愛するあなたのために薔薇は舞う

椎名 将也

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第4章 愛と硝煙の日々

5 トラブルメーカー

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「あッ、あッ……だめッ! 凄いッ! また、イッちゃうッ! あッ、あッ……イクぅううッ!」
 快美の火柱で激しく下から突き上げられ、瑞紀は大きく裸身を仰け反らせるとビクンッビクンッと痙攣しながら凄絶な絶頂オーガズムを極めた。プシャッと音を立てて秘唇から大量の愛液が迸り、純一郎の引き締まった腹筋に淫らな模様を描いた。

 真っ赤に染まった目尻から随喜の涙を流し、ワナワナと震える唇からネットリとした涎の糸を垂らしながら、瑞紀はガクガクと裸身を震わせて愉悦アクメの硬直を噛みしめた。そして、グッタリと全身を弛緩させると、純一郎に抱かれるように彼の胸に倒れ込んだ。

「ハッ……ハァッ……ハッ……ハヒッ……ハァアッ……」
 長い睫毛をピクピクと震わせ、赤く上気した裸身をビクッビクンッと痙攣させながら、瑞紀は炎の吐息をせわしなく漏らした。凄絶な快感に全身の細胞が灼き溶けて、脳髄さえもドロドロに熔解した。
「さっきからイキっぱなしだな……。そんなに気持ちいいのか?」
 汗で頬に貼り付いた瑞紀の後れ髪をかき上げながら、純一郎がニヤリと笑みを浮かべた。

「もう……許して……。これ以上……されたら……おかしくなっちゃう……」
 今のが何度目の絶頂オーガズムだったのか、瑞紀にはすでに数えられなくなっていた。ただ一つだけ分かっているのは、今夜も壮絶な絶頂地獄に堕とされていることだけであった。

「俺はまだ一度もイッてないぞ。自分ばっかり何度もイクなんて、イヤらしい女だな。最後にお仕置きをしてやる……」
 そう告げると、純一郎は半身を起こして瑞紀を四つん這いにさせた。そして、白い尻の中心にある羞恥の蕾を指で揉みほぐし始めた。

「ひッ……! いやッ! そこは、違うッ……! ひぃいいッ……!」
 ヌプッと尻穴に指を入れられて直腸を弄られると、瑞紀はビクンッと裸身を震わせて大きく仰け反った。その反応を見て、純一郎はニヤリと笑みを浮かべながら告げた。
「こっちも経験済みか? 見た目によらず淫乱な女だ……」

「違ッ……いやッ! そんなとこ、いじらないでッ……! あッ、ひぃいいッ……!」
 長い髪を振り乱しながら、瑞紀が激しく首を振った。尻穴から広がる愉悦が背筋を舐め上げると、全身に鳥肌が沸き立った。大きく広げられた両脚の間にある羞恥の源泉から、トロリと糸を引いて愛液が垂れ落ちた。

「あッ……あッ……だめッ……! あひッ……いやッ……あッ、あッ、あぁああッ……!」
 指を抜き挿しされるたびに、凄絶な快感が腰骨を灼き尽くして全身を痺れさせた。恥ずかしい喘ぎ声が止まらなくなった唇から、ネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちた。
ケツの穴を穿ほじられて、そんなに気持ちいいのか? それなら、今度はこっちに入れてやるよ……」
 尻穴から指を抜き去ると、純一郎が両手で瑞紀の尻たぶを掴んで横に広げた。

「ひッ……! やだッ……! やめてッ! お願いッ……いやぁああッ!」
 猛りきったが尻穴に充てがわれた。かつて尻穴を犯され、気が狂うほどの快絶地獄に堕とされたことを思い出し、瑞紀は逃げ出そうとシーツの上をずり上がった。だが、純一郎は両手で瑞紀の腰を掴んで引き寄せると、長大な男根を尻穴にめり込んできた。

「ひぃいいいッ……! 痛いッ! 抜いてぇッ! 痛いッ! いやぁああ……!」
 メリメリと音を立てて尻穴が押し広げられ、直腸を抉りながら純一郎のが押し入ってきた。凄まじい激痛に悲鳴を上げて、瑞紀が涙を流しながら激しく首を振った。長い黒髪が舞い乱れ、女の悲壮な色香を撒き散らした。

