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第一章 漆黒の翼
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冒険者は一度受注した依頼を達成できないと、違約金を取られる。その額は本来払われる報酬の二倍だった。
オーガストたちは先に依頼を達成し、帰り道でティアを襲う計画だった。
「ゴブリンって洞窟にいるって聞きましたけど、本当なんですね」
北の森に入って三十タルほど進んだところに小さな川があった。その川の対岸に、ポッカリと黒い穴が見えた。
「あそこがゴブリンの巣になっているかは、入ってみないと分からない。しかし、奴らは水源の近くを好む習性があるから、ほぼ間違いないと思う」
オーガストが洞窟を見ながら告げた。
「向こう側まで歩いて行くか? それほど深くなさそうだし……」
「そうだな。鎧や武器を濡らすと後が大変だから、下着になっていこう」
ゲイリーの言葉に、オーガストが頷きながら言った。
「下着って、あの……」
驚いてティアがオーガストの顔を見上げた。
「ああ、ティアさんは今日冒険者登録をしたんだっけか? 女性の冒険者でも、こういうときには鎧や上着を脱いで渡るのが普通だ。最初は恥ずかしいかも知れないけど、慣れておいた方がいい」
真面目な表情を浮かべながら、さも当然のようにオーガストが告げた。
「そんな……」
初対面の男四人に下着姿を晒す勇気は、ティアにはなかった。だが、実際に川を渡らなければ、対岸の洞窟にたどり着けないことも事実だった。
川の幅は三十メッツェくらいだった。ゲイリーの言うとおり、流れも緩やかで深さはそれほどなさそうだった。
「私、このまま渡ります」
革の上着の胸元を両手で押さえながら、ティアが告げた。
「そんなことしたら、上着がダメになるぞ。それに、革が水を含んで重くなる。体力も奪われるし、何より動きづらくなって危ない」
オーガストが正論をかざしてティアを説得した。他の三人も真面目な表情でティアを見つめていた。
「でも……」
「ティアさん、君も冒険者になったのなら、自分のことだけではなく仲間のことを考えた方がいい。君が逡巡していると、俺たちは前に進めないんだ」
オーガストが強めの口調でティアに言った。
(確かに、彼の言うとおりだわ。私一人が恥ずかしいからって、パーティ全体に迷惑をかけるわけにはいかない)
「わかりました。一番後ろからついていきますから、振り向かないでもらえますか?」
「理解してもらって助かる。では、俺たちが先に行くから、遅れずに来てくれ」
そう告げると、オーガストたちは次々と服を脱ぎ始めた。目の前で男四人が半裸になっていく姿に、ティアは赤く染まった顔を背けた。
「では、先に行く。ティアさんもすぐについてきてくれ」
ジャブジャブと音を立てながら、オーガストたちが川に入っていった。
ティアは意を決すると、革の上着とパンツを脱ぎ、白い胸当てと下着姿になった。脱いだ服を一つに纏め、<イルシオン>と一緒に頭の上に掲げた。
(これって、振り向かれても手で隠せない……)
両手で服と<イルシオン>を持ち上げている状態のため、ティアは無防備な下着姿を晒さざるを得なくなった。恥ずかしさに顔を赤らめながら、オーガストたちに続いて川に入った。
川は浅瀬が続いていたが、真ん中辺りはさすがに足が届かなくなった。肩まで水に浸かり、荷物を持ったまま泳ぎ始めた。
しばらく行くと、再び川底に足がついた。ホッとしてティアは川底を歩き始めると、重大なことに気づいて足を止めた。
水に濡れた下着が透けていたのだ。
胸当ては肌に張り付き、乳首の形を浮き上がらせていた。それだけでなく、薄紅色の乳首さえ透けていた。
それ以上に悲惨だったのは、下着だった。淡紫色の恥毛がはっきりと透けて見えていた。
「ティアさん、急いでくれ」
呆然と立ち止まっていたティアの耳にオーガストの声が聞こえてきた。ハッとして視線を上げると、男たち全員がこちらを見ていた。
「すみません、後ろを向いていてもらえますか?」
羞恥のあまり、顔を真っ赤に染め上げながらティアが言った。
だが、オーガストはティアの言葉を無視すると、大声で叫んだ。
「早くしてくれ! 洞窟の奥からうなり声が聞こえる。ゴブリンだけじゃないかも知れない! 急いでくれ!」
「何をもたもたしてるんだ! 急げ!」
オーガストだけではなく、ゲイリーも苛ついた声で叫んだ。
(どうしよう。行くしかないの?)
