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第1章 女豹蹂躙
8 コブラの咆吼
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「凄いですね、このAH-10Sって……。AH-1Zが「赤とんぼ」みたいに思えますッ!」
西園寺凛桜が興奮した口調で告げた。「赤とんぼ」とは、第二次世界大戦終戦まで日本海軍で使用されていたK5Yというプロペラ型の練習機だ。目立つように機体が橙色に塗られていたことから、「赤とんぼ」と呼ばれていた。
「三十億円もしたらしいからな……。俺はヘリについては詳しくないが、性能も世界最高クラスだと聞いたぞ」
「はいッ! マニュアルを見ましたが、それは間違いないですッ! 最高速度は時速四百五十キロで、ヴァイパーの1.2倍以上もあるんですよッ! 最大上昇率が分速千二百メートルなんて、戦闘機以上ですッ! おまけに、目標探知システムは昼夜悪天候関係なく索敵可能で、最大探知距離は五十キロ、識別可能距離は二十キロもあるんですよッ!」
識別可能距離とは、目標が戦車か装甲車かなどを識別できる距離のことだ。その上、このステルス・コブラのシステムは、最大二十個の目標を自動追尾することが可能だった。
「武装は30mmガトリング砲と空対地ミサイルが十六発なんて、最高ですッ! その上、翼端には二発の短距離空対空ミサイルまで付いてるんですよッ! もう、凄すぎて、あたし、イッちゃいそうですッ!」
「おいおい……。イクのはベッドの上だけにしてくれ……」
呆れたような口調で告げた龍成の言葉に、凛桜は自分が何を口走っていたのかに気づいて真っ赤になった。
「す、すみません……」
「それよりも、そろそろ連絡が入る頃だな……」
二人乗りシートの左側に座っている龍成が、左腕のリスト・タブレットを見ながら言った。時間は十三時二十五分だった。<玉龍会>強襲作戦の開始時間が十三時なので、無事制圧できていれば連絡が来てもおかしくない頃だった。
<玉龍会>強襲作戦の指揮を、龍成はアラン=ブライトに一任した。龍成とともに特別捜査部の双璧と謳われるアランであれば、その実力に不安はなかった。一つだけ不安要素があるとすれば、強襲作戦に<楪探偵事務所>の錦織雄作が同行していることだった。瑞紀たちが<玉龍会>本部に捉えられている可能性もゼロではないため、七瀬美咲の顔を知っている錦織に同行を依頼したのだ。
だが、錦織の前職が警視庁西新宿署の組織犯罪対策課にいた元刑事とは言え、厳しい訓練を受けている龍成たち特別捜査官から見れば、素人同然だった。
その時、龍成のリスト・タブレットが微かに振動した。メールや電話の着信があったサインだった。バーチャル・スクリーンに目を移すと、<星月夜>専用回線を使用したアランからの連絡だった。
「白銀だ……」
「13:18、作戦は終了した。錦織が軽傷、特別捜査官に負傷者なし。それと七瀬美咲を確保した」
アランの報告に、龍成が問い質した。
「美咲さんだけかッ? 瑞紀は……!?」
「ミズキはいなかった。ミサキは右肩甲骨下を撃たれて、意識不明の重体だ……」
「何だとッ……!」
救出すべきターゲットを銃で撃たれるなど、失態と言われても弁解のしようがないミスだった。
「すまない、リューセイ……。私の指揮ミスだ。捕らえた<玉龍会>のメンバーからミサキがここにいることを聞いた錦織が、私の制止を無視して単独行動を起こした。ミサキは錦織を庇って撃たれたそうだ。ミサキを撃った会長の周俊傑は錦織が射殺した……」
沈痛な声でアランが状況を報告した。だが、<蛇咬会>本部の位置を知っていると思われる周が死亡したことの意味は大きかった。
「状況は分かった。周以外に<蛇咬会>本部の場所を知っているヤツはいたのか?」
「幹部、構成員合わせて二十八名を確保したが、誰も知らないと言っている。これから幹部連中を尋問する予定だ」
「分かった……。位置が分かり次第、連絡をくれ……」
そう言うと、龍成は通話をオフにした。そして、右手を自分の右太股に叩きつけた。
「くそッ……! これじゃ、何のために<玉龍会>を襲撃したか分からないッ!」
「白銀さん……」
「せっかくここまで来たってのにッ……!」
今、龍成たちはステルス・コブラで、東京湾の南沖百七十キロメートルの地点を南に向けて飛行していた。アランたちの報告を待って、<蛇咬会>本部の位置が特定でき次第、急行する予定だったのだ。
「どうするんです、白銀さん……」
主操縦席で操縦桿を握る凛桜が、心配そうな視線を白銀に送った。
統合作戦本部長の高城には四人組で伊豆諸島に行くと告げたが、龍成はパイロットの凛桜だけを同行させた。ステルス・コブラは四人乗りなので、瑞紀と美咲を救出した場合、彼女たちを運ぶ必要があったからだ。
ステルス・コブラの航続可能距離は八百キロメートルだ。東京都心から八丈島までは二百八十七キロメートル。<蛇咬会>本部を襲撃する戦闘飛行を考慮すると、往復するのに余裕がある距離ではなかった。戦闘飛行では燃料消費が通常の巡航飛行よりも高いからだ。
「八丈島空港に着陸してくれ。最大二十四時間、そこでアランからの連絡を待つ。二十四時間経っても<蛇咬会>本部の位置を特定できない場合は……」
「特定できない場合は……?」
凛桜が不安そうな表情で龍成を見つめた。
「<星月夜>に引き返す……」
「……はい」
<星月夜>に戻ると言うことは、瑞紀の救出を断念するという意味だった。すでに瑞紀が拉致されてから七十時間以上経過している。その上さらに二十四時間が経過すれば、瑞紀の生存率は限りなくゼロに近づくと思われた。
(この人、本当に楪さんを愛してるんだ……)
色が白くなるほど唇を噛みしめ、両脚の上で握り締めた拳をブルブルと震わせている龍成を見て、凛桜は彼がどんな思いで今の決断をしたのかを察した。
(楪さんがいなければ、白銀さんと親しくなれる……って気持ちがあるのは嘘じゃないけど、やっぱりそんなのフェアじゃないわね。これほど白銀さんの心を掴んでいる楪さんとは、正々堂々と勝負しなくちゃ、あたしらしくないわッ!)
