上 下
193 / 243
第3章謎の少女とダンジョン革命

164・施設の実態

しおりを挟む
「あの施設がこんなことを…」

私達は証拠を持ってランス君の元に行った。
最初は半信半疑だったランス君だったが、
録音した会話を聞かせたら信じてくれた。

「まさか裏でそんなことをしていたとは…」

ランス君は怒ったようにそう言った。

「すぐに警察に連絡して施設長を逮捕しよう」
「それなんですが、
突入する時に私達も同行させて貰っていいですか?」
「え? 何故だ?」
「関わったからには最後まで見届けたいんです」
「…分かった」

そうしてすぐに警察が動いた。
警察が突入する瞬間に私達もついていった。

「何だ。お前らは…!」

施設に入ると職員らしき人物がそう言った。

「通してください」

そうして奥に進むと部屋の扉を開ける。

「うっ」

部屋に入るとつんとする異臭がした。

「これは…」

床にたくさんの人が寝かせられていた。
寝かせられた人には汚物のような匂いがして、
その体は痩せ細っていた。
暴行を受けたような痕もあった。

「酷いわね」
「ええ、そうですね。…ヒッ」

その瞬間床に黒い虫が横切った。

「確かにここは地獄なのだ。
こんなの詐欺なのだ」

イオの言葉に私も同感だった。
確かにここは地獄だ。

それから警察は施設の職員と施設長を詐欺やもろもろの罪で逮捕した。
このニュースは多くの人に衝撃を与え、
特に信じて家族を預けていた人はぶち切れたらしい。
天国のような場所と言っておきながら、
実際にはろくに看病もしておらず、
不衛生な場所に病人を寝かしていたため、
病状が悪化して亡くなった人も多数いるため、
ランス君はひょっとしたら殺人罪も適用されるかもしれないと言っていた。

ちなみに病気の人は、
フォルトゥーナが魔法で全員病気を治したので元気になった。
病気が治ったことを知ると、
みんな涙ながらに感謝してくれた。
おかげでかなりの善行も積めたので、
私にとっても良い利益があった。

そしてまぁ当然だけど施設は取り壊されることとなった。





「本当にありがとうございます」

そうバドさんはお礼を言った。
少しやつれているが、あんなことがあったのでまぁ仕方ないだろう。

「お礼ならマクスウェルに言ってください。
彼女があなたを探して欲しいって言ったおかげで助けられたんですから」
「そうか、マクスウェルが…。
彼女に体の調子が戻ったらまた会いに行くと伝えてください」
「分かりました」
「それと何かお礼をさせてください」
「いえ、別にいいですよ」
「そういうわけにはいきません」

うーん、別に私は善行積めるだけでいいんだけどなー。

「あ、そうだ。俺が冒険者時代に手に入れたものですが、
これをあなたに渡します」

そう言って渡されたのは一つの指輪だった。
青い宝石が付いていた。

「何ですかこれ」
「これは精霊の指輪といって、
これを付けると精霊の姿が見え、話すことが出来るようになるんです」
「え、そんなすごい物、受け取れませんよ」
「俺が持っていても仕方が無い物です。
どうか受け取ってください」
「…分かりました」

そうして私達は指輪を受け取り、
バドさんと別れると、緑のダンジョンに向かった。

「どうだった?」

ダンジョンに入るとマクスウェルが現れそう言った。

「実は…」

私はマクスウェルにバドさんのことを話した。

「末恐ろしい話だよ…。
アンタ達に頼んでいなかったら、
バドがどんなことになっていたか想像するだけでゾッとする」
「そうですね」
「それよりダンジョンについてだけど、
ゴミ処理に特化した構造に変えないといけないから、
必要な分の魔力を注いでくれよ」

そうしてダンジョンの魔石に必要な分の魔力を注ぎ込んだ。
そして次の日、ダンジョンにやってきた。

「うわっ、すごい」

ダンジョンの中に入り通路を進むとその先は、
底が見えないぐらいの大きな穴が開いていた。
その穴を囲むように足場がついている。

「セツナ」
「うわ、びっくりした」

いきなり目の前にマクスウェルが現れたので、
面食らってしまう。

「これがゴミ処理場なんですか?」
「そうだよ。
この大穴にゴミを入れたら後は自動的にゴミを仕分けて、
再利用可能な物は再利用して、他は消滅させるようにしたよ」
「ありがとうございます。
でもこの穴って手すりもないですし、
人が落ちる危険性があるんじゃ…」
「人間や動物が落ちたら自動的に飛翔魔法で足場に戻すから大丈夫だよ」
「分かりました。ランス君に報告しましょう」

そうして私達はランス君のところに行った。

「素晴らしい!
まさかダンジョンにこんな機能があったなんて!」

興奮したようにランス君はそう言った。

「すぐに町中の人に通達してゴミをダンジョンに運ばせよう!
本当に夢のようだ。セツナさんありがとう。
君達に頼んで良かった…!」

そうランス君は上機嫌でそう言った。

「これは報酬だ」

そう言ってランス君は私に報酬の金貨20枚をくれた。
ありがたく受け取っておく。

「しかしゴミは何とかなりそうだが、
依然としてこの町には人が減ったままだ。
セツナさん、どうしたらいいと思う?」
「…思ったんですが、
ランス君。町に人が寄ってくるには、
ゴミを何とかするのが一番だと思います。
例えばクーポンなんてどうでしょう」
「クーポン?」
「まぁそれを使うと商品が少し安くなったり、
とにかくお得になるんです。
そうだ。ゴミを捨てる手伝いをした人には、
特別にクーポンを配布するとかどうでしょう?」
「それは良い案だ。
それなら経済を活性化させることが出来るかもしれない」
「それとゴミ処理は引き続き、
ダンジョンで行うようにしましょう。
周辺の町や村のゴミを引き取ることでお金を得たら、
町にとってプラスになります」
「セツナ、本当にありがとう!!」

そうしてランス君に感謝されて、
そして私達はコレーの町を後にした。

しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:132,884pt お気に入り:8,520

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,475pt お気に入り:3,060

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,809pt お気に入り:1,560

処理中です...