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第4章 愛と硝煙の日々
10 戦いの後で・・・
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「インターナショナル・メディカル・センターの受入許可は下りた。凛桜、燃料は持つか?」
シチリア島タオルミーナ市にあるインターナショナル・メディカル・センターの受付と通信を終えると、龍成が訊ねた。
「トラーパニかパレルモで給油しないと無理よ……。すでに燃料は残り25パーセントを切っているわ」
ファヴィニーナからタオルミーナまでの直線距離はおよそ360kmだった。AH-10Sステルス・コブラの最大航続距離はおよそ800kmだ。往路でアジャクシオからファヴィニーナまで560kmを飛行し、ファヴィニーナでは戦闘飛行をしたのだ。およそ四分の三の燃料を使い切っていた。
「給油の時間はどのくらいかかるの?」
「すぐに給油許可が下りたとして、約三十分ね。待たされたら一時間以上かかるわ……」
「そんな……」
抱き締めている純一郎の体温が徐々に冷たくなっていくのが瑞紀には分かった。ファヴィニーナからタオルミーナまで真っ直ぐに飛んでも約五十分かかるのだ。緊急医療キットで左腕の止血をしているとはいえ、一時間半以上もかかるとなれば純一郎の命が保たない可能性の方が大きかった。
「龍成、お願いッ! 何とか最優先で給油できるように交渉して……」
黒曜石の瞳から涙を溢れさせながら、瑞紀が告げた。その様子を見て、龍成は瑞紀の純一郎に対する気持ちを否が応でも知らされた。
「やってはみるが、トラーパニ空港がどこまで協力してくれるか……」
「龍成、アランたちが乗ってきた飛行機なら、すでに給油が終わっているんじゃないの?」
トラーパニ空港と通信をしようとした龍成に、凛桜がハッとして叫んだ。
「なるほど……! 凛桜、よく気づいたなッ! トラーパニであの飛行機に乗り換えよう」
龍成の意見に、瑞紀が血相を変えて叫んだ。
「ちょっと待って、龍成ッ! 飛行機だと一度カターニア空港に着陸しないとならないわ。カターニアからタオルミーナのインターナショナル・メディカル・センターまでは、車で一時間以上かかるわ。トラーパニで給油するよりも遅くなるッ!」
ヘリコプターと違い、滑走路が必要な飛行機ではインターナショナル・メディカル・センターの屋上に着陸するのは不可能だった。
「やはり、トラーパニで給油を受けないとダメか……」
龍成の言葉を聞き、瑞紀が左腕のリスト・タブレットを操作し始めた。
「どこに連絡するんだ、瑞紀……?」
「黙ってて……」
瑞紀はその人物の名前をヴァーチャル・スクリーンに表示させると、通話アイコンをタップした。
「高城だ……」
渋いバリトンの声がスピーカーから響き渡った。聞き覚えのある声に、龍成と凛桜が驚きの表情を浮かべた。通話の相手は、<星月夜>統合作戦本部長の高城雄翔だった。
「叔父様、瑞紀です。緊急かつ重要なお願いです」
「どうした……?」
焦燥を含んだ瑞紀の言葉にも拘わらず、高城は普段と変わらない口調で訊ねてきた。瑞紀は高城が今までに取り乱した姿を見たことがないことを思い出した。その落ち着いた対応を頼もしく思いながら、瑞紀が続けた。
「姫川玲奈救出作戦は成功しました。その作戦中に<櫻華会>の神崎純一郎さんが、左腕を失う重傷を負いました。現在、AH-10Sステルス・コブラでファヴィニーナからタオルミーナ市のインターナショナル・メディカル・センターに向かっている最中です。しかし、燃料が残り25パーセントを切っています。トラーパニでの給油を優先的に受けられるように手配して頂けませんか?」
「ファヴィニーナからタオルミーナまでは、通常でも五十分ほどかかるはずだ。神崎氏の容態は大丈夫なのかね?」
瑞紀の簡単な説明で、高城はほぼ状況を把握したようだった。