「全部呑み込むとは、イヤらしい女だ。だが、辛そうだな……。少し、ほぐしてやる」
 長大な逸物を根本まで突き刺すと、純一郎はニヤリと笑みを浮かべながら告げた。そして、右手の人差し指と中指を揃えると、ビッショリと濡れた花唇に挿し込んで抜き挿しを始めた。同時に左手で左乳房を揉みしだき、ツンと突き勃った乳首を摘まんでコリコリと扱きだした。

「あッ、あッ……いやッ……! やめッ……だめぇえッ……! アッ、アッ、アァアアッ……!」
 瑞紀の声色が変わったことを感じ取ると、純一郎がゆっくりと男根を動かし始めた。入口近くまで引き抜くと、腸壁を抉りながら最奥まで突き入れた。その悪魔の律動は、凄まじい快絶となって瑞紀の性感を狂わせた。

「お願いッ……! だめぇえ……! 狂うッ……! 凄いの、来ちゃうッ! 許してぇッ……!」
 尻穴を貫かれながら、天井部分Gスポットを擦り上げられ、乳房を揉みしだかれ、乳首を扱かれた。いくつもの女の弱点を同時に責められたら、堪ったものではなかった。瑞紀は両手でシーツを握り締めると、顔を真っ赤に染めて悶え啼いた。随喜の涙が滂沱となって頬を濡らし、炎の喘ぎを漏らす唇からは何本もの涎の糸が垂れ落ちてシーツに淫らな染みを描いた。

「こんなの、初めてぇッ! 凄いッ! イッちゃうッ! 許してッ! イクぅううッ……!」
 グンッと大きく背中を仰け反らせると、瑞紀はビックンッビックンッと激しく裸身を痙攣させながら絶頂オーガズムを極めた。プシャアッと音を立てて、秘唇から大量の愛液が迸った。
 だが、瑞紀が絶頂に達したにも拘わらず、純一郎は一切の責めを止めなかった。それどころか、乳房を揉みしだいていた左手を花唇へと移し、真っ赤に充血した剥き出しの真珠粒クリトリスを摘まみ上げてコリコリと扱き始めた。

「ひぃいいッ! だめぇえッ! 狂っちゃうッ! また、イクッ! イクぅううッ!」
「お願いッ! 許してぇえッ! イクの、止まらないッ! だめぇえッ! イックぅううッ!」
「凄いッ! お尻ッ! 気持ちいいッ! こんなの、だめぇえッ……!」
「私、壊れるッ! 死んじゃうッ! あッ、ひぃいいッ……!」

 何度も秘唇から大量の愛液を迸らせながら、瑞紀はかつてない絶頂地獄に陥った。絶頂オーガズムを極めた次の瞬間には、壮絶な極致感オルガスムスが襲ってきた。全身の細胞が灼き溶かされ、脳髄がグチャグチャに熔解し、意識さえも快絶の奔流に蹂躙された。

「ぐっ……、何て締め付けだッ! 出るッ! 受け取れ、瑞紀ッ……!」
 直腸の奥で、猛りきった男根がビクンと跳ねた。純一郎のが弾けて、大量の熱精を放った。熱い迸りが腸壁を燃やした瞬間、瑞紀は究極の極致感オルガスムスを極めさせられた。

「凄いッ……! 許してぇえッ……! 死ぬぅううッ……!」
 背骨が折れるかと思うほど大きく仰け反ると、瑞紀はかつてないほど壮絶に全身を痙攣させた。大きく見開かれた瞳は焦点を失い、滂沱の涙が頬を伝って流れ落ちた。ガチガチと奥歯を鳴らせた唇からは、白く濁った涎がドロリと糸を引いて垂れ落ちた。
 快絶の絶頂オーガズムに硬直した裸身をグッタリと弛緩させると、瑞紀はガクリと首を折って倒れるようにシーツの波間に沈んだ。

