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第12章 パルテノン要塞
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凄まじい衝撃が<ミューズ>を襲った。緊急シグナルがけたたましく鳴り響いた。
「レーダーには何も映ってないぞ!」
コンソール・パネルを見つめながら、シュンが叫んだ。
「ニュートリノ探知システムで、敵影を確認して!」
ジェシカが<ミューズ>のバイオ・コンピューターに命令した。
『探索に一分二十秒かかります。エネルギー中和シールドを張りますが、衝撃を百パーセント防ぐことは不可能です』
バイオ・コンピューターの応えと同時に、第二波の攻撃が<ミューズ>を襲った。
「キャアーッ!」
「うわぁッ!」
左サイドからの衝撃が二人を襲った。
<ミューズ>はGPS管轄宙域を抜け、SHL宙域にHDアウトしたばかりであった。
「いきなり撃ってくるなんて……、銀河条約違反じゃないか!」
シュンが怒鳴った。
「間の抜けたこと言ってんじゃないわよ! キャアーッ!」
ジェシカが怒鳴り返した途端、<ミューズ>に凄まじい衝撃が走った。
『左翼メイン・エンジンに被弾。航行コントロール不可能』
バイオ・コンピューターが無感情に告げた。
「何ですって!」
『敵影の探索を完了しました。メイン・スクリーンに投影します』
「なッ……!」
「こんな……!」
二人は言葉を失った。
百二十インチのスクリーンに映し出された物体……。
それは、巨大な宇宙要塞であった。
『半径約千六百キロメートル。総質量約三千五百PMT。銀河航空図にはデータがありません』
バイオ・コンピューターの言葉に嘘はなかった。銀河系を生活の拠点としているSHのジェシカでさえ、SHL宙域の入り口とも言えるパルテノン星域に、このような要塞があることを耳にしたことはなかった。
「銀河標準通信回路を開いて!」
(宇宙要塞相手に闘ったって勝ち目はないわ!)
ジェシカは一瞬、逃げることを考えた。
しかし、この大規模な巨大要塞の探索能力を推測すると、あまりにも無謀であった。敵が本気で<ミューズ>を抹消する気であれば、最初から高出力レーザー砲などを撃ってきたはずであった。そうされていたら、<ミューズ>のエネルギー中和シールドなど何の役にも立たず、彼女たちは一瞬にして素粒子と化していたであろう。
(つまり、この攻撃は脅しってわけだわ。相手はSHLか、それとも<テュポーン>……? SHLではないわ。そうであれば、戦闘用宇宙要塞の存在は銀河条約違反になるし、たとえこれが宇宙コロニーだとしても、銀河航空図に乗っていないことは考えられない)
「いきなり撃ってきたって事は、相手はSHLじゃないぞ! 通信回路を開いてどうするつもりだ?」
シュンが訊ねた。彼もジェシカと同じ結論に達したらしい。
(アクロバット・チームにいただけあって、なかなか度胸あるわね。こんな極限状態にいるのに、冷静な判断力を失わないなんて……)
ジェシカは、シュン=カイザードの状況判断能力を心の中で高く評価した。しかし、言葉にしては冷淡とも言える態度をとることにした。
「相手は<テュポーン>の可能性が高いわ。もし、そうであれば人工惑星ジオイドに次ぐ第二の本拠地かも知れないのよ。私たちの正体が、GPSのSHであることを知られていなければ、潜入するチャンスじゃない?」
「潜入? 何処からそんな考えが出て来るんだ?」
シュンが呆れたように言った。
『要塞との通信がとれました。サブ・スクリーンに投影しますか?』
「シュン、私たちは宇宙海賊って事にするわよ。通信には、私が出るわ。あなたは黙っていて!」
「宇宙海賊か? 好青年の俺には似合わねぇが、お前にはピッタリだな!」
このような状況にもかかわらず、シュンが笑いながら答えた。
「あんたがいるから、宇宙海賊にしたんでしょ! あたし一人ならば、上流貴婦人の宇宙旅行よ!」
「上流貴婦人? 誰がだ?」
シュンが腹を抱えて爆笑した。
「黙ってなさい! 通信回路をオンにして!」
ジェシカがムッとして、叩きつけるように命令した。
『了解。通信回路を開きます』
バイオ・コンピューターの声と同時に、サブ・スクリーンに四十代半ばの男の顔が映し出された。
「貴艦の船籍コードと、所属を述べよ!」
男が高圧的に言った。
褐色の肌と、鷹のように鋭い目を持つ男である。クルー・カットされた髪は銀髪で、一見して軍人か傭兵と判った。
(<テュポーン>じゃない! 本当にSHLなの?)
