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第2章 櫻華の嵐
8 若獅子対女豹
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「あッ、あぁッ……いいッ! アッ、アァアッ……! 凄いッ! 気持ちいいッ……!」
亜麻色の髪を振り乱しながら、水島麗華が男の上で激しく腰を振っていた。官能に焦点を失った瞳からは随喜の涙が溢れ、熱い喘ぎを放つ唇からはネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちた。プルンプルンと揺れる豊かな乳房の先端には、ツンと突き勃った媚芯が震えていた。男の両手が麗華の乳房を揉みしだき、痛いほどそそり勃った乳首を捏ね回した。
「だめッ、あッ、また……イクッ……! 許してッ……! イクぅううッ……!」
男を咥え込んだ花唇からプシャアッと蜜液を迸らせると、ビックンッビックンッと裸身を痙攣させて麗華が絶頂を極めた。だが、歓喜の愉悦を噛みしめてガクガクと硬直している麗華を、男は一切の手加減もなく下から突き上げ続けた。長い涎の糸を垂れ流しながら、麗華が狂ったように激しく首を振った。
「だめぇえッ! いま、イッてるッ! 純一郎ッ! やめてぇえッ! おかしくなっちゃうッ!」
猛りきった火柱で麗華を突き上げながら、男は左手で豊かな乳房を揉みしだき、ガチガチに尖りきった乳首を押しつぶした。そして、右手は叢をかきわけて剥き出しにした真珠粒をコリコリと扱いた。
「純一郎ッ……! 気持ちいいッ……! もう、狂っちゃうッ! また、イクッ……! だめぇえッ! イクぅうううッ……!」
プシャップシャッという音とともに夥しい愛蜜が飛び散って、白いシーツに淫らな模様を描いた。麗華は総身を大きく仰け反らせると、ビクンッビクンッと激しく痙攣して何度目かの絶頂を極めた。涙と涎に塗れたその表情は、官能の愉悦に蕩けきった妖艶で淫猥な女そのものであった。
そこで映像が切り替わった。麗華を犯していた男……一条天翔が残忍な笑みを浮かべながら告げた。
「楽しんでもらえたか、神崎……? ご覧の通り、水島麗華は俺たちが大切に接待をしている。返して欲しければ、三億の現金とともに<櫻華会>退任届を書けッ! 期限は二日後の七月二十六日の正午までだ。受け渡し方法は追って連絡する。本来なら四、五日やろうと思ったんだが、それまで麗華が持ちそうもないからな……。どうだ、俺は優しいだろう……? ハッ、ハッ、ハッハハッ……!」
そこで映像は終わった。純一郎は血が滲むほど唇を噛みしめた。
(麗華……)
麗華は純一郎の名前を叫びながら一条に犯されていた。おそらく、麗華には一条に犯されているという認識さえないのだ。彼女は愛する純一郎に抱かれていると信じ、女としての倖せに満たされた表情を浮かべていた。それは麻薬による幻覚が麗華を支配している証拠に他ならなかった。
(あの精神状態からすると、覚醒剤かコカインだ……)
麻薬にはアッパー系とダウン系がある。アッパー系は神経に興奮作用をもたらすもので、代表的な麻薬としては覚醒剤、コカイン、エクスタシーなどだ。それに対してダウン系は、神経の抑制作用を持つもので、ヘロイン、モルヒネ、大麻などである。
麗華が射たれたのは、間違いなくアッパー系だった。キメセクという言葉があるように、覚醒剤やコカインなどをキメてセックスをすると、普通では得られないほどの凄絶な快感が得られるのだ。そのため、アッパー系の麻薬は別名「セックス・ドラッグ」とも呼ばれていた。
(麗華、どこにいるッ? 必ず、助けてやるッ! だから、場所を教えてくれッ!)
瑞紀を通じて<星月夜>の協力を得ていたが、いまだに麗華の居場所は特定できていなかった。
すでに麗華が拉致されてから、二十八時間が経過していた。その間ずっと麻薬を射たれ続けているとしたら、かなり危険な状態だった。特にそれがコカインだとすれば、その薬物依存性の高さから考えても中毒症状から抜け出せるボーダーラインはすぐそこに迫っていた。
純一郎はMDCの録画データを再生し始めた。麗華が凌辱されている映像が再び映し出された。
(どこかにヒントがあるはずだ……。見落とすなッ! 部屋の備品、窓からの景色、周囲の音……。麗華の居場所を特定できる何かを……)
すでに五回はこの映像を見ていた。だが、窓からスカイツリーが小さく見えること以外に、場所を特定できるものは映っていなかった。スカイツリーの大きさから考えて十キロメートルくらいは離れていることだけは分かった。スカイツリーを中心とした半径十キロ前後の範囲には、この新宿も含まれる。とてもではないが、広すぎて捜索のしようがなかった。
(くそッ! 分からねえッ! 瑞紀に見てもらうか……?)