 ビクンッビクンッと裸身を痙攣させ、尻穴から白濁の熱精を垂れ流したまま瑞紀は意識を失った。その両脚の間からは黄金の潮流が迸って、白いシーツに大きな染みを描いていった。
 その悲壮な姿は紛れもなく、超絶な官能に翻弄され尽くされた女の悲しい末路に他ならなかった。その左胸には、濡れた真紅の薔薇が妖しく咲き誇っていた。


(あんなに凄いセックス……初めて……)
 全身がまだ甘く痺れていた。体の中心に快感の埋み火が残っていて、子宮の疼きが止まらなかった。浴室から聞こえるシャワーの音を器楽曲インストルメンタルのように聴きながら、瑞紀は昨夜の激しい愛撫を思い出した。

(お尻であんなに感じるなんて……)
 アナル・セックスの経験は過去に二回あった。<蛇咬会じゃこうかい>に拉致された時に王雲嵐ワン・ウンランに犯された時と、龍成に愛された時だった。だが、昨夜の純一郎の責めは、それらと比較にならないほど凄まじい快感を瑞紀にもたらせた。

(あんなの覚えたら、私、純から離れられなくなる……)
 純一郎とのアナル・セックスを思い出しただけで、クチュッという音とともに秘唇から愛液が溢れだした。瑞紀はカアッと顔を赤く染めると、左手で秘唇をまさぐった。そこはすでにビッショリと濡れ塗れていた。

(乳首もこんなに硬くなってる……。あッ……だめ……。気持ちいいッ……)
 ツンと突き勃った乳首を摘まむと、峻烈な快感が背筋を舐め上げた。濡れた愛液を掬い取って真珠粒クリトリスに塗り込むと、腰骨を灼き尽くすほどの愉悦が全身に広がった。
(だめッ……こんなこと……。純が戻って来ちゃう……。でも、気持ちいい。指が……止まらない……)
 唇を噛みしめて嬌声を押し殺すと、瑞紀は自慰オナニーふけり始めた。

「はッ……あッ……んッ……んあッ……」
(こんなこと、やめないと……。でも、気持ちいい……。こんなになったのは、純のせいなんだから……)
「はんッ……くッ……あッ……はッ……んあッ……」
(三日も続けてあんなにされたら……、女なら誰だって……)
 自慰オナニーを止めようという意志とは裏腹に、瑞紀の指はより激しく動いていた。豊かな乳房を揉みしだき、硬く尖り勃った乳首を捏ね回した。中指と薬指を揃えて秘唇に挿し入れ、粒だった天井部分Gスポットを擦り上げながら親指で真珠粒クリトリスを押しつぶした。

「あッ……イクッ……あッ、くぅあぁあッ……!」
 ビクンッビクンッと総身を痙攣させると、瑞紀は自らの手で絶頂オーガズムを極めた。ガクガクと総身を震わせながら愉悦アクメの硬直を噛みしめると、瑞紀はグッタリと弛緩してベッドに沈み込んだ。目尻から随喜の涙が溢れ、唇の端からは涎が糸を引いて垂れ落ちた。熱い吐息をせわしなく漏らしながら、瑞紀は満足げな微笑を浮かべて官能の喜悦に浸った。
(凄く……気持ちよかった……)

「いいものを見させてもらったな……」
「ひッ……!」
 不意に声を掛けられ、瑞紀は驚愕のあまり息を呑んだ。純一郎がニヤニヤと笑みを浮かべながら、ゆっくりとリビングから寝室へ入ってきた。
「眠っていた白雪姫が、王子様のキスも待たずに自慰オナニーに耽るとは思ってもいなかったぞ」
 純一郎の言葉に、瑞紀はカアッと顔を真っ赤に染めながら彼を睨んだ。

「い、いつから見ていたの……?」
「お前が艶めかしい声を上げ始めた頃からかな? 昨夜、あれだけ可愛がってやったのに、まだ足りなかったのか?」
 楽しそうな笑いを浮かべながら、純一郎が訊ねた。慌てて毛布を手繰り寄せると、瑞紀は裸身を隠しながら純一郎に文句を言った。