「八丈島空港へ向かいますッ!」
スクリーンに投影されているナビゲーションシステムを確認すると、凛桜はステルス・コブラの機体を八丈島に向けて速度を上げた。
八丈島空港に着陸したのは、十三時五十分だった。整備員にステルス・コブラの給油を依頼して、龍成たちは空港の待合ロビーにあるレストランで遅めの昼食を取った。<星月夜>を発つときには時間がなく、サンドイッチを一つ食べただけだったからだ。
凛桜は八丈島の特産である島寿司セットを二つ頼んだ。醤油ベースのタレに漬け込んだ目鯛をワサビではなくカラシを入れて握った寿司と、別名「八丈草」と呼ばれる明日葉を練り込んだ「明日葉そば」のランチだった。抹茶に近い独特の苦みがある明日葉は、思いの外にそばとよく馴染んでいた。
「美味しいですね、このおそばッ!」
「ああ……」
「明日葉って、ミネラルやビタミンなどが豊富で、健康野菜としても注目されてるらしいですよ」
「そうだな……」
凛桜の言葉に龍成は空返事で答えた。<玉龍会>強襲作戦の失敗が相当に堪えているようだった。
「まだ楪さんを助け出す可能性がなくなったわけじゃありませんッ! すぐにでもブライトさんから連絡が入るかも知れないじゃないですかッ? ちゃんと食事を取って体力をつけておかないと、いざという時に力を発揮できませんよッ!」
「そうだな……。悪かった……」
凛桜の激励に顔を上げると、龍成は「明日葉そば」を食べ始めた。だが、その様子は普段の龍成とはかけ離れたものだった。
(こんなの、あたしが憧れた白銀さんじゃないわッ! 白銀さんは強くて、格好よくて、自信家で……それこそ、男の中の男って感じじゃないとダメだッ! <星月夜>のトップ・エージェント、白銀龍成はどこ行っちゃったのよッ!)
無言で「明日葉そば」を啜る龍成の姿を見て、凛桜は沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。そして、無意識のうちにドンッとテーブルを両手で叩いて立ち上がっていた。
「龍成ッ! それでもお前は男かッ! いつまでも女の腐ったみたいにぐだぐだしてんじゃねえぞッ! 奴らの場所が分かんなきゃ、全部の島廻って探し出しゃいいだろッ!」
龍成が箸を止めると、驚きに目を見開いて凛桜を見つめてきた。
(あッ……まずいッ! また、やっちゃった……)
カアッと顔を赤らめると、凛桜はトスンと腰を下ろし、小さく縮こまりながら顔を伏せた。そして、恐る恐る上目遣いに龍成の顔を見上げた。
「ハッ、ハッ、ハハッ……! 凛桜の言うとおりだッ!」
一瞬の沈黙のあと、龍成が笑い出した。そして、箸を置くと、真っ直ぐに凛桜の顔を見つめてきた。
「あの……あたし……すみません。カッとすると、つい……。陸自のときも、何度か上官に怒鳴っちゃって……その度に腕立てさせられて……」
凛桜は恥ずかしさのあまりだんだんと声が小さくなり、最後の方はボソボソと口の中で呟いた。
「気にするな……と言うよりも、ありがとう、凛桜……」
「いえ……」
てっきり怒られると思った凛桜は、驚いた表情で龍成を見つめた。
「それと、俺のことは龍成でいいぞ……」
「え……?」
一瞬、何を言われたのか、凛桜には分からなかった。そして、その言葉の意味に気づくと、凛桜はカアッと耳まで真っ赤に染めた。
「お前とは言いコンビになれそうだしな」
「は、はい……り、龍成……」
(嬉しいッ! 彼女になったみたい……)
凛桜の呼びかけに笑顔で頷くと、龍成が表情を引き締めながら告げた。
「ところで、凛桜が言うようにすべての島を調査するっていうのは、現実問題不可能だ。伊豆諸島には大小合わせると、およそ百の島々があるからな」
「そんなにあるんですか……?」
思ったよりも遥かに多い島数に、凛桜は驚いた。
「そのうちに有人島は九つだ。大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、そして、青ヶ島だ……」
「大島から三宅島までは知ってますが、御蔵島と青ヶ島っていうのは聞いたことないです」
「俺も名前だけで実際に行ったことはない。どっちも人口数百人しかいない島だ。青ヶ島が伊豆諸島の中で最も南にある有人島だ。それより南の島はすべて無人島だな」
(普段行かない島のことまで詳しいなんて、やっぱり白銀さん……龍成は格好いいな)
声を出さずに名前を呼んだだけでも、凛桜は嬉しさに心が躍った。
「奴らの本部は有人島のどこかにあるはずだ……」
「そうなんですか? 無人島の方が見つかりにくいんじゃないですか?」
龍成の意見に首を捻りながら、凛桜が訊ねた。本土じゃなく伊豆諸島を選ぶくらいなら、人目に付かない無人島にこそ<蛇咬会>の本部がありそうな気がした。
「本部と言うくらいだから、常時数十人から百人くらいは人がいるはずだ。食料や日用品を買うためにわざわざ有人島まで移動するのは現実的じゃないからな」
「なるほど……。あたしも今のアパートはスーパーに近いところを選んだんです。遠くまで買い物に行くのは面倒くさいですよね」
龍成の説明に納得すると、凛桜が頷きながら言った。
「……。まあ、そういうことだ。そして、この九つの島の中から消去法で絞り込んでいくと……。まず、大島と八丈島は除外していいと思う。この二つは人口も他の島と比べて圧倒的に多いし、情報網も確立されている。この二つの島に本部を置くくらいなら、本土に置いた方が色々な面でメリットが大きい」
「そう言われると、その通りですね……」
凛桜が龍成の言葉に頷きながら、「明日葉そば」を啜った。
(やっぱり美味しいな、このおそば……。新宿で売ってないかな?)