今朝送られてきたこの映像を、純一郎はまだ誰にも見せていなかった。<星月夜>の特別捜査官は当然のこと、瑞紀に見せることさえ憚られたのだ。麗華も自分が凌辱されている映像を、親友の瑞紀に見られたくないに違いなかった。
その時、純一郎の携帯が鳴った。そこに表示された名前を見て、純一郎はワンコールで通話アイコンをクリックした。
『久しぶりね、純一郎……』
懐かしい声がスマートフォンのスピーカーから聞こえてきた。十二年ぶりに耳にする声だった。当時よりも落ち着き払ったように聞こえたのは、気のせいではないと純一郎は考えた。相手は二十一歳ではなく、三十三歳になっているはずだからだ。
「玲奈ッ……! 連絡を待っていたッ!」
それは紛れもなく純一郎の本音だった。電話の相手は、姫川玲奈……。警視庁西新宿署組織犯罪対策課長のキャリア警視だった。
『十二年ぶりに突然連絡してきて、大切な女を助けてくれって、どういうことかしら? 昔、捨てた女に言う台詞としては、あまり気が利いたものではないと思うけど……』
電話の向こうで楽しそうに玲奈が言った。どうやら怒っている様子ではなかった。
「悪かった。だが、玲奈以外に頼れるヤツが……」
「会って話しましょう。すぐに出てこれる?」
純一郎の言い訳を遮って、玲奈が告げた。その申し出を断る理由など、純一郎には一つとしてなかった。
「分かった。どこに行けばいい?」
「ホワイト・パレスの501号室。今はネットで予約できるのね。一時間後に待ってるわ」
そう告げると、玲奈は一方的に通話を切った。
「おい、玲奈……」
(ホワイト・パレス……? どこのことだ?)
その名前は、純一郎の記憶になかった。501号室というからには、どこかのホテルだと思われた。純一郎はインターネットで、「ホワイト・パレス」を検索した。
(マンション……? 違うな……。九十九里浜のペンション? だが、一時間でいける距離じゃない……)
賃貸マンションやリゾート・ペンション、結婚式場、農協などが「ホワイト・パレス」の名前でヒットした。だが、いずれも一時間以内の場所ではなかったし、何よりも玲奈が指定する意味が分からなかった。
「……! これかッ……!」
検索画面の三ページ目に、ラブホテルがあった。場所は東京メトロ千代田線の湯島駅近くだった。そして、そのラブホテルは、純一郎が初めて玲奈を抱いた場所でもあった。
(501号室ってことは、あの時の部屋か……?)
十二年前に二人で入った部屋が、最上階だったことを純一郎は思い出した。そして、玲奈が指定した「ホワイト・パレス」は五階建てだった。
「どういうつもりだ、玲奈のヤツ……?」
単に想い出の場所を指定しただけなのか、協力する代わりに自分をもう一度愛してくれと言っているのか、純一郎には分からなかった。
純一郎は事務所の壁に掛けられている時計を見た。電話を切ってから、十分が経過していた。この<櫻華会>のある新宿三丁目から湯島までは、都営新宿線で小川町に出てタクシーを使うのが一番早かった。全部で二十分もかからないと思われた。
「とにかく、行くしかねえな……」
白いスーツの上着を羽織ると、純一郎は<櫻華会>事務所を後にして新宿三丁目駅へと向かった。
「お久しぶり、純一郎……。ずいぶんとヤクザらしくなったわね。さすがに<櫻華の若獅子>と呼ばれるだけあるわ」
指定された「ホワイト・パレス」の501号室に入ると、ベッドに腰掛けていた玲奈が足を組みながら笑った。艶やかという言葉が最も似合う笑顔だった。
「お前はずいぶんと綺麗になったな、玲奈……」
それはお世辞ではなく、純一郎の本音だった。十二年ぶりに再会した玲奈は、女優のような存在感と美しさを纏っていた。二十一歳の玲奈も美しかったが、今の玲奈は男なら誰でも振り返るほどの美女だった。
ストレートのショートヘアだった黒髪はセミロングになり、緩やかなウェーブが掛かったダーク・ブラウンに染まっていた。黒のハイネックカットソーを豊かな胸が盛り上げ、ベージュのレーススカートからは細く白い脚が伸びていた。プラダのハイヒール・パンプスは、スカートに合わせたピンク・ベージュで、ヒール高は十センチ近くあった。
薄い化粧の中にもアイラインは繊細でありながらくっきりと描かれ、唇は艶やかでぷっくりと潤っていた。
十二年という歳月は、可憐な美少女を美しい大人の女に変えていた。
「ありがとう。女は幾つになっても容姿を褒められると嬉しいものよ」
そう告げると、玲奈はニッコリと微笑んだ。それは紛れもなく、男を魅了する女神の微笑だった。
(こんなに美人になってるなんて、予想もしてなかったぞ……。確かに昔も綺麗だったが、今の玲奈はそこらの女優なんか霞んじまうんじゃねえか?)