「純のせいよ……。あんなにするから、体がおかしくなったのよ……。もう許してって、何度も言ったのに……止めてくれないから……」
 女として愛する男に自慰オナニーに耽る姿を見られたことは、何物にも勝る恥辱であった。黒曜石のように輝く黒瞳から大粒の涙を流すと、瑞紀は両手で顔を覆って泣きだした。

「悪かった、瑞紀……。でも、お前にも責任があるんだぞ……」
 ベッドの端に腰を下ろすと、純一郎が優しく瑞紀の黒髪を撫ぜながら告げた。
「何でよ……。あんなにされたら、女なら誰だっておかしくなるわよ……」
「そうじゃない……。愛する女が快感に悶え啼いたら、男はもっと感じさせてやろうと思うものだ。確かに少しやり過ぎだったのは認めるが、激しいセックスは俺の愛情の証だと思ってくれ……」
 そう告げると、純一郎は瑞紀の唇に口づけをした。

「もう一度、ちゃんと言って……。純は、私を愛しているの?」
 唇を離すと、黒曜石の瞳に真剣な光を映しながら瑞紀が訊ねた。その視線を正面から受け止めながら、純一郎が頷いた。
「愛している、瑞紀……。麗華と同じくらい……いや、今はそれ以上に、お前を愛している……」

「純ッ! 私も、あなたが好き……! 愛しているわ……! この世界の誰よりも、あなたを愛しているわ、純……!」
 そう告げると、瑞紀はその魅惑的な唇を純一郎の唇に重ねた。お互いの裸身を抱き締めると、二人は昂ぶる感情をぶつけるように濃密な口づけを交わした。

「この真紅の薔薇は、誰が彫ったんだ?」
 純一郎が瑞紀の首筋から鎖骨に掛けて舌を這わせると、左胸に咲く薔薇の刺青タトゥを見つめながら訊ねた。
「十八の時、<蛇咬会じゃこうかい>に拉致されて、王雲嵐ワン・ウンランに処女を散らされたわ。その時、王が私を自分のモノにした証だと言って、彫り師に彫らせたの……。こんな刺青タトゥがある女は、嫌い……?」
 不安そうな表情で純一郎を見つめながら、瑞紀が訊ねた。

「いや……。綺麗な薔薇じゃないか? 俺の聖観音によく似合っている……」
「これって、顕現刺青フロート・タトゥって言って、興奮状態になると顕れる特殊な刺青タトゥなの……」
 瑞紀が左手で真紅の薔薇を撫ぜながら告げた。螺旋を描く薔薇の茎の中心には、淡紅色の乳首がツンと突き勃っていた。

「では、俺と二人きりの時には、ずっとこの薔薇が咲くようにしてやろう……」
 そう告げると、純一郎は舌で薔薇を舐りながら、硬く屹立している乳首を唇で啄んだ。
「あッ……!」
 愛しい男に敏感な乳首を咥えられ、瑞紀は白い喉を仰け反らせて熱い喘ぎを漏らした。

「待って、純……。お願い……」
「何だ……?」
「愛するのは、一度だけにして……。今夜は玲奈さんを助けに行かないと……。昨日みたいに何度も愛されたら、私、動けなくなるわ……」
 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、瑞紀が告げた。純一郎はニヤリと笑うと、瑞紀に口づけをしてから告げた。

「心配するな……。玲奈を助け出すのは深夜だ。まだ十二時間以上もある。だから、余計なことは忘れて、思う存分感じていいぞ……」
 そう告げると純一郎は、猛りきったを瑞紀の濡れたに充てがい、一気に最奥まで貫いた。

「あッ、あぁああッ……!」
 自慰オナニーでは満たされない充実した快感に、瑞紀は大きく仰け反りながら悦びの声を上げた。純一郎は一度入口付近までを抜き去ると、粒だった天井部分Gスポットを三度擦り上げた。そして、肉襞を抉りながら再び最奥まで貫いた。それは紛れもなく女を狂わせる三浅一深の調律リズムだった。