「次に、新島、式根島、神津島だが、これらは年間三千人前後の観光客が訪れる。マフィアが本部を置くのに観光地を選ぶとは思えないから、この三島も除外だ」
凛桜が目鯛の握り寿司を頬張りながら、ふむふむと頷いた。
(これも美味しいッ! やっぱり、旅先では特産品を食べるに限るわッ!)
「残りは利島、三宅島、御蔵島、青ヶ島の四島だ。これらはいずれも人口も少ないし、観光客数も年間千人以下だ。今いる八丈島から最も近い青ヶ島を調査して、帰還ルートに沿って御蔵島、三宅島、利島の順に調べてみよう」
「はひ、るーへー(龍成)……」
もぐもぐと口を動かしながら、凛桜が頷いた。その様子を見て、龍成が楽しそうに告げた。
「お前、可愛いな……」
「へ……?」
驚きに眼を大きく見開くと、凛桜は咳き込んだ。食べていた握り寿司が喉につかえたのだ。慌てて水で流し込むと、涙目になりながら文句を言った。
「か、揶揄わないでくださいッ! 死ぬかと思いましたッ!」
「別に揶揄ってないぞ。頬っぺた膨らませて食べてる顔は、リスそっくりで可愛かったぞ」
「リス……」
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染めながら、凛桜が龍成を睨んだ。
(可愛いなんて言うからビックリしたら、リスって何よッ……!)
「リオじゃなくて、リスオって呼んでもいいか?」
「ダメですッ! そんな名前で呼んだら、高度三千メートルから突き落としますよッ!」
「ハッ、ハッ、ハハッ……! 悪かった……! 突き落とされる前に、アランに奴らの本部の位置が分かったか確認してくるよ……」
そう告げると、龍成は席を立ってレストランから出て行った。通話を聞かれないように人気のない場所に移動するためだ。
(元気になったみたいで良かった……。それに、何だか龍成と近くなったみたい……)
凛桜はその後ろ姿を見つめながら、嬉しそうに微笑んだ。自分の中で龍成の存在が大きくなっていくのが分かった。
「おね……がい……! もう……ゆるしてぇ……! あッ……あぁあッ……いやぁッ……! おかしく……なっちゃうッ……! あッ、あッ、だめぇえッ……!
瑞紀は長い髪を振り乱しながら、啼き叫んだ。その美しい貌は真っ赤に染まり、黒曜石の瞳からは随喜の涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。火のような熱い喘ぎを放つ唇の端からは、ネットリとした涎が長い糸を引いて揺れていた。豊かな胸はX字型に掛けられた縄で絞り出され、後ろ手にされた両腕とともに緊縛されていた。
瑞紀は二人同時に犯されていた。王雲嵐の長大な男が、瑞紀の花唇を下から激しく突き上げていた。そして、悪魔のような右手は剥き出しにされた真珠粒を摘まみ上げ、コリコリと扱き上げていた。
もう一人は短い髪を真っ赤に染めた女性だった。彼女は男性器を模した張形を固定具で股間に装着し、瑞紀の尻穴を貫いていた。そのディルドは電動式で、瑞紀の直腸の中で激しくウネリながら振動していた。そして、彼女の両手は縄掛けされた瑞紀の乳房を揉みしだき、尖りきった淡紅色の乳首を指で嬲り続けていた。
「ひぃいいッ……! 狂っ……ちゃうッ……! おね……がいッ……! もう……やめてぇッ……!」
乳房、乳首、真珠粒、花唇、そして尻穴と、ありとあらゆる女の性感帯を同時に責められ、瑞紀は途切れることのない愉悦の奔流に晒された。
直腸の中を暴れる張形と羞恥の源泉を貫く長大な男が、薄皮一枚を隔ててゴリゴリと擦りながらぶつかり合い、焔の火柱となって瑞紀を責め苛んだ。凄まじい灼熱が腰骨を灼き溶かし、背筋を舐め上げて脳天で爆発した。
「だめぇえッ! また、イクッ! 許してッ! イクッぅぅうッ……!」
真っ赤に染まった裸身がビクッンビックンッと激しく痙攣すると、プシャアーッという音を立てて羞恥の源泉から大量の愛蜜が迸った。愉悦の快絶を噛みしめた唇から涎を垂れ流しながら、瑞紀はガクガクと総身を硬直させた。そして、グッタリと全身から力を抜き放つと、王の胸の中に倒れ込んだ。
(これ以上……されたら……本当に……狂う……)
ビクッビクッンッと痙攣しながら、官能の愉悦に蕩けきった意識の中で瑞紀は思った。これが何度目の絶頂なのかさえ、すでに瑞紀には分からなかった。ただ一つはっきりしていることは、この地獄に終わりがないことだった。
王の突き上げが再び始まった。入口にある粒だった天井部分を三回擦り上げると、内襞を抉りながら一気に最奥まで貫いてきた。女を狂わせる三浅一深の性技だった。壮絶な快感が火柱となって燃え上がり、四肢の先端まで瑞紀の全身を灼き溶かした。
直腸の中で暴れ回るディルドは、瑞紀が絶頂を極めたことなど関係なく大きくウネリながら振動を続けていた。その恍惚の脈動を加速させるかのように、女が激しく腰を振った。瑞紀には絶頂の余韻を味わうわずかな時間さえ与えられなかった。
「……お願いします……あッ……王さま……もう許してください……ひッ……お願い……あひぃッ……!」
瑞紀は長い黒髪を振り乱しながら、涎で濡れ光る唇から哀訴の言葉を紡ぎ出した。官能に蕩けきった黒瞳からは大粒の涙が流れ、焔の吐息を漏らす口元からはトロリと涎が垂れ落ちた。普段の凜とした気の強さは微塵もなく、この凄絶な凌辱から逃れようとする哀しい女の姿だけがそこにあった。
瑞紀の哀願を聞くと、王はニヤリと笑みを浮かべた。そして、これが答えだとでも言うように、激しく腰を突き上げて怒濤の如く瑞紀を責め始めた。