純一郎の視線は無意識に玲奈の豊かな胸や引き締まったウエスト、丸みを帯びた腰つきとすらりとした長い脚に注がれていた。
女は男が思っている以上に、男の視線に敏感だ。玲奈は純一郎が自分の体を見つめていることに気づいていた。
(どうかしら、純一郎? 今のあたしは……? でも、あなたがあたしを捨てたことを、後悔するのはこれからよ……)
「いつまでも立ってないで、そこに座ったら? 話がしづらいわ」
玲奈がベッドの前に置かれているカップル・ソファに視線を移しながら告げた。
「ああ……」
玲奈の美しさに見蕩れていた純一郎が、我に返ったように頷きながらソファに腰を下ろした。その様子を見ながら、玲奈は内心で満足げに笑っていた。
(先取りはあたしがもらったわね。今日はあなたに1ポイントもあげないから、覚悟しておきなさい、純一郎……)
「<星月夜>にいる知り合いから、少し情報をもらったわ。向こうも箝口令が布かれているから大した情報ではなかったけれど、それを元に分析すると拉致された女性は水島麗華で間違いないかしら?」
「ああ……。その通りだ」
玲奈の言葉に、純一郎は驚いた。彼が玲奈に連絡してから二時間も経っていなかったのだ。ここに来る時間も含めれば、一時間ちょっとで玲奈は純一郎の依頼内容を調査したらしい。
「一昨日の同時爆破テロは、水島麗華を拉致するために<一条組>が起こした陽動だった。自分の事務所まで爆破して、あたしたち警察の眼を誤魔化したってところね。事務所が爆破されたにも拘わらず、<一条組>の組員は誰一人として死傷していない。それどころか、全員が行方不明になってるわ。つまり、どこかに新しい事務所があり、おそらく水島麗華はそこに監禁されている……」
「さすがだな、玲奈……。短時間でそこまで調査するとは……」
<西新宿の女豹>と呼ばれていることは伊達じゃないと、純一郎は改めて玲奈の美しい貌を見つめた。
「でも、これだけは最初に言っておくわ。あたしはあなたたちヤクザの敵よ。<櫻華会>の跡目争いに協力するつもりはないわ。それだけじゃない。あたしは十二年前に、あなたに捨てられた女よ。そのあたしがあなたに協力すると、本気で考えてるの?」
玲奈の黒瞳が強い意志を秘めて、真っ直ぐに純一郎を見つめた。その視線に様々な感情が込められていることに、純一郎は気づいた。
「十二年前のことを、今更謝罪するつもりはない。当時の俺は<櫻華会>に入ったばかりで、会頭や兄貴分たちに認められるのに必死だった。ただ、一つだけ言い訳させてもらえるのなら、玲奈との関係がバレたらお前の身が危険だった。たぶん、今の麗華と同じような眼に遭わせていたかも知れない……」
「そうね。今ならよく分かるわ。あなたがあたしを危険な眼に遭わせないように、あたしを捨てたってことを……。でも、当時のあたしは子供だった。あなたがあたしに飽きたか、他に女ができたか……。そんな程度のことしか考えられなかったわ。だから、あなたを愛していた分だけ、あなたを憎んだ……」
玲奈は何の感情も込めずに淡々と語った。そうしないと、涙が出てくるのが自分で分かっていたからだ。
「あなたはあたしの初めての男だった。あたしはあなたによって女にされて、あなたによってセックスの悦びを教え込まれた。あの頃のあたしは、あなたしか見えなかった。あなただけがすべてだった。それなのに一方的に捨てられたわ。立ち直るのに、半年はかかったと思う……」
「……」
純一郎は、玲奈の言葉を黙って受け止めた。今更謝ったところで、時間は戻らないからだ。
「今回、あたしがあなたに協力することは、警察官としてのモラルに反する。万一、公安に目をつけられたら、今まで築き上げてきたあたしのキャリアがすべて消えるわ。それくらい危ない橋なのよ……」
「分かっている。だが、俺にはもう頼れるのが玲奈しかいないのも事実だ。だから、麗華を助けるのに力を貸してくれれば、どんな要求でも呑む。俺を逮捕することでお前のキャリアがプラスになるのなら、そうしてくれても構わない」
自分のために麻薬漬けにされて凌辱を受けている麗華を思うと、純一郎は自分の身を犠牲にするくらい大したことだとは思わなかった。
「あなたを捕まえたら、確かにあたしのキャリアにとってプラスになるわね。でも、その程度のことであたしはあなたに協力するつもりはないわ」
そう告げると、玲奈は純一郎の顔を見据えながら昂然と言い放った。
「あたしは、半年間泣いて暮らした。だから、あなたにも同じ気持ちを味わってもらうわ。あたしの協力が欲しいのなら、半年の間、あなた自身を差し出しなさいッ!」
「それは、どういう意味だ……?」
玲奈の言いたいことは分かったが、具体的に何をすればいいのか純一郎には想像が付かなかった。
「簡単よ。<櫻華会>若頭の神崎純一郎が、半年間、あたしの奴隷になるってことよ。あなたは自尊心も高く、自信家で強い意志を持つ男よ。その上、頭も切れて、行動力と度胸もある。女から見たら魅力的な男性だわ。だからこそ、あたしはあなたを意のままにしたい。半年間、あたしだけのモノにしたいの。これがあなたに捨てられたあたしの復讐であり、あなたに協力する条件よッ!」