男たちの視線が突き刺さるのを感じ、泣きそうになりながらティアは前に進み始めた。
「見ろよ、あの胸。思ったよりずっとでかいぜ」
「あれ、乳首勃ってないか?」
「水の冷たさで勃ったんだろう。感度も良さそうだ」
「あそこの毛、髪の毛と同じ色してるな。早く実物を拝みたいぜ」
オーガストたちは小声で囁きながら、視姦するようにティアの躰に魅入った。下着の中で、股間が熱くなり自己主張を始めていた。だが、まだ距離があるため、ティアには気づかれていないようだった。
「俺、我慢できねぇ。ゴブリン狩る前に、やっちまおうぜ」
「そうだな。あんな姿見たら、ゴブリンどころじゃねぇもんな」
洞窟から呻き声が聞こえるなど、真っ赤な嘘だった。依頼のことなど頭から抜け落ち、オーガストたちはティアを犯すことしか考えていなかった。
「俺が後ろから羽交い締めにするから、いつもどおり頼むな。泣こうが喚こうが、誰も来やしないさ」
そう告げると、オーガストは爽やかな笑顔を浮かべながら、ティアに近づいていった。
「オーガストさん、後ろを向いてください。皆さんも……」
対岸まであと数メッツェとなり、川面はティアの膝辺りまでとなっていた。ティアは頭上に抱えていた衣服を体の前に持ってきて、胸と股間をオーガストの眼から隠した。
だが、オーガストは柔和な笑みを浮かべたままティアに近づいてきた。
(これ、まずい……)
女の直感で、オーガストが自分に欲情していることにティアは気づいた。オーガストの後ろを見ると、ゲイリーたちも舌なめずりするような眼でティアを見つめていた。
「来ないで!」
ヘテロクロミアの瞳に不快感と怒りを浮かべながら、ティアは衣服を左手に抱えて<イルシオン>を抜いた。
「おいおい。何のまねだ。俺たちはパーティメンバーだぞ」
おどけたような口調でオーガストが言った。だが、その視線はティアの豊かな胸に突き刺さっていた。
「何のまねですって? それは私の台詞よ。ゴブリンはどうしたの? うなり声が聞こえてるんでしょ?」
「ああ、空耳だったみたいだ。それより、危ないから剣をしまってくれ。君を迎えに来ただけだ」
強い口調で言ったティアの言葉を聞き流し、オーガストはさらにティアに近づいてきた。彼我の距離は五メッツェもなかった。一歩踏み出せば、完全にティアの間合いだった。
「それ以上近づかないで! 動いたら本当に斬るわよ!」
「パーティメンバーを故意に傷つけると、冒険者登録を抹消されるって知らないのか?」
ティアの言葉を脅しと受け取ると、オーガストが笑いながら告げた。冒険者登録抹消という言葉に、ティアは動きを止めた。登録したその日に抹消では洒落にならないと思ったのだ。
オーガストはその逡巡を見逃さなかった。一気に距離を詰めると、<イルシオン>を握るティアの右手首を蹴り上げた。<イルシオン>が宙に舞い、水音とともに川の中に落ちた。
「くふっ!」
(しまった……!)
右手の痛みを庇おうとしたティアは、オーガストの拳を避けきれなかった。鳩尾にオーガストの拳が食い込み、がくりと膝をついて意識を失った。
オーガストたちは先に依頼を達成し、帰り道でティアを襲う計画だった。
「ゴブリンって洞窟にいるって聞きましたけど、本当なんですね」
北の森に入って三十タルほど進んだところに小さな川があった。その川の対岸に、ポッカリと黒い穴が見えた。
「あそこがゴブリンの巣になっているかは、入ってみないと分からない。しかし、奴らは水源の近くを好む習性があるから、ほぼ間違いないと思う」
オーガストが洞窟を見ながら告げた。
「向こう側まで歩いて行くか? それほど深くなさそうだし……」
「そうだな。鎧や武器を濡らすと後が大変だから、下着になっていこう」
ゲイリーの言葉に、オーガストが頷きながら言った。
「下着って、あの……」
驚いてティアがオーガストの顔を見上げた。
「ああ、ティアさんは今日冒険者登録をしたんだっけか? 女性の冒険者でも、こういうときには鎧や上着を脱いで渡るのが普通だ。最初は恥ずかしいかも知れないけど、慣れておいた方がいい」
真面目な表情を浮かべながら、さも当然のようにオーガストが告げた。
「そんな……」
初対面の男四人に下着姿を晒す勇気は、ティアにはなかった。だが、実際に川を渡らなければ、対岸の洞窟にたどり着けないことも事実だった。
川の幅は三十メッツェくらいだった。ゲイリーの言うとおり、流れも緩やかで深さはそれほどなさそうだった。
「私、このまま渡ります」
革の上着の胸元を両手で押さえながら、ティアが告げた。
「そんなことしたら、上着がダメになるぞ。それに、革が水を含んで重くなる。体力も奪われるし、何より動きづらくなって危ない」
オーガストが正論をかざしてティアを説得した。他の三人も真面目な表情でティアを見つめていた。
「でも……」
「ティアさん、君も冒険者になったのなら、自分のことだけではなく仲間のことを考えた方がいい。君が逡巡していると、俺たちは前に進めないんだ」
オーガストが強めの口調でティアに言った。
(確かに、彼の言うとおりだわ。私一人が恥ずかしいからって、パーティ全体に迷惑をかけるわけにはいかない)