「いやぁああ……! ゆる……してぇッ……! 死ん……じゃうッ……! だめぇえッ……! アッ、アァアアーッ……!」
快美の火柱が瑞紀の全身を灼き尽くした。縄掛けされた胸を突き出すように大きく仰け反ると、瑞紀はビクンッビックンッと激しく痙攣して絶頂を極めた。それは、紛れもない極致感であった。
その瞬間、瑞紀の意識は真っ白な閃光に包まれ、言語を絶する快絶がすべての細胞を灼き溶かした。かつてない快感が落雷のように脳天を直撃した瞬間、羞恥の肉扉からシャアァアーッという激しい水音とともに黄金の潮流が虚空に迸った。限界を超える快美の爆発に失禁したのだ。
次の瞬間、瑞紀はガクリと首を折ると、ゆっくりと王の体の上に倒れ込んだ。
「失神したか……」
ビクンッビクンッと痙攣を続けている瑞紀の中から、王が男を引き抜いた。濡れ塗れた花唇から、大量の愛蜜と一緒に王の放った白濁がドロリと溢れ出てきた。
「今日はここまでにしますか、王大人……?」
張形の動きを止めて瑞紀から抜きながら、女が情欲の焔を映した瞳で王を見つめた。そして、王を誘うように濡れた舌で真っ赤な唇を舐めながら、右手で自らの乳房を揉み上げた。
「よし……。氷麗、久しぶりにお前を抱くとしようか……」
ニヤリと口元に笑みを浮かべると、王は自分の上で痙攣している瑞紀の体を右隣に下ろした。そして、白氷麗《ハク・ビンリン》の目の前で両脚を大きく開いた。
「ありがとうございます、大人……」
氷麗が王の両脚の間に体を入れると、細い指先で王の男を握り締めた。そして、氷のように整った顔を近づけると、赤い舌を這わし始めた。
「んッ……んくッ……ん、んッ……!」
王の男が力を取り戻し始めると、氷麗はそれを口に含みゆっくりと頭を振り始めた。氷麗がネットリと舌を絡め、熱い唇で咥え、左手で激しく扱くと、王の男は猛々しい復活を遂げた。
氷麗が王の腰に跨がり、十分な硬さを取り戻した男を濡れた花唇に充てがった。そして、ゆっくりと腰を沈めた瞬間、凄まじい爆音とともに建物全体が激しく震動した。
「何だッ……!」
「何かが爆発したようですッ! 見て参りますッ!」
氷麗がベッドから床に降り立ったとき、再び爆音が響き渡り、先ほどよりも激しい揺れが襲ってきた。ベッドに右手をついてよろけた体を支えると、氷麗が険しい表情で王に告げた。
「単なる爆発じゃありませんッ! これは、何者かの攻撃ですッ!」
「何だとッ! ここは、<蛇咬会>本部だぞッ! いったい、誰が……?」
王の言葉を嘲笑うかのように、三度目の爆音が鳴り響いた。先ほどよりも凄まじい激震が王たちを襲った。
「こちら、護衛隊長の白だッ! 警備室、状況を報告しろッ!」
ベッドの脇にあるインターフォンで警備室を呼び出すと、氷麗が真剣な表情で叫んだ。そこには女の欲情の欠片さえも残っていなかった。
『こちら、警備室……! 戦闘ヘリコプターによる攻撃ですッ! 警備員を向かわせましたが、火力が違いすぎ……ぎゃあッ!』
「どうした、警備室ッ! 応答しろッ……!」
インターフォンの向こうから聞こえた断末魔の悲鳴に、氷麗の顔色が変わった。予想を遙かに上回る事態が発生していることだけは分かった。
「戦闘ヘリだとッ……! 本国かッ……!?」
驚愕に大きく目を見開きながら、王が叫んだ。マフィア同士の抗争に、戦闘ヘリコプターが投入されるなどあり得なかった。そんなものを持っているマフィアなど、世界中のどこを探してもあるはずないのだ。
王は日本の警察と自衛隊を対象から外した。そもそも警視庁に戦闘ヘリコプターなどないし、自衛隊が突然攻撃してくることなど絶対になかったからだ。一番可能性があるのは、王の祖国である中国だった。中国政府が何らかの方法で<蛇咬会>本部の位置を知り、奇襲してきたのだと考えた。
「王大人、ここにいてくださいッ! 状況を確認してきますッ!」
素肌の上から真紅のチャイナドレスを身につけると、氷麗が叫んだ。その右手には、トカレフTT-2035が握られていた。トカレフTT-1930の改良型で、7.62mm弾を装填する自動拳銃だ。初速420mで発射される弾丸は、貫通力だけであれば9mmパラベラム弾を上回る。
だが、戦闘ヘリコプター相手にそんな物が役に立つとは思えなかった。
「ま、待てッ……! お前はここに……」
「状況を確認したら、すぐに戻りますッ!」
マガジンに八発の銃弾がフルに装填されていることを確認すると、氷麗が部屋から飛び出していった。室内に残されたのは、王と意識を失っている瑞紀だけだった。
王は手早く衣服を身につけると、ベッドの横に置かれているサイドテーブルの引き出しからトカレフを取り出した。マガジン・リリース・ボタンを押してマガジンを取り出すと、八発全弾が装填されていることを確認して再びマガジンを挿入した。
ダッダッダッダッ……!
短機関銃を遙かに上回る連射音が鳴り響いた。王は急いで窓から離れ、ベッドの反対側に身を隠した。紛れもなく戦闘ヘリコプターから放たれた機銃の斉射音だった。20mm砲か30mm砲かまでは分からないが、どちらにしても直撃されたら人間の体など肉片と化すことは間違いなかった。
(本当に本国政府なのか……? まさか……?)
ベッドの上で上半身を縄で縛られ、意識を失っている美女を見つめた。
(<星月夜>が瑞紀を取り戻しに来たのか……?)
だが、その考えを王は即座に否定した。民間の警備会社に過ぎない<星月夜>が、戦闘ヘリコプターを所持しているとは思えなかったのだ。
ダッダッダッダッ……!!