そう告げた瞬間、玲奈は今でも純一郎を愛していることを実感した。だが、同時に純一郎が二度と自分を愛さないことも理解していた。だからこそ、限られた時間だけでも純一郎を自分のモノにしたかったのだと気づいた。
そして、自分の気持ちが純一郎に伝わったかどうかを確認するかのように、真っ直ぐに彼の瞳を見つめた。
「相変わらず、生意気な女だな。いや、以前より更に磨きがかかったか……」
そう告げると、純一郎は楽しそうに笑った。自分が愛した玲奈が少しも変わっていないことに気づいたのだ。
「女は男に捨てられると、強くなるのよ」
純一郎の言葉に、玲奈も嬉しそうに笑みを浮かべた。二人の時間が戻ってきたような気がした。
「分かった。だが、半年は長いな。せめて、三ヶ月にならないか?」
「交渉できる立場だと思ってるの?」
「だめか……。今日は、玲奈の完全勝利だ。ポイントは8:0だな」
純一郎がソファに深くもたれながらため息をついた。それを聞いて、玲奈は初めて心からの笑みを浮かべた。
「交渉成立ね、純一郎。安心して……。こうなると思っていたから、すでに部下に<一条組>の調査を命じてきたわ。警察の威信に賭けても、必ず奴らの新事務所を突き止めてみせるわよ」
「ありがとう。期待しているよ、玲奈……」
純一郎がニッコリと笑顔を見せた。それは、十二年ぶりに見る愛情と優しさに溢れた笑顔だった。
玲奈は純一郎に頷くと、ゴクリと唾を飲み込んだ。そして、顔を赤らめながら今日最も大切な言葉を純一郎に告げた。
「では、最初の命令よ、純一郎……。今から、あたしを抱きなさい……」
玲奈が黒のハイネックカットソーとベージュのレーススカートをゆっくりと脱いだ。黒いラペルラの下着が白い肢体を艶めかしく際立たせ、女の妖艶な色香を放った。
薄いレース地のブラジャーからは、白い乳房とツンと突き勃った鴇色の乳首が透けていた。そして、サイド・ストリングのパンティは柔らかな叢だけでなく、羞恥の源泉さえも透かして見せた。
玲奈は豊かな乳房を純一郎の胸に押しつけると、官能に潤んだ瞳で精悍な顔を見つめながら告げた。
「あなたは、あたしの奴隷なんだから……。逆らったら駄目よ、純一郎……」
濡れた唇が純一郎の唇に重なった。十二年という長い隙間を埋め尽くすかのように、二人は濃密に舌を絡め合った。
十二年の間に、玲奈は何人もの男に抱かれた。だが、その中の誰一人として、純一郎よりも玲奈を昂ぶらせた男はいなかった。純一郎の上で激しく腰を振りながら、玲奈は女の悦びを噛みしめていた。
「アッ、アァアッ……! いいッ! 気持ちいいッ! 凄いッ……! だめぇッ! また、イクッ……! 許してッ! イクぅううッ……!」
長いウェーブの掛かった髪を振り乱しながら、玲奈がビクンッビックンッと激しく裸身を痙攣させた。純一郎の男を咥えている花唇から、プシャッと音を立てて愛蜜が迸った。ワナワナと唇を震わせながら歓喜の愉悦を噛みしめると、豊かな乳房を押しつけながら玲奈は純一郎の胸の中に倒れ込んだ。引き締まったウエストからなだらかな曲線を描く尻が、ビクッビクンッと細かく痙攣し続けていた。これが、三回目の絶頂だった。
「ハッ……ハァッ……ハッ……ハァッ……」
濡れた唇から火の吐息をせわしなく漏らしながら、玲奈は純一郎に口づけをした。自らネットリと舌を絡めると、細い唾液の糸を引きながら玲奈は唇を離した。
「ずいぶんとイヤらしい女になったな、玲奈……」
「あたしに……女の悦びを教えたのは……あなたよ、純一郎……」
「そうだったな……。では、もっと悦ばせてやろう……」
そう告げると、痙攣を続けている玲奈を純一郎が再び下から激しく突き上げた。同時に、ガチガチに尖りきった媚芯を擦り上げながら、玲奈の豊かな乳房を左手で揉みしだいた。右手は真っ赤に充血して大きく勃起している真珠粒を摘まみ上げながらコリコリと扱いた。
「ひぃいッ……! だめッ……! いやぁッ……!」
突然再開された怒濤の責めに、玲奈は激しく首を振りながら啼き叫んだ。純一郎が猛りきった男で、肉襞の天井部をゴリゴリと擦り上げてきた。その度に腰骨を灼き溶かすような快感が背筋を舐め上げ、白い閃光が脳天で爆発した。セミロングの髪を振り乱しながら激しく首を振ると、玲奈が涙と涎を垂れ流して悶え啼いた。
「待ってッ……! いま、イッてるッ! だめぇえッ! 許してぇえッ……!」
絶頂を極めている最中の女体が、女の弱点を同時に責められたら堪ったものではなかった。プシャップシャッと蜜液を飛び散らせながら、玲奈は一気に歓悦の極みへと駆け上らされた。
「いやぁああッ! だめぇえッ! おかしくなるッ! アッ、アッ、アァアアッ……!」
「イクの、止まらないッ! お願いッ! 許してぇッ! また、イクぅうッ……!」
「もう、いやぁあッ! だめぇえッ! 狂っちゃうッ! ゆるしてぇえッ! イクぅッうぅッ……!」
真っ赤に染まった裸身を壮絶に仰け反らせると、玲奈がビックンッビックンッと凄まじい痙攣を始めた。プシャーッという音とともに、黄金の潮流が虚空に弧を描いて迸った。凄絶な閃光と光輝の爆発が玲奈の意識を呑み込んだ。
(し、死ぬぅうッ……!)
