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第4章起業しましょう。そうしましょう

189・女たらし

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その日いつものように、
『金色の黎明』のメンバーと一緒に、
ギルドに入ると、何やら女の子がたくさん集まっていた。

「どうしたんですか、何か騒がしいですが」
「ああラザルス目当ての女の子が出待ちしているんや」

そう冒険者のアニタが言った。
アニタとは以前、一緒に依頼を受けたことがあったので、
顔見知りとなっている。

「ラザルス?」
「最近アアルに来た冒険者のチームのリーダーで、
かなりのイケメンで、
ちまたでは爽やかイケメン貴公子って呼ばれているんや」
「ふぅん、そうですか」

私は特にイケメンには興味が無いので、
その時は何とも思わなかった。

「それよりアンタに聞きたいことがあるんやけどええか?」
「何ですか?」
「セツナ」

その時私とアニタの前にフォルトゥーナが出る。

「この女を信用してはいけません」
「え、何で?」
「いいですから聞きなさい。
たまには私の忠告に従った方がいいですよ」

そうフォルトゥーナが言った時だった。
その時きゃーと女の子達が騒ぎ出した。
ギルドに誰かが入ってきたのだ。

「噂をすれば影やね。
あれがラザルスや」

あれがラザルスか、確かにイケメンだな。
絶世の美少年である地獄神には適わないけど。
髪は腰まである金髪で後ろで髪をくくっていた。
目の色は緑だった。
背もすらりと高くてまるでおとぎ話に出てくる王子様みたいだった。

「やぁ、みなさんごきげんよう」
「きゃー!」
「かっこいい!」

ラザルスの言葉に出待ちしていた女の子は黄色い歓声を上げる。
ラザルスはギルドの中に入ると何故か私達の方に真っ直ぐ来て、
フォルトゥーナの前で止まった。

「やぁ、君がフォルトゥーナだね。
どうか僕のチームに入ってくれないかい?」
「わたくしがですか?」
「ああ、君のような回復魔法の使い手は是非とも欲しいからね」

そう言うとラザルスはウインクをした。
するとそれを見た女の子がきゃーとまた歓声を上げる。
中には興奮しすぎて倒れる子も居た。

「どうだい、僕のチームに入る気になっただろう?」
「醜いですね」
「は?」

フォルトゥーナは汚物でも見るかのような目でラザルスを見た。

「ああ、目が見えにくいってことかな。
確かに僕のようなイケメンを目にしたらそうなるのも無理はないけど」
「違います。醜悪さを意味する醜いと言ったんです。
あなたの心は醜いです。
ていうか自分で自分のことをイケメンって言う時点で気持ち悪いです」
「はは、耳が悪くなったのかな。
今気持ち悪いって聞こえたんだけど…?」
「はい、あなたは自意識過剰で気持ち悪いです。
仲間になる件ですが、きっぱりお断りします。
あなたのような女たらしと居たら、
いつ犯されるか分かりませんし」
「おい、フォルトゥーナ言い過ぎだろ!
こいつぷるぷるしてるぞ!」

ガイが焦ったようにそう言った。

「い、言わせておけばこのアバズレが!
女のくせに生意気なんだよ!」

ラザルスは怒ってフォルトゥーナの首元を掴んだ。

「僕が醜いだと!?
ふざけたことを言うな!
僕は美しいんだ。だから女はみんな僕に従えばいいんだよ!」
「ラザルスさん、落ち着いてください。
みんな見てますよ!」

その時1人の少年がラザルスとフォルトゥーナの間に入って仲裁した。
少年の言葉で我に返ったのか、ラザルスが手を離した。

「チッ、僕は家に戻る。
エディ。お前はいつものように適当に依頼を選んでおけ」
「はい、分かりました」

そう言うとラザルスはギルドを去って行った。

「あのラザルスさんが申し訳ありませんでした!」

そう言うと少年が頭を下げた。

「ん? あなたはそもそも誰ですか?」
「僕はラザルスさんと同じチームに入っているエディと言います」

私は改めてエディを見る。
髪は焦げ茶色に近い短髪で、目の色は水色だった。
容姿は可愛らしく、年は12、3歳ぐらいに見えた。
背中には大きなリュックを背負っており、
頭にはバンダナを巻いていた。

「そうですか、それよりフォルトゥーナ。
あんな言い方したらダメですよ。傷つくでしょ」
「あれぐらい言わないとしつこく付きまとってきそうだったので」

私が言うとフォルトゥーナはしれっとそう返した。

「それにあの男、中身は最低のゲス野郎ですよ。
頭の中は性欲まみれで、
女のことは性欲を解消する道具としか思っていません」
「え、何であなた達がそのことを知っているんですが?」
「えっとフォルトゥーナの言うとおりなんですか?」
「はい、ラザルスさんは女たらしなんです。
僕も困っているんです」
「その話詳しく聞きたいです。
聞かせてもらえませんか」
「はい、分かりました」

そうしてギルドにある酒場の方に移動した。
そしてテーブル席に座る。

「それでラザルスって本当に女たらしなんですか?」
「はい、ラザルスさんの女好きには困ったものです。
ファンの女の子に手を出すことも多くて、
1回抱いたら、やり捨ててしまうこともよくあるんです」
「うわ最低ですね」

人は見かけにはよらないとは言うが、
あのイケメンが女たらしと聞いて驚いた。

「だからいつも僕が代わりに謝ったりしているんですが、
ラザルスさんが、手を出した女性の中には、
子供を孕んでしまった人も居るんです。
でもラザルスさんは責任を取りたくないって言って、
孕んだのは全部その子のせいにして逃げたんです」
「最低のクズ野郎ね」

エドナが吐き捨てるようにそう言った。

「だからラザルスさんの代わりに、
僕が毎月養育費を払っているんです」
「はぁ!? それ変ですよ!
何であなたが代わりに払うんですか。
ラザルスが払えばいいじゃないですか!」
「ラザルスさんが払いたくないって言うから、
僕が代わりに払っているんです」
「えっとそれ何人分ですか?」
「4人分です。
1人につき銀貨10枚払っています」

1人に10万円も!?
それも自分のポケットマネーで?
絶対おかしいだろ!!

「それと実は僕達のチームには女性が3人入っているんですが、
実はみんなラザルスさんと関係を持っています」
「え、3股ってこと?」
「はい、でもみんなラザルスさんが3股をしていることや、
隠し子がいることは知らなくて…」
「はぁ? 何で知らないんですか?
同じチームに居たら、
すぐ恋人だってバレそうな気もしますが」
「自分が恋人っていうことは秘密ってことになってるからです。
だからみんな知らないんです」
「ああそういうこと、それならもうばらしたら?」
「いえ、僕の口からはとても言えません…」

確かにあなたの彼氏は3股してますよーって言いにくいよな。
でも納得出来ない。何でエディが犠牲にならないといけないんだ。

「あのですね。そんなクズとは縁を切った方がいいですよ」
「でも僕がいるチームは僕にとって最高の場所なんです。
だから大丈夫です。それじゃあまた」

そう言ってエディは去っていった。

「あれはもうだめですね。
骨の髄まで洗脳されてます」

フォルトゥーナがそう言った。

「助けてあげたいけどどうしたらいいかな」
「うーん、思ったのだが、
セツナが関わったんだから、
善人のあの子は放っておいても幸せになると思うのだ」
「イオ。それはデマって言いましたよね…?」

禍福の女王なんてただのデマだ。
私が関わっても幸せになることなんてない。

と思っていたがまさかあんなことになるなんて、
思ってもみなかったのだった。

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