王の考えを嘲笑うかのように、外から聞こえる機銃の斉射音が蒼穹に響き渡り、周囲のすべてを席巻した。
西園寺凛桜が興奮した口調で告げた。「赤とんぼ」とは、第二次世界大戦終戦まで日本海軍で使用されていたK5Yというプロペラ型の練習機だ。目立つように機体が橙色に塗られていたことから、「赤とんぼ」と呼ばれていた。
「三十億円もしたらしいからな……。俺はヘリについては詳しくないが、性能も世界最高クラスだと聞いたぞ」
「はいッ! マニュアルを見ましたが、それは間違いないですッ! 最高速度は時速四百五十キロで、ヴァイパーの1.2倍以上もあるんですよッ! 最大上昇率が分速千二百メートルなんて、戦闘機以上ですッ! おまけに、目標探知システムは昼夜悪天候関係なく索敵可能で、最大探知距離は五十キロ、識別可能距離は二十キロもあるんですよッ!」
識別可能距離とは、目標が戦車か装甲車かなどを識別できる距離のことだ。その上、このステルス・コブラのシステムは、最大二十個の目標を自動追尾することが可能だった。
「武装は30mmガトリング砲と空対地ミサイルが十六発なんて、最高ですッ! その上、翼端には二発の短距離空対空ミサイルまで付いてるんですよッ! もう、凄すぎて、あたし、イッちゃいそうですッ!」
「おいおい……。イクのはベッドの上だけにしてくれ……」
呆れたような口調で告げた龍成の言葉に、凛桜は自分が何を口走っていたのかに気づいて真っ赤になった。
「す、すみません……」
「それよりも、そろそろ連絡が入る頃だな……」
二人乗りシートの左側に座っている龍成が、左腕のリスト・タブレットを見ながら言った。時間は十三時二十五分だった。<玉龍会>強襲作戦の開始時間が十三時なので、無事制圧できていれば連絡が来てもおかしくない頃だった。
<玉龍会>強襲作戦の指揮を、龍成はアラン=ブライトに一任した。龍成とともに特別捜査部の双璧と謳われるアランであれば、その実力に不安はなかった。一つだけ不安要素があるとすれば、強襲作戦に<楪探偵事務所>の錦織雄作が同行していることだった。瑞紀たちが<玉龍会>本部に捉えられている可能性もゼロではないため、七瀬美咲の顔を知っている錦織に同行を依頼したのだ。
だが、錦織の前職が警視庁西新宿署の組織犯罪対策課にいた元刑事とは言え、厳しい訓練を受けている龍成たち特別捜査官から見れば、素人同然だった。
その時、龍成のリスト・タブレットが微かに振動した。メールや電話の着信があったサインだった。バーチャル・スクリーンに目を移すと、<星月夜>専用回線を使用したアランからの連絡だった。
「白銀だ……」
「13:18、作戦は終了した。錦織が軽傷、特別捜査官に負傷者なし。それと七瀬美咲を確保した」
アランの報告に、龍成が問い質した。
「美咲さんだけかッ? 瑞紀は……!?」
「ミズキはいなかった。ミサキは右肩甲骨下を撃たれて、意識不明の重体だ……」
「何だとッ……!」
救出すべきターゲットを銃で撃たれるなど、失態と言われても弁解のしようがないミスだった。
「すまない、リューセイ……。私の指揮ミスだ。捕らえた<玉龍会>のメンバーからミサキがここにいることを聞いた錦織が、私の制止を無視して単独行動を起こした。ミサキは錦織を庇って撃たれたそうだ。ミサキを撃った会長の周俊傑は錦織が射殺した……」
沈痛な声でアランが状況を報告した。だが、<蛇咬会>本部の位置を知っていると思われる周が死亡したことの意味は大きかった。
「状況は分かった。周以外に<蛇咬会>本部の場所を知っているヤツはいたのか?」
「幹部、構成員合わせて二十八名を確保したが、誰も知らないと言っている。これから幹部連中を尋問する予定だ」
「分かった……。位置が分かり次第、連絡をくれ……」
そう言うと、龍成は通話をオフにした。そして、右手を自分の右太股に叩きつけた。
「くそッ……! これじゃ、何のために<玉龍会>を襲撃したか分からないッ!」
「白銀さん……」
「せっかくここまで来たってのにッ……!」
今、龍成たちはステルス・コブラで、東京湾の南沖百七十キロメートルの地点を南に向けて飛行していた。アランたちの報告を待って、<蛇咬会>本部の位置が特定でき次第、急行する予定だったのだ。
「どうするんです、白銀さん……」
主操縦席で操縦桿を握る凛桜が、心配そうな視線を白銀に送った。
統合作戦本部長の高城には四人組で伊豆諸島に行くと告げたが、龍成はパイロットの凛桜だけを同行させた。ステルス・コブラは四人乗りなので、瑞紀と美咲を救出した場合、彼女たちを運ぶ必要があったからだ。
ステルス・コブラの航続可能距離は八百キロメートルだ。東京都心から八丈島までは二百八十七キロメートル。<蛇咬会>本部を襲撃する戦闘飛行を考慮すると、往復するのに余裕がある距離ではなかった。戦闘飛行では燃料消費が通常の巡航飛行よりも高いからだ。
「八丈島空港に着陸してくれ。最大二十四時間、そこでアランからの連絡を待つ。二十四時間経っても<蛇咬会>本部の位置を特定できない場合は……」
「特定できない場合は……?」
凛桜が不安そうな表情で龍成を見つめた。
「<星月夜>に引き返す……」
「……はい」
<星月夜>に戻ると言うことは、瑞紀の救出を断念するという意味だった。すでに瑞紀が拉致されてから七十時間以上経過している。その上さらに二十四時間が経過すれば、瑞紀の生存率は限りなくゼロに近づくと思われた。
(この人、本当に楪さんを愛してるんだ……)
色が白くなるほど唇を噛みしめ、両脚の上で握り締めた拳をブルブルと震わせている龍成を見て、凛桜は彼がどんな思いで今の決断をしたのかを察した。
(楪さんがいなければ、白銀さんと親しくなれる……って気持ちがあるのは嘘じゃないけど、やっぱりそんなのフェアじゃないわね。これほど白銀さんの心を掴んでいる楪さんとは、正々堂々と勝負しなくちゃ、あたしらしくないわッ!)