全身の細胞を灼き溶かすほどの壮絶な快感に、玲奈の意識は真っ白に焼き切れた。歓喜の硬直にガクガクと総身を震撼させると、玲奈はグッタリと弛緩して純一郎の胸の中に沈み込んだ。
運命の嵐に玩弄された女体をビクッビクンッと痙攣させ、随喜の涙と涎の糸を引きながら玲奈は長い睫毛をピクピクと震わせていた。超絶な極致感を極め尽くしたその表情は、快美の奔流に翻弄された女の濃艶な色香に染まっていた。
亜麻色の髪を振り乱しながら、水島麗華が男の上で激しく腰を振っていた。官能に焦点を失った瞳からは随喜の涙が溢れ、熱い喘ぎを放つ唇からはネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちた。プルンプルンと揺れる豊かな乳房の先端には、ツンと突き勃った媚芯が震えていた。男の両手が麗華の乳房を揉みしだき、痛いほどそそり勃った乳首を捏ね回した。
「だめッ、あッ、また……イクッ……! 許してッ……! イクぅううッ……!」
男を咥え込んだ花唇からプシャアッと蜜液を迸らせると、ビックンッビックンッと裸身を痙攣させて麗華が絶頂を極めた。だが、歓喜の愉悦を噛みしめてガクガクと硬直している麗華を、男は一切の手加減もなく下から突き上げ続けた。長い涎の糸を垂れ流しながら、麗華が狂ったように激しく首を振った。
「だめぇえッ! いま、イッてるッ! 純一郎ッ! やめてぇえッ! おかしくなっちゃうッ!」
猛りきった火柱で麗華を突き上げながら、男は左手で豊かな乳房を揉みしだき、ガチガチに尖りきった乳首を押しつぶした。そして、右手は叢をかきわけて剥き出しにした真珠粒をコリコリと扱いた。
「純一郎ッ……! 気持ちいいッ……! もう、狂っちゃうッ! また、イクッ……! だめぇえッ! イクぅうううッ……!」
プシャップシャッという音とともに夥しい愛蜜が飛び散って、白いシーツに淫らな模様を描いた。麗華は総身を大きく仰け反らせると、ビクンッビクンッと激しく痙攣して何度目かの絶頂を極めた。涙と涎に塗れたその表情は、官能の愉悦に蕩けきった妖艶で淫猥な女そのものであった。
そこで映像が切り替わった。麗華を犯していた男……一条天翔が残忍な笑みを浮かべながら告げた。
「楽しんでもらえたか、神崎……? ご覧の通り、水島麗華は俺たちが大切に接待をしている。返して欲しければ、三億の現金とともに<櫻華会>退任届を書けッ! 期限は二日後の七月二十六日の正午までだ。受け渡し方法は追って連絡する。本来なら四、五日やろうと思ったんだが、それまで麗華が持ちそうもないからな……。どうだ、俺は優しいだろう……? ハッ、ハッ、ハッハハッ……!」
そこで映像は終わった。純一郎は血が滲むほど唇を噛みしめた。
(麗華……)
麗華は純一郎の名前を叫びながら一条に犯されていた。おそらく、麗華には一条に犯されているという認識さえないのだ。彼女は愛する純一郎に抱かれていると信じ、女としての倖せに満たされた表情を浮かべていた。それは麻薬による幻覚が麗華を支配している証拠に他ならなかった。
(あの精神状態からすると、覚醒剤かコカインだ……)
麻薬にはアッパー系とダウン系がある。アッパー系は神経に興奮作用をもたらすもので、代表的な麻薬としては覚醒剤、コカイン、エクスタシーなどだ。それに対してダウン系は、神経の抑制作用を持つもので、ヘロイン、モルヒネ、大麻などである。
麗華が射たれたのは、間違いなくアッパー系だった。キメセクという言葉があるように、覚醒剤やコカインなどをキメてセックスをすると、普通では得られないほどの凄絶な快感が得られるのだ。そのため、アッパー系の麻薬は別名「セックス・ドラッグ」とも呼ばれていた。
(麗華、どこにいるッ? 必ず、助けてやるッ! だから、場所を教えてくれッ!)
瑞紀を通じて<星月夜>の協力を得ていたが、いまだに麗華の居場所は特定できていなかった。
すでに麗華が拉致されてから、二十八時間が経過していた。その間ずっと麻薬を射たれ続けているとしたら、かなり危険な状態だった。特にそれがコカインだとすれば、その薬物依存性の高さから考えても中毒症状から抜け出せるボーダーラインはすぐそこに迫っていた。
純一郎はMDCの録画データを再生し始めた。麗華が凌辱されている映像が再び映し出された。
(どこかにヒントがあるはずだ……。見落とすなッ! 部屋の備品、窓からの景色、周囲の音……。麗華の居場所を特定できる何かを……)
すでに五回はこの映像を見ていた。だが、窓からスカイツリーが小さく見えること以外に、場所を特定できるものは映っていなかった。スカイツリーの大きさから考えて十キロメートルくらいは離れていることだけは分かった。スカイツリーを中心とした半径十キロ前後の範囲には、この新宿も含まれる。とてもではないが、広すぎて捜索のしようがなかった。
(くそッ! 分からねえッ! 瑞紀に見てもらうか……?)
