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第4章起業しましょう。そうしましょう
197・3つの人格
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「エドナ起きて」
「う…。セツナ?」
修道院の事件の夜、エドナはセツナに起こされていた。
「どうしたのこんな時間に?」
「こうして直接会うのは初めてかな。
初めまして。エドナ」
そう言うセツナにはどこか儚げな印象があった。
「あなた誰? セツナに見えるけどセツナじゃないわね」
「私の名前は操理氷火流
セツナのもう1つの人格だよ」
「もう1つの人格?」
え、頭がおかしくなったのかしら。
そうエドナは思ったが、口にはしなかった。
「まぁ今あるセツナの人格にもう2つ追加された感じかな。
まぁ氷火流はややこしい名前だし、
私のことはヒカルとでも呼べばいいよ」
「えーとじゃああなたはセツナじゃないのね」
「ええ、体はセツナだけど心は違う。
今この体には精神は3つあるんだ。
そうだな。
あなたが知っているセツナはそのままセツナとでも呼ぼうか。
そのセツナとは別の2つの人格が出来たんだよ。
暗竜零、
まぁここはゼロとでも呼ぼうか、
それと私、ヒカルの3人が今のセツナには居る」
「えっとセツナ以外の二人の人間が中にいるってこと?」
「そういうこと、そもそも私の記憶自体一時期封印されていた。
その記憶を取り戻したことで現在の人格と齟齬が生まれ、
人格が不安定になっていた。
それで元々人格が別れかけていたけど。
今回魔族に拷問されたことで完全に別れたんだ」
「???」
ヒカルが何を言っているのか、
エドナにはさっぱり分からなかった。
そもそも精神の病の研究が進んでいないこの世界で、
いきなり人格が別れたと言われても、
理解出来ないのは無理もなかった。
「まぁ分かりやすく言えば、
元々セツナは不安定な性格をしていたんだけど、
魔族に拷問されたことで衝撃を受けて、
別れかけていた人格が完全に別れてしまった感じかな。
君も見たことがあるだろう。
セツナが突然、人が変わったようになるところを」
「それって時計塔でのこと?」
あの時セツナは死のうとしたが、
その後聞いたら本人にはその記憶がなかった。
あれは人格が別れかけていたからそうなったのかと、
エドナは思った。
「でもあの時は記憶を取り戻す前だったじゃない」
「あの時からすでに人格が別れかけていたんだよ。
まぁ普通の多重人格とは違って、
私にはゼロとセツナの両方の記憶がある。
ゼロもそれは同じみたいだし、
だから通常の多重人格とは違うかもしれないけどね」
「つまりあなたはセツナじゃないのね」
「そうセツナの魂は一度崩壊寸前にまでなった。
だから魂自体が非常に脆いんだ。
魂を基盤とする精神が3つに別れてもおかしくない」
「元に戻すことは出来ないの?」
「それは無理だと思う。
覆水盆に返らずって言うでしょう。
一度3つに別れた精神はそうそう元には戻らない」
「そうなの…じゃあどうしたらいいの?」
「どうしようもないね。
3つに分かれてしまったから、
そういうものだと受け入れるしかない」
「セツナはこのことを知っているの?」
「知らない。このことは私と君だけの秘密にして欲しいんだ」
「え、何で?」
「自分以外の人間の人格を持っていると知れば、
誰だって嫌でしょう?
