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第3章謎の少女とダンジョン革命

165・空き巣

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「それじゃあ帰りますか」

私は転移魔法を使い仲間と共に自宅に帰った。

「やれやれやっと休めますね」

そう言ってドアの鍵を開けようとした時だった。

「あれ、ドアが壊れてる…?」

ドアノブの部分がひしゃげていた。
嫌な予感がしてドアを開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

「な、なんじゃこりゃあーー!!」

部屋の中が荒らされていた。
引き出しに入っていた物は全て床にぶちまけられていた。

「こ、これは一体…?」
「まさか空き巣じゃないかしら」
「空き巣? そんな馬鹿な…」
「あ、セツナ様…」
「クライド君、これはどういうことなの?」

現れたクライド君にそう言うと、彼は土下座した。

「申し訳ありませんでした!
泥棒に入られました!」

どういうことかと聞いたら、
私達が留守の間、クライド君は伯爵夫人に呼び出された。
咎の輪廻教のことで聞きたいことがあったらしく、
そこで会話すること2時間。
ようやく話しも終わり、家に帰って来た時、
部屋が荒らされていることに気が付いた。
で、慌てていると私達が帰ってきたらしい。

「もう死に匹敵する罪です。
泥棒に入られるとは、今ここで死をもって償います!!」
「やめいー!!」

死のうとするクライド君を私は必死で止めた。

「死ななくていいから!!」
「でも俺は…」
「私がいいって言ったらいいの!
死ぬことは許しません!!」
「それより何が盗まれたか確認した方がいいんじゃあ」

エドナの最もな言葉に私もそうだと思った。

「とりあえず荒らされた部屋はそのままにしておいてください。
後で警察が調べますからね。
みんな自分の部屋に行きましょう」

そうして自分の部屋に行くと、
そこも荒らされていた。

「…下着が全部無い」

タンスに入れていた下着が全部無くなっていた。

「うわぁ、こりゃ酷いな」

ガイが驚いたようにそう言った。
しばらくして家の惨状を調べた仲間達がやってきた。

「確認してみたけど、私も下着とお金を入れていた貯金箱が無くなっていたわ」
「わたくしも下着とへそくりが消えてました」
「私も家族のために貯めていたお金と下着が無いのだ」

仲間達全員が同じように被害を受けていた。

「うわぁ、ショックですよ。
まさか、空き巣に入られるとは…」
「本当にすみませんでした!!」
「クライド君が謝ることじゃないから、悪いのは泥棒なんですから」
「とりあえず急いで警察に向かいましょう」
「そうですね」

とりあえずエドナの言う通り警察を呼んだが、
盗まれた物が返ってくるのは絶望的だろうと言われた。
そもそもこの世界で、空き巣の捕まえる方法は、
現行犯で捕まえるしかないらしく、
そもそも指紋の採取すらしないこの世界の捜査技術では、
犯人を捕まえるのは難しいようだった。
まぁ私の貴重品は全部アイテムボックスに入れていたとはいえ、
他の仲間は普通にお金を部屋に置いていたので、
結構な被害を受けてしまった。

「実はこの近辺で空き巣はかなり多いんですよ。
魔族騒動で留守になった家に空き巣に入る奴がいて、
多分手口からして同一犯でしょうね。
もう何十件も被害にあったのを見ました」

そう警察の男性はそう言った。

「それと長期的に留守にすることを誰かに話しましたか?」
「えっとギルドの職員に話しました。
その時に多くの人間がギルドにいたので、
その中に空き巣もいたかもしれません」
「そうですか、周辺に家が無いので、
目撃者は多分居ないでしょうね。
あなた方が有名な冒険者であることを知って、
盗みに入ろうとしたのでしょう。
しかも下着まで盗むとは…」
「何で下着を盗んだんでしょうか」
「…あなた方は町の人気者ですからね。
『金色の黎明』を見守る会というファンクラブが、
出来ているぐらいですからね」
「え、何ですかそれ?
初耳なんですけど」
「あなた方はみんな容姿は綺麗な方じゃないですか。
しかもメンバーの三人が聖眼持ちじゃないですか。
だからそういうファンクラブがあってもおかしくないですよ」

マジか、意外過ぎる。
まぁこっちに危害を加えてこないなら、放っておこうか。

「ファンクラブのメンバーに、
わたくし達の下着を売りつける人が居ないか調べた方がいいでしょうね」

うわ、気持ち悪っ。
フォルトゥーナの言う通りだと、
無くなった下着がどういうことに使われるか想像するだけで気持ち悪くなった。
それから警察が帰った後もみんな意気消沈したまま、
ご飯を食べて、ベッドで眠りについた。