「正直、分かりません。でも、何としても純を……神崎さんを助けたいんです。お願いします。最優先で給油を受けられるように手配して頂けませんか?」
純一郎のことを純と呼びかけたことには何も触れずに、高城が真剣な口調で訊ねた。
「瑞紀君、そこに西園寺君はいるかね?」
「はい。今、変わります……」
瑞紀が左腕を延ばして、操縦桿を握る凛桜の口元にリスト・タブレットを近づけた。
「西園寺です。代わりました……」
突然、<鬼元帥>と呼ばれる統合作戦本部長に指名され、凛桜が緊張した口調で告げた。
「西園寺君、空中給油の経験はあるか?」
「空中給油ですか? 陸自の訓練で数回やったことがありますが……」
驚きに眼を見開きながら、凛桜が答えた。
「成功はしたか?」
「はい。三回とも何とか成功しましたが……。まさか、本部長は……?」
高城が空中給油を命じようとしていることを察し、凛桜は顔を引き攣らせた。ヘリコプターの空中給油は、飛行機よりも数段難しかった。万一、ローターに燃料補給用ホースが絡んでしまうと、大惨事になるからだ。
「よし、そのままタオルミーナへ向かえ。パレルモからエアバスA400Mを向かわせる。コンタクト・ポイントはパレルモ上空を予定しておけ」
「ラ、了解……」
「準備が整い次第、パレルモの管制塔から連絡を入れさせる。必ず成功させろ」
「イ、イエス・サー……」
緊張した表情で凛桜がそう告げると、高城からの通信が切られた。凛桜はハアッと大きくため息をつくと、瑞紀を振り返りながら文句を言った。
「瑞紀ちゃん、この貸しは大きいわよッ!」
「そんなに大変なんですか? 空中給油って……?」
瑞紀は驚きの表情を浮かべながら訊ねた。陸自のヘリコプター部隊で随一の操縦技術を持つと言われた凛桜が、緊張のあまり額に汗を浮かべていた。
「高度六百メートルを飛行中に、直径十センチの穴に棒を差し込むんだッ! それも、相手の機体との距離を十センチ単位で調整しながらねッ! それをこの夜中にサーチライトだけでやれって言うんだぞッ! 本来なら、副操縦士が距離計算して座標をインプットしながらでも困難なコンタクトだッ! あんたも龍成もそんなことできないだろッ!」
夜間の空中給油の難易度をまったく理解していない瑞紀に、カッとなって凛桜が叫んだ。
「凛桜、やはりトラーパニで給油しようッ! 危険すぎるッ!」
凛桜の説明を聞いて、龍成が顔色を変えた。ヘリコプターの操縦経験がない素人から見ても、夜中に空中給油をする無謀さが理解できた。
「凛桜さん……」
純一郎を抱き締めながら、瑞紀が両手を握り締めた。想像以上の空中給油の困難度に、瑞紀も無理強いはできなかった。だが、トラーパニで給油することは、最低でも三十分……もしかしたら一時間以上も時間をロスすることを意味した。純一郎が助かる確率が非常に低くなることは間違いなかった。
「瑞紀ちゃん、一つだけ教えてッ!」
凛桜が真剣な口調で瑞紀に訊ねてきた。瑞紀は凛桜が聞こうとしていることを察して、純一郎の体を抱きしめた。
「神崎さんを愛しているのッ?」
「愛していますッ! 純は私のすべてよッ! 何があっても死なせたりしないッ!」
助手席に座る龍成の顔を見つめながら、瑞紀は心の底から叫んだ。
「瑞紀……」
驚きのあまり言葉を失った龍成を横目で見つめると、凛桜がニヤリと笑みを浮かべながら告げた。
「分かったわッ! 空中給油は絶対に成功させるッ! ファヴィニーナからタオルミーナまでの最短記録を作ってやるわッ!」
「ありがとう、凛桜さん……。お願いしますッ!」
そう告げると、瑞紀は冷えた純一郎の体を温めるようにきつく抱き締めた。
(どんなことをしても、絶対にあなたを助けるッ! 愛しているわ、純ッ……!)
瑞紀は優しい眼差しで純一郎を見つめると、その顔を自分の胸に掻き抱いた。その様子を、龍成は助手席から無言で見つめていた。
ピーッ……ピーッ……ピーッ……!