「八丈島空港へ向かいますッ!」
スクリーンに投影されているナビゲーションシステムを確認すると、凛桜はステルス・コブラの機体を八丈島に向けて速度を上げた。
八丈島空港に着陸したのは、十三時五十分だった。整備員にステルス・コブラの給油を依頼して、龍成たちは空港の待合ロビーにあるレストランで遅めの昼食を取った。<星月夜>を発つときには時間がなく、サンドイッチを一つ食べただけだったからだ。
凛桜は八丈島の特産である島寿司セットを二つ頼んだ。醤油ベースのタレに漬け込んだ目鯛をワサビではなくカラシを入れて握った寿司と、別名「八丈草」と呼ばれる明日葉を練り込んだ「明日葉そば」のランチだった。抹茶に近い独特の苦みがある明日葉は、思いの外にそばとよく馴染んでいた。
「美味しいですね、このおそばッ!」
「ああ……」
「明日葉って、ミネラルやビタミンなどが豊富で、健康野菜としても注目されてるらしいですよ」
「そうだな……」
凛桜の言葉に龍成は空返事で答えた。<玉龍会>強襲作戦の失敗が相当に堪えているようだった。
「まだ楪さんを助け出す可能性がなくなったわけじゃありませんッ! すぐにでもブライトさんから連絡が入るかも知れないじゃないですかッ? ちゃんと食事を取って体力をつけておかないと、いざという時に力を発揮できませんよッ!」
「そうだな……。悪かった……」
凛桜の激励に顔を上げると、龍成は「明日葉そば」を食べ始めた。だが、その様子は普段の龍成とはかけ離れたものだった。
(こんなの、あたしが憧れた白銀さんじゃないわッ! 白銀さんは強くて、格好よくて、自信家で……それこそ、男の中の男って感じじゃないとダメだッ! <星月夜>のトップ・エージェント、白銀龍成はどこ行っちゃったのよッ!)
無言で「明日葉そば」を啜る龍成の姿を見て、凛桜は沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。そして、無意識のうちにドンッとテーブルを両手で叩いて立ち上がっていた。
「龍成ッ! それでもお前は男かッ! いつまでも女の腐ったみたいにぐだぐだしてんじゃねえぞッ! 奴らの場所が分かんなきゃ、全部の島廻って探し出しゃいいだろッ!」
龍成が箸を止めると、驚きに目を見開いて凛桜を見つめてきた。
(あッ……まずいッ! また、やっちゃった……)
カアッと顔を赤らめると、凛桜はトスンと腰を下ろし、小さく縮こまりながら顔を伏せた。そして、恐る恐る上目遣いに龍成の顔を見上げた。
「ハッ、ハッ、ハハッ……! 凛桜の言うとおりだッ!」
一瞬の沈黙のあと、龍成が笑い出した。そして、箸を置くと、真っ直ぐに凛桜の顔を見つめてきた。
「あの……あたし……すみません。カッとすると、つい……。陸自のときも、何度か上官に怒鳴っちゃって……その度に腕立てさせられて……」
凛桜は恥ずかしさのあまりだんだんと声が小さくなり、最後の方はボソボソと口の中で呟いた。
「気にするな……と言うよりも、ありがとう、凛桜……」
「いえ……」
てっきり怒られると思った凛桜は、驚いた表情で龍成を見つめた。
「それと、俺のことは龍成でいいぞ……」
「え……?」
一瞬、何を言われたのか、凛桜には分からなかった。そして、その言葉の意味に気づくと、凛桜はカアッと耳まで真っ赤に染めた。
「お前とは言いコンビになれそうだしな」
「は、はい……り、龍成……」
(嬉しいッ! 彼女になったみたい……)
凛桜の呼びかけに笑顔で頷くと、龍成が表情を引き締めながら告げた。
「ところで、凛桜が言うようにすべての島を調査するっていうのは、現実問題不可能だ。伊豆諸島には大小合わせると、およそ百の島々があるからな」
「そんなにあるんですか……?」
思ったよりも遥かに多い島数に、凛桜は驚いた。
「そのうちに有人島は九つだ。大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、そして、青ヶ島だ……」
「大島から三宅島までは知ってますが、御蔵島と青ヶ島っていうのは聞いたことないです」
「俺も名前だけで実際に行ったことはない。どっちも人口数百人しかいない島だ。青ヶ島が伊豆諸島の中で最も南にある有人島だ。それより南の島はすべて無人島だな」
(普段行かない島のことまで詳しいなんて、やっぱり白銀さん……龍成は格好いいな)
声を出さずに名前を呼んだだけでも、凛桜は嬉しさに心が躍った。
「奴らの本部は有人島のどこかにあるはずだ……」
「そうなんですか? 無人島の方が見つかりにくいんじゃないですか?」
龍成の意見に首を捻りながら、凛桜が訊ねた。本土じゃなく伊豆諸島を選ぶくらいなら、人目に付かない無人島にこそ<蛇咬会>の本部がありそうな気がした。
「本部と言うくらいだから、常時数十人から百人くらいは人がいるはずだ。食料や日用品を買うためにわざわざ有人島まで移動するのは現実的じゃないからな」
「なるほど……。あたしも今のアパートはスーパーに近いところを選んだんです。遠くまで買い物に行くのは面倒くさいですよね」
龍成の説明に納得すると、凛桜が頷きながら言った。
「……。まあ、そういうことだ。そして、この九つの島の中から消去法で絞り込んでいくと……。まず、大島と八丈島は除外していいと思う。この二つは人口も他の島と比べて圧倒的に多いし、情報網も確立されている。この二つの島に本部を置くくらいなら、本土に置いた方が色々な面でメリットが大きい」
「そう言われると、その通りですね……」
凛桜が龍成の言葉に頷きながら、「明日葉そば」を啜った。
(やっぱり美味しいな、このおそば……。新宿で売ってないかな?)
