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第4章起業しましょう。そうしましょう

231・さらわれた貴族の娘

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「タツキさん、魔力で作る服の作り方教えてください」

そう私はタツキに聞いた。

「教えても良いぞ」
「でも魔力で服って作れるんですか?」
「いいか、魔力から糸をまず作るのじゃ。
魔力をこね上げて、糸が出来るようにイメージするのじゃ」
「はい」

そうイメージすると糸が出来た。

「そして今度はそれを体全体で覆うイメージをするのじゃ」
「はい。こんな感じですか」
「それでどんな服にするのかイメージするのじゃ。
そうすれば服は完成じゃ」
「おお、本当に出来ましたね」

本当に簡単に服が完成した。

「わりと簡単じゃろう?
糸に命令すれば好きなように色も素材も変えることが出来るのじゃ。
これを魔衣と呼ぶのじゃ」
「これって浸透したら、服屋が滅びそうですね」
「心配せずともこれは魔力の高い人間にしか扱うことは出来ぬ」
「そうですか、なら良かったです」
「セツナ、大変よ!」

その時部屋にエドナが入ってくる。

「どうしたの?」
「ギルドに貴族から指名依頼が入ってきたみたい。
すぐにギルドに来て欲しいって」
「分かりました。すぐ行きます」

そうして『金色の黎明』のメンバーを連れて、
私はギルドに向かった。

「あ、セツナに指名依頼が来ているよ」

そう『金色の黎明』のメンバーと一緒にギルドに入ると、
受付嬢のイザベラがそう言った。

「何の依頼ですか?」
「貴族からみたいだね。
要件は直接話して言いたいってさ。
報酬は金貨5枚だよ」
「分かりました」

そうして私達は貴族の家に向かった。





貴族の家につくと客間のような所に案内された。

「あなた方が『金色の黎明』ですね。
私はロスコー・ラーマルと言います」
「それで依頼というのは?」
「その前にあなた方に探して欲しい物があります」
「探して欲しい物?」
「これです」

そう言うとロスコーさんは鍵のような物を取り出す。

「この鍵を入れる錠前が無くなってしまいましてね。
探してくれませんか」
「あ、はい、分かりました」

エリアマップで検索するとすぐに錠前は見つかった。

「はい、これですよね」

私は鏡台の下にあった錠前を差し出す。
それを見てロスコーはにっこりと笑った。

「合格です。
『金色の黎明』、確かに噂通りですね。
では本当の依頼について話しましょう」
「本当の依頼?」
「実はこのことは内密にして欲しいのですが、
私の娘が何者かに誘拐されてしまったのです」
「誘拐ですか…」
「はい、誘拐犯は身代金を出せば、
娘を帰すと言いました。
これまでに何度も身代金を払ってきましたが、
娘が帰ってくることはありませんでした」
「警察には言ったんですか?」
「いいえ、警察に言えば娘の命はないと言われて、
とても頼ることは出来ませんでした。
だから冒険者や色々な人を頼って、
死に物狂いで捜しましたが見つかりませんでした」
「そうですか、娘さんの特徴と名前を教えてください」
「名前はイダ・ラーマルです。
腰まである金髪に、両目の下にほくろがあります。
目の色は緑で、容姿は美人な方だと思います」

私は言われたことをメモする。
「それで娘さんがさらわれたのはいつ頃ですか?」
「去年の7月頃です」
「ふむ、分かりました。
どれだけ力になれるか分かりませんが、捜してみます」
「待て」

その時、今まで黙っていたタツキが口を開いた。

「去年の7月に居なくなったと言ったな。
今はもう3月じゃ、この半年の間、お主は一体何をしておったのじゃ」
「そ、それは…」
「まさか娘を見捨てたのか?」

鋭い目でタツキがロスコーさんを見た。

「いいえ、違います!
娘を助けるために私は色々な冒険者や占い師を頼りました。
ですがどれも結果が…」
「つまり騙されたということか?」
「…そうです。
そうしていくうちに時間だけが過ぎ去りました。
最初にあなた達を試したのも、
もう騙されたくなかったからです」
「そういう事情か…。疑ってすまなかった。
だが安心するといい。
娘は必ずセツナが見つけ出すからな」
「はい、本当にあなた達に頼るしかもう後が無いんです」

そう言うロスコーさんは本当に憔悴しきっていた。

「セツナ、ここはエリアマップの出番よ」
「はい。《エリアマップ》」

私はエリアマップで検索してみた。
すると反応が3件あった。
1つはクロノ聖王国に、
もう2つは港町オデットの近くの森にあった。

「あれ、反応が3つあります」
「え、3人居るってことですか?」
「うーん、実際に行ってみるまで分かりませんが…」
「とりあえず行ってみましょう」

そうして私達は森に行ってみることにした。

「ねぇこんな深い森の中に本当に居るの?」
「でもエリアマップが嘘をついたことはないし、
きっとここに居ると思います」

森の中を進んでいるとエリアマップが示す先にたどり着いた。

「これは…」

そこにあったのは腐乱していたが、
どう見ても2本の人間の“足”だった。

「何でこんなところに…足が…」
「おそらく切り落とされたのだと思うぞ」
「とりあえず1回報告のために戻った方がいいんじゃないですか」

フォルトゥーナの言う通りだ。
報告のためにロスコーさんの屋敷に戻ることにした。

「何か分かりましたか!?」

私達が屋敷に入るとロスコーさんは慌てた様子で言った。

「1つ分かったことがあります。
娘さんはクロノ聖王国に居ます。
そしておそらく両足が切断されています」
「何だって!? そんな馬鹿な!?」
「落ち着いてください。
ここに居るフォルトゥーナは切断された手足を復元出来ます」
「復元出来ると言われても…。
どれだけ痛かったのか…。
考えるだけで胸が痛みます…」
「落ち着いてください。
娘さんは必ず私達が見つけ出します。
だから待っていてください」