「止めて、アランッ!」
突然鳴り響いた警告音に、フランソワーズがステアリングを握るアランに向かって叫んだ。警告音は玲奈の首に嵌められた真紅の首輪から聞こえていた。
「何の音だ、フランソワーズ?」
急ブレーキを掛けてランドクルーザーを停止させると、アランが後部座席を振り返った。
「ミス・ヒメカワの首輪にある髑髏の眼が点滅しているわッ! もしかしたら、爆弾かも知れないッ!」
「何だとッ! はるか、俺のバッグの中に爆発物検知装置がある。それだッ……! フランソワーズに渡してくれッ! フランソワーズ、使い方は分かるな?」
はるかが取り出したトランシーバーのような箱形の機器を見ながら、アランが告げた。
「分かるわ。背面のセンサーを近づけるだけよね? 火薬や爆薬があれば、液晶に種類と量が表示される……」
はるかから受け取った爆発物検知装置を玲奈の首輪に近づけた瞬間、パイロットランプが赤く点灯した。液晶に表示された情報を読み取ると、フランソワーズが驚愕して叫んだ。
「200gのTNT火薬と、高周波感応式の起爆装置が仕込まれているわッ! たぶん、あの屋敷から一定以上の距離を離れると爆発するッ!」
「200gのTNTってことは、ヒメカワ警視の頭部を粉砕するのに十分な量だ。この場所で警告が鳴ったってことは、恐らく五十メートルくらい離れると爆発するってことだッ! すぐに屋敷に引き返すッ!」
アランはランドクルーザーをそのまま後進させた。Uターンするために少しでも前方に進むリスクを恐れたのだ。
「ミス・ヒメカワ、起きてッ……!」
フランソワーズが玲奈の頬を軽く叩いた。玲奈から爆弾の情報を聞き出すためだった。
「うッ……うん……。ここは……?」
意識を取り戻した玲奈が周囲を見渡した。
「あたしは<星月夜>リヨン支部のフランソワーズ=アントワーヌよ。安心して、あなたを助けに来たの」
「助けに……?」
玲奈の瞳が大きく見開かれ、涙が溢れた。まさしく絶望の暗闇に一条の光明を得た思いだった。
「屋敷にいた敵は制圧したわ。でも、あなたを病院に搬送するために車で移動したら、突然その首輪から警報が鳴り出したの。調べたら、爆薬が仕掛けられていることが分かった。その爆弾について、何か聞いていたら教えて……」
「どんな爆弾かは、聞いていないわ……。あのハレムから五十メートル離れたら爆発すると言われた……。そして、無理に外そうとすれば、その場で爆発するって……。髑髏の眼孔が網膜センサーになっていて、ベーカーの網膜パターンでないと解除できないらしいわ……」
フランソワーズの質問に、玲奈が小声で答えた。全身が綿のように疲れ切っていて、手足が上手く動かなかった。
「姫川課長、早瀬ですッ! 無事で良かったッ!」
「早瀬……さん……?」
助手席から振り返ってきたはるかの顔を見て、玲奈が驚きに眼を見開いた。まさか、日本からこのファヴィニーナまで、はるかが助けに来てくれるとは思ってもみなかった。
「<星月夜>の皆さんに協力してもらって、悪い連中はみんな倒しましたから、もう安心してくださいッ!」
はるかの言葉に、玲奈は眉を顰めた。あのレオナルド=ベーカーが簡単に倒れるとは思えなかったのだ。
「ベーカーは……?」
「レオナルド=ベーカーはいなかったわ。彼の部下らしき男たちは、すべて確保した。ベーカーの居場所を知っていたら教えて……」
フランソワーズが真剣な表情で玲奈に訊ねた。主犯と思われるベーカーは、フランソワーズたちが突入したときには姿が見えなかった。事前に襲撃を察知し、逃亡したのだと思われた。
「分からない……。彼はまだ生きているの? 恐い……! 助けてッ……!」
突然、玲奈が暴れ出した。ベーカーに刷り込まれた恐怖が、玲奈の精神の奥底まで浸透していた。
「落ち着いて、ミス・ヒメカワッ! ベーカーは、今ここにいないッ!」
「課長……」
フランソワーズに取り押さえられる玲奈の姿を見て、はるかが言葉を失った。そこには<西新宿の女豹>と謳われた面影はまったくなく、激甚な恐怖に恐慌を来しているただの女の姿があった。
「睡眠導入剤を使え、フランソワーズッ! 下手に暴れて起爆スイッチが入るとまずいッ!」
「分かったッ! ミス・ヒメカワ、悪いけど少し眠っていてッ!」
そう告げると、フランソワーズは左手で自分の鼻と口を押さえながら玲奈の顔に睡眠導入剤の入ったスプレーを噴射した。即効性ガスを吸入し、玲奈は全身を弛緩させると意識を失った。
