後ろ姿を見つめた。
「目が覚めた?」
ティアを胸に抱きながら、アルフィが淡紫色の長い髪を梳くように撫でていた。
「おはよう、アルフィ。何か、こういうのいいね」
柔らかい感触を頬で楽しみながら、ティアが幸せそうに微笑んだ。
「体、大丈夫?」
「うん……うまく動けない」
体中が鉛のように重く、甘い痺れが全身に残っていた。
「あたしもよ。ティアが気を失った後、あたしもダグラスに同じ目にあわされたわ」
「ダグラスは……?」
「隣の寝台で鼾かいてる。ホント、むかつく」
眉間に皺を寄せ、口を尖らせながらアルフィが文句を言った。ティアは、そんな表情のアルフィも美しいと思った。
「私、ダグラスとしちゃったのに、アルフィは怒ってないの?」
ダグラスはアルフィの最愛の恋人だった。その恋人をティアは寝取ったようなものだった。
「何言ってるの? あたしがけしかけたのよ。それに、これでティアも本当の仲間になった気がするわ。怒るよりもむしろ嬉しいくらいよ」
そう言うと、アルフィはティアの額に口づけをしてきた。
「ありがと、アルフィ。でも、ちょっと悔しい……」
「何が……?」
「アルフィのおっぱい、大っきくて柔らかいのに、全然型崩れしてない」
いたずらっぽい眼でアルフィを見上げると、ティアは目の前の薄紅色の乳首を摘まんだ。
「あっ……こら、変なとこ触らないで」
「感度もすごくいい。もう硬くなってきた」
コリコリと乳首を扱きながら、ティアが微笑んだ。
「だめよ、こら……んぁ……。お返ししちゃうからね」
「きゃっ! あんっ……やだ……」
お互いの胸を揉みしだき、乳首を転がし合っているうちに、どちらからともなく唇を重ねた。ネットリと舌を絡ませ合う濃厚な口づけを交わし始めた。
「おいおい、朝から元気だな、二人とも……」
「あら、起きてたの、ダグラス。おはよう」
「ああ、おはよう、アルフィ、ティア」
「おはよう、ダグラス……」
ダグラスの顔を見た途端、昨夜のことを思い出してティアは真っ赤になってアルフィの胸に顔を埋めた。
「あら、ティアったら照れちゃって可愛いわね」
「昨夜のティアも可愛かったけどな」
そう言うと、アルフィとダグラスは顔を見合わせて笑った。
(恥ずかしい……私、ダグラスに抱かれて乱れまくってたわ)
ダグラスのたくましい逸物に貫かれ、何度も絶頂の極みを感じさせられたことを思い出し、ティアはアルフィの胸から顔を上げられなかった。
「ところで、昇格試験は明日だろ? 今日は早めに皇都に帰ってゆっくりとした方がいいな」
「そうね。皇都までは馬で半日かかるから、遅くても朝の五つ鐘には出たいわね。さっき四つ鐘がなったから、あと一ザン半くらいかしら?」
「それくらいだな。今のうち、風呂に入ってきたらどうだ?」
「そうね、ティア、動ける?」
アルフィの言葉に、ティアはフルフルと頭を横に振った。その様子を笑って見つめると、アルフィがダグラスに言った。
「ダグラス、中級二本ちょうだい。あんたが容赦ないから、あたしもちょっと辛いわ」
「分かった。ちょっと待ってろ」
そう告げると、ダグラスは荷物から中級回復ポーションを二本抜き取り、アルフィに渡した。
「ありがと。ティア、照れてないでこれ飲みなさい」
「はい……ありがとう」
名残惜しそうにアルフィの胸から顔を上げると、ティアは差し出された青い小瓶を受け取り、栓を開けると一気に飲み干した。体の芯がポカポカとし、急速に疲れが抜けていった。
アルフィもティアの横でポーションを飲み干すと、ふぅっと小さなため息をついた。本音を言えば、昨夜ティアよりも激しく責められたため、アルフィの方が動けないほど辛かったのだ。
アルフィは寝台の横で着替えているダグラスを見上げて思った。
(あたしたちをあれだけ責めておいてケロッとしているなんて、ダグラスの体力は本当に底なしね)
もう一度ため息をつくと、アルフィはティアの方を振り向いて言った。
「ティア、一緒にお風呂に入ろうか」
「うん。出かける前だから、変なことしないでね」
笑いながらそう言うと、ティアはアルフィに腕を絡めながら浴室に向かった。
二人は濃厚な口づけを交わしながら、お互いの躰を大人流の洗い方で清めて風呂から上がってきた。ティアのヘテロクロミアの瞳がトロンと蕩けていたことに気づいたが、ダグラスは何も言わなかった。
ダグラスが風呂から上がるのを待って、三人は荷物を手に部屋を後にした。一階に降りるとそのまま食堂に入って、朝食をとった。
どこの宿にもある「朝のお勧めセット」は、味も量も十分に満足できるものだった。食後のお茶を楽しんで宿を出る頃には、ちょうど朝の五つ鐘が鳴った。
アカシア迷宮街の入口にある馬舎亭で預けていた馬を引き取ると、三人は皇都に向けて街道を東に進んだ。
馬を休ませる必要があるため、一ザン半ごとに休憩を入れたが、三人は予定よりも早く夜の五つ鐘前には皇都に到着した。馬を西門にある馬舎亭に返すと、アルフィが言った。