今朝送られてきたこの映像を、純一郎はまだ誰にも見せていなかった。<星月夜>の特別捜査官は当然のこと、瑞紀に見せることさえ憚られたのだ。麗華も自分が凌辱されている映像を、親友の瑞紀に見られたくないに違いなかった。
その時、純一郎の携帯が鳴った。そこに表示された名前を見て、純一郎はワンコールで通話アイコンをクリックした。
『久しぶりね、純一郎……』
懐かしい声がスマートフォンのスピーカーから聞こえてきた。十二年ぶりに耳にする声だった。当時よりも落ち着き払ったように聞こえたのは、気のせいではないと純一郎は考えた。相手は二十一歳ではなく、三十三歳になっているはずだからだ。
「玲奈ッ……! 連絡を待っていたッ!」
それは紛れもなく純一郎の本音だった。電話の相手は、姫川玲奈……。警視庁西新宿署組織犯罪対策課長のキャリア警視だった。
『十二年ぶりに突然連絡してきて、大切な女を助けてくれって、どういうことかしら? 昔、捨てた女に言う台詞としては、あまり気が利いたものではないと思うけど……』
電話の向こうで楽しそうに玲奈が言った。どうやら怒っている様子ではなかった。
「悪かった。だが、玲奈以外に頼れるヤツが……」
「会って話しましょう。すぐに出てこれる?」
純一郎の言い訳を遮って、玲奈が告げた。その申し出を断る理由など、純一郎には一つとしてなかった。
「分かった。どこに行けばいい?」
「ホワイト・パレスの501号室。今はネットで予約できるのね。一時間後に待ってるわ」
そう告げると、玲奈は一方的に通話を切った。
「おい、玲奈……」
(ホワイト・パレス……? どこのことだ?)
その名前は、純一郎の記憶になかった。501号室というからには、どこかのホテルだと思われた。純一郎はインターネットで、「ホワイト・パレス」を検索した。
(マンション……? 違うな……。九十九里浜のペンション? だが、一時間でいける距離じゃない……)
賃貸マンションやリゾート・ペンション、結婚式場、農協などが「ホワイト・パレス」の名前でヒットした。だが、いずれも一時間以内の場所ではなかったし、何よりも玲奈が指定する意味が分からなかった。
「……! これかッ……!」
検索画面の三ページ目に、ラブホテルがあった。場所は東京メトロ千代田線の湯島駅近くだった。そして、そのラブホテルは、純一郎が初めて玲奈を抱いた場所でもあった。
(501号室ってことは、あの時の部屋か……?)
十二年前に二人で入った部屋が、最上階だったことを純一郎は思い出した。そして、玲奈が指定した「ホワイト・パレス」は五階建てだった。
「どういうつもりだ、玲奈のヤツ……?」
単に想い出の場所を指定しただけなのか、協力する代わりに自分をもう一度愛してくれと言っているのか、純一郎には分からなかった。
純一郎は事務所の壁に掛けられている時計を見た。電話を切ってから、十分が経過していた。この<櫻華会>のある新宿三丁目から湯島までは、都営新宿線で小川町に出てタクシーを使うのが一番早かった。全部で二十分もかからないと思われた。
「とにかく、行くしかねえな……」
白いスーツの上着を羽織ると、純一郎は<櫻華会>事務所を後にして新宿三丁目駅へと向かった。
「お久しぶり、純一郎……。ずいぶんとヤクザらしくなったわね。さすがに<櫻華の若獅子>と呼ばれるだけあるわ」
指定された「ホワイト・パレス」の501号室に入ると、ベッドに腰掛けていた玲奈が足を組みながら笑った。艶やかという言葉が最も似合う笑顔だった。
「お前はずいぶんと綺麗になったな、玲奈……」
それはお世辞ではなく、純一郎の本音だった。十二年ぶりに再会した玲奈は、女優のような存在感と美しさを纏っていた。二十一歳の玲奈も美しかったが、今の玲奈は男なら誰でも振り返るほどの美女だった。
ストレートのショートヘアだった黒髪はセミロングになり、緩やかなウェーブが掛かったダーク・ブラウンに染まっていた。黒のハイネックカットソーを豊かな胸が盛り上げ、ベージュのレーススカートからは細く白い脚が伸びていた。プラダのハイヒール・パンプスは、スカートに合わせたピンク・ベージュで、ヒール高は十センチ近くあった。
薄い化粧の中にもアイラインは繊細でありながらくっきりと描かれ、唇は艶やかでぷっくりと潤っていた。
十二年という歳月は、可憐な美少女を美しい大人の女に変えていた。
「ありがとう。女は幾つになっても容姿を褒められると嬉しいものよ」
そう告げると、玲奈はニッコリと微笑んだ。それは紛れもなく、男を魅了する女神の微笑だった。
(こんなに美人になってるなんて、予想もしてなかったぞ……。確かに昔も綺麗だったが、今の玲奈はそこらの女優なんか霞んじまうんじゃねえか?)
