上 下
225 / 310
第4章起業しましょう。そうしましょう

194・襲来

しおりを挟む
「喜んでくれて良かったわね」
「うん、そうですね」

領主邸の帰り道、私はみんなと歩いていた。

「それよりセツナ、今日は寝ないでください」
「え? 何で?」
「あなたはあの大神官のメンツを、
塔の上から落とした卵のごとく見事に粉砕しました。
あの手のタイプはプライドを傷つけられたら、
絶対に許さないでしょう。
仕掛けるとすれば今夜にでも何かしてくるでしょう」
「つまり戦闘になるってこと?」
「そうです。今夜は寝ずに家で待機していましょう」

そうして家に帰ると、深夜になるまで待った。
そして夜中の2時になると襲撃者は現れた。

「どう、セツナ?」
「家の前に居ます。数は21人ってところです」

エリアマップに襲撃者達が映っていた。

「とりあえず私が表に出て注意を引きつけるから、
その間に3人は勝手口から外に出て、
襲撃者の裏手に回って、挟み撃ちにしよう」

そう言うと私は玄関を出た。

「これはどういうことですか。大神官様」
「おやおや、ずいぶんと余裕ですね」

余裕たっぷりと言った表情で大神官のボブは言う。
彼の周りには20人の覆面をかぶった者がいる。

「あなたが全て悪いのですよ。
こちらに来ないのならば力ずくで奪うまでです」
「そんなに私を自分の物にしたいですか。
そこまで地位やお金が欲しいですか」
「当然でしょう。
地位や金は誰もが欲しがるものです。
聖眼持ちが出す恩恵、
それを欲しがらない人間が果たしていますか?」
「つまりあなたが聖眼持ちを狙うのは、
国や神殿のためではなく自分のためですか?」
「ふっ、よく気がつきましたね。
そうですよ。自分のためです。
そのためにサーシャを利用してきました。
彼女が持つ予知能力は貴重なものですからね。
本当に彼女を洗脳するのはたやすかったですよ。
あなたも洗脳して差し上げます」
「その言葉を聞いて安心しました。
ありがとうございます。
最低のクズ野郎でいてくれて、
これなら罪悪感も抱かなくてすみます」
「ハッ、これだけの人数相手にどうするつもりですか?
あなたのような女が勝てるとでも?」
「あなたは何も理解していないみたいですね。
『金色の黎明』で最強なのは実はこの私なんですよ。
《大地よ》」

そう言うと土魔法を使って、
襲撃者達の周りにドーム状の壁を作った。

「こ、これは…」
「その中でしばらく反省してください」
「ふざけるな。出せー!!」

ドンドンと壁から声が聞こえたが関係なかった。

「セツナ、せっかく回り込んだのに、もう倒したのか?」

そうイオが言ってきた。

「まぁいいじゃない。
それよりセツナ、こいつらどうするの?
「とりあえず警察に引き渡しましょう」

そうして私達は襲撃者を警察に引き渡した。
大神官とはいえ、他人の家を襲撃しようとしたのは許される罪では無い。
しかも警察が調査した結果、
どうも今までのしていた悪行も芋ずる式に発覚したらしく、
大神官のボブにはそれなりに重い罪が下されるとのことだった。
そして聖女サーシャだが、今日帰ることになった。

「しかし残念ですせっかく仲良くなれたのに」
「そうですね。でもここは王都から1カ月はかかりますから、
そんな長期間王都を留守にするわけにはいかないのです」
「確かにそうですよね」
「それとセツナ様に言っておくべきことがあります」
「何ですか?」
「実は私が持つ聖眼持ちとしての能力は予言。
先の未来が見通すことが出来る力です」
「え、それってすごいですね」
「まぁすごいといっても、
予言がいつ来るのか私にも分かりませんがね。
それで今朝起きた時、
こんな予言が降りたのです。
金色の夜明け、
それを取り囲むうちの1人が最悪な別れ方をするであろうと」
「え?」
「金色の夜明けということは、
『金色の黎明』のことだと思います。
黎明は夜明けという意味もありますから、
そして最悪な別れ方というのは――」
「誰かが死ぬってことですか?」
「すみません。予言はあくまで一方的に告げるだけなので、
私にも意味は分かりません。
でも私の予言は今まで外れたことがありません」
「金色の夜明けを取り囲むうちの1人。
取り囲むってことは私達の身の回りにいる人ってことですか?
私達の友人ってことですか?」
「さぁ私にも分かりませんが、
気をつけた方がいいのは確かです」

気をつけろって一体どう気をつけろっていうんだ?
しかしこの予言が後に、
私の人生を大きく変えることとなるのだが、
それはまた先の話だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

処理中です...