「『幻楼の月』に予約を入れて荷物を置いたら、ギルドに顔を出しましょう。魔石も換金しておいた方が安心だしね」
「そうだな。部屋はどうする? 別にしておくか?」
「そうね。あんたと一緒だとティアの体力が持たないから、別の方がいいわね」
「あ、アルフィ……」
笑いながら告げたアルフィの言葉に、ティアが真っ赤になった。
「そういうことだから、悪いけどダグラスは一人でお願いね」
「分かった。アルフィもほどほどにな」
ニヤリと笑いを浮かべながら、ダグラスがティアの顔を見つめた。その意味を悟ると、ティアは更に顔を赤く染めてダグラスから視線を逸らした。
『幻楼の月』は希望通り、一人部屋と二人部屋を取ることが出来た。ティアたちはそれぞれの部屋に荷物を置くと、一階で待ち合わせをして冒険者ギルドに向かった。
『幻楼の月』からギルドまでは、西イシュタル通りをイシュタルパレスに向かって徒歩五タルほどの距離だ。
夜遅いこともあり、ギルドの中は比較的すいていた。アルフィは一階の受付で依頼の達成報告をし、ダグラスは二階のアイテム換金所に向かった。一人残されたティアは手持ち無沙汰に、掲示板の依頼を見ていた。
「お嬢さん、今日はS級依頼はなさそうじゃぞ」
不意に左手から声をかけられて、ティアは驚きながら振り向いた。ついさっきまで、近くに人の気配はなかったのだ。
ティアのすぐ左隣に、老人が笑顔を浮かべて立っていた。
身長はティアの肩くらいまでしかなかった。たぶん、百五十セグメッツェくらいだろう。肩まで伸ばした頭髪と長い顎髭は真っ白で、額や目尻、口元にも深い皺が刻まれていた。年齢は七十歳を超えていると思われた。
(この人、何か変だわ……)
ティアはその老人から違和感を感じた。その違和感の正体が老人の眼にあることに気づくと、ティアは全身に緊張が走った。
目尻の下がった小さめの眼の中で、漆黒の黒瞳が強烈な意志を宿しながら探るようにティアを見つめていたのだ。
「いえ、私はクラスFなので、S級依頼なんて見てませんでしたが……」
内心の動揺を悟られないように、ティアは平静を装って老人に答えた。
「ほう。クラスFとな。儂の眼もずいぶんと衰えたものじゃ。それとも坊主の眼が衰えたのかのう? フォオ、フォオ、フォオ……」
「坊主?」
「そろそろ坊主は卒業させていただけませんか?」
ティアが老人に聞き返した時、後ろから低い声が聞こえた。またしてもティアは気配を感じることもできずに背後を取られた。驚いて振り向くと、今度は見知った顔があった。
「イーサンさん!」
イーサンはティアに頷くと、老人の方を向いて丁寧な口調で言った。
「これでも一応、ギルドを束ねる身になりました。若い者の手前、坊主と呼ばれると示しがつきません。どうかご容赦ください」
「フォオ、フォオ……。それは悪かったのう、グランド・ギルドマスター殿」
「いえ、とんでもありません。ところで、お時間があるのであれば、私の部屋へご案内しますが……」
「そうじゃの。お嬢さんも一緒にいかがかな?」
「いえ、私は……」
慌てて断ろうとすると、イーサンが有無を言わさぬ口調で告げた。
「ティア、君も来なさい。アルフィとダグラスは一緒か?」
「あたしならここにいますよ、イーサン」
受付での手続きを終えたアルフィがティアに近づきながら言った。そして、老人に気づくと、驚いて足を止めた。
「いらしてたんですか、ご無沙汰しております」
未だかつて見たことがないほど、アルフィは丁寧に老人に向かって頭を下げた。
「おお、久しぶりじゃの、『氷麗姫』。このお嬢さんと知り合いかの?」
「はい。最近<漆黒の翼>に入った剣士です。ティア、自己紹介しなさい」
「は、はい。申し遅れました。<漆黒の翼>のティアと申します。剣士クラスFです」
「ほう。<漆黒の翼>が剣士クラスFを入れたのか。それはそれは……。坊主……じゃなかったグランド・ギルドマスター殿、お茶をご馳走してくれんか? 歳を取ると喉が渇いてのう」
「はい。恐れ入りますが、三階までご足労願います。アルフィとティアも一緒に来てくれ。ダグラスはいるのか?」
「二階で換金してるはずです。ギルマス室に行く途中で拾っていきます」
アルフィが笑顔を浮かべながら告げた。
「分かった。ではついてきてくれ。どうぞ、こちらへ」
イーサンが老人を恭しく案内し始めた。それを見送って、ティアがアルフィに小声で訊ねた。
「誰なの? ただ者じゃなさそうだけど……」
「あれが老師よ。冒険者ギルド唯一の剣士クラスSS。剣聖ラインハルトよ」
アルフィの説明を聞き、ティアは驚愕のあまりヘテロクロミアの瞳を大きく見開きながら老人の後ろ姿を見つめた。
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