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第4章 愛と硝煙の日々

7 愛の汽笛

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「想像以上の物々しい警備よ。西門の前にいるのは昼間と同じく二人だけだけど、屋敷の庭にはUZIーPROを持った男たちが十人以上もいるわ」
 レオナルド=ベーカーの別荘が見下ろせる西側の高台から、瑞紀は暗視機能付の双眼鏡を覗きながら告げた。さすがにシチリアン・マフィアのNO.2である相談役コンシリエーレの別荘だけあった。その警備の厳重さは、瑞紀の想像を遥かに超えていた。

「ここからそいつらを狙撃できないか?」
 瑞紀の射撃の腕を知る純一郎が、小声で訊ねた。
「無理ね……。M4コマンドーZ3の有効射程距離は二百メートルよ。ここからあの男たちまでの距離は、約三百メートルあるわ。仮に命中させることができたとしても、一撃で彼らの戦闘力を奪うことは難しいわ」
 双眼鏡から視線を外して、瑞紀が純一郎に告げた。

「室内の様子は分からないか?」
「窓にはすべてカーテンが引かれているわ。狙撃されることを警戒しているようね」
「くそッ! 警備が厳重な上に、玲奈が捕らえられている場所も分からないんじゃ、手の出しようがねえぞ……」
 瑞紀の言葉に、純一郎が歯ぎしりをしながら口惜しそうに呻いた。

「龍成たちはステルス・コブラを借りたって言っていたわ。やはり、<星月夜シュテルネンナハト>の到着を待ってから玲奈さんを救出する方が現実的よ……」
「そのステルス・コブラって言うのは、何なんだ……?」
「正式名称は、AH-10Sと言う攻撃ヘリコプターよ。機体がレーダー波を反射する特殊ステルスコーティングをされていることから、その名前で呼ばれているの。空対地ミサイルヘル・ファイアや30mmガトリング砲を装備しているわ」
 瑞紀の説明に、純一郎は驚愕のあまり眼を見開いた。

「<星月夜シュテルネンナハト>はそんな物まで持っているのか?」
「新宿本部には一機あるけど、リヨン支部にも配備されていたとは私も知らなかったわ。確か、一機三十億円くらいするらしいのよ」
「三十億……」
 純一郎が愕然として言葉を失った。その様子を見て、瑞紀が楽しそうに告げた。

「高いだけあって、性能は折り紙付きよ。ステルス・コブラが一機あれば、小さな軍事要塞くらい簡単に制圧できるわ。龍成たちは上空からステルス・コブラで威圧攻撃をしている間に、残りの特別捜査官エージェントたちが突入して一気に制圧する作戦を立てていると思う。それに便乗して私たちも玲奈さんを救出に向かった方がいいわ」
「なるほど……。さすがに民間軍隊と呼ばれるだけあるな。ヤクザの出入りとは規模が違う……」
 呆れたような口調で、純一郎が告げた。

「取りあえず、今夜は撤収しましょう。明日の昼に、またこの場所から中の様子を確認してみた方がいいわ。もしかしたら、昼間ならカーテンが開いている部屋があるかも知れない……」
「そうだな……。分かった。そうしよう」
 瑞紀の提案に頷くと、純一郎は手を伸ばして彼女を助け起こした。瑞紀は地面に伏して双眼鏡で屋敷内を探っていたのである。

「白銀たちが到着するのは、今日か明日だったな?」
「トラーパニ空港に給油の申請をしているって言っていたわ。申請の許可が下りるまでの時間によるけど、早ければ今日の夕方にはファヴィニーナに着くと思う」
 ステルス・コブラの最大速度は、時速四百五十キロだ。リヨンからファヴィニーナまでは約千九十キロなので、飛行時間だけなら二時間半もかからない。給油時間を入れても、四、五時間あれば十分のはずだった。

「では、ホテルに戻るとするか。白銀たちが到着するまでにはまだまだ時間がある……」
 ニヤリと笑みを浮かべた純一郎の顔を、瑞紀はジト目で見つめた。
「ホテルに戻っても、休むだけだからね……」
「ああ……。ゆっくりと寝よう・・・ぜ」
 純一郎の言葉に隠された意味を知ると、瑞紀はカアッと顔を赤らめた。
「まだする・・つもりなの? この絶倫魔神……」
 真っ赤に顔を染めながら純一郎に腕を絡めると、瑞紀は文句を言った。だが、その胸は期待に高まり、子宮が熱く疼いた。