純一郎の視線は無意識に玲奈の豊かな胸や引き締まったウエスト、丸みを帯びた腰つきとすらりとした長い脚に注がれていた。
女は男が思っている以上に、男の視線に敏感だ。玲奈は純一郎が自分の体を見つめていることに気づいていた。
(どうかしら、純一郎? 今のあたしは……? でも、あなたがあたしを捨てたことを、後悔するのはこれからよ……)
「いつまでも立ってないで、そこに座ったら? 話がしづらいわ」
玲奈がベッドの前に置かれているカップル・ソファに視線を移しながら告げた。
「ああ……」
玲奈の美しさに見蕩れていた純一郎が、我に返ったように頷きながらソファに腰を下ろした。その様子を見ながら、玲奈は内心で満足げに笑っていた。
(先取りはあたしがもらったわね。今日はあなたに1ポイントもあげないから、覚悟しておきなさい、純一郎……)
「<星月夜>にいる知り合いから、少し情報をもらったわ。向こうも箝口令が布かれているから大した情報ではなかったけれど、それを元に分析すると拉致された女性は水島麗華で間違いないかしら?」
「ああ……。その通りだ」
玲奈の言葉に、純一郎は驚いた。彼が玲奈に連絡してから二時間も経っていなかったのだ。ここに来る時間も含めれば、一時間ちょっとで玲奈は純一郎の依頼内容を調査したらしい。
「一昨日の同時爆破テロは、水島麗華を拉致するために<一条組>が起こした陽動だった。自分の事務所まで爆破して、あたしたち警察の眼を誤魔化したってところね。事務所が爆破されたにも拘わらず、<一条組>の組員は誰一人として死傷していない。それどころか、全員が行方不明になってるわ。つまり、どこかに新しい事務所があり、おそらく水島麗華はそこに監禁されている……」
「さすがだな、玲奈……。短時間でそこまで調査するとは……」
<西新宿の女豹>と呼ばれていることは伊達じゃないと、純一郎は改めて玲奈の美しい貌を見つめた。
「でも、これだけは最初に言っておくわ。あたしはあなたたちヤクザの敵よ。<櫻華会>の跡目争いに協力するつもりはないわ。それだけじゃない。あたしは十二年前に、あなたに捨てられた女よ。そのあたしがあなたに協力すると、本気で考えてるの?」
玲奈の黒瞳が強い意志を秘めて、真っ直ぐに純一郎を見つめた。その視線に様々な感情が込められていることに、純一郎は気づいた。
「十二年前のことを、今更謝罪するつもりはない。当時の俺は<櫻華会>に入ったばかりで、会頭や兄貴分たちに認められるのに必死だった。ただ、一つだけ言い訳させてもらえるのなら、玲奈との関係がバレたらお前の身が危険だった。たぶん、今の麗華と同じような眼に遭わせていたかも知れない……」
「そうね。今ならよく分かるわ。あなたがあたしを危険な眼に遭わせないように、あたしを捨てたってことを……。でも、当時のあたしは子供だった。あなたがあたしに飽きたか、他に女ができたか……。そんな程度のことしか考えられなかったわ。だから、あなたを愛していた分だけ、あなたを憎んだ……」
玲奈は何の感情も込めずに淡々と語った。そうしないと、涙が出てくるのが自分で分かっていたからだ。
「あなたはあたしの初めての男だった。あたしはあなたによって女にされて、あなたによってセックスの悦びを教え込まれた。あの頃のあたしは、あなたしか見えなかった。あなただけがすべてだった。それなのに一方的に捨てられたわ。立ち直るのに、半年はかかったと思う……」
「……」
純一郎は、玲奈の言葉を黙って受け止めた。今更謝ったところで、時間は戻らないからだ。
「今回、あたしがあなたに協力することは、警察官としてのモラルに反する。万一、公安に目をつけられたら、今まで築き上げてきたあたしのキャリアがすべて消えるわ。それくらい危ない橋なのよ……」
「分かっている。だが、俺にはもう頼れるのが玲奈しかいないのも事実だ。だから、麗華を助けるのに力を貸してくれれば、どんな要求でも呑む。俺を逮捕することでお前のキャリアがプラスになるのなら、そうしてくれても構わない」
自分のために麻薬漬けにされて凌辱を受けている麗華を思うと、純一郎は自分の身を犠牲にするくらい大したことだとは思わなかった。
「あなたを捕まえたら、確かにあたしのキャリアにとってプラスになるわね。でも、その程度のことであたしはあなたに協力するつもりはないわ」
そう告げると、玲奈は純一郎の顔を見据えながら昂然と言い放った。
「あたしは、半年間泣いて暮らした。だから、あなたにも同じ気持ちを味わってもらうわ。あたしの協力が欲しいのなら、半年の間、あなた自身を差し出しなさいッ!」
「それは、どういう意味だ……?」
玲奈の言いたいことは分かったが、具体的に何をすればいいのか純一郎には想像が付かなかった。
「簡単よ。<櫻華会>若頭の神崎純一郎が、半年間、あたしの奴隷になるってことよ。あなたは自尊心も高く、自信家で強い意志を持つ男よ。その上、頭も切れて、行動力と度胸もある。女から見たら魅力的な男性だわ。だからこそ、あたしはあなたを意のままにしたい。半年間、あたしだけのモノにしたいの。これがあなたに捨てられたあたしの復讐であり、あなたに協力する条件よッ!」
そう告げた瞬間、玲奈は今でも純一郎を愛していることを実感した。だが、同時に純一郎が二度と自分を愛さないことも理解していた。だからこそ、限られた時間だけでも純一郎を自分のモノにしたかったのだと気づいた。
