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第3章謎の少女とダンジョン革命
181・伯爵夫人の誕生日大作戦③
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「一体どうしよう?」
「この男の幽霊は少し魔族化しています。
だから肉眼でも見えるのだと思います」
「で、どうやったら幽霊を追い出せるの?」
「うーむ、そうですね。
やったことはありませんがやってみます」
そう言うとフォルトゥーナはエドナの背後に回り、
その背中を強く叩いた。
「うっ」
その瞬間、エドナの体から幽霊が叩き出される。
「くっ、せっかく生きた体を見つけたものの…!」
男は恨めしそうにそう言った。
「エドナ、大丈夫?」
「え? 私また憑依されていたの?」
「はい、そうです」
「おのれ、何故邪魔をする?」
男が憎しみのこもった目で私達を見る。
うぇぇぇぇ、怖いぃぃぃーー!!
「あなたは何を憎んでいるのですか?」
フォルトゥーナは冷静にそう言った。
おい、よく話しかけられるな。
「知れたこと、娘と妻を殺されたのだ。
金のために盗賊に殺されたのだ!!」
男の目から血の涙が出る。
うわぁ怖い。完全にホラーだ。
「私はどこにでもいるような普通の行商人だった。
妻と娘に囲まれ、私は幸せだった。
しかしある日私は盗賊に襲われた。
そして奴らは殺すだけでなく、
私の目の前で私の妻と娘を犯した…ッ。
私は何も出来なかった…だから憎い、殺してやるあの男を…!」
「あー、それなんですけど、もうその盗賊達は生きてませんよ」
「え?」
「この街道に出没していた盗賊達はとっくの昔に捕まって、
もう死刑になったと以前商人仲間から聞いたことがあります。
だからあなたが憎んでいて殺したいと思っている人はもうこの世にはいません」
「な、何だとぉぉぉおおお!!!」
ひぃぃぃ! 顔が鬼みたいになってるーーー。
もうダメだろこれ、復讐する対象が居なくなって怒り狂っている。
もう成仏させるのは絶対無理だろ。
説得とかそういう次元の問題じゃない。
「あなたの大切な人を殺した人はもう居ません。
それよりも早く成仏しないと魔族に…」
「うるさい黙れ!
お前に何が分かる!
全てを失った私の気持ちが!
憎い、憎くてたまらない!!」
「あーもう仕方ないですね」
その時、上空からそんな声がしたと思うと、
シュッタと一人の女性が地面に舞い降りる。
「ベアさん!?」
「どうもこんにちわ」
地獄神の部下のベアトリクスさん、
通称ベアさんがそこに立っていた。
「どうしてここに」
「ようやく休みが取れたので、
スイーツ巡りでもしようと思ったら、
鎮魂祭でどの店も休みだったので、
来たついでにあなた達に会おうと思ったら、
何かやばそうだったので慌てて来ました」
そうのほほんとベアさんは言った。
「いやそれはいいんですが、今はそれどころじゃあ…」
「大丈夫ですよ。もう来ましたから」
「何が?」と聞こうとした時、空からまばゆい光りが降りてきた。
「パパー」
「あなたー」
光とともに女の子と一人の女性が降りてきた。
「お、お前達は…」
鬼の形相だった男の顔が優しくて穏やかなものに変わっていく。
「ああ、生きていたのか…」
「ええ、死んでも魂は生きているから」
「パパも一緒に行こうよ」
「すまなかった。あの時守れなくて…!」
男の目から涙が溢れるが、女性が優しく抱きしめた。
「いいのよ。そのことで誰もあなたを責めたりしないわ」
「ああ、ありがとう。本当に会えて良かった…!」
そう言うと男と女性と子供は天高く上って消えていった。
「えっとこれは一体?」
「死んだ彼の妻と子供の魂を呼びました。
もう彼は成仏したので大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。ベアさん」
「いえいえ、これぐらいはさせてください。
あなたが現れてから、アビス様は本当に楽しそうですから」
「楽しそうってまさか」
「まぁあなたが毎回トラブルに巻き込まれるのが面白いみたいです」
「うげっ、やっぱり常に監視しているんですか…」
「それより早く知らせに戻らないと今日が終わるわよ」
「あ、確かにそうだね」
エドナの言うとおり早くランス君に伝えた方がいいかもしれない。
「それでは私はこれで失礼します。
それではまた」
そう言ってベアさんが消えた。
「戻りましょう」
はぁしかし幽霊は怖かった。
もう二度と遭遇しないことを願うばかりだなと思った一日だった。
「この男の幽霊は少し魔族化しています。
だから肉眼でも見えるのだと思います」
「で、どうやったら幽霊を追い出せるの?」
「うーむ、そうですね。
やったことはありませんがやってみます」
そう言うとフォルトゥーナはエドナの背後に回り、
その背中を強く叩いた。
「うっ」
その瞬間、エドナの体から幽霊が叩き出される。
「くっ、せっかく生きた体を見つけたものの…!」
男は恨めしそうにそう言った。
「エドナ、大丈夫?」
「え? 私また憑依されていたの?」
「はい、そうです」
「おのれ、何故邪魔をする?」
男が憎しみのこもった目で私達を見る。
うぇぇぇぇ、怖いぃぃぃーー!!