だから本人がいつか気がつくまでは秘密にして欲しいんだ」
「分かった…。そうするわ」
「頼んだよ。ゼロは…わりと破天荒な性格をしているし、
それに男だからね。
特に君みたいな女性は好みだし、
もしゼロが暴走しかけても、
君の言葉なら聞いてくれると思うんだ。
何せ君はアーウィンの生まれ変わりだからね」
「事情はだいだい分かったけど、これからどうすればいいの」
「いつものように支えてくれたらいいよ。
そばにいるだけでいいんだ。
それだけで癒やされる」
「そう、分かったわ」
「じゃあ頼んだよ。君だけが頼りなんだ。
前世の君、アーウィンの存在がなければ、
きっとセツナはこの世界の人を恨んでいた。
君がいたから今のセツナがあるんだ」
「言われなくてもちゃんと支えるから大丈夫よ。
セツナはどんなセツナであっても私の大切な仲間よ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。
じゃあまたね」
そう言ってヒカルは部屋を出て行った。
「セツナ…。
あなたは一体どこに行き、最終的には何になるのかしらね」
そんなエドナのつぶやきが部屋に消えたのだった。
「う…。セツナ?」
修道院の事件の夜、エドナはセツナに起こされていた。
「どうしたのこんな時間に?」
「こうして直接会うのは初めてかな。
初めまして。エドナ」
そう言うセツナにはどこか儚げな印象があった。
「あなた誰? セツナに見えるけどセツナじゃないわね」
「私の名前は操理氷火流
セツナのもう1つの人格だよ」
「もう1つの人格?」
え、頭がおかしくなったのかしら。
そうエドナは思ったが、口にはしなかった。
「まぁ今あるセツナの人格にもう2つ追加された感じかな。
まぁ氷火流はややこしい名前だし、
私のことはヒカルとでも呼べばいいよ」
「えーとじゃああなたはセツナじゃないのね」
「ええ、体はセツナだけど心は違う。
今この体には精神は3つあるんだ。
そうだな。
あなたが知っているセツナはそのままセツナとでも呼ぼうか。
そのセツナとは別の2つの人格が出来たんだよ。
暗竜零、
まぁここはゼロとでも呼ぼうか、
それと私、ヒカルの3人が今のセツナには居る」
「えっとセツナ以外の二人の人間が中にいるってこと?」
「そういうこと、そもそも私の記憶自体一時期封印されていた。
その記憶を取り戻したことで現在の人格と齟齬が生まれ、
人格が不安定になっていた。
それで元々人格が別れかけていたけど。
今回魔族に拷問されたことで完全に別れたんだ」
「???」
ヒカルが何を言っているのか、
エドナにはさっぱり分からなかった。
そもそも精神の病の研究が進んでいないこの世界で、
いきなり人格が別れたと言われても、
理解出来ないのは無理もなかった。
「まぁ分かりやすく言えば、
元々セツナは不安定な性格をしていたんだけど、
魔族に拷問されたことで衝撃を受けて、
別れかけていた人格が完全に別れてしまった感じかな。
君も見たことがあるだろう。
セツナが突然、人が変わったようになるところを」
「それって時計塔でのこと?」
あの時セツナは死のうとしたが、
その後聞いたら本人にはその記憶がなかった。
あれは人格が別れかけていたからそうなったのかと、
エドナは思った。
「でもあの時は記憶を取り戻す前だったじゃない」
「あの時からすでに人格が別れかけていたんだよ。
まぁ普通の多重人格とは違って、
私にはゼロとセツナの両方の記憶がある。
ゼロもそれは同じみたいだし、
だから通常の多重人格とは違うかもしれないけどね」
「つまりあなたはセツナじゃないのね」
「そうセツナの魂は一度崩壊寸前にまでなった。
だから魂自体が非常に脆いんだ。
魂を基盤とする精神が3つに別れてもおかしくない」
「元に戻すことは出来ないの?」
「それは無理だと思う。
覆水盆に返らずって言うでしょう。
一度3つに別れた精神はそうそう元には戻らない」
「そうなの…じゃあどうしたらいいの?」
「どうしようもないね。
3つに分かれてしまったから、
そういうものだと受け入れるしかない」
「セツナはこのことを知っているの?」
「知らない。このことは私と君だけの秘密にして欲しいんだ」
「え、何で?」
「自分以外の人間の人格を持っていると知れば、
誰だって嫌でしょう?
だから本人がいつか気がつくまでは秘密にして欲しいんだ」
「分かった…。そうするわ」
「頼んだよ。ゼロは…わりと破天荒な性格をしているし、
それに男だからね。
特に君みたいな女性は好みだし、
もしゼロが暴走しかけても、
君の言葉なら聞いてくれると思うんだ。
何せ君はアーウィンの生まれ変わりだからね」
「事情はだいだい分かったけど、これからどうすればいいの」
「いつものように支えてくれたらいいよ。
そばにいるだけでいいんだ。
それだけで癒やされる」
「そう、分かったわ」
「じゃあ頼んだよ。君だけが頼りなんだ。
前世の君、アーウィンの存在がなければ、
きっとセツナはこの世界の人を恨んでいた。
君がいたから今のセツナがあるんだ」
「言われなくてもちゃんと支えるから大丈夫よ。
セツナはどんなセツナであっても私の大切な仲間よ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。
じゃあまたね」
そう言ってヒカルは部屋を出て行った。
「セツナ…。
あなたは一体どこに行き、最終的には何になるのかしらね」
そんなエドナのつぶやきが部屋に消えたのだった。
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