「網膜センサーか……。厄介だな。<星月夜>の技術開発部の設備なら解除できるかも知れないが、イタリア警察では難しいぞ……」
「そうね……。ミス・ヒメカワを動かせないとなると、余計に厄介ね。そうかと言って、技術員だけ連れてきても意味はないし……」
アランとフランソワーズがお互いに難しい顔をして話し合った。それを見ていたはるかが、ふと思いついて訊ねた。
「あの……。さっき、高周波感応式の起爆装置があるって言ってましたよね? その周波数を分析すれば、発生装置と一緒なら姫川課長を日本に連れて帰れるんじゃないですか?」
「……! なるほどッ! その可能性はあるなッ!」
「逆転の発想ね。ここで装置を外すんじゃなく、装置を生かしたまま運ぶってことね。周波数の分析だけならば、市販でも手に入るわ。余程特別な周波数を使っていなければ、発生装置の方も何とかなるはず……」
はるかの意見に、フランソワーズが頷きながら告げた。
「よしッ! ミス・ヒメカワの治療は、あの屋敷で行う。医師を一人手配するから、ハルカはヒメカワに付いていてくれ。フランソワーズは周波数分析装置と発生装置の手配を頼む。俺はイタリア警察に状況説明と協力を要請する」
「了解」
「分かりましたッ!」
アランの指示に、フランソワーズとはるかが頷いた。
アランに抱きかかえられながら、玲奈は再びベーカーの屋敷に戻った。だが、今度は愛人や奴隷としてではなく、一人の患者としてであった。
空中給油には大きく分けて二つの方法がある。
一つはフライング・ブーム方式と言って、給油機の尾部に取り付けた給油ブームを伸ばし、受油側の機体の上面に取り付けてある給油口に差し込む方法だ。この方式の利点は給油速度が速いことにあり、主に大型機など大量の燃料を必要とする機体に使用される。しかし、前方斜め上からブームを伸ばしてくるので、機首上部にローターが回っているヘリコプターが相手では使えなかった。
もう一つの方法は、ローブ&ドローグ方式である。給油機からドローグホースと呼ばれる燃料補給用のホースを後方に繰り出し、受油側の機体は受油用のプローブと呼ばれる棒の先端をそのホースに繋げるのだ。当然のことだが、単に細いホースがブラブラしている状態では掴まえられないため、ホースの先端にバスケットのようなものがついている。よって、受油側の機体はプローブをそのバケット部分に挿し込むのだ。
この方式の場合、給油機はホースを繰り出して水平直線飛行を安定して行うことに専念し、後は受油側の機体任せであった。受油側では、機体を操ってプローブをバスケットに差し込み、接続した後はプローブが抜けないように機体を操る。つまり、空中給油が成功するか否かは、すべて受油側の機体のパイロットの腕にかかっていた。
ヘリコプターの場合、回転するローターにドローグホースが絡むと大惨事になるので、機首に伸縮式の空中給油プローブを装備している。給油のときだけ、プローブがローターの回転面より前方に出るように伸びるようになっているのだ。AH-10Sステルス・コブラのプローブも、機首右横に設置されていた。
「大丈夫か、凛桜……?」
心配そうな口調で、龍成が訊ねた。
「ごめん、龍成。黙って……。集中したい……」
パイロット・グローブの中でビッショリと手に汗をかきながら、凛桜が操縦桿を操作した。月明かりしかない闇の中で、サーチライトだけが頼りだった。速度が少しでも早ければ、給油機であるエアバスA400Mに接触してしまう。そうなったら、二機とも墜落することは明白だった。
(落ち着け、凛桜……! 陸自の訓練では一度も失敗しなかったじゃないかッ! あたしなら、必ずできるはずッ! 絶対に成功するんだッ!)
目標であるバスケットの直径はおよそ五十センチだ。当然ながら、エアバスA400Mから発生する乱気流によって、バスケットは一定の位置に停止せず常時動いている。
(バスケットに固執しないで見ろッ! 全体の中の一部としてバスケットを把握しろッ!)
操縦桿を微妙に倒しながら、凛桜はステルス・コブラの速度を調整した。サーチライトの中で、バスケットがプローブのほぼ直線上に重なった。
(今だッ! ゆっくりと前方へッ!)
ステルス・コブラを微速前進させると、プローブがバスケットに接触した感覚を皮膚で感じた。
(このまま、ゆっくりと……)
カチッという感触が伝わり、プローブがバスケット中央のドローグホースに接続された。
「接続完了ッ! 給油求むッ!」
『接続確認した。給油開始……』