「あッ、いやッ……! それ、だめッ……! あッ、いやぁッ……!」
 腰骨を灼き尽くすような快感に、瑞紀は純一郎にしがみついた。無意識に腰が動き出し、秘唇から蜜液が溢れだした。
「どうした、そんなにイヤらしく腰を振って……?」
「だって……あッ、いやッ……! 気持ちいいッ! だめぇえッ……!」
 快美の火柱が背筋を舐め上げ、脳天を落雷が何度も襲った。長い黒髪を舞い乱しながら、瑞紀は激しく首を振った。

「もっと気持ちよくしてやろう。お前は、ここが大好きだろう?」
 純一郎が左手で瑞紀の右乳房を揉みしだき、尖りきった乳首を扱き始めた。そして、右手で柔らかい叢をかき分けて敏感な突起を探り当てると、クルンと薄皮を剥き上げて真珠粒クリトリスをコリコリと嬲り始めた。
 三浅一深の悪魔の律動と同時に、乳房、乳首、真珠粒クリトリスを責められたら、堪ったものではなかった。

「ひぃいいッ! だめぇえッ! それ、イッちゃうッ! いやぁあッ! イクッ! イクぅううッ!」
 ビクンッビックンッと総身を痙攣させると、瑞紀は絶頂オーガズムを極めた。だが、純一郎は瑞紀に愉悦アクメの硬直を貪る時間さえ与えなかった。ガクガクと震える瑞紀の肢体を力尽くで起こすと、純一郎は自分の腰を跨がせて下から突き上げ始めた。

「いやあッ! 今、イッてるからぁ……だめぇえッ! あッ、あッ、あぁああッ……!」
 純一郎は瑞紀の太股を両手で掴むと、彼女の体を三度持ち上げて天井部分Gスポットを擦り上げた。そして、両手を離すと同時に腰を突き上げ、子宮口まで一気に貫いた。同じ三浅一深の動きでも、自らの体重がかかっている分だけ瑞紀はより深く貫かれた。

「あひぃッ! 深いッ! だめぇッ! これ、おかしくなるッ……! いやぁあああッ……!」
 ビックンッビクンッと痙攣すると、瑞紀が純一郎のを激しく締め付けた。二度目の絶頂オーガズムに達したのは、誰の目にも明白であった。
 純一郎が責め方を変えた。三浅一深の律動を止めると、一転して怒濤の如く瑞紀を突き上げだした。同時に左手で乳房を揉みしだきながら淡紅色の乳首を摘まみ上げ、右手で真珠粒クリトリスを転がしながら何度も押しつぶした。

「だめぇえッ! また、イッちゃうッ! 許してッ! イクぅううッ!」
「もう、いやぁあッ! イクの、止まらないッ! 狂うッ! 狂っちゃうッ! あッ、あぁああッ……!」
 壮絶な快感に、瑞紀は涙と涎を垂れ流しながら悶え啼いた。イッたと思った次の瞬間には、より大きな絶頂オーガズムが襲いかかってきた。その切れ目のない絶頂地獄に突き落とされ、全身の細胞が灼き溶け、脳髄さえもドロドロに熔解した。

「凄いの、来るぅッ……! だめぇッ! 死んじゃうッ! ひぃいいッ! イックぅううッ……!」
 グンと一際大きく仰け反ると、瑞紀は裸身を壮絶に痙攣させた。プシャアッという音とともに、秘唇から大量の愛液が噴出した。焦点を失った黒瞳を大きく見開き、真っ赤に染まった目尻から随喜の涙が滂沱となって流れ落ちた。ガチガチと奥歯を慣らせた唇からは、白濁の涎が糸を引いて垂れ落ちた。
 凄まじい愉悦アクメの硬直を解き放つと、瑞紀は全身をグッタリと弛緩させて純一郎の胸に崩れ落ちた。

(私……壊れる……)
 その思考を最後に、瑞紀の意識は急速に闇の中へと落ちていった。
 真っ赤に上気した裸身はビクンッビックンッと痙攣を続け、秘唇からは純一郎の放った熱精とともに大量の愛液が溢れ出てきた。官能の愉悦に翻弄された女の末路の中で、左胸に咲く真紅の薔薇だけが淫らに濡れ光っていた。