ジェシカは一瞬、躊躇した。
相手が<テュポーン>なら、先程の攻撃は判る。だが、スクリーンに映った男の口調や態度は、何処から見ても軍人のそれであった。それを証拠づけるかのように、襟元にはSHL少尉の階級章があった。
(SHLが銀河条約違反を覚悟で、いきなり発砲してくるなんて……! グローバル大統領暗殺は、GPSに対して軍事行動を決定させたって言うの?)
ジェシカの考えを無視して、スクリーンの男が繰り返した。
「こちらはSHL所属GPS方面機動要塞<パルテノン>である。もう一度問う。貴艦の船籍コードと所属を述べよ!」
ジェシカはシュンを横目で見つめた。彼がジェシカの考えを読み取ったかの様に、真剣な表情で頷いた。
「こちらはGPS特別犯罪課所属万能型宇宙艇<ミューズ>。船籍コードはGSAX-1307SH。私は、GPS特別犯罪課特殊捜査官ジェシカ=アンドロメダ大尉。貴要塞の突然の発砲は、明らかに銀河条約第百二十八条第二項に違反する。発砲の理由及び、謝罪を要求する。それともこれは、我々がGPSと知っての軍事行動か? 貴要塞の発砲は、GPSに対する宣戦布告を意味するものか? もし、そうでなければ、貴要塞への着艦と船体の修理を要求する」
ジェシカが弾劾するように告げた。
「そ、それは、失礼いたしました。ただいま上官と替わります」
美しい女豹のような彼女の態度にたじろぎ、男は自分の名も告げずにスクリーンから離れた。
数瞬後、スクリーンに出てきたのは、老将という言葉が最も似つかわしい白髪の男であった。階級章は中将である。
「私はSHL宇宙軍GPS方面司令長官イグバシオ=ブルーノ中将だ。この機動要塞<パルテノン>の最高責任者でもある。部下の非礼を陳謝したい。また、貴艦への発砲を命じた将官は、たった今から一週間の独房生活を命じた。深くお詫び申し上げる」
ブルーノ中将が、威厳に満ちた声で謝罪を告げた。
「私はGPS特別犯罪課特殊捜査官ジェシカ=アンドロメダ大尉であります。貴要塞からの攻撃で、当艦は航行不能となっております。貴要塞への着艦と船体の修理を申し入れます。また、銀河条約違反の軍事行動についての会談もさせて頂きたく思います」
ジェシカは、ブルーノ中将の発する威厳にも圧倒されず冷静に言った。ただし、彼の立場を考慮し、先程の少尉とは口調を変えていた。
「アンドロメダ大尉をSHLの賓客として歓迎しよう。無論、貴艦の修理も当方で責任を持ってさせて頂きたい。航行不能と言われたが、通信をしていることからメイン・コンピューターは生きているのであろう。誘導ビームは受けられるかね?」
ブルーノ中将が、勝ち気な孫娘に対するような優しげな口調で訊ねた。
「大丈夫です。御厚意感謝致します」
「では、我が要塞に着艦されたら、私を訪ねてくれたまえ」
ブルーノ中将はそう告げると、通信を切った。
「どうやら、宇宙海賊にされなくて済んだようだな」
「相手が<テュポーン>じゃなくて助かったわ」
ジェシカが、疲れたようにシートに倒れ込みながら答えた。
「実際お前といると、下手なアクション映画より危険な目に遭わされるぜ。アクロバットやってる方が、ずっと安全だよ」
「危険な目に遭う確率が増えたのは、あなたと知り合ってからよ、疫病神さん」
ジェシカが、笑いながら切り返した。
「宇宙海賊の次は、疫病神かよ。俺は一人二役は苦手なんだけどな」