「何なら、ここで奴らに見せつけてもいいぞ……」
「バカ……」
 ジロリと純一郎を睨むと、瑞紀は彼の唇に魅惑的な紅唇を重ねた。
 南半球の満天の星々が、口づけを交わす二人の姿を優しく照らした。夜空には南十字星が、二人の行く末を暗示するように美しく輝いていた。


「お願い……もう、ゆるして……。これ以上されたら、私、壊れる……」
 壮絶な官能に全身をビクンッビクンッと痙攣させながら、瑞紀が哀願した。黒曜石のような瞳からは随喜の涙が滂沱となって流れ落ち、せわしなく熱い吐息を漏らす唇からはネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちていた。白い裸身は真っ赤に上気し、豊かな胸の頂には淡紅色の乳首が痛いほどそそり勃っていた。両脚の内股は溢れ出た愛液でビッショリと濡れ、白いシーツに淫らな模様を描いていた。

「何回イッたんだ? 七回、いや八回くらいか……?」
「分からない……。イキすぎて、頭がおかしくなりそう……」
 実際には十回以上の絶頂オーガズムを極めていた。壮絶な快感に脳髄までもドロドロに溶かされ、瑞紀は何も考えられなくなっていた。

(こんなの続けられたら、本当に私ダメになる……。純とのセックスしか考えられなくなっちゃうわ……)
 初めてシチリアのホテルで抱かれてから、今日で四日目だった。その間に、昼夜を問わず純一郎に抱かれ続けて、数え切れないほどの快感を刻みつけられていた。細胞の一つ一つまでもが、純一郎が与えてくれる壮絶な愉悦に染まりきっていた。

「私、自分がこんなにイヤらしいなんて、知らなかった……。純に抱かれると、頭の中が真っ白になるほど気持ちいいの……。もう、純と離れたくない……。ずっとこうして、抱かれていたい……」
 官能に蕩けきった瞳で純一郎を見つめると、熱い吐息とともに瑞紀が真情を吐露した。
「瑞紀……、煽っているのか?」
 純一郎が嬉しそうな笑みを浮かべると、瑞紀の体を抱き寄せて耳元で囁いた。ゾクリとした快感が背筋を舐め上げ、瑞紀は白い喉を仰け反らせて喘いだ。

「煽ってなんて……ない……。純が好きなの……愛しているわ……。もう、私……純から離れられない……」
「瑞紀……。俺もお前を離さない……。お前は俺のモノだ。その証拠を今、刻みつけてやる……」
 そう告げると、純一郎は猛りきった逸物を瑞紀の秘唇に充てがった。そして、グイッと腰を入れると肉襞を抉りながら一気に最奥まで貫いた。

「あぁああッ……!」
 涎の糸を垂らしながら、瑞紀が歓喜の声を上げた。快美の火柱が全身を灼き溶かし、意識さえも真っ白に染まった。裸身を大きく仰け反らせると瑞紀は、純一郎の一撃だけで絶頂オーガズムを極めた。
 瑞紀が絶頂しているにも拘わらず、純一郎が三浅一深の悪魔の律動を始めた。その凄絶な快感に、瑞紀は長い黒髪を舞い乱しながら激しく首を振った。

「だめッ! 今、イッているッ! いやぁあッ! おかしくなっちゃうッ!」
「あッ、あッ、だめぇえッ! また、イッちゃうッ! 許してぇえッ!」
「凄いッ……! 気持ちいいッ……! もう、狂っちゃうッ! イクッぅう……!」
 両脚を純一郎の腰に絡めると、瑞紀は淫らに腰を振りながら再び絶頂オーガズムに達した。歓喜の愉悦を極めている瑞紀の唇を、純一郎が塞いだ。熱い吐息を漏らしながら、瑞紀は貪るように舌を絡めた。その恍惚の表情は、紛れもなく官能の愉悦に狂わされた女の情欲に染まっていた。

「あッ、あッ、だめぇえッ! イクの、止まらないッ! 死んじゃうッ! 許してッ! イグッ!」
 真っ赤に上気した裸身を大きく仰け反らせると、瑞紀が壮絶に総身を痙攣させた。絶頂オーガズムの先にある極致感オルガスムスを極めたのだ。プシャアッという音を立てて、秘唇から大量の愛液が迸った。
「ひぃいいッ……! 死ぬぅううッ……!」
 快絶の絶叫とともにガクガクッと総身を硬直させると、瑞紀はグッタリと弛緩してシーツの波間に沈み込んだ。