「次に、新島、式根島、神津島だが、これらは年間三千人前後の観光客が訪れる。マフィアが本部を置くのに観光地を選ぶとは思えないから、この三島も除外だ」
凛桜が目鯛の握り寿司を頬張りながら、ふむふむと頷いた。
(これも美味しいッ! やっぱり、旅先では特産品を食べるに限るわッ!)
「残りは利島、三宅島、御蔵島、青ヶ島の四島だ。これらはいずれも人口も少ないし、観光客数も年間千人以下だ。今いる八丈島から最も近い青ヶ島を調査して、帰還ルートに沿って御蔵島、三宅島、利島の順に調べてみよう」
「はひ、るーへー(龍成)……」
もぐもぐと口を動かしながら、凛桜が頷いた。その様子を見て、龍成が楽しそうに告げた。
「お前、可愛いな……」
「へ……?」
驚きに眼を大きく見開くと、凛桜は咳き込んだ。食べていた握り寿司が喉につかえたのだ。慌てて水で流し込むと、涙目になりながら文句を言った。
「か、揶揄わないでくださいッ! 死ぬかと思いましたッ!」
「別に揶揄ってないぞ。頬っぺた膨らませて食べてる顔は、リスそっくりで可愛かったぞ」
「リス……」
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染めながら、凛桜が龍成を睨んだ。
(可愛いなんて言うからビックリしたら、リスって何よッ……!)
「リオじゃなくて、リスオって呼んでもいいか?」
「ダメですッ! そんな名前で呼んだら、高度三千メートルから突き落としますよッ!」
「ハッ、ハッ、ハハッ……! 悪かった……! 突き落とされる前に、アランに奴らの本部の位置が分かったか確認してくるよ……」
そう告げると、龍成は席を立ってレストランから出て行った。通話を聞かれないように人気のない場所に移動するためだ。
(元気になったみたいで良かった……。それに、何だか龍成と近くなったみたい……)
凛桜はその後ろ姿を見つめながら、嬉しそうに微笑んだ。自分の中で龍成の存在が大きくなっていくのが分かった。
「おね……がい……! もう……ゆるしてぇ……! あッ……あぁあッ……いやぁッ……! おかしく……なっちゃうッ……! あッ、あッ、だめぇえッ……!
瑞紀は長い髪を振り乱しながら、啼き叫んだ。その美しい貌は真っ赤に染まり、黒曜石の瞳からは随喜の涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。火のような熱い喘ぎを放つ唇の端からは、ネットリとした涎が長い糸を引いて揺れていた。豊かな胸はX字型に掛けられた縄で絞り出され、後ろ手にされた両腕とともに緊縛されていた。
瑞紀は二人同時に犯されていた。王雲嵐の長大な男が、瑞紀の花唇を下から激しく突き上げていた。そして、悪魔のような右手は剥き出しにされた真珠粒を摘まみ上げ、コリコリと扱き上げていた。
もう一人は短い髪を真っ赤に染めた女性だった。彼女は男性器を模した張形を固定具で股間に装着し、瑞紀の尻穴を貫いていた。そのディルドは電動式で、瑞紀の直腸の中で激しくウネリながら振動していた。そして、彼女の両手は縄掛けされた瑞紀の乳房を揉みしだき、尖りきった淡紅色の乳首を指で嬲り続けていた。
「ひぃいいッ……! 狂っ……ちゃうッ……! おね……がいッ……! もう……やめてぇッ……!」
乳房、乳首、真珠粒、花唇、そして尻穴と、ありとあらゆる女の性感帯を同時に責められ、瑞紀は途切れることのない愉悦の奔流に晒された。
直腸の中を暴れる張形と羞恥の源泉を貫く長大な男が、薄皮一枚を隔ててゴリゴリと擦りながらぶつかり合い、焔の火柱となって瑞紀を責め苛んだ。凄まじい灼熱が腰骨を灼き溶かし、背筋を舐め上げて脳天で爆発した。
「だめぇえッ! また、イクッ! 許してッ! イクッぅぅうッ……!」
真っ赤に染まった裸身がビクッンビックンッと激しく痙攣すると、プシャアーッという音を立てて羞恥の源泉から大量の愛蜜が迸った。愉悦の快絶を噛みしめた唇から涎を垂れ流しながら、瑞紀はガクガクと総身を硬直させた。そして、グッタリと全身から力を抜き放つと、王の胸の中に倒れ込んだ。
(これ以上……されたら……本当に……狂う……)
ビクッビクッンッと痙攣しながら、官能の愉悦に蕩けきった意識の中で瑞紀は思った。これが何度目の絶頂なのかさえ、すでに瑞紀には分からなかった。ただ一つはっきりしていることは、この地獄に終わりがないことだった。
王の突き上げが再び始まった。入口にある粒だった天井部分を三回擦り上げると、内襞を抉りながら一気に最奥まで貫いてきた。女を狂わせる三浅一深の性技だった。壮絶な快感が火柱となって燃え上がり、四肢の先端まで瑞紀の全身を灼き溶かした。
直腸の中で暴れ回るディルドは、瑞紀が絶頂を極めたことなど関係なく大きくウネリながら振動を続けていた。その恍惚の脈動を加速させるかのように、女が激しく腰を振った。瑞紀には絶頂の余韻を味わうわずかな時間さえ与えられなかった。
「……お願いします……あッ……王さま……もう許してください……ひッ……お願い……あひぃッ……!」
瑞紀は長い黒髪を振り乱しながら、涎で濡れ光る唇から哀訴の言葉を紡ぎ出した。官能に蕩けきった黒瞳からは大粒の涙が流れ、焔の吐息を漏らす口元からはトロリと涎が垂れ落ちた。普段の凜とした気の強さは微塵もなく、この凄絶な凌辱から逃れようとする哀しい女の姿だけがそこにあった。
瑞紀の哀願を聞くと、王はニヤリと笑みを浮かべた。そして、これが答えだとでも言うように、激しく腰を突き上げて怒濤の如く瑞紀を責め始めた。
「いやぁああ……! ゆる……してぇッ……! 死ん……じゃうッ……! だめぇえッ……! アッ、アァアアーッ……!」