スピーカーからエアバスA400Mのナビゲーターの声が響いた。燃料系の数字がめまぐるしく変わっていき、給油が開始された。凛桜は気を引き締めて、A400Mとの距離を一定に保った。給油中にA400Mと接触などしたら、燃料に火花が引火して大爆発を起こすからだ。
「燃料計五十パーセント。給油終了」
燃料計が五十パーセントを超えた時点で、凛桜は給油の中止を依頼した。このパレルモからインターナショナル・メディカル・センターのあるタオルミーナまでは、およそ270kmだ。最大航続距離が800kmあるステルス・コブラであれば、半分の燃料で十分に到達可能だった。
夜間の空中給油は非常に危険でリスクが大きい。その上、ローブ&ドローグ方式による給油はフライング・ブーム方式に比べて非常に時間がかかるのだ。燃料を五十パーセントにするだけで約五分かかったのだ。当然のことながら、その間はほとんど空中停止状態だ。一分一秒を争う状態で、その時間のロスが致命的になる可能性があった。
『給油終了《オーバー》、了解。いい腕だ、幸運を』
「ありがとう、そちらもッ!」
A400Mとの通信を切ると、凛桜はプローブを回収した。そして、高度を上げてA400Mを追い越すと、一気に加速を開始した。
「飛ばすわよッ! 瑞紀ちゃん、神崎さんをしっかりと抱いていなさいッ!」
「はいッ……!」
瑞紀の返事を聞くと、凛桜はスロットルを全開にした。漆黒の闇の中をAH-10Sステルス・コブラが、時速450kmの最高速度で東に向かって飛翔していった。
シチリア島タオルミーナ市にあるインターナショナル・メディカル・センターの受付と通信を終えると、龍成が訊ねた。
「トラーパニかパレルモで給油しないと無理よ……。すでに燃料は残り25パーセントを切っているわ」
ファヴィニーナからタオルミーナまでの直線距離はおよそ360kmだった。AH-10Sステルス・コブラの最大航続距離はおよそ800kmだ。往路でアジャクシオからファヴィニーナまで560kmを飛行し、ファヴィニーナでは戦闘飛行をしたのだ。およそ四分の三の燃料を使い切っていた。
「給油の時間はどのくらいかかるの?」
「すぐに給油許可が下りたとして、約三十分ね。待たされたら一時間以上かかるわ……」
「そんな……」
抱き締めている純一郎の体温が徐々に冷たくなっていくのが瑞紀には分かった。ファヴィニーナからタオルミーナまで真っ直ぐに飛んでも約五十分かかるのだ。緊急医療キットで左腕の止血をしているとはいえ、一時間半以上もかかるとなれば純一郎の命が保たない可能性の方が大きかった。
「龍成、お願いッ! 何とか最優先で給油できるように交渉して……」
黒曜石の瞳から涙を溢れさせながら、瑞紀が告げた。その様子を見て、龍成は瑞紀の純一郎に対する気持ちを否が応でも知らされた。
「やってはみるが、トラーパニ空港がどこまで協力してくれるか……」
「龍成、アランたちが乗ってきた飛行機なら、すでに給油が終わっているんじゃないの?」
トラーパニ空港と通信をしようとした龍成に、凛桜がハッとして叫んだ。
「なるほど……! 凛桜、よく気づいたなッ! トラーパニであの飛行機に乗り換えよう」
龍成の意見に、瑞紀が血相を変えて叫んだ。
「ちょっと待って、龍成ッ! 飛行機だと一度カターニア空港に着陸しないとならないわ。カターニアからタオルミーナのインターナショナル・メディカル・センターまでは、車で一時間以上かかるわ。トラーパニで給油するよりも遅くなるッ!」
ヘリコプターと違い、滑走路が必要な飛行機ではインターナショナル・メディカル・センターの屋上に着陸するのは不可能だった。
「やはり、トラーパニで給油を受けないとダメか……」
龍成の言葉を聞き、瑞紀が左腕のリスト・タブレットを操作し始めた。
「どこに連絡するんだ、瑞紀……?」
「黙ってて……」
瑞紀はその人物の名前をヴァーチャル・スクリーンに表示させると、通話アイコンをタップした。
「高城だ……」
渋いバリトンの声がスピーカーから響き渡った。聞き覚えのある声に、龍成と凛桜が驚きの表情を浮かべた。通話の相手は、<星月夜>統合作戦本部長の高城雄翔だった。
「叔父様、瑞紀です。緊急かつ重要なお願いです」
「どうした……?」
焦燥を含んだ瑞紀の言葉にも拘わらず、高城は普段と変わらない口調で訊ねてきた。瑞紀は高城が今までに取り乱した姿を見たことがないことを思い出した。その落ち着いた対応を頼もしく思いながら、瑞紀が続けた。
