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第3章謎の少女とダンジョン革命
166・プロポーズ大作戦
しおりを挟む「神様に目を付けられたって、
あなたって本当に色んな人に目を付けられるわね」
翌朝、起きた私は早速仲間に地獄神に言われたことを話した。
「セツナと居ると本当に色々なことが起きるのだ」
「まぁそれは今に始まったことじゃないだろ」
イオの言葉にガイがそう言う。
確かに私はドラマの主人公かってぐらい色々なことが起きる。
これもカルマのせいなんだろうけど、
最近は色々目立っているから仕方ないだろう。
「最近はダンジョンを変えたせいで目立ってましたからね」
「そういえば目立っていいのか?
権力者に目を付けられるのは嫌なんだろう?」
「クライド君、それは大丈夫です。
私を無理矢理手に入れようとした人はとんでもない目に遭いますから」
私には所有不可のスキルがある。
もし私に危害を加えたり、無理矢理手に入れようとすれば、
その相手にとんでもない災難が押し寄せるスキルだ。
まぁこのスキルが発動する条件は私に危害を加えた時のみに限られる。
例えば私自身が誰かの所で働くことを承諾した場合や、
私自身が誰かの元に嫁いだりすることを望んだ場合は、
このスキルは発動しない。
あくまで敵意を持って私を手に入れようとした場合にのみ限られる。
だからこのスキルがある限り私は大丈夫だ。
それに私には人質を取られそうな親や兄弟も親戚も居ない。
クライド君も含め、仲間には全員身を守る魔道具を持たせているし、
多分大丈夫だろう。
「それに『金色の黎明』のリーダーはエドナです。
エドナが有名になればなるほど私の存在は薄まります」
「何で私がリーダー? って思っていたけど、
なるほどそういうことなのね」
一人の有名人が有名になればなるほど、
その近くに居る人は印象が薄まる。
例えば有名な例を挙げると、
タロウ=ヤマダの仲間にフレディという男が居る。
彼は単独で強力な魔物から町を守ったり、
優れた冒険者だったという華々しい功績を持っているのだが、
タロウがあまりに天才すぎて、
後の歴史書にも影が薄い存在として描かれている。
タロウを主人公にした冒険小説は多いが、
彼を主人公にした小説はあまりない。
あったとしても大半の良いところは、
タロウに取られているという可哀想な人だ。
「エドナが目立てば、目立つ程、私の印象は薄まりますからね」
私がエドナを『金色の黎明』のリーダーにしたのは、
みんなの注目をエドナに向かわせるためだ。
実際全盛期のエドナはSランク冒険者に匹敵する力を持っていたし、
エドナがリーダーということになって、
それに違和感を抱く人はほとんど居なかった。
というか私以外のメンバーも、
チート級の回復魔法が使えるフォルトゥーナに、
尋常じゃない怪力を持つイオなど、
他のメンバーもチート級のため、私の印象は薄まっていることだろう。
「それでいいの?
あなたの印象が薄まることは評価されないことにも繋がるのよ」
「別に他人からの評価はどうでもいいです。
元々私はマイペースですし」
「はぁ…あなたって本当に変わっているわね。
名声とか興味ないの?」
「エドナ、豚に真珠っていうでしょう。それと同じですよ」
「フォルトゥーナ、豚にって酷いです」
「まぁあなたが権力に興味ないのは、
かつて権力の頂点にいる者に酷い目に遭わされたからでしょうね」
確かにフォルトゥーナの言う通りかもしれない。
私が権力に興味がないのは、かつてそれで酷い目にあったからだ。
「ああ、確かにああはなりたくないですね」
「でも気をつけた方がいいのだ。
セツナのことを欲しがる人間はいくらでもいるのだ。
そのうち求婚とかされそうな気もするのだ」
イオ…、そんな変なフラグ立てないで欲しい。
「きゅ、求婚ってそんな…」
「何で残念そうな顔しているんですか、クライド君?」
「それはアレよ」
「そうですね。アレです」
「うん、アレだな」
「アレなのだ」
「アレってなんですか?」
そう聞くがクライド君以外のメンバーは答えることはなく、
生暖かい目で見るだけだった。
しかしみんなと話して思ったが、権力者に目を付けられるのはもう嫌だ。
願わくばみんなの注目がエドナに行きますように…。
あ、でもそれってエドナが権力者に目を付けられるかも、
まぁそうなったらその時に考えるか。
そう思った私だった。
◆
「嬢ちゃんちょっといいか?」
いつものようにギルドに入るとギルドマスターのアレックさんがそう言った。
「どうしたんですか?」
「嬢ちゃんに相談したいことがあるんだが、いいか?」
何か最近こうしてギルドの人に相談事を持ちかけられることが多い。
カシス村の配達やスライム退治など、
ほとんど他の冒険者が引き受けないような依頼ばかり持ちかけてくることが多い。
今度は一体何だ?