「ここは…」

久しぶりの真っ暗闇空間だった。
ここに召喚されたということは…。

「やぁ久しぶり」

久しぶりの地獄神がそこに居た。

「本当に久しぶりだね」
「そうですね。なんで最近は現れなかったんですか?」
「まぁ君に教えたりすることがもうあまり無くなってきたからね。
もうチュートリアル期間は過ぎたような気もするし」
「そうですか」
「しかし君も変わっているね。
あのクライドという少年を疑わないのかい?」
「当たり前じゃないですか、
クライド君はそんなことしません。
そもそも最初から盗む気ならとっくの昔に盗んでいるでしょう」
「うんうん、君のそういうすぐ人を信じるところは好きだよ。
しかし可哀想だね。君の物を盗った泥棒は」
「え、私じゃなくて泥棒が可哀想ですか?」
「君、忘れているみたいだけど、
君に危害を加えようとしたり、
支配しようとする輩はとんでもない目に遭うんだよ。
そういうスキルをあげたでしょう?」
「あ、確かに」
「多分自分から自首してくるんじゃないかな。
それぐらい不幸なことが起きるよ」

確かに私の悪口を言った程度のトッドですら、
不運なことが起こりまくった。
その私の家に空き巣に入ったのだ。
それ以上に酷い目に遭うかもしれない。

「それと君に良い知らせと悪い知らせがある。
どっちから聞きたい?」
「じゃあ良い知らせから聞きます」
「じゃあ悪い知らせから言おう」

何でだよ!!!
そうツッコミたくなったが我慢した。

「実は天上界の神々のうち一柱が君に目を付けた」
「え、私に?」
「そう君に、興味を抱いている。
近いうちに接触してくるかもしれない」
「え、神様ってそんなに地上には出てこられないんじゃ…」
「あれは地獄に所属している神々だけだよ。
天上界の神々は地上に出ても何の問題もない」
「え、なんで地獄の神だけダメなんですか」
「それを説明するとかなりややこしいし、長くなるから今は置いておこう。
まぁ天上界の神々はいつでも地上には降りてこれることは確かだよ」
「何で私に目を付けたんですか?」
「それは分からない。
まぁ神は地上に干渉してはいけないというルールがあるけど、
そのルールを破って地上に干渉してくる神も居るんだ。
だから注意が必要だよ」
「分かりました。気を付けます」
「もちろん僕も君に何らかの危害が加えられた場合は、
ちゃんと天上界に抗議するよ。
ただ何の危害も加えられていない今の状況では様子を見るしか方法がないから、
気を付けてね」
「分かりました」

しかし皇帝といい、タツキといい、
私は変な人に目を付けられることが多い気がする。
何か理不尽な気がするが、これも運命なのかもしれない。

「それで良い知らせって何ですか?」
「ああ、ベアトリクスが新月に関係なく地上に出られるようになったから」
「え、ベアトリクスさんが?」

幻月神ベアトリクス。
確か地獄神の部下だったはずだ。
確か新月の日にしか地上に出てこられないはずだ。

「えっと地上に出て大丈夫なんですか、
ベアトリクスさんは地獄の神ですけど」
「ああ、それは大丈夫だよ」
「でも新月の時しか地上に出てこられないはずですよね」
「大丈夫。魔力を抑えて、感情が自然に影響しない魔道具を作ったから、
これでいつでもベアトリクスは地上に出て来られるよ」
「そんなものが作れるならもっと早くに作ってくださいよ」
「これって作るのに100年はかかるんだよ。
だからあまり量産が出来ないんだ」
「そうなんですか」

そう言うと地獄神は何かのスイッチを取り出した。

「このスイッチを君に渡しておくよ。
このスイッチを押せば3秒でベアトリクスは来るよ。
ただ普段がかなり忙しいから、
しょうもないことで呼び出さないでね」
「分かりました」
「まぁ君も気が付いていないうちに多くの人に影響を与えているんだよ。
それは天上界の神々も例外じゃない。
だから君を守らないといけない。
君が死ねば世界のバランスが崩れる」
「え、私ってそこまでスケールがでかいんですか?」
「そうだよ。君は気が付いていないと思うけど、
君という存在が世界に与えた影響はとても大きいんだよ。
もし君が消えれば世界がとんでもないことになる。
それだけの影響力があるんだよ。
残念なことに」

確かに私のおかげでダンジョンは変わったし、
バーン王国に与えた影響はとんでもないものだろう。
もしかしたらそのうち王族に会いたいと言われるかもしれない。

「そう、僕は直接地上には出られないから、君を守れない。
でも起こるべき災厄について忠告することは出来る。
まぁ相手も地獄神である僕の眷属に危害を加えるようなことはしないとは思うけど、
気を付けるんだ。今はこれしか言えない」
「分かりました」

しかし実際にそう言われると危機感が半端ないなとは思ったが、
何にせよ。警戒しようと思った一日だった。

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