「わかりました。一番後ろからついていきますから、振り向かないでもらえますか?」
「理解してもらって助かる。では、俺たちが先に行くから、遅れずに来てくれ」
そう告げると、オーガストたちは次々と服を脱ぎ始めた。目の前で男四人が半裸になっていく姿に、ティアは赤く染まった顔を背けた。
「では、先に行く。ティアさんもすぐについてきてくれ」
ジャブジャブと音を立てながら、オーガストたちが川に入っていった。
ティアは意を決すると、革の上着とパンツを脱ぎ、白い胸当てと下着姿になった。脱いだ服を一つに纏め、<イルシオン>と一緒に頭の上に掲げた。
(これって、振り向かれても手で隠せない……)
両手で服と<イルシオン>を持ち上げている状態のため、ティアは無防備な下着姿を晒さざるを得なくなった。恥ずかしさに顔を赤らめながら、オーガストたちに続いて川に入った。
川は浅瀬が続いていたが、真ん中辺りはさすがに足が届かなくなった。肩まで水に浸かり、荷物を持ったまま泳ぎ始めた。
しばらく行くと、再び川底に足がついた。ホッとしてティアは川底を歩き始めると、重大なことに気づいて足を止めた。
水に濡れた下着が透けていたのだ。
胸当ては肌に張り付き、乳首の形を浮き上がらせていた。それだけでなく、薄紅色の乳首さえ透けていた。
それ以上に悲惨だったのは、下着だった。淡紫色の恥毛がはっきりと透けて見えていた。
「ティアさん、急いでくれ」
呆然と立ち止まっていたティアの耳にオーガストの声が聞こえてきた。ハッとして視線を上げると、男たち全員がこちらを見ていた。
「すみません、後ろを向いていてもらえますか?」
羞恥のあまり、顔を真っ赤に染め上げながらティアが言った。
だが、オーガストはティアの言葉を無視すると、大声で叫んだ。
「早くしてくれ! 洞窟の奥からうなり声が聞こえる。ゴブリンだけじゃないかも知れない! 急いでくれ!」
「何をもたもたしてるんだ! 急げ!」
オーガストだけではなく、ゲイリーも苛ついた声で叫んだ。
(どうしよう。行くしかないの?)
男たちの視線が突き刺さるのを感じ、泣きそうになりながらティアは前に進み始めた。
「見ろよ、あの胸。思ったよりずっとでかいぜ」
「あれ、乳首勃ってないか?」
「水の冷たさで勃ったんだろう。感度も良さそうだ」
「あそこの毛、髪の毛と同じ色してるな。早く実物を拝みたいぜ」
オーガストたちは小声で囁きながら、視姦するようにティアの躰に魅入った。下着の中で、股間が熱くなり自己主張を始めていた。だが、まだ距離があるため、ティアには気づかれていないようだった。
「俺、我慢できねぇ。ゴブリン狩る前に、やっちまおうぜ」
「そうだな。あんな姿見たら、ゴブリンどころじゃねぇもんな」
洞窟から呻き声が聞こえるなど、真っ赤な嘘だった。依頼のことなど頭から抜け落ち、オーガストたちはティアを犯すことしか考えていなかった。
「俺が後ろから羽交い締めにするから、いつもどおり頼むな。泣こうが喚こうが、誰も来やしないさ」
そう告げると、オーガストは爽やかな笑顔を浮かべながら、ティアに近づいていった。
「オーガストさん、後ろを向いてください。皆さんも……」
対岸まであと数メッツェとなり、川面はティアの膝辺りまでとなっていた。ティアは頭上に抱えていた衣服を体の前に持ってきて、胸と股間をオーガストの眼から隠した。
だが、オーガストは柔和な笑みを浮かべたままティアに近づいてきた。
(これ、まずい……)
女の直感で、オーガストが自分に欲情していることにティアは気づいた。オーガストの後ろを見ると、ゲイリーたちも舌なめずりするような眼でティアを見つめていた。
「来ないで!」
ヘテロクロミアの瞳に不快感と怒りを浮かべながら、ティアは衣服を左手に抱えて<イルシオン>を抜いた。
「おいおい。何のまねだ。俺たちはパーティメンバーだぞ」
おどけたような口調でオーガストが言った。だが、その視線はティアの豊かな胸に突き刺さっていた。
「何のまねですって? それは私の台詞よ。ゴブリンはどうしたの? うなり声が聞こえてるんでしょ?」
「ああ、空耳だったみたいだ。それより、危ないから剣をしまってくれ。君を迎えに来ただけだ」
強い口調で言ったティアの言葉を聞き流し、オーガストはさらにティアに近づいてきた。彼我の距離は五メッツェもなかった。一歩踏み出せば、完全にティアの間合いだった。
「それ以上近づかないで! 動いたら本当に斬るわよ!」
「パーティメンバーを故意に傷つけると、冒険者登録を抹消されるって知らないのか?」
ティアの言葉を脅しと受け取ると、オーガストが笑いながら告げた。冒険者登録抹消という言葉に、ティアは動きを止めた。登録したその日に抹消では洒落にならないと思ったのだ。
オーガストはその逡巡を見逃さなかった。一気に距離を詰めると、<イルシオン>を握るティアの右手首を蹴り上げた。<イルシオン>が宙に舞い、水音とともに川の中に落ちた。
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