「あなたは何を憎んでいるのですか?」
フォルトゥーナは冷静にそう言った。
おい、よく話しかけられるな。
「知れたこと、娘と妻を殺されたのだ。
金のために盗賊に殺されたのだ!!」
男の目から血の涙が出る。
うわぁ怖い。完全にホラーだ。
「私はどこにでもいるような普通の行商人だった。
妻と娘に囲まれ、私は幸せだった。
しかしある日私は盗賊に襲われた。
そして奴らは殺すだけでなく、
私の目の前で私の妻と娘を犯した…ッ。
私は何も出来なかった…だから憎い、殺してやるあの男を…!」
「あー、それなんですけど、もうその盗賊達は生きてませんよ」
「え?」
「この街道に出没していた盗賊達はとっくの昔に捕まって、
もう死刑になったと以前商人仲間から聞いたことがあります。
だからあなたが憎んでいて殺したいと思っている人はもうこの世にはいません」
「な、何だとぉぉぉおおお!!!」
ひぃぃぃ! 顔が鬼みたいになってるーーー。
もうダメだろこれ、復讐する対象が居なくなって怒り狂っている。
もう成仏させるのは絶対無理だろ。
説得とかそういう次元の問題じゃない。
「あなたの大切な人を殺した人はもう居ません。
それよりも早く成仏しないと魔族に…」
「うるさい黙れ!
お前に何が分かる!
全てを失った私の気持ちが!
憎い、憎くてたまらない!!」
「あーもう仕方ないですね」
その時、上空からそんな声がしたと思うと、
シュッタと一人の女性が地面に舞い降りる。
「ベアさん!?」
「どうもこんにちわ」
地獄神の部下のベアトリクスさん、
通称ベアさんがそこに立っていた。
「どうしてここに」
「ようやく休みが取れたので、
スイーツ巡りでもしようと思ったら、
鎮魂祭でどの店も休みだったので、
来たついでにあなた達に会おうと思ったら、
何かやばそうだったので慌てて来ました」
そうのほほんとベアさんは言った。
「いやそれはいいんですが、今はそれどころじゃあ…」
「大丈夫ですよ。もう来ましたから」
「何が?」と聞こうとした時、空からまばゆい光りが降りてきた。
「パパー」
「あなたー」
光とともに女の子と一人の女性が降りてきた。
「お、お前達は…」
鬼の形相だった男の顔が優しくて穏やかなものに変わっていく。
「ああ、生きていたのか…」
「ええ、死んでも魂は生きているから」
「パパも一緒に行こうよ」
「すまなかった。あの時守れなくて…!」
男の目から涙が溢れるが、女性が優しく抱きしめた。
「いいのよ。そのことで誰もあなたを責めたりしないわ」
「ああ、ありがとう。本当に会えて良かった…!」
そう言うと男と女性と子供は天高く上って消えていった。
「えっとこれは一体?」
「死んだ彼の妻と子供の魂を呼びました。
もう彼は成仏したので大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。ベアさん」
「いえいえ、これぐらいはさせてください。
あなたが現れてから、アビス様は本当に楽しそうですから」
「楽しそうってまさか」
「まぁあなたが毎回トラブルに巻き込まれるのが面白いみたいです」
「うげっ、やっぱり常に監視しているんですか…」
「それより早く知らせに戻らないと今日が終わるわよ」
「あ、確かにそうだね」
エドナの言うとおり早くランス君に伝えた方がいいかもしれない。
「それでは私はこれで失礼します。
それではまた」
そう言ってベアさんが消えた。
「戻りましょう」
はぁしかし幽霊は怖かった。
もう二度と遭遇しないことを願うばかりだなと思った一日だった。
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