「どうだかね。二股なんか、得意そうに見えるけど……?」
「二股? お前、俺に彼女がいるかどうか、探り入れてんのか?」
「誰が! 自惚れないでよ。私の理想から、あんたは百八十度違ってるんだからね!」
ジェシカがシュンを睨みつけた。
『誘導ビームが発射されました。ロックします』
タイミング良く、バイオ・コンピューターが仲裁に入った。
「それより、あなたは今GPSの軍人じゃないし、どう紹介しようか?」
ジェシカが困惑気味に訊ねた。
「これ、何だ?」
シュンが、胸ポケットからカードを取り出す。
「それって……、GPSの登録カードじゃない。あなた、辞める時に返さなかったの?」
「俺は正式に退職したんじゃないんだぜ。正規の手続きなんかしてると思うか?」
シュンが自慢げに告げた。彼は義兄ジェイ=マキシアンの仇敵討ちのために、GPSを脱走したD級指名手配犯であったのだ。
「D級指名手配は、GPS管轄宙域内だけで有効なんだろう。つまり、このSHLじゃ、俺は後ろ指をさされなくて済むって事だ」
シュンが笑いながら言った。
「まったく、あんたって男は……」
「めったにいない理想的な男だろう」
シュンの言葉に二人は爆笑した。
SD一三〇六年八月、GPS万能型宇宙艇<ミューズ>は、SHL機動要塞<パルテノン>に着艦した。
<ミューズ>……歴史を司る女神。
その名の通り、これがGPSとSHLとの新たな歴史を刻む一頁となるのである。その歴史が、血塗られたものとなるかどうかは、未だ不明であったが……。
漆黒の女神は新たなパートナーと共に、第三次DNA戦争勃発を防ぐべく、SHL宙域に足を踏み入れたのであった。
「レーダーには何も映ってないぞ!」
コンソール・パネルを見つめながら、シュンが叫んだ。
「ニュートリノ探知システムで、敵影を確認して!」
ジェシカが<ミューズ>のバイオ・コンピューターに命令した。
『探索に一分二十秒かかります。エネルギー中和シールドを張りますが、衝撃を百パーセント防ぐことは不可能です』
バイオ・コンピューターの応えと同時に、第二波の攻撃が<ミューズ>を襲った。
「キャアーッ!」
「うわぁッ!」
左サイドからの衝撃が二人を襲った。
<ミューズ>はGPS管轄宙域を抜け、SHL宙域にHDアウトしたばかりであった。
「いきなり撃ってくるなんて……、銀河条約違反じゃないか!」
シュンが怒鳴った。
「間の抜けたこと言ってんじゃないわよ! キャアーッ!」
ジェシカが怒鳴り返した途端、<ミューズ>に凄まじい衝撃が走った。
『左翼メイン・エンジンに被弾。航行コントロール不可能』
バイオ・コンピューターが無感情に告げた。
「何ですって!」
『敵影の探索を完了しました。メイン・スクリーンに投影します』
「なッ……!」
「こんな……!」
二人は言葉を失った。
百二十インチのスクリーンに映し出された物体……。
それは、巨大な宇宙要塞であった。
『半径約千六百キロメートル。総質量約三千五百PMT。銀河航空図にはデータがありません』
バイオ・コンピューターの言葉に嘘はなかった。銀河系を生活の拠点としているSHのジェシカでさえ、SHL宙域の入り口とも言えるパルテノン星域に、このような要塞があることを耳にしたことはなかった。
「銀河標準通信回路を開いて!」
(宇宙要塞相手に闘ったって勝ち目はないわ!)