「姫川玲奈救出作戦は成功しました。その作戦中に<櫻華会>の神崎純一郎さんが、左腕を失う重傷を負いました。現在、AH-10Sステルス・コブラでファヴィニーナからタオルミーナ市のインターナショナル・メディカル・センターに向かっている最中です。しかし、燃料が残り25パーセントを切っています。トラーパニでの給油を優先的に受けられるように手配して頂けませんか?」
「ファヴィニーナからタオルミーナまでは、通常でも五十分ほどかかるはずだ。神崎氏の容態は大丈夫なのかね?」
瑞紀の簡単な説明で、高城はほぼ状況を把握したようだった。
「正直、分かりません。でも、何としても純を……神崎さんを助けたいんです。お願いします。最優先で給油を受けられるように手配して頂けませんか?」
純一郎のことを純と呼びかけたことには何も触れずに、高城が真剣な口調で訊ねた。
「瑞紀君、そこに西園寺君はいるかね?」
「はい。今、変わります……」
瑞紀が左腕を延ばして、操縦桿を握る凛桜の口元にリスト・タブレットを近づけた。
「西園寺です。代わりました……」
突然、<鬼元帥>と呼ばれる統合作戦本部長に指名され、凛桜が緊張した口調で告げた。
「西園寺君、空中給油の経験はあるか?」
「空中給油ですか? 陸自の訓練で数回やったことがありますが……」
驚きに眼を見開きながら、凛桜が答えた。
「成功はしたか?」
「はい。三回とも何とか成功しましたが……。まさか、本部長は……?」
高城が空中給油を命じようとしていることを察し、凛桜は顔を引き攣らせた。ヘリコプターの空中給油は、飛行機よりも数段難しかった。万一、ローターに燃料補給用ホースが絡んでしまうと、大惨事になるからだ。
「よし、そのままタオルミーナへ向かえ。パレルモからエアバスA400Mを向かわせる。コンタクト・ポイントはパレルモ上空を予定しておけ」
「ラ、了解……」
「準備が整い次第、パレルモの管制塔から連絡を入れさせる。必ず成功させろ」
「イ、イエス・サー……」
緊張した表情で凛桜がそう告げると、高城からの通信が切られた。凛桜はハアッと大きくため息をつくと、瑞紀を振り返りながら文句を言った。
「瑞紀ちゃん、この貸しは大きいわよッ!」
「そんなに大変なんですか? 空中給油って……?」
瑞紀は驚きの表情を浮かべながら訊ねた。陸自のヘリコプター部隊で随一の操縦技術を持つと言われた凛桜が、緊張のあまり額に汗を浮かべていた。
「高度六百メートルを飛行中に、直径十センチの穴に棒を差し込むんだッ! それも、相手の機体との距離を十センチ単位で調整しながらねッ! それをこの夜中にサーチライトだけでやれって言うんだぞッ! 本来なら、副操縦士が距離計算して座標をインプットしながらでも困難なコンタクトだッ! あんたも龍成もそんなことできないだろッ!」
夜間の空中給油の難易度をまったく理解していない瑞紀に、カッとなって凛桜が叫んだ。
「凛桜、やはりトラーパニで給油しようッ! 危険すぎるッ!」
凛桜の説明を聞いて、龍成が顔色を変えた。ヘリコプターの操縦経験がない素人から見ても、夜中に空中給油をする無謀さが理解できた。
「凛桜さん……」
純一郎を抱き締めながら、瑞紀が両手を握り締めた。想像以上の空中給油の困難度に、瑞紀も無理強いはできなかった。だが、トラーパニで給油することは、最低でも三十分……もしかしたら一時間以上も時間をロスすることを意味した。純一郎が助かる確率が非常に低くなることは間違いなかった。
「瑞紀ちゃん、一つだけ教えてッ!」
凛桜が真剣な口調で瑞紀に訊ねてきた。瑞紀は凛桜が聞こうとしていることを察して、純一郎の体を抱きしめた。
「神崎さんを愛しているのッ?」
「愛していますッ! 純は私のすべてよッ! 何があっても死なせたりしないッ!」
助手席に座る龍成の顔を見つめながら、瑞紀は心の底から叫んだ。
「瑞紀……」
驚きのあまり言葉を失った龍成を横目で見つめると、凛桜がニヤリと笑みを浮かべながら告げた。
「分かったわッ! 空中給油は絶対に成功させるッ! ファヴィニーナからタオルミーナまでの最短記録を作ってやるわッ!」
「ありがとう、凛桜さん……。お願いしますッ!」
そう告げると、瑞紀は冷えた純一郎の体を温めるようにきつく抱き締めた。
(どんなことをしても、絶対にあなたを助けるッ! 愛しているわ、純ッ……!)
瑞紀は優しい眼差しで純一郎を見つめると、その顔を自分の胸に掻き抱いた。その様子を、龍成は助手席から無言で見つめていた。
ピーッ……ピーッ……ピーッ……!
