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第4章起業しましょう。そうしましょう

204・手合わせ

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「さぁどこからでもかかってきなさい!」

その日エドナとリンは手合わせをしていた。
何でこんなことをしているかというと、
リンの実力を確かめるためだ。
チームのメンバーがどんな実力を持っているのか、
知ることも大事なことだ。

「いくぞ」

そう言うとリンは木刀でエドナに斬りかかるが、
あっさりエドナにかわされる。

「はぁ! やぁ!」

エドナは涼しい顔で受け止めたりしているが、
やがて反撃に出たエドナがリンの木刀をはじき飛ばす。

「うわっ」
「まだまだね」

尻餅をついたリンの首元にエドナの木刀が当たる。

「参った。アンタの勝ちだよ」
「うーん、筋は悪くないけど、
剣の扱いはイマイチね」
「まぁ普段はナイフを使ってるからな。
剣はそんなに使ったことがないんだよ」
「じゃあ今度はナイフを使って試してみましょう」
「え、ナイフだと切れるし、危険だよ?」
「使い慣れた武器の方が良いでしょう。
それに怪我するほど私は弱くないし」
「へぇ大した自信だね」
「どんな手を使ってもいいからかかってきなさい」
「どんな手でもね。分かった」

そうして2人は距離を取る。

「いくよ」

そうリンが言うと、何と煙幕を使って姿を消す。

「一体どこに」

エドナやリンも含めて煙幕もせいで姿が見えない。

「ここだ!」
「甘い!」

しかしリンは襲いかかるも、エドナに反撃されたのか、
倒れた音がした。

「くっ、参った」
「大丈夫ですか?」

煙幕が消えかけ、2人の姿が見えた。

「しっかしエドナ、アンタって強いね」
「まぁね。でもどんな手を使ってもいいとは言ったけど、
まさか煙幕を使うとはね」
「卑怯だって言いたいのかい?
でも喧嘩に卑怯は関係ないよ。
やられたらこっちがボコられるんだからさ。
卑怯にもなるよ」
「いや、別に責めているわけじゃないけど、
煙幕を使われたのは初めてだったから驚いただけよ」
「そうかい」
「思ったけどあなたは筋は悪くないんだけど、
もっと体を鍛えないと私達についていけないと思うわ」
「そうか、確かにアタシとアンタらじゃレベルが違いすぎるね」
「で、思ったんだけど、あなたの場合は正攻法で戦うより、
邪道というか卑怯な手を使った方が強くなれると思うの」
「え、卑怯な手を?」
「今から強くなろうとしてもかなり時間がかかるし、
卑怯な手を使った方が確実に相手を倒せるもの」
「エドナ、卑怯な手を使うってそれはどうなんです?」

そう私は言った。

「何言っているの?
私達の相手はほとんど魔物じゃない。
魔物相手なら卑怯な手を使っても許されるわ」

うん確かに魔物には人権はないし、
卑怯な手を使っても許されることは確かだけど…。

「リンはさっき煙幕を使ったみたいに、
道具を使ったトリッキーな戦い方が向いてると思うわ。
うん、卑怯な戦い方、それをもっと伸ばしなさい」
「え、アタシよく、卑怯だって責められたけど、
それを責めずにもっと伸ばせって言われたのは初めてだよ」
「まぁ魔物相手なら卑怯な手を使ってもいいですからね」

あの日本神話の英雄スサノオだって、
ヤマタノオロチを酒を飲ましてベロンベロンにしてから倒した。
一見卑怯なようだが、相手は人を襲う怪獣。
多少卑怯な手を使っても許されるのだ。
確かに魔物相手なら、
エドナの言ったように卑怯な手を使っても許される。

「リンって他にどんな卑怯な方法で敵を倒してきたんですか?」
「えっと、そうだね。
大抵は罠を使って倒してきたよ。
スラムでよくアタシをいじめてきた奴が居たんだけど、
逃げるとみせかけて罠のある場所に誘導して、
落とし穴に落として、
動けなくなったところを生ゴミをぶつけてやったかな」
「へぇ、すごいですね。
その罠ってどんなのです?」
「え? 落とし穴とか、踏むと網が出て拘束される罠とかかな」
「へぇ、それはすごいです。
その罠を魔物に応用したら、きっと面白いことになりますよ」
「えっと、それでいいの?
卑怯な方法なんだけど?」

私が目を輝かせてそう言うと、リンは呆れたようにそう言った。

「何言っているんですか、
公式の試合と違って、魔物との戦いは命がけですよ?
向こうが知能がある場合はあっちも卑怯な方法を使いますし、
魔物相手なら卑怯な方法ではなく戦略です」
「うーん、そういうものなの?」
「そういうものです。
そういえばさっき煙幕を使いましたよね。
他にどういう道具を持っているんですか?」
「えーと、これは唐辛子とハバネロを混ぜ込んだソースだよ。
これを投げるとどんな奴も涙と鼻水まみれになるよ。
それとこれはしびれ薬、大型の魔物でもしびれるよ。
それとこの丸薬はめちゃくちゃ苦くてね。
これを口の中に入れたら、どんな魔物も悶絶するよ」
「それってどこで買いましたか」
「自分で作ったんだよ。さっき作った煙幕も自分で作ったよ」
「へぇ、すごいですね」
「まぁね。でもアタシは魔物を倒す時も、
ほとんど罠や毒を使って倒していたし、
そんなに強くはないんだけど」
「でも怪盗としては成功していたじゃないですか」
「あれは死ぬほど相手と家の間取りを調べたから成功したんだよ。
いきなり挑んでいたらきっと捕まったさ」
「え、そんなに調べていたんですか?」
「そう魔物を倒す時も相手の生態や能力を調べてから、
入念に準備して挑んだから勝てたんだよ。
もしいきなり魔物が襲いかかってきたら勝てないと思うよ」

そうリンは言った。
謙遜しているのではなく正確に自分のことを分析しているのだろう。

「アタシは力も弱いし、魔力も低いから魔法も使えないし、
伸ばせるところって言ったら頭しかない。
そんな卑怯なアタシを仲間にして本当に良かったの?」
「何言っているんですか。
リンの卑怯は卑怯ではなくて戦略です。
これからきっとリンの戦略が生きてくる時が来ますよ」
「そう、しかしアンタら本当に変わってる。
卑怯を責めるんじゃなくて、
伸ばせって言われたのは生まれて初めてだよ。
でもまぁそういうことなら力を貸すよ」
「そうですね」

そう言って私とリンは握手した。
思わぬ所で手に入れた仲間だが、
きっとこれからこの才能が役に立つに違いない。
そう思った一日だった。
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