「実はイザベラにプロポーズしようと思うんだが、
何か良いアイデアはないか」
「プロポーズですか…まだ早いような気もしますが」
まだ確か付き合って一ヶ月しか経ってないよな。
ちょっと早い気もするがもう結婚するのか。
「まぁ付き合ったのは短いが、
仕事仲間としては10年以上の付き合いだからな。
もう結婚してもいいと思ったんだ」
「そうなんですか」
「だが俺はこれまで女と付き合ったことがほとんどないから、
どうプロポーズすれば喜んでくれるのか分からん。
嬢ちゃん良いアイデアはないか?」
「イザベラならどんなプロポーズでも喜んでくれると思いますよ」
「いいや、こういうのは一生に一度だから、
思い出に残るものじゃないとダメなんだ」
「ふむふむ、分かりました。
アイデアならありますよ。
恋愛マスターの私に任せてください」
そう自身ありげに言うと仲間達が冷めた目で見てきた。
「え、あなた恋愛経験って無いわよね。大丈夫?」
「おいおい、セツナじゃ無理だろ」
「セツナのアイデアだと破滅しそうですね」
「うーん、セツナだと厳しいと思うのだ」
そうエドナ、ガイ、フォルトゥーナ、イオが言った。
何これ、みんな酷い。
みんな私を何だと思っているのだ。
普段、恋愛要素皆無な私でも恋愛については助言も出来るのに…。
「えーと、そうですね。
まずプロポーズを成功させるには、
夜景が見えるレストランにイザベラと行きます」
「夜景って無理だと思うぞ。
アアルは三階以上の建物は建築禁止だぞ」
「あ、じゃあ、おしゃれなレストランにします。
で、お店側に協力を頼みます」
「おしゃれってどんなのを言うんだ?」
「えーとフォルトゥーナ。
カップルで行けそうなおしゃれな店って知らない?」
「心当たりが三件程ありますね。
こちらに協力してくれそうなのだと、
大通りにあるエメラルドグリーンって店がいいかもしれません」
「うん、じゃあその店にイザベラと一緒に入ります。
しばらく食事を楽しんでいると、
演奏家が店に入ってきます。
で、みんなの注目が演奏家に注目していると、
店員がケーキを持ってきます。
そのケーキに結婚してくださいって書いてあるとかどうですか?」
「おお、それはいいかもしれないな」
ちなみにこのシチュエーション自体は昔読んだ恋愛マンガから取ったものだ。
「セツナにしてはまともな作戦ですね」
「そうね。セツナにしてはね」
「そうだな。恋愛ごとに劇的に鈍いセツナの作戦とは思えないぜ」
「私もそう思うのだ」
相変わらず仲間達は好き勝手に言ってくれる。
そんなに私って恋愛ごとはダメそうに見えるか?
「分かった。早速店側に協力を頼んでみる!」
「はい、頑張ってプロポーズを成功させてください」
その後行われたプロポーズは大成功だったらしく、
後日行われた結婚式ではイザベラは本当に幸せそうだった。
私達も結婚式には参加出来たし、
二人が結ばれて本当に良かったと思ったのだった。
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