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本編

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目を覚ますとまたベットの上にいた。
ルーが運んでくれたんだ。
窓からは明るい光が入ってきていて、もう朝だということが分かる。

すこしぼーっとしていると現在部屋にひとりぼっちだということに気づき、途端に不安になってきた。


「ルー、どこ…?」


元と世界にいた時は1人なんて当たり前だったのに今は寂しくてたまらない。

とにかくルーを探しに行かなきゃ… 
そう思いベットから降りると、ガチャリ、とドアが開く音がした。

「モモ、おはよう。まだ寝てていいんだよ?」

ドアの方を見るともうすでに身支度を終えたルーがこちらに来ているのが見えた。

「おはよう…ルー、ぎゅーして…?」


「ん?いいよ、おいで。」


ベットの上からヒョイっと抱き上げられたので両腕を首に回して抱きついた。
やはりルーといると安心する…。


「どうしたの?」

なんかあった?と背中をさすられる。


「…起きたら1人だったから寂しかっただけ。」

「そっか、ごめんね。…じゃあ今日の夜からは一緒に寝ようか。モモが嫌じゃなかったらだけど。」

「いいの?ふふ、やったぁ」

そんな感じで今日から一緒に寝ることが決定した。









「それでモモ、今から昨日言ってた通りモモの護衛と侍女を紹介しようと思うんだけど会えそうかな?早めの方がいいと思ってね。」

「ん…会ってみる。でもルーも一緒にいて?」

仲良くなれたらいいな……


「もちろん。みんなモモに会うのをとても楽しみにしているんだ。」


そう言ってソファーの方に運ばれ、座らされた。


それにしても僕の今の格好はおそらくルーが着替えさせてくれたであろう白のゆったりとしたルームウェアのようなものをきているのだが、こんな格好でいいのだろうか。


「入れ。」


あっ、もう来るんだ。


少し不安になって隣に座っているルーの手を握ると優しい顔でふわふわと頭を撫でられた。


「失礼致します。」


そう言って2人の人物が入ってきた。



「お初にお目にかかります。私は王国騎士団第一部隊隊長、オリビア・ミラーと申します。この度、神子様の護衛部隊の隊長の任を任せていただくことになりました。必ずお守り致します。」


…すごい。騎士なだけあってムキムキだ。
それに凄くキリッとしていてかっこいい。見た感じ30歳くらい?


……ん?


「第一、部隊……?」


それって国で1番強い人なんじゃ…


「そうだよ。モモの護衛部隊は優秀な者を厳選しているから安心して過ごしてね。」


「……はぁい。」


この国は平和らしいからそんなに守ってもらわなくていい気もするけど…


「私の方もご挨拶を。お初にお目にかかります。メイドのメリッサ・アルカルトと申します。何かありましたらなんなりとお申し付けください。」


メリッサさんの方はまだ若そう、25歳くらいだろうか。とても可愛らしい雰囲気の方だ。……背は僕より高そうだけど。


「メリッサはまだ若いが優秀だ。気軽になんでも言えるように比較的歳の近い者にしたんだ。」


そんなところまで考えてくれてるんだ…。


そうだ、僕も挨拶しなきゃ
そう思い立ち上がって2人の前に立った。


「えっと、ももです。多分16歳?です。…あの、わがまま言っても、いい?」

「ええ、もちろん。私たちに気を使う必要はないのですよ?」


「じゃあ、んと、あんまりかしこまらないでほしい…僕はそんなに価値のある人間じゃない、よ…」


それに距離あるみたいで寂しくて自然と視線が落ちていく。  
するとメリッサさんが僕の前にかがんで僕の目を見ると、

「 そんなことないです!」
とはっきりと言った。

「メリッサの言うとおりですよ。」
その後ろでオリビアさんもそう言ってくれた。

「わたし、モモ様ともっと仲良くなりたいです!オリビア隊長もそうですよね?」

「ああ。モモ様、これからはわがままなどと思わず、何かあればすぐに言ってくださいね。」


「……ふふ、うん。ありがとう。」


2人の優しさが嬉しくて自然と笑っていた。
こんなに優しい人たちに出会えて幸せ……
それに今までお母さん以外と関わることがなかったからたくさんお話したいな。

改めて2人の顔を見るとなぜか固まっている。
あれ、また変なこと言っちゃったかな。


「2人とも。モモが困っている。モモ、気にしないでいいからね?」

見兼ねたルーが声をかけると、はっとして戻ってきた。


「失礼しました。しかし殿下、これは危険ですね。」


「だから言っただろう?モモは可愛すぎるんだって」


目の前で交わされるよく分からない会話をはてなを浮かべながら聞いている。


「モモおいで。」


と、手招きをされたのでとてとてと行くと、ふわっと抱き上げられた。


「あんまり知らない人に無防備になりすぎちゃだめだよ?」

「…分かった……?」



「この通り、分かってないから2人ともよろしくね。」


「「はい。」」


む、僕だけ仲間はずれだ。
分かってるもん…多分。
ぷくっとほっぺを膨らましていると、

「モモ様可愛い~。」

とメリッサさんが言うと、ルーとオリビアさんも微笑んでいる。

そんな感じで僕の異世界生活1日目が和やか?にスタートした。
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