それだけ言うと私達は屋敷を出た。

「それでどうするの?
クロノ聖王国まで行くの?」
「それより誘拐犯の組織を潰そうと思います。
彼らを野放しには出来ません。
彼らがいる限り、同じような悲劇が起こってしまいます」

そう言うと私はエリアマップを使い、
誘拐犯のアジトを捜した。
アジトは港町のオデットにあるようだった。

「よし、じゃあ行きますよ」

そうして私達はオデットに転移した。
そして誘拐犯の居るアジトの前まで来た。

「ここがアジトか」

誘拐犯のアジトは大きな屋敷だった。
まさか悪いことをしているのに、
こんな堂々とした場所にあるなんて少し意外だった。

「よし、逃がさないようにしないと、《土壁》」

私は正面の玄関を除いて、全ての窓とドアを土魔法で塞いだ。
これで誘拐犯は逃げられないだろう。
そして家の中に入った。

「何だお前らは!?」

すると黒い服を着た男達が続々とやってきた。

「では、《眠れ》」

そう言うと黒い服の男達はバタバタと倒れた。

「エドナとリンは正面玄関を見張ってください。
私達はこのまま奥に行きます」
「分かったわ」

そうして奥に行くと、続々と黒服の男達が襲ってきたが、
私達の敵ではなかった。

そして二階に行き、ある部屋の前まで来た。
中で話し声が聞こえたので、耳を澄ませる。

「あーあー、マジで誘拐って金になるよなー」
「確かにな」
「でも馬鹿だよな。
金を払えば子供が帰ってくると思っているんだぜ。
誘拐した子供はほとんどは殺しているっていうのによぅ。
親の愛情ってヤツは見ていて滑稽だわ」
「そういや前にさらった貴族の娘は上玉だったよな」
「ああ、あんまりにもうるさいから、
両足を切断したら、びーびー泣いてうるさかったな」
「マジで? お前クズじゃん」
「それはお前もだろ?
ま、警察もまさか誘拐犯が、
ここまで堂々とした場所に住んでるなんて思わないだろうしな。
あーあー誘拐ビジネスは最高だぜ」

もう我慢出来ない!
私はドアを開けた。

「あ? 何だお前は」
「大人しくお縄につきなさい!
あなた達の悪事はもう筒抜けです!!」

そう言うと男2人は鼻で笑った。

「はっ、女子供に何が出来るって言うんだよ。
俺達は元Bランク冒険者だぜ?」
「冒険者が何で誘拐なんてしているんですか?」
「まぁ色々あって冒険者資格を剥奪されたんだよ。
でも今は誘拐っていうビジネスを見つけたから、いいけどな。
本当に誘拐ってのは金になって良か…」
「もういい」

私の全身から黒いオーラが出る。
それを見た男達は恐怖に固まる。

「これは…」

タツキが驚いた顔で私を見た。

「この誘拐組織のリーダーはあなた達ですね」
「あ、ああ…」
「イダ・ラーマルって貴族の女性を知りませんか」
「し、知らな…うぎゃああー!!」

私は男達の体に電流を与えてやる。

「もう一度言います。
イダ・ラーマルって女性を知ってますよね」
「そ、そいつならとっくの昔に、
クロノ聖王国に奴隷として売り払ったよ…」
「それはいつですか」
「去年の7月頃だったよ…。
あの頃は他国に奴隷としてよく人間を売りさばいていたんだ。
まぁ町長が変わってからそれも出来なくなったけど…」

ああ、そうだあの時は町長のサーモンド男爵が、
貧しい家の子供を奴隷として他国に売り渡していたんだ。
町長が変わってからは、
そういったビジネスは出来ないようになったに違いない。

「な、なぁ答えたからもういいだろ。
見逃してくれよ…」
「まさか見逃すわけがありませんよ。
これから警察を呼ぶので、そこで洗いざらい自分の罪を喋りなさい」
「だ、誰がそんな…うわぁぁー!」

私は再度男の体に電流を浴びせる。

「喋らなければあなた達を地の果てまで追いかけますよ。
いえ、死ぬより恐ろしい目に遭わせます。
知ってますか、一番目立たない拷問は爪に針を突き刺すことですよ。
それを受けたくなかったら、自首しなさい。いいですね」
「わ、分かった。自首するだから許してくれぇ…」

それから私は黒いオーラを消すと、
警察を呼んで、2人の男と組織の人間を全て逮捕してもらった。
特に警察官はまさかこんな堂々とした場所に、
誘拐犯のアジトがあるとは思わなかったらしく、驚いていた。
誘拐犯達は余罪もかなりあるので、しばらくは牢屋の中らしい。
そして誘拐犯を捕まえた私達は、
クロノ聖王国に向かうことになったのだった。

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