「ハッ……ハヒッ……ハァッ……ハッ……ハァアッ……」
 美しい貌を涙と涎で濡らしながら、瑞紀がせわしなく熱い吐息を漏らた。閉じた睫毛をプルプルと震わせ、真っ赤に染まった目尻からは随喜の涙が滂沱となって流れ落ちた。ワナワナと震える唇からは、ネットリとした涎が長い糸を引いて垂れ落ちた。
 それは、超絶な歓悦に翻弄され尽くされた女の悦びに満ちた表情だった。

「どうだ、満足したか……?」
 ニヤリと笑みを浮かべながら告げた純一郎の言葉に、瑞紀はトロンと蕩けきった瞳で彼の顔を見上げながら小さく頷いた。
(こんなに感じるの、初めて……。こんなの知ったら、私、この人から離れられない……)
 抱かれるたびに、快感が大きくなっていった。それは紛れもなく、純一郎に対する瑞紀の愛情が大きくなっている証拠に他ならなかった。

(愛しているわ、純……。この世界の誰よりも、あなたを愛している……)
 瑞紀はうっとりとした表情を浮かべると、ゆっくりと瞳を閉じた。最愛の男が与えてくれた倖せに、女豹はつかの間の休息を得てまどろみ始めた。その左胸には真紅の薔薇が燦然と咲き誇っていた。


『瑞紀、今、大丈夫か……?』
「ええ……」
 ネットリとした唾液の糸を引きながら唇を離すと、瑞紀が龍成からの通信に出た。
(何で、いつもこんなタイミングで掛けてくるの……?)
 絶頂したばかりの肢体をビクンッビクンッと痙攣させながら、瑞紀が内心で不満の声を上げた。歓喜の愉悦に蕩けきった頭を振ると、瑞紀は乱れた息を整えようと大きく深呼吸をした。

『今、アジャクシオに着いたところだ。ここで給油して、ファヴィニーナに向かう。あと五、六時間でそっちに着くと思う』
「分かった……んッ!」
 瑞紀は慌てて右手で口を強く押さえた。純一郎が瑞紀の両脚を大きく広げ、真っ赤に充血した真珠粒クリトリスを舌で舐め上げたのだ。ビクンと大きく仰け反ると、瑞紀は長い黒髪を振り乱して首を振り、純一郎を睨んだ。

『どうした? まだ体調が悪いのか?』
「だい……じょうぶ……。何でも……ないわ……。んくッ……!」
 腰骨を灼き溶かすほどの快感が、背筋を舐め上げて脳天で弾けた。随喜の涙を溢れさせながら、瑞紀は必死で喘ぎ声を抑え込んだ。女の最大の弱点を舌で舐られ、ビクンッビクンッと総身が痙攣を始めた。凄まじい快感に、腰がイヤらしく動き出した。

(いやッ! こんなの、我慢できないッ!)
 剥き出しにされた真珠粒クリトリスを舌でピチャピチャと舐られ、瑞紀は右手で口元を押さえながら漏れ出そうになる嬌声を必死で押し殺した。気を緩めると、あっという間に絶頂オーガズムを迎えそうだった。

『神崎はそこにいるのか?』
 瑞紀の様子を不審に思ったのか、龍成が訊ねてきた。
「いない……わ……。別の部屋に……んッ……いる……くッ……」
(だめ、バレちゃうッ! やめてッ……!)
 瑞紀が随喜の涙を流しながら純一郎を見つめ、激しく首を振った。だが、純一郎はニヤリと笑みを浮かべると、真珠粒クリトリスを唇で咥えてチューッと吸い上げてきた。

「ひッ! んッ、んくぅうッ……!」
 快美の火柱が背筋を舐め上げ、脳天に壮絶な落雷が襲いかかった。ビクンッビックンッと激しく総身を痙攣させると、瑞紀は絶頂オーガズムを極めた。
『どうした、瑞紀? 大丈夫か?』
「……だい……じょう……ぶ……」
 下唇を噛みしめて嬌声を押さえると、瑞紀はガクガクッと全身を硬直させながら辛うじて答えた。随喜の涙とともに、唇の端からネットリとした白濁の涎が糸を引いて垂れ落ちた。

