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第3章謎の少女とダンジョン革命

159・交流会

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「そういえば気になっていたんですが」
「どうしたのだ?」
「イオって私達とよく居るけど、子育ては大丈夫ですか?」
「1週間に一度は里帰りしているし、
子供はアランが見てくれているから大丈夫なのだ」
「そういえばあれからルーガルー村には行ってないけど、
どうなっているんですかね」
「じゃあ、私と行ってみるか?」
「そうですね。行ってみましょう」

そうして私とイオはルーガルー村に行く事にした。





「おう、セツナじゃないか」

村に入ると熊獣人のダコタさんが出迎えてくれた。

「あんたの教えてくれた紙と石けんが飛ぶように売れてるし、
冒険者になった村の奴らが仕送りしてくれるおかげで、
村は大もうけだ」
「そうですか、それは良かったです」
「それで村の連中とも話し合ったんだが、
この村にかかっている結界を解こうと思うんだ」
「え?」

今ルーガルー村を覆っているのは二種類の結界だ。
一つは魔物が入ってこないようにするものと、
もう一つはこの村の存在を隠す結界だ。

「結界が無くなれば、
この村の存在が他の人間にバレることになりますよ」
「どちらにせよ。村の結界は弱まっていることは確かだからな。
ここらが潮時だろう。
あんたなら村の結界に干渉出来るんだろ。
だから消してくれ。
あ、ただし魔物避けの結界はそのままにしてくれよ」
「分かりました。結界石はどこにありますか?」
「ああ、こっちだ」

民家の中に入ると、
そこにバスケットボール程の大きさの魔石があった。

「では操作します」

私は魔石に魔力を込め、結界を操作していく。
魔物を寄せ付けない結界は強化して村を隠す結界は消しておいた。

「これでこの村に他の人もやってくることでしょう」
「ああ、本当にありがとう。
これでこの村に直接商人達がやってくることだろう」
「それはいいのだが、交流会はいつやるのだ?」

イオが突然そう言った。

「交流会?」
「フォルトゥーナが前に言っていたのだ。
獣人が外の世界と交流出来るようになったら、交流会をしようって」
「ああ、確かにそう言っていましたね。
交流会…まぁお祭りみたいなものですかね」
「それは面白そうだ。早速やってみよう」
「待ってください。この村ってケルトの森の中にありますし、
この森の魔物はかなり強いですよ」
「ああ、それなら村総出で森の魔物の駆除をしておこう。
そして念のために客人を護衛しよう」
「そうですか、じゃあ私は森の中にある『ゲート』を閉じておきますね」

それからは忙しかった。伯爵夫人と色々打ち合わせしたりして、
一週間後に交流会を行うことが出来た。

「うわぁ、すごいですねぇ」

村には提灯が飾られ、家の前には市場が出来ていて、
たくさんの商品が売られていた。
見た感じ大盛況という感じだった。
たくさんの人で村がごった返していた。

「すごいわね」
「ふふふ、きっと村は大もうけですよ。ぐふふふ…」
「その笑い方…。気持ち悪いから止めなさい」

それから村を歩いているとイオの家の前まできた。

「あ、セツナさん、こんにちわ」
「ああ、アランさん、こんにちわ」

イオの旦那のアランさんがそう言った。

「これは…虫ですか」

そこにあったのは虫だった。
大小様々な虫が置いてあった。

「はい、子供達が集めてくれました」
「虫なんて誰が買うんですか?」
「虫は薬の原料になりますからね。
さっき薬師の方がまとめ買いしてくれました」

へぇ虫は原価がゼロだから、売れなくても問題ないか。
考えたな。

「うちの子供達は虫を探すのが得意でして、
さっき薬師の方に契約を持ちかけられました。
毎月決まった量の虫を提供すればお金を払うと、
おかげで子供達が張り切って虫を探しに行きました」
「へぇ良かったですね」

そういえばギルドの依頼にも虫を集める依頼があったな。
まぁ私は虫は嫌いなので受けたことは無いが。

「セツナさんのおかげでこの村は良い方向に変わりました。
本当にありがとうございます」
「いえ、私は大したことはしていませんよ」
「いや、セツナが居なかったら村は終わっていたと思うのだ。
私からもお礼を言うのだ。ありがとうなのだ」

イオにまでお礼を言われ、私は少し照れてしまう。

「あ、そうだ。せっかく来たなら、
どうか展示を見ていってください」
「展示?」
「村の子供達が書いた絵を村長の家で展示しているんですよ」
「分かりました。見てみますね」

それからアランさんとは別れ、村長の家に行ってみることにした。

「すごいわね」

壁に村の子供達が書いた絵が飾ってあった。

「これ、私でしょうか?」

絵の中に私らしき絵があった。
書いてる人の名前を見るとイオの子供だった。

「それだけ好かれているってことよ」
「何か照れくさいですね」
「おお来たか、セツナ」

そう熊獣人のダコタさんが言った。

「こんにちは、ダコタさん」
「あんたのおかげで村は大盛り上がりだ。
感謝してるよ」
「そうですか」
「まぁそれよりわたくしの首を切った時みたいなことは、
もうしないでくださいよ」
「首? 何のことだ?」
「あ、そうでした。記憶を消したんでした」
「記憶を消したってどういうこと?」
「わたくしの正体を知る人間は少ない方がいいですからね」

そうしたり顔でフォルトゥーナは言った、
記憶を消すってさらっと言っているが末恐ろしいな。

「それよりセツナがここに来てくれて良かったよ。
俺らからするとアンタは神様だ」
「え、そんな大げさですよ」
「あなた自覚してないの自分がしたことを」
「自覚って何ですか?」
「セツナが村に与えた恩恵はすさまじいものがあります。
セツナが来る前と来た後では、
大きく変わりましたからねぇ。
台風みたいなものですよ」
「フォルトゥーナ、人を災厄みたいに言わないでよ」
「まぁ確かに台風みたいなもんだと思うぜ。
違うのは関わった人間が善人なら良い恩恵を、
悪人なら悪い恩恵を与える点かな」
「ガイまで、そんなこと言わないでよ」
「確かに俺もセツナ様と出会ってから人生が一変したな」
「クライド君までそう言わないでよ」
「実際のところあなたが冒険者の間で、
最近何と呼ばれているか知っている?」
「え?」
「禍福の女王。
関わるだけで善人なら幸せに、悪人なら不幸になる存在。
もし心にやましいことがあるなら、絶対に関わってはいけない。
まさに不可侵を貫くべき存在。禍福の女王。そう呼ばれているわ」

何か中二病みたいなあだ名だな。

「エドナもイージスの魔女って呼ばれてたし、
そういえばフォルトゥーナもちまたでは微笑みの聖母って呼ばれているし、
こういう二つ名って避けて通れないのかな」
「まぁね。多分そうだと思うわ。
まぁ誰が付けているのか知らないけど」
「まぁ祟り姫よりはましだと思うことにします」

それから村をあちこち巡っていると、
村の中央で大きな鍋が置かれていた。

「何するんですか?」
「キャベツスープを作るのだ。
そしてみんなに配るのだ」
「へぇ芋煮会みたいですね」
「このキャベツスープは、
いわばルーガルー村が変わるきっかけになった食べ物だから、
獣人達にとって特別な食べ物なんでしょうね」
「そうですか」

それを見て、
ルーガルー村は確かに変わったのだということが分かった。
もう私の手を借りなくても無事に進んでいけるだろう。
そう私は確信したのだった。
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