 警視庁が所有する警視総監専用機がフランスのリヨン・サン=テグジュペリ国際空港に到着したのは、現地時間の九月三日十三時四十分であった。ボーイング737型機の搭乗階段ベントラル・ステアから、四人の<星月夜シュテルネンナハト>特別捜査部の特別捜査官エージェントが姿を現した。
 アラン=ブライトが率いるチームで、メンバーは白銀龍成、西園寺凛桜、早瀬はるかの四人であった。警視庁西新宿署の姫川玲奈警視救出のために急遽編成されたチームであった。

 早瀬はるか警部補・・・はチームの一人として、姫川警視救出の任に就いていた。出発の直前に警視総監から異例の呼び出しを受け、警視庁を代表する形で<星月夜シュテルネンナハト>のチームに編成されたのだ。その際に、最下級の巡査のままだと支障があるという上層部の判断から、急遽二階級特進の措置が取られて警部補に昇進させられたのだった。

「ハヤセ警部補、お疲れではありませんか?」
 ニヤリと笑みを浮かべながら告げたアランの言葉に、はるかはカアッと顔を赤らめながら文句を言った。
「アランさん、今まで通りハルカと呼んでください。訳も分からずに昇進させられて、戸惑っているんですから!」

「ハッ、ハッ、ハハッ……! 悪かった、ハルカ。でも、警視総監が君の射撃の腕前を知って、警視庁を辞めないようにと慌てて昇進させたそうじゃないか? <星月夜シュテルネンナハト>の見習いアプレンティス・特別捜査官エージェントの地位とどっちが魅力的だい?」
「そんなの言われるまでもありません。これが撃てる方です」
 アランの問いにニッコリと笑顔を浮かべながら、はるかは左脇に吊ったショルダーホルスターのベレッタM90-3rdを指差した。銃器マニアのはるかにとって、好きな銃を撃てる<星月夜シュテルネンナハト>ほど魅力的な職場は他になかった。

「おしゃべりはそれくらいにしておけ。お迎えが来たぞ……」
 龍成の視線の先から、漆黒のマイクロバスが近づいてきた。その両サイドには、<星月夜シュテルネンナハト>のエンブレムが描かれていた。夜空を表す濃紺色ミッドナイト・ブルーの二重円の中に『Sternen Nacht』の金文字が刻まれ、その中心には信頼、平和、愛情を示す白銀の三連星ホワイト・スリー・スターが輝いていた。
 <星月夜シュテルネンナハト>リヨン支部の送迎車であった。

 龍成たちの目の前で停止したマイクロバスの助手席から、金髪碧眼の美しい女性が降りてきた。そして、龍成の目の前に立つと、その女性が右手を差し出してきた。
「久しぶりね、リューセイ……。二年ぶりくらいかしら?」
「久しぶりだな、フランソワーズ。元気そうで何よりだ」
 差し出された右手を握り締めながら、龍成が笑顔で告げた。

「紹介しておこう。今回のチーム・リーダーで、アラン=ブライトだ。こちらは俺の相棒バディでリオ=サイオンジ。そして、彼女は警視庁の警部補でハルカ=ハヤセだ」
 龍成が紹介した順に、アラン、凛桜、はるかがフランソワーズと握手を交わした。

 龍成たちが直接イタリアのシチリア島に入らなかった理由は、至極単純であった。イタリアには<星月夜シュテルネンナハト>の支部が存在しないからだ。アジア最大の総合警備コンツェルンである<星月夜シュテルネンナハト>だが、ヨーロッパに支部があるのはイギリス、ドイツ、フランスの三カ国だけだった。その中でシチリア島に最も近いフランスのリヨン支部をベースに選んだのだった。

「詳しいブリーフィングはリヨン支部で行うとして、バスの中で簡単に情報を交換しましょう。すぐに出発するから、みんな乗って……」
「分かった……」
「はい……」
 フランソワーズの後に続き、龍成、凛桜、アラン、はるかの順でマイクロバスの後部座席に乗り込んだ。

「まず、最初にチーム編成についてだけど、リヨン支部から割ける特別捜査官エージェントの人数は私を含めて八名よ。後の七名についてはリヨン支部に待機させているから、着いたら紹介するわ」
 マイクロバスが発進するとすぐに、フランソワーズが説明を始めた。思ったよりも協力してもらえる人数が少なかった。

