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小話
花に囲まれた天使② ※後半sideモモ
しおりを挟むそんな声が横で聞こえてきた。
(神子様をモモ、と呼んでいるということはまさか……)
ギギギギと首を動かし、ゆっくりそちらを見ると案の定そのお方はいた。
「お、王太子殿下……!」
平民の俺に作法など分かるはずもなく、ただただその
圧倒的なオーラに体を震わすことしか出来ない。
俺の声に神子様も殿下が来たことに気づいたようだ。
「あれ、ルー?お仕事は……?」
「早めに終わったからモモを迎えに来たんだよ。それで、君は何かな?」
神子様を抱き上げながら発せられた言葉に俺は冷や汗が止まらない。
「や、えっと、その…ここに、迷い込んでしまって……」
「あぁ、モモが引き止めてしまったのか。すまないね。確か君はアルドフの息子だったね。」
「は、はいっ!」
アルドフは俺の父の名前だ。
凄い……俺の拙い言葉で瞬時に状況を把握して、なおかつ俺が何者かも見抜いてしまわれた。
驚きで呆然と立ち尽くしていると神子様がうるうるとした目で殿下を見つめている。
「ぼく、迷惑かけちゃった……ごめんさない。」
「い、いえ。こちらこそお邪魔して申し訳ありませんでした...!」
「ううん!お話しできて楽しかった!」
ううっ、笑顔が眩しい....!
「モモ、良かったね…でもそろそろ部屋に戻ろうか。体が冷えたらいけないから。」
「うん……またね。」
そう言って去ってしまったが、殿下の肩からひょこっと顔を出し、ばいばいと手を振って下さった。
なんだか……夢を見ているようだった。
雲の上の存在だった神子様に会えて、しかも話までしたのだ。
本当に綺麗で可愛くて、天使だった……今日のことは一生忘れないだろうな。
「よし、帰るか……」
どこか幸せな気持ちに包まれながら、帰り道をたどっていくのだった。
sideモモ
お花畑を後にして、部屋に帰ってきた。
同い年くらいの子に会ったのは1日入学の時くらいだなぁ……ふふ、楽しかった。
「うれしそうだね、でも、今度からはむやみに近づけるのはやめようね。悪い人かもしれないから。」
頬を大きな手で包まれ、子供に言い聞かせるように言われる。
「んっ、気をつける。…でもね、今日は精霊さんも喜んでたから大丈夫なの。」
精霊さんは清い心を持った人の所に集まるって本に書いてあったよ。
今日の……あ、名前聞くの忘れてた…… 。じゃあ髪の毛が緑だったから緑くんにしよ。
緑くんが近づいたら精霊さん喜んでたから優しい人なんだろな。
思い出して自然とにこにこしていると、ルーが不満そうな顔をした。
「モモは自覚が無さすぎる。モモの可愛さがどれだけの人を魅了しているか考えると、外に出すのが気が気じゃないよ。」
「ふふ、ルーってば心配性だねぇ。僕にそんな魅力ないのに。」
「そっか、じゃあ俺が教えてあげなきゃね?体にたっぷりと……」
そう言ったルーの顔には、黒い笑みが浮かんでいる。
「あ……わ、ごめんなさいっ……んむ、ふぁ……」
その後解放されたのは、空が完全に色を変えた頃だった。
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