ジェシカは一瞬、逃げることを考えた。
しかし、この大規模な巨大要塞の探索能力を推測すると、あまりにも無謀であった。敵が本気で<ミューズ>を抹消する気であれば、最初から高出力レーザー砲などを撃ってきたはずであった。そうされていたら、<ミューズ>のエネルギー中和シールドなど何の役にも立たず、彼女たちは一瞬にして素粒子と化していたであろう。
(つまり、この攻撃は脅しってわけだわ。相手はSHLか、それとも<テュポーン>……? SHLではないわ。そうであれば、戦闘用宇宙要塞の存在は銀河条約違反になるし、たとえこれが宇宙コロニーだとしても、銀河航空図に乗っていないことは考えられない)
「いきなり撃ってきたって事は、相手はSHLじゃないぞ! 通信回路を開いてどうするつもりだ?」
シュンが訊ねた。彼もジェシカと同じ結論に達したらしい。
(アクロバット・チームにいただけあって、なかなか度胸あるわね。こんな極限状態にいるのに、冷静な判断力を失わないなんて……)
ジェシカは、シュン=カイザードの状況判断能力を心の中で高く評価した。しかし、言葉にしては冷淡とも言える態度をとることにした。
「相手は<テュポーン>の可能性が高いわ。もし、そうであれば人工惑星ジオイドに次ぐ第二の本拠地かも知れないのよ。私たちの正体が、GPSのSHであることを知られていなければ、潜入するチャンスじゃない?」
「潜入? 何処からそんな考えが出て来るんだ?」
シュンが呆れたように言った。
『要塞との通信がとれました。サブ・スクリーンに投影しますか?』
「シュン、私たちは宇宙海賊って事にするわよ。通信には、私が出るわ。あなたは黙っていて!」
「宇宙海賊か? 好青年の俺には似合わねぇが、お前にはピッタリだな!」
このような状況にもかかわらず、シュンが笑いながら答えた。
「あんたがいるから、宇宙海賊にしたんでしょ! あたし一人ならば、上流貴婦人の宇宙旅行よ!」
「上流貴婦人? 誰がだ?」
シュンが腹を抱えて爆笑した。
「黙ってなさい! 通信回路をオンにして!」
ジェシカがムッとして、叩きつけるように命令した。
『了解。通信回路を開きます』
バイオ・コンピューターの声と同時に、サブ・スクリーンに四十代半ばの男の顔が映し出された。
「貴艦の船籍コードと、所属を述べよ!」
男が高圧的に言った。
褐色の肌と、鷹のように鋭い目を持つ男である。クルー・カットされた髪は銀髪で、一見して軍人か傭兵と判った。
(<テュポーン>じゃない! 本当にSHLなの?)
ジェシカは一瞬、躊躇した。
相手が<テュポーン>なら、先程の攻撃は判る。だが、スクリーンに映った男の口調や態度は、何処から見ても軍人のそれであった。それを証拠づけるかのように、襟元にはSHL少尉の階級章があった。
(SHLが銀河条約違反を覚悟で、いきなり発砲してくるなんて……! グローバル大統領暗殺は、GPSに対して軍事行動を決定させたって言うの?)