「たしか、リヨン支部には二十人くらいの特別捜査官エージェントがいたはずだよな? できれば、十四、五人くらい借りたいんだが……」
 日本から四人で来た理由は、緊急であったことは勿論だが、リヨン支部の特別捜査官エージェントたちに協力をしてもらう予定だったからだ。その人数は十五人前後を見積もっていた。

「そうしてあげたいんだけど、昨日、爆破テロが起こってね。急遽そっちに人手が必要になったの。でも、私はこっちに付くから心配しないで……」
 フランソワーズの言葉に、龍成は頷いた。彼女がリオン支部のトップ・エージェントであることを、以前に交換研修でリオン支部を訪れたことがある龍成は知っていた。

「君がこちらに付いてくれることは、願ってもないことだ。人数の件は了解した。武器や装備の方はどうだ? 特に前もって連絡をしておいたAH-1Zヴァイパーは、是非とも借りたいんだが……」
 AH-1ZヴァイパーはAH-10Sステルス・コブラの旧型であるとは言え、現在も陸上自衛隊に実戦配備されている戦闘ヘリコプターだ。陸自の対戦車ヘリコプター隊に所属していた凛桜にとっては、乗り慣れた機体でもあった。もっとも、デートに遅れそうなため、AH-1Zヴァイパーをタクシー代わりに利用して陸自をクビになった黒歴史そのものの機体でもあった。

「それが、ヴァイパーも爆破テロの方で必要になって、貸し出せないのよ……」
「そんな……。何とかならないんですか?」
 フランソワーズの言葉に、凛桜が落胆の声を上げた。ヘリ・パイロットの凛桜にとって、ヴァイパーが操縦できないのであればここまで来た意味がなかった。

「俺からも頼む。何とかヴァイパーを貸し出してもらえないか?」
 戦闘ヘリコプターによる空からの支援があるとないとでは、玲奈救出作戦の難易度がまったく違ってくるのだ。ヴァイパーの支援がないとすれば、少なくても二、三十人の特別捜査官エージェントがいないとマフィアの支部を制圧することなど不可能であった。

「ヴァイパーは無理だけど、代わりのヘリなら準備しておいたわよ」
 悪戯そうな笑みを浮かべながら、フランソワーズが告げた。
「代わりのヘリって……?」
 パッと顔を輝かせると、凛桜が身を乗り出して訊ねた。
「AH-10Sステルス・コブラよ」
「ステルス・コブラ……?」
 フランソワーズの言葉に、龍成と凛桜が同時に叫んだ。ステルス・コブラは<星月夜シュテルネンナハト>本部にごく最近配備された最新鋭の戦闘ヘリコプターだ。購入費は一機三十億円である。それがリヨン支部にあるなど、聞いたこともなかった。

「あたしの彼が、フランス空軍の大佐なの。その彼にお願いして、一週間だけ借りちゃったわ」
 とんでもないことを平気な顔をしてフランソワーズが告げた。いくら大佐とは言え、恋人に戦闘ヘリコプターを無断で貸したことがバレたら、軍事裁判は免れないはずだった。

「分かります、彼氏さんの気持ち……! 愛する人のためなら、戦闘ヘリの一機や二機、勝手に使うくらい当然ですよねッ!」
 満面の笑みを浮かべながらのたまった凛桜の顔を、龍成がジト目で見つめた。そのせいで陸自をクビになったのだろうと言いたげな眼差しだった。

「あら? あなたとは気が合いそうね。リオって呼んでもいいかしら? 私のことはフランでいいわよ」
「もちろんです、フラン! 今度、ぜひ彼氏さんを紹介してください!」
 差し出されたフランソワーズの手を握り締めながら、凛桜がニッコリと微笑んだ。それを横目で見ながら、龍成は大切なことを思い出した。

(そう言えば、フランソワーズって特別捜査官エージェントとしては一流だが、リオン支部きってのトラブルメーカーだったな……。日仏のトラブルメーカーが揃って、今回の任務は大丈夫か……?)
 龍成の思考を読み取ったかのように、彼の横でアランが大きなため息をついた。
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