『本当に一人なのか?』
 明らかに疑惑を抱いた口調で、龍成が訊ねてきた。
「ひとり……よ……。ごめん……疲れてるみたい……。休ませて……」
『そうか……。分かった。アジャクシオを発ったら、また連絡をする』
「うん……おねがい……」
 白い顎を突き上げて大きく仰け反りながら、瑞紀が小声で告げた。絶頂オーガズムに達したばかりの真珠粒クリトリスを、純一郎が舌先でネットリと舐っていた。

(だめッ! また、イッちゃうッ……!)
 達したばかりの女体が、女の最大の急所を責められ続けたら我慢できるはずなどなかった。瑞紀は瞬く間に絶頂オーガズムへの階段を駆け上っていった。
『ゆっくり休めよ、瑞紀……』
「うん……あり……がと……」
 そう告げると、瑞紀は慌てて通信をオフにした。次の瞬間、裸身を大きく仰け反らせると、凄まじい絶頂オーガズムを極めた。

「だめッ! イグぅうッ!」
 快美の火柱が全身を貫き、凄まじい雷撃が脳天を直撃した。真っ白な光輝が意識を包み込み、壮絶な快感が四肢の先端まで痺れさせた。プシャアッという音とともに、秘唇から愛液が潮流となって迸った。奥歯をガチガチと鳴らしながら愉悦アクメの硬直を噛みしめると、瑞紀はグッタリと弛緩してベッドへと沈み込んだ。
 その裸身は真っ赤に染まり、ビクンッビクンッと痙攣を続けていた。

「今回は白銀も、大分不審に思っていたようだな……」
 ニヤリと笑いながら告げた純一郎の顔を、瑞紀は官能に蕩けた瞳で睨んだ。
「ハッ……ハァ……二度と……しないでって……ハァ……言った……はずよ……」
 強く文句を言おうとしたのだが、息が乱れて言葉が続かなかった。起き上がってベレッタを取りに行こうと思っても、全身が甘く痺れて体に力が入らなかった。

「瑞紀が俺のモノになったことを、俺は白銀に告げるぞ」
「それは……」
 純一郎の言葉に、瑞紀は驚いて彼の顔を見つめた。まさか、純一郎が現時点でそこまで考えているとは、思いもしなかった。

「嫌なのか?」
「嫌じゃないけど……」
 瑞紀は小声でそう告げると、口を濁した。純一郎のことは間違いなく愛していた。だが、龍成は瑞紀が初めて愛した男だった。別れたとは言え、嫌いになれるはずはなかった。純一郎の気持ちは嬉しかったが、だからと言って素直に喜べない自分がいた。

「お前の気持ちは分かっているつもりだ、瑞紀……。俺も麗華を忘れることなどできない。まして、白銀は死んだわけじゃない。生きているからこそ、お前の気持ちが再び白銀に向かないとも限らない。だから、俺ははっきりとさせたいんだ。お前はすでに俺のモノだと、白銀に思い知らせてやりたい」
 純一郎が真剣な表情で瑞紀を見つめながら告げた。しばらくの間、純一郎の顔を見つめると、瑞紀はニッコリと微笑んだ。

「何をそんなに不安に思っているの?」
「え……?」
 瑞紀の言葉の意味が分からずに、純一郎が彼女の顔を見つめた。
「私はすでに、あなたの女よ。龍成のことを嫌いになることはないけど、私が愛しているのはあなただけよ、純……。そして、そのことは私の口から龍成に話すわ」
「瑞紀……」
 純一郎が驚いて言葉を失った。瑞紀が笑顔を浮かべながら続けた。

「龍成は私じゃなく、凛桜さんを選んだ……。そして、私は龍成ではなく、あなたを選んだのよ。私の心には、もうあなたしかいないわ。だから、何も心配しないで、純……」
 そう告げると、瑞紀はその魅惑的な唇を純一郎の唇に重ねた。そして、唇を離すと、純一郎の眼を真っ直ぐに見つめながら告げた。
「愛しているわ、純……。この世界の誰よりもあなたを……あなただけを、愛しているわ……」
「瑞紀……」
 純一郎が瑞紀の裸身を力強く抱き締めた。瑞紀は瞳を閉じると、再び純一郎に口づけをした。高まる気持ちをぶつけ合うかのように、二人は濃厚に舌を絡め合った。

 遠くからフェリーの出航を知らせる汽笛の音が聞こえてきた。それはまるで、二人を祝福するかのように灼熱の島に響き渡った。
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