「止めて、アランッ!」
突然鳴り響いた警告音に、フランソワーズがステアリングを握るアランに向かって叫んだ。警告音は玲奈の首に嵌められた真紅の首輪から聞こえていた。
「何の音だ、フランソワーズ?」
急ブレーキを掛けてランドクルーザーを停止させると、アランが後部座席を振り返った。
「ミス・ヒメカワの首輪にある髑髏の眼が点滅しているわッ! もしかしたら、爆弾かも知れないッ!」
「何だとッ! はるか、俺のバッグの中に爆発物検知装置がある。それだッ……! フランソワーズに渡してくれッ! フランソワーズ、使い方は分かるな?」
はるかが取り出したトランシーバーのような箱形の機器を見ながら、アランが告げた。
「分かるわ。背面のセンサーを近づけるだけよね? 火薬や爆薬があれば、液晶に種類と量が表示される……」
はるかから受け取った爆発物検知装置を玲奈の首輪に近づけた瞬間、パイロットランプが赤く点灯した。液晶に表示された情報を読み取ると、フランソワーズが驚愕して叫んだ。
「200gのTNT火薬と、高周波感応式の起爆装置が仕込まれているわッ! たぶん、あの屋敷から一定以上の距離を離れると爆発するッ!」
「200gのTNTってことは、ヒメカワ警視の頭部を粉砕するのに十分な量だ。この場所で警告が鳴ったってことは、恐らく五十メートルくらい離れると爆発するってことだッ! すぐに屋敷に引き返すッ!」
アランはランドクルーザーをそのまま後進させた。Uターンするために少しでも前方に進むリスクを恐れたのだ。
「ミス・ヒメカワ、起きてッ……!」
フランソワーズが玲奈の頬を軽く叩いた。玲奈から爆弾の情報を聞き出すためだった。
「うッ……うん……。ここは……?」
意識を取り戻した玲奈が周囲を見渡した。
「あたしは<星月夜>リヨン支部のフランソワーズ=アントワーヌよ。安心して、あなたを助けに来たの」
「助けに……?」
玲奈の瞳が大きく見開かれ、涙が溢れた。まさしく絶望の暗闇に一条の光明を得た思いだった。
「屋敷にいた敵は制圧したわ。でも、あなたを病院に搬送するために車で移動したら、突然その首輪から警報が鳴り出したの。調べたら、爆薬が仕掛けられていることが分かった。その爆弾について、何か聞いていたら教えて……」
「どんな爆弾かは、聞いていないわ……。あのハレムから五十メートル離れたら爆発すると言われた……。そして、無理に外そうとすれば、その場で爆発するって……。髑髏の眼孔が網膜センサーになっていて、ベーカーの網膜パターンでないと解除できないらしいわ……」
フランソワーズの質問に、玲奈が小声で答えた。全身が綿のように疲れ切っていて、手足が上手く動かなかった。
「姫川課長、早瀬ですッ! 無事で良かったッ!」
「早瀬……さん……?」
助手席から振り返ってきたはるかの顔を見て、玲奈が驚きに眼を見開いた。まさか、日本からこのファヴィニーナまで、はるかが助けに来てくれるとは思ってもみなかった。
「<星月夜>の皆さんに協力してもらって、悪い連中はみんな倒しましたから、もう安心してくださいッ!」
はるかの言葉に、玲奈は眉を顰めた。あのレオナルド=ベーカーが簡単に倒れるとは思えなかったのだ。
「ベーカーは……?」
「レオナルド=ベーカーはいなかったわ。彼の部下らしき男たちは、すべて確保した。ベーカーの居場所を知っていたら教えて……」
フランソワーズが真剣な表情で玲奈に訊ねた。主犯と思われるベーカーは、フランソワーズたちが突入したときには姿が見えなかった。事前に襲撃を察知し、逃亡したのだと思われた。
「分からない……。彼はまだ生きているの? 恐い……! 助けてッ……!」
突然、玲奈が暴れ出した。ベーカーに刷り込まれた恐怖が、玲奈の精神の奥底まで浸透していた。
「落ち着いて、ミス・ヒメカワッ! ベーカーは、今ここにいないッ!」
「課長……」
フランソワーズに取り押さえられる玲奈の姿を見て、はるかが言葉を失った。そこには<西新宿の女豹>と謳われた面影はまったくなく、激甚な恐怖に恐慌を来しているただの女の姿があった。
「睡眠導入剤を使え、フランソワーズッ! 下手に暴れて起爆スイッチが入るとまずいッ!」
「分かったッ! ミス・ヒメカワ、悪いけど少し眠っていてッ!」
そう告げると、フランソワーズは左手で自分の鼻と口を押さえながら玲奈の顔に睡眠導入剤の入ったスプレーを噴射した。即効性ガスを吸入し、玲奈は全身を弛緩させると意識を失った。
「網膜センサーか……。厄介だな。<星月夜>の技術開発部の設備なら解除できるかも知れないが、イタリア警察では難しいぞ……」
「そうね……。ミス・ヒメカワを動かせないとなると、余計に厄介ね。そうかと言って、技術員だけ連れてきても意味はないし……」
アランとフランソワーズがお互いに難しい顔をして話し合った。それを見ていたはるかが、ふと思いついて訊ねた。
「あの……。さっき、高周波感応式の起爆装置があるって言ってましたよね? その周波数を分析すれば、発生装置と一緒なら姫川課長を日本に連れて帰れるんじゃないですか?」
「……! なるほどッ! その可能性はあるなッ!」
「逆転の発想ね。ここで装置を外すんじゃなく、装置を生かしたまま運ぶってことね。周波数の分析だけならば、市販でも手に入るわ。余程特別な周波数を使っていなければ、発生装置の方も何とかなるはず……」