快美の火柱が瑞紀の全身を灼き尽くした。縄掛けされた胸を突き出すように大きく仰け反ると、瑞紀はビクンッビックンッと激しく痙攣して絶頂を極めた。それは、紛れもない極致感であった。
その瞬間、瑞紀の意識は真っ白な閃光に包まれ、言語を絶する快絶がすべての細胞を灼き溶かした。かつてない快感が落雷のように脳天を直撃した瞬間、羞恥の肉扉からシャアァアーッという激しい水音とともに黄金の潮流が虚空に迸った。限界を超える快美の爆発に失禁したのだ。
次の瞬間、瑞紀はガクリと首を折ると、ゆっくりと王の体の上に倒れ込んだ。
「失神したか……」
ビクンッビクンッと痙攣を続けている瑞紀の中から、王が男を引き抜いた。濡れ塗れた花唇から、大量の愛蜜と一緒に王の放った白濁がドロリと溢れ出てきた。
「今日はここまでにしますか、王大人……?」
張形の動きを止めて瑞紀から抜きながら、女が情欲の焔を映した瞳で王を見つめた。そして、王を誘うように濡れた舌で真っ赤な唇を舐めながら、右手で自らの乳房を揉み上げた。
「よし……。氷麗、久しぶりにお前を抱くとしようか……」
ニヤリと口元に笑みを浮かべると、王は自分の上で痙攣している瑞紀の体を右隣に下ろした。そして、白氷麗《ハク・ビンリン》の目の前で両脚を大きく開いた。
「ありがとうございます、大人……」
氷麗が王の両脚の間に体を入れると、細い指先で王の男を握り締めた。そして、氷のように整った顔を近づけると、赤い舌を這わし始めた。
「んッ……んくッ……ん、んッ……!」
王の男が力を取り戻し始めると、氷麗はそれを口に含みゆっくりと頭を振り始めた。氷麗がネットリと舌を絡め、熱い唇で咥え、左手で激しく扱くと、王の男は猛々しい復活を遂げた。
氷麗が王の腰に跨がり、十分な硬さを取り戻した男を濡れた花唇に充てがった。そして、ゆっくりと腰を沈めた瞬間、凄まじい爆音とともに建物全体が激しく震動した。
「何だッ……!」
「何かが爆発したようですッ! 見て参りますッ!」
氷麗がベッドから床に降り立ったとき、再び爆音が響き渡り、先ほどよりも激しい揺れが襲ってきた。ベッドに右手をついてよろけた体を支えると、氷麗が険しい表情で王に告げた。
「単なる爆発じゃありませんッ! これは、何者かの攻撃ですッ!」
「何だとッ! ここは、<蛇咬会>本部だぞッ! いったい、誰が……?」
王の言葉を嘲笑うかのように、三度目の爆音が鳴り響いた。先ほどよりも凄まじい激震が王たちを襲った。
「こちら、護衛隊長の白だッ! 警備室、状況を報告しろッ!」
ベッドの脇にあるインターフォンで警備室を呼び出すと、氷麗が真剣な表情で叫んだ。そこには女の欲情の欠片さえも残っていなかった。
『こちら、警備室……! 戦闘ヘリコプターによる攻撃ですッ! 警備員を向かわせましたが、火力が違いすぎ……ぎゃあッ!』
「どうした、警備室ッ! 応答しろッ……!」
インターフォンの向こうから聞こえた断末魔の悲鳴に、氷麗の顔色が変わった。予想を遙かに上回る事態が発生していることだけは分かった。
「戦闘ヘリだとッ……! 本国かッ……!?」
驚愕に大きく目を見開きながら、王が叫んだ。マフィア同士の抗争に、戦闘ヘリコプターが投入されるなどあり得なかった。そんなものを持っているマフィアなど、世界中のどこを探してもあるはずないのだ。
王は日本の警察と自衛隊を対象から外した。そもそも警視庁に戦闘ヘリコプターなどないし、自衛隊が突然攻撃してくることなど絶対になかったからだ。一番可能性があるのは、王の祖国である中国だった。中国政府が何らかの方法で<蛇咬会>本部の位置を知り、奇襲してきたのだと考えた。
「王大人、ここにいてくださいッ! 状況を確認してきますッ!」
素肌の上から真紅のチャイナドレスを身につけると、氷麗が叫んだ。その右手には、トカレフTT-2035が握られていた。トカレフTT-1930の改良型で、7.62mm弾を装填する自動拳銃だ。初速420mで発射される弾丸は、貫通力だけであれば9mmパラベラム弾を上回る。
だが、戦闘ヘリコプター相手にそんな物が役に立つとは思えなかった。
「ま、待てッ……! お前はここに……」
「状況を確認したら、すぐに戻りますッ!」
マガジンに八発の銃弾がフルに装填されていることを確認すると、氷麗が部屋から飛び出していった。室内に残されたのは、王と意識を失っている瑞紀だけだった。
王は手早く衣服を身につけると、ベッドの横に置かれているサイドテーブルの引き出しからトカレフを取り出した。マガジン・リリース・ボタンを押してマガジンを取り出すと、八発全弾が装填されていることを確認して再びマガジンを挿入した。
ダッダッダッダッ……!
短機関銃を遙かに上回る連射音が鳴り響いた。王は急いで窓から離れ、ベッドの反対側に身を隠した。紛れもなく戦闘ヘリコプターから放たれた機銃の斉射音だった。20mm砲か30mm砲かまでは分からないが、どちらにしても直撃されたら人間の体など肉片と化すことは間違いなかった。
(本当に本国政府なのか……? まさか……?)
ベッドの上で上半身を縄で縛られ、意識を失っている美女を見つめた。
(<星月夜>が瑞紀を取り戻しに来たのか……?)
だが、その考えを王は即座に否定した。民間の警備会社に過ぎない<星月夜>が、戦闘ヘリコプターを所持しているとは思えなかったのだ。
ダッダッダッダッ……!!
王の考えを嘲笑うかのように、外から聞こえる機銃の斉射音が蒼穹に響き渡り、周囲のすべてを席巻した。
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