ジェシカの考えを無視して、スクリーンの男が繰り返した。
「こちらはSHL所属GPS方面機動要塞<パルテノン>である。もう一度問う。貴艦の船籍コードと所属を述べよ!」
ジェシカはシュンを横目で見つめた。彼がジェシカの考えを読み取ったかの様に、真剣な表情で頷いた。
「こちらはGPS特別犯罪課所属万能型宇宙艇<ミューズ>。船籍コードはGSAX-1307SH。私は、GPS特別犯罪課特殊捜査官ジェシカ=アンドロメダ大尉。貴要塞の突然の発砲は、明らかに銀河条約第百二十八条第二項に違反する。発砲の理由及び、謝罪を要求する。それともこれは、我々がGPSと知っての軍事行動か? 貴要塞の発砲は、GPSに対する宣戦布告を意味するものか? もし、そうでなければ、貴要塞への着艦と船体の修理を要求する」
ジェシカが弾劾するように告げた。
「そ、それは、失礼いたしました。ただいま上官と替わります」
美しい女豹のような彼女の態度にたじろぎ、男は自分の名も告げずにスクリーンから離れた。
数瞬後、スクリーンに出てきたのは、老将という言葉が最も似つかわしい白髪の男であった。階級章は中将である。
「私はSHL宇宙軍GPS方面司令長官イグバシオ=ブルーノ中将だ。この機動要塞<パルテノン>の最高責任者でもある。部下の非礼を陳謝したい。また、貴艦への発砲を命じた将官は、たった今から一週間の独房生活を命じた。深くお詫び申し上げる」
ブルーノ中将が、威厳に満ちた声で謝罪を告げた。
「私はGPS特別犯罪課特殊捜査官ジェシカ=アンドロメダ大尉であります。貴要塞からの攻撃で、当艦は航行不能となっております。貴要塞への着艦と船体の修理を申し入れます。また、銀河条約違反の軍事行動についての会談もさせて頂きたく思います」
ジェシカは、ブルーノ中将の発する威厳にも圧倒されず冷静に言った。ただし、彼の立場を考慮し、先程の少尉とは口調を変えていた。
「アンドロメダ大尉をSHLの賓客として歓迎しよう。無論、貴艦の修理も当方で責任を持ってさせて頂きたい。航行不能と言われたが、通信をしていることからメイン・コンピューターは生きているのであろう。誘導ビームは受けられるかね?」
ブルーノ中将が、勝ち気な孫娘に対するような優しげな口調で訊ねた。
「大丈夫です。御厚意感謝致します」
「では、我が要塞に着艦されたら、私を訪ねてくれたまえ」
ブルーノ中将はそう告げると、通信を切った。
「どうやら、宇宙海賊にされなくて済んだようだな」
「相手が<テュポーン>じゃなくて助かったわ」
ジェシカが、疲れたようにシートに倒れ込みながら答えた。
「実際お前といると、下手なアクション映画より危険な目に遭わされるぜ。アクロバットやってる方が、ずっと安全だよ」
「危険な目に遭う確率が増えたのは、あなたと知り合ってからよ、疫病神さん」
ジェシカが、笑いながら切り返した。
「宇宙海賊の次は、疫病神かよ。俺は一人二役は苦手なんだけどな」
「どうだかね。二股なんか、得意そうに見えるけど……?」
「二股? お前、俺に彼女がいるかどうか、探り入れてんのか?」
「誰が! 自惚れないでよ。私の理想から、あんたは百八十度違ってるんだからね!」
ジェシカがシュンを睨みつけた。
『誘導ビームが発射されました。ロックします』
タイミング良く、バイオ・コンピューターが仲裁に入った。
「それより、あなたは今GPSの軍人じゃないし、どう紹介しようか?」
ジェシカが困惑気味に訊ねた。
「これ、何だ?」
シュンが、胸ポケットからカードを取り出す。
「それって……、GPSの登録カードじゃない。あなた、辞める時に返さなかったの?」
「俺は正式に退職したんじゃないんだぜ。正規の手続きなんかしてると思うか?」
シュンが自慢げに告げた。彼は義兄ジェイ=マキシアンの仇敵討ちのために、GPSを脱走したD級指名手配犯であったのだ。
「D級指名手配は、GPS管轄宙域内だけで有効なんだろう。つまり、このSHLじゃ、俺は後ろ指をさされなくて済むって事だ」
シュンが笑いながら言った。
「まったく、あんたって男は……」
「めったにいない理想的な男だろう」
シュンの言葉に二人は爆笑した。
SD一三〇六年八月、GPS万能型宇宙艇<ミューズ>は、SHL機動要塞<パルテノン>に着艦した。
<ミューズ>……歴史を司る女神。
その名の通り、これがGPSとSHLとの新たな歴史を刻む一頁となるのである。その歴史が、血塗られたものとなるかどうかは、未だ不明であったが……。
漆黒の女神は新たなパートナーと共に、第三次DNA戦争勃発を防ぐべく、SHL宙域に足を踏み入れたのであった。
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