そして、自分の気持ちが純一郎に伝わったかどうかを確認するかのように、真っ直ぐに彼の瞳を見つめた。
「相変わらず、生意気な女だな。いや、以前より更に磨きがかかったか……」
そう告げると、純一郎は楽しそうに笑った。自分が愛した玲奈が少しも変わっていないことに気づいたのだ。
「女は男に捨てられると、強くなるのよ」
純一郎の言葉に、玲奈も嬉しそうに笑みを浮かべた。二人の時間が戻ってきたような気がした。
「分かった。だが、半年は長いな。せめて、三ヶ月にならないか?」
「交渉できる立場だと思ってるの?」
「だめか……。今日は、玲奈の完全勝利だ。ポイントは8:0だな」
純一郎がソファに深くもたれながらため息をついた。それを聞いて、玲奈は初めて心からの笑みを浮かべた。
「交渉成立ね、純一郎。安心して……。こうなると思っていたから、すでに部下に<一条組>の調査を命じてきたわ。警察の威信に賭けても、必ず奴らの新事務所を突き止めてみせるわよ」
「ありがとう。期待しているよ、玲奈……」
純一郎がニッコリと笑顔を見せた。それは、十二年ぶりに見る愛情と優しさに溢れた笑顔だった。
玲奈は純一郎に頷くと、ゴクリと唾を飲み込んだ。そして、顔を赤らめながら今日最も大切な言葉を純一郎に告げた。
「では、最初の命令よ、純一郎……。今から、あたしを抱きなさい……」
玲奈が黒のハイネックカットソーとベージュのレーススカートをゆっくりと脱いだ。黒いラペルラの下着が白い肢体を艶めかしく際立たせ、女の妖艶な色香を放った。
薄いレース地のブラジャーからは、白い乳房とツンと突き勃った鴇色の乳首が透けていた。そして、サイド・ストリングのパンティは柔らかな叢だけでなく、羞恥の源泉さえも透かして見せた。
玲奈は豊かな乳房を純一郎の胸に押しつけると、官能に潤んだ瞳で精悍な顔を見つめながら告げた。
「あなたは、あたしの奴隷なんだから……。逆らったら駄目よ、純一郎……」
濡れた唇が純一郎の唇に重なった。十二年という長い隙間を埋め尽くすかのように、二人は濃密に舌を絡め合った。
十二年の間に、玲奈は何人もの男に抱かれた。だが、その中の誰一人として、純一郎よりも玲奈を昂ぶらせた男はいなかった。純一郎の上で激しく腰を振りながら、玲奈は女の悦びを噛みしめていた。
「アッ、アァアッ……! いいッ! 気持ちいいッ! 凄いッ……! だめぇッ! また、イクッ……! 許してッ! イクぅううッ……!」
長いウェーブの掛かった髪を振り乱しながら、玲奈がビクンッビックンッと激しく裸身を痙攣させた。純一郎の男を咥えている花唇から、プシャッと音を立てて愛蜜が迸った。ワナワナと唇を震わせながら歓喜の愉悦を噛みしめると、豊かな乳房を押しつけながら玲奈は純一郎の胸の中に倒れ込んだ。引き締まったウエストからなだらかな曲線を描く尻が、ビクッビクンッと細かく痙攣し続けていた。これが、三回目の絶頂だった。
「ハッ……ハァッ……ハッ……ハァッ……」
濡れた唇から火の吐息をせわしなく漏らしながら、玲奈は純一郎に口づけをした。自らネットリと舌を絡めると、細い唾液の糸を引きながら玲奈は唇を離した。
「ずいぶんとイヤらしい女になったな、玲奈……」
「あたしに……女の悦びを教えたのは……あなたよ、純一郎……」
「そうだったな……。では、もっと悦ばせてやろう……」
そう告げると、痙攣を続けている玲奈を純一郎が再び下から激しく突き上げた。同時に、ガチガチに尖りきった媚芯を擦り上げながら、玲奈の豊かな乳房を左手で揉みしだいた。右手は真っ赤に充血して大きく勃起している真珠粒を摘まみ上げながらコリコリと扱いた。
「ひぃいッ……! だめッ……! いやぁッ……!」
突然再開された怒濤の責めに、玲奈は激しく首を振りながら啼き叫んだ。純一郎が猛りきった男で、肉襞の天井部をゴリゴリと擦り上げてきた。その度に腰骨を灼き溶かすような快感が背筋を舐め上げ、白い閃光が脳天で爆発した。セミロングの髪を振り乱しながら激しく首を振ると、玲奈が涙と涎を垂れ流して悶え啼いた。
「待ってッ……! いま、イッてるッ! だめぇえッ! 許してぇえッ……!」
絶頂を極めている最中の女体が、女の弱点を同時に責められたら堪ったものではなかった。プシャップシャッと蜜液を飛び散らせながら、玲奈は一気に歓悦の極みへと駆け上らされた。
「いやぁああッ! だめぇえッ! おかしくなるッ! アッ、アッ、アァアアッ……!」
「イクの、止まらないッ! お願いッ! 許してぇッ! また、イクぅうッ……!」
「もう、いやぁあッ! だめぇえッ! 狂っちゃうッ! ゆるしてぇえッ! イクぅッうぅッ……!」
真っ赤に染まった裸身を壮絶に仰け反らせると、玲奈がビックンッビックンッと凄まじい痙攣を始めた。プシャーッという音とともに、黄金の潮流が虚空に弧を描いて迸った。凄絶な閃光と光輝の爆発が玲奈の意識を呑み込んだ。
(し、死ぬぅうッ……!)
全身の細胞を灼き溶かすほどの壮絶な快感に、玲奈の意識は真っ白に焼き切れた。歓喜の硬直にガクガクと総身を震撼させると、玲奈はグッタリと弛緩して純一郎の胸の中に沈み込んだ。
運命の嵐に玩弄された女体をビクッビクンッと痙攣させ、随喜の涙と涎の糸を引きながら玲奈は長い睫毛をピクピクと震わせていた。超絶な極致感を極め尽くしたその表情は、快美の奔流に翻弄された女の濃艶な色香に染まっていた。
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