はるかの意見に、フランソワーズが頷きながら告げた。
「よしッ! ミス・ヒメカワの治療は、あの屋敷で行う。医師を一人手配するから、ハルカはヒメカワに付いていてくれ。フランソワーズは周波数分析装置と発生装置の手配を頼む。俺はイタリア警察に状況説明と協力を要請する」
「了解」
「分かりましたッ!」
アランの指示に、フランソワーズとはるかが頷いた。
アランに抱きかかえられながら、玲奈は再びベーカーの屋敷に戻った。だが、今度は愛人や奴隷としてではなく、一人の患者としてであった。
空中給油には大きく分けて二つの方法がある。
一つはフライング・ブーム方式と言って、給油機の尾部に取り付けた給油ブームを伸ばし、受油側の機体の上面に取り付けてある給油口に差し込む方法だ。この方式の利点は給油速度が速いことにあり、主に大型機など大量の燃料を必要とする機体に使用される。しかし、前方斜め上からブームを伸ばしてくるので、機首上部にローターが回っているヘリコプターが相手では使えなかった。
もう一つの方法は、ローブ&ドローグ方式である。給油機からドローグホースと呼ばれる燃料補給用のホースを後方に繰り出し、受油側の機体は受油用のプローブと呼ばれる棒の先端をそのホースに繋げるのだ。当然のことだが、単に細いホースがブラブラしている状態では掴まえられないため、ホースの先端にバスケットのようなものがついている。よって、受油側の機体はプローブをそのバケット部分に挿し込むのだ。
この方式の場合、給油機はホースを繰り出して水平直線飛行を安定して行うことに専念し、後は受油側の機体任せであった。受油側では、機体を操ってプローブをバスケットに差し込み、接続した後はプローブが抜けないように機体を操る。つまり、空中給油が成功するか否かは、すべて受油側の機体のパイロットの腕にかかっていた。
ヘリコプターの場合、回転するローターにドローグホースが絡むと大惨事になるので、機首に伸縮式の空中給油プローブを装備している。給油のときだけ、プローブがローターの回転面より前方に出るように伸びるようになっているのだ。AH-10Sステルス・コブラのプローブも、機首右横に設置されていた。
「大丈夫か、凛桜……?」
心配そうな口調で、龍成が訊ねた。
「ごめん、龍成。黙って……。集中したい……」
パイロット・グローブの中でビッショリと手に汗をかきながら、凛桜が操縦桿を操作した。月明かりしかない闇の中で、サーチライトだけが頼りだった。速度が少しでも早ければ、給油機であるエアバスA400Mに接触してしまう。そうなったら、二機とも墜落することは明白だった。
(落ち着け、凛桜……! 陸自の訓練では一度も失敗しなかったじゃないかッ! あたしなら、必ずできるはずッ! 絶対に成功するんだッ!)
目標であるバスケットの直径はおよそ五十センチだ。当然ながら、エアバスA400Mから発生する乱気流によって、バスケットは一定の位置に停止せず常時動いている。
(バスケットに固執しないで見ろッ! 全体の中の一部としてバスケットを把握しろッ!)
操縦桿を微妙に倒しながら、凛桜はステルス・コブラの速度を調整した。サーチライトの中で、バスケットがプローブのほぼ直線上に重なった。
(今だッ! ゆっくりと前方へッ!)
ステルス・コブラを微速前進させると、プローブがバスケットに接触した感覚を皮膚で感じた。
(このまま、ゆっくりと……)
カチッという感触が伝わり、プローブがバスケット中央のドローグホースに接続された。
「接続完了ッ! 給油求むッ!」
『接続確認した。給油開始……』
スピーカーからエアバスA400Mのナビゲーターの声が響いた。燃料系の数字がめまぐるしく変わっていき、給油が開始された。凛桜は気を引き締めて、A400Mとの距離を一定に保った。給油中にA400Mと接触などしたら、燃料に火花が引火して大爆発を起こすからだ。
「燃料計五十パーセント。給油終了」
燃料計が五十パーセントを超えた時点で、凛桜は給油の中止を依頼した。このパレルモからインターナショナル・メディカル・センターのあるタオルミーナまでは、およそ270kmだ。最大航続距離が800kmあるステルス・コブラであれば、半分の燃料で十分に到達可能だった。
夜間の空中給油は非常に危険でリスクが大きい。その上、ローブ&ドローグ方式による給油はフライング・ブーム方式に比べて非常に時間がかかるのだ。燃料を五十パーセントにするだけで約五分かかったのだ。当然のことながら、その間はほとんど空中停止状態だ。一分一秒を争う状態で、その時間のロスが致命的になる可能性があった。
『給油終了《オーバー》、了解。いい腕だ、幸運を』
「ありがとう、そちらもッ!」
A400Mとの通信を切ると、凛桜はプローブを回収した。そして、高度を上げてA400Mを追い越すと、一気に加速を開始した。
「飛ばすわよッ! 瑞紀ちゃん、神崎さんをしっかりと抱いていなさいッ!」
「はいッ……!」
瑞紀の返事を聞くと、凛桜はスロットルを全開にした。漆黒の闇の中をAH-10Sステルス・コブラが、時速450kmの最高速